[ サクサクッとショートエッセイ ]

歌謡曲には「男歌」「女歌」というものが有るのを、ご存じでしょうか? 男の心情を歌ったものが男歌、女の心情を歌ったものが女歌でございます。普通は男が男歌、女が女歌を歌うものでございますが、男が女の心情を歌った曲というものがございます。それも、意外と日本の歌謡曲には多いのでございます。

 

ほんとに、ほんとにわかりやすい例を申しあげますと、細川たかしの「わたしバカよね〜、おバカさんよね〜」というあの曲などは典型例でございます。聞き慣れているのであまり違和感がないかもしれませんが、よくよく歌詞を分析してみますと、あれは女のセリフなのでございます。

 

このように、男が女歌を、女が男歌を歌うのを、「クロスジェンダー」と申します。とまぁ、ワタクシ、偉そうに言っておりますが、このクロスジェンダーという語を知ったのは、つい先日のことでございます。「たぶん“クロスセックス”か、“クロスジェンダー”あたりの単語でヒットするだろう」なんてぇ感じで、いい加減に検索してみつけた語でございます。ほんとにほんとに、インターネットは便利でございます。

 

で、お話はそのクロスジェンダーでございます。最近は何かとカバーブームでございまして、昔のヒット曲をかき集めて作ったアルバムなんてのが多うございます。「○○トリビュート」なんて銘打っているアルバムなども、その一例でございます。そういったカバーアルバムの中で、男性歌手が女性の歌ばかりを集めたカバーアルバムというものに、ここのところよくお目にかかります。

 

最近買ったものでは、徳永英明の『VOCALIST』『VOCALIST II』なんてのが、極めつけのクロスジェンダーカバーアルバムでございます。男性が歌う女歌というものは、妙になまめかしく、そしてあまり執念深くなく(笑――深い意味はないですよ〜)、サラッと聞けていいのですが、どうも、この徳永英明の歌い方がオカマっぽく聞こえて、ワタクシ、ムズいのでございます。オカマにオカマっぽいと言われたのでは、徳永英明も立つ瀬がございませんでしょうが、「エエイッ、日本男児なら、もちっとシャキシャキ歌え!!」と叫びたくなるのでございます(それにこの人、あまり歌上手じゃないし〜)。

 

そんな折に、たまたま見つけたのが、閣下が歌われる『GIRL'S ROCK』という最近出たアルバムでございます。閣下とは言わずと知れた「デーモン木暮」閣下でございます。ワタクシ、この人の透明感のある声が大好きでございます。最初は「デーモン木暮、聖飢魔II」→「シャウト、ハードロック」という固定観念がございました。しかし、しかし、閣下の「BAD AGAIN 〜美しき反逆〜」という曲を始めて聴いたとき、その透明感のある艶っぽい声に、ワタクシはまるで、井上陽水の「心もよう」のEPレコードを脳天にぶつけられたときのような衝撃を感じたのでございます。

 

デーモン閣下の歌詞を実に大切に歌うといったところも、ワタクシ好感をもっております。「歌詞を口先でこねくり回して変に気取る」というところが微塵もございません。本来トゲトゲしくなりやすい英語の歌詞でさえ、閣下が歌うとまるでオペラ歌手のアリアのように、メロディーラインに柔らかく乗せられてしまうのでございます。しかも、細かく刻む伴奏のリズムに逆らうことなく、かつ、陽炎のようなゆらぎのあるリズム感を維持できる歌い方、素晴らしいのでございます。

 

で、その『GIRL'S ROCK』というアルバムでございます。なんか宣伝みたいでやらしいので、収録曲は各自ご自分で調べてみて下さいなのでございますが、1曲目の「六本木心中」なんてのは、もう実にハマりまくってます。オリジナルであるアン・ルイスの声は、どうもワタクシ、耳にキンキン響いて嫌いなのでございます。ところがところが、閣下が歌う六本木心中は、「柔らかい」のでございます。かといって、決してオカマくさくない。曲の内容を考えて、ちょっと手加減している閣下の歌い方が、ちょうどいいところに落ち着いているのではないでしょうか。

 

また、笑っちゃうのが、「City Hunter 〜愛よ消えないで〜」なんて歌も歌っております。もうね、悪魔が「愛よ消えないで」とか、「瞳みつめて Fall in love 」なんて歌っちゃってるのでございます。悪魔の風上にも置けないのでございます。でも、まぁ、こういった悪魔に似つかわしくない曲をムリクリ歌っているところに、やや力の抜けた、かわいらしいデーモン閣下がかいま見られて、楽しいのでございます。非常に賛否両論別れそうなアルバムでございますが、ワタクシ的には非常に気に入っているアルバムでございます。

 

ではでは、最近耳にしたCDを、独断的にダラダラ語ってみました。次回は、「どろろ」を、これまたダラダラ語るのでございます。毎度、おつき合いのほど、ありがとうございます。名古屋薫でございました。

 

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(2006/1/24以前のバックナンバーはこちらからどうぞ)
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