[ サクサクッとショートエッセイ ]
先日、教育再生会議なる機関から、「いじめ問題への緊急提言」なるものが発表されました。ワタクシ、この提言の内容を読んで、もう、プンプンプンなのでございますが、その話題は次回のメールマガジンでお話しいたしましょう。

実は、今回はちょっと悲しいお話。以前、メトロン星人の回で実相寺昭雄という監督を紹介いたしました。その監督が先月(2006/11/29)、亡くなられたそうでございます。享年69才だそうでございます。69才ともうしますと、一般の方々なら定年退職をして第二の人生を歩んでいらっしゃるころでございましょうか。しかし、監督業をしている方々での享年69というのは、非常に早すぎると思います。まだまだ、この監督の作品を見たかったのでございますが、残念でございます。ご冥福をお祈りいたします。

唐突でございますが、先日、NHK教育の「クインテット」という番組を見つけました。たまたま電源を入れたら放送していたのでございます。パペット人形によるたった10分の音楽番組でございます。ワタクシが見たときには、ブラームスのハンガリアン舞曲(だったような気がする)をパペットが演奏しておりました。

もちろん人形が演奏できるわけございませんので、台座の下から人形遣いが操っているのでございます。バイオリンの心得のある人にはすぐわかるのでございますが、パペットのボーイングが完璧なのでございます。ボーイングとは、バイオリンの弓を上げたり、下げたり、切り返したりといった弓づかいのことでございます。

このボーイングというやつ、バイオリンが弾ける人でなければわかりません。「大体こんな感じだったな」と想像で真似できるものではございません。つまり、バイオリンの心得のある人がそのパペットを操っているのは間違いございません。ボーイングにここまで拘(こだわ)っているということは、他の楽器の人形も、かなり正確な表現をしているだろうことは、想像できるのでございます。

また別の話。アニメ「トムとジェリー」の作品の中で、アカデミー賞を受賞したものが何点かございます。その中でも、ピアニストのトムがリストのハンガリー狂詩曲を演奏するものは秀逸。トムの演奏と音楽が完全に一致しているのでございます。手のアップシーンでは、押す鍵盤まで考慮して絵が描かれております。デジタル編集技術など全くなかった大昔の作品でございますから、熟練した職人さんの勘と根気強い微調整の賜物(たまもの)でございます。

子供が見るものに「子供だまし」を提供するのは簡単なことでございます。実際、世の中には様々な子供だましであふれかえっております。しかし、純粋で純白な子供だからこそ、ウソやごまかしのない「本物」を提供するべきだと思うのでございます。

体じゅうの細胞は激しく分裂をくり返し、すべての感覚器官はその練度を高めようと新鮮な刺激を求め、脳髄の中では新しい刺激に対する新しいマトリックスが日々生まれる。子供というのは体じゅうが成長点なのでございます。そんな小さな子供にこそ、「本物」を与えるべきでございます。そして、本物だからこそ、何年、何十年経った後に見返しても、また違った感動や発見を得られるのでございます。

悲哀に表現された怪獣を通して、そこに人間性や文学性を感じさせていただきました。夕日をバックに戦うウルトラマンを見て、映像美に触れさせていただきました。昼間なのに突然暗くなってスポットライトが当たるという演出(笑)で、世の中には現実と虚構のふたつの世界があるのだと学ばせていただきました。

幼少期に出会った多くの実相寺昭雄監督の作品は、ワタクシにとって素晴らしい財産になりました。監督、ありがとうございました。そして、今後、監督の新しい作品に出会えないことが、残念でしょうがありません。

実相寺昭雄監督、ありがとうございました。そして、さようなら。さようなら。


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(2006/1/24以前のバックナンバーはこちらからどうぞ)

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