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2008/10/05

[本]のメルマガ vol.335

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■■ [本]のメルマガ                2008.10.05.発行
■■                             vol.335
■■  mailmagazine of books            [Just Do It!! 号]
■■------------------------------------------------------------------
■■     創刊は1999年5月10日、現在の読者数は6394名です。
■■ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp/

『マッキンダーの地政学:デモクラシーの理想と現実』
H・J・マッキンダー著 曽村保信訳 3360円 ISBN:978-4-562-04182-4
現代地政学の祖マッキンダーの最重要文献。新装版で復刊。

『マハン 海上権力史論』
A・T・マハン著 北村謙一訳 3360円 ISBN:978-4-562-04164-0
世界の海軍戦略に決定的な影響を与え続けてきた名著の新装版。
解説=戸高一成「常に新しい時代背景の中で読まれるべき書物」

■CONTENTS------------------------------------------------------------

★トピックス
→ トピックス募集中です!

★ベストセラー、一歩手前
→ 米国在住『デブで悪いか!猛獣妻の国際結婚バトル』いじりめぐみさんへ
  のインタビューです!

★「神戸発、本棚通信」 / 大島なえ
→ 青春の門と新宿との関係は?

★声のはじまり / 忘れっぽい天使
→ ジョン・エヴァレット・ミレイ展

★「なんとなく出版社立ち上げ日記」 / びずなれっじ
→ 短期集中連載ですが、今回はお休みです。

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■三省堂書店神保町本店4階イベント開催情報
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「若手批評家サミット2008ウェブコミュニティとコンテンツの未来」
 宇野常寛さん×荻上チキさん×濱野智史さんトークセッション
 日時:平成20年10月12日(日)14:00開始(13:30から入場開始)
 場所:三省堂書店神保町本店8階特設会場
 参加条件:入場料 500円(現金にて)を当日受付にてお支払いください。
 ご予約・お問合せ:三省堂書店神保町本店4階 電話03-3233-3312(代)
 三省堂書店 http://www.books-sanseido.co.jp

■トピックス募集
└──────────────────────────────────

 当メルマガではトピックスネタを随時募集しています。出版関係のイベント
や展示会・講演会、書店のフェア情報などを皆様より募集しております。でき
る限りそのまま紹介させていただきたいと考えていますので、トピックスの項
で紹介できるくらいの分量でのご投稿をお願いします。分量のだいたいの目安
は、5行〜10行程度です。多い場合には編集しますのでご了解ください。

 詳しくは巻末をご覧ください。

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■ベストセラー、一歩手前
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「ベストセラー、一歩手前」では、これからベストセラーになりそうだな、
あるいは、ベストセラーまではいかないけれど、頑張っていますという本を
ご紹介していければ、と思っています。

メールにて、インタビューを受けていただける著者の方、募集中です。

 【著者インタビュー希望】と表題の上、
 下記のアドレスまでお願い致します。

 5日号編集同人「aguni」まで hon@aguni.com

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書名:デブで悪いか!猛獣妻の国際結婚バトル
著者名:いじりめぐみ
税込価格:\540(本体:\514)
出版:角川文庫
ISBN:404386902

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−この本が誕生したきっかけを教えて下さい。

いじり「アメリカはシアトルで「ガイジン」暮らしをはじめてもうすぐ12年。
もともと体は大きい。いいたいことをいう。アメリカ人の夫を尻に敷きいばっ
ている。それだけでもアメリカ人はびっくりするのにアメリカ暮らしで15キ
ロも肥大し、「おまえはいったい何者だ!」っとみなに奇人変人あつかいされ
て後ろ指をさされる昨今。そんな変なガイジンのわたしが日々感じる「アメリ
カ」をシアトルの日本語新聞やブログにいいたい放題綴ってきました。それを
「おもしろい!」といっていただき「それではそーいう方向でエッセイ書きま
しょう」ということになり、わたしの暴飲暴食ぶりだの、気弱なアメリカ人夫
話だの、いじわるアメリカ姑の話しだの、アメリカンキッズの破天荒ぶりだの、
馬鹿なアメリカ人の話しだのだののエッセイ24連発が生まれたのでありまし
た。」

・シアトルの日本語新聞
 http://www.youmaga.com/seattleite/ijiri/index.php
・ブログ
 http://hecojapa.ameblo.jp/?bid=hecojapa

−なるほど、ネットでのご活躍からなんですね。では、なぜこの出版社に決ま
ったのですか?

いじり「編集のEさんが、わたしの初著作「へこまぬジャパニーズ」を過去に
読んでいてくださりその文庫版を出版させてもらうことになり角川文庫に御世
話になることになりました。「デブで悪いか!」は角川文庫から出させていた
だく2冊目。無名の新人に2冊も出させてくれるその太っ腹ぶりに感謝感激し
ております。」

−その太っ腹の編集の担当の方に一言!

いじり「出版業界前代未聞の書店店頭ライブ(台の上にのらされわたくし2時
間しゃべりっぱなし)を企画してくださったり、一緒に本屋さんまわりをして
くださったり、来日するたび一緒に酒もつきあってくださり、ひたすら感謝し
ております。担当のEさんは、同世代。それも2児の母として働く同じ境遇に
いるお方。毎日バリバリ働いてご立派。女性の鏡!あなたは素敵!尊敬してま
ーす。・・・・だけどさ、人のこと「猛獣妻」とか「でぶ道一直線」とか「酒
乱」とかひどいことずいぶん本に書いてくれたよね。ひどーい!・・・ま、本
当のことだけど。」

−ここでケンカしないでください(笑。
 それでは、書籍を形にするまでにいちばん苦労したことは?

いじり「編集のEさんは、ハイテンポの東京に。いじりは、ゆっくりモードの
シアトルに。そばに怒ってくれる人がいないから書くのものろのろ。そのうえ
書いていたのがシアトルのお天気のいい季節だったので(ほかはいつも雨・・・)
外でBBQしてお酒飲んで酔っ払っちゃって正体不明になって・・・の毎日で
なかなか筆がすすみませんでしたねえ。いちばん苦労したのは校正作業。シア
トル・東京間をEメール・FAX・国際郵便を介しての作業だったため、時間
がかかるしどこがどう改訂されているのか確認するのが大変でした。」

−まさに国際出版ですね。書籍を出版していちばんうれしかったことを教えて
ください。

いじり「20年以上あっていなかった高校時代のバスケ部の先輩から「やだー
これ、いじりさん?」と突然メールをいただきバスケ部のみなさまと再会でき
たこと! 「読んだら元気がでました」「思い切り笑えました」という読者の
声を聞くと「恥をさらしてよかった...」とこれまたうれしく思います。」

−やだー、って何でしょうね。それでは、これから本を出したいんだけど、と
いう方にアドバイスを!

いじり「Just Do It!! とにかく思っていることを書きましょう。ブログをは
じめるのもいいでしょう。わたしもまだまだ。これからどんどんブログを書き
まくり、次のねたをみつけて、また本になるようにがんばろうと思ってます。
いっしょにがんばろうね!!」

−お待たせしました。最後に書籍の宣伝をどうぞ!

いじり「「デブで悪いか!」爆笑!猛獣妻の国際結婚バトル!。タイトルは下
品だけど、書きっぷりもお口が悪いけど、あなたの知らないアメリカの「ひえ
ー」な話や「へー」な話がいっぱいつまってます。アメリカ メジャーでぶー
を果たしたわたしの日常、我が家の恥もさらしだしまくり、思いっきり笑って
もらえる一冊にできあがりました。わたしたち夫婦の「アメリカ前」の写真と
「アメリカ後」の写真は見ものです。9ページと10ぺージにのってるよ。本
を手にとって笑いこけてください。解説はあの!酒井順子大先生。
どうぞよろしくおねがいしまーす。」

−どうもありがとうございました!

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■「神戸発、本棚通信 / 大島なえ」
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 第四一回:青春の門と東京

 ようやく秋めいてきました。彼岸花がきれいに咲いてますね。政界は首相が
麻生さんになり、どこか日本は変わるのか大して変わらないのか

麻生太郎さんは、福岡の筑豊の炭鉱の大会社の経営者の子孫なんだとか。
生まれは良いが育ちは悪い。てのが、あの方についた評価だそうな。

 さて今年の夏に私は、ひとつ念願を果たした。念願なんて言うような大袈裟
なことでもない気もするが、私にしたら大きなことなので一応、念願で、それ
は新宿の紀伊國屋書店に行くこと。だった。まぁ話せば長いかれこれウン十年
前に、まだ世間の荒波など知ることもなく(今だって知ってるかどうか怪しい
が)神経症的な中学生の頃に地元の書店にほぼ毎日覗きに行っていたが、それ
には『青春の門』五木寛之(講談社)が出たかどうか確かめるのもあった。
『青春の門』は九州の筑豊で育ち、大学に入る為に東京に出てくる伊吹信介の
幼年から大人になるまでのロングサクセスストーリーであり、当時かなりベス
トセラーになった。

父は炭鉱の抗夫で、母は美しく信介の永遠の憧れの女性でもあるタエは、義理
の母だったが信介を心から愛し育てていた。父は炭鉱事故で自らダイナマイト
を担ぎ同僚を助けに行き壮絶な死に方をした。信介は、18歳まで筑豊の荒々
しい気風や義母のタエの愛に守られ、東京に出てきてからは様々な魅力的な友
人との出会いがあった。

 その中に出てくる場所が新宿で、まだ不穏なパワーの漲る感じが小説にも感
じられたし、世間知らずの私に強く印象つけていた。小説について書くと、と
んでもなく長いので省略するけれどそんな訳で東京の新宿で紀伊國屋に行って
風月堂でコーヒーを飲むんだ。とミーハーにも思ったのだった。それから新宿
へ初めて行ったのが、28歳の夏だったが、これが今のダンナと二人でクーラ
ーなしの車で神戸から行き、散々連れ回されて唯一の行きたい場所だった新宿
へようやく辿りついた途端、疲れと人の多さにあたり貧血を起こし倒れてしま
い(この時は中野の友人宅で泊めてもらった)新宿は五分ほど歩いただけだっ
た。思い出すのもうんざりするような東京だった。

 それからあっと言う間に時は過ぎ、四十代になってから十五年ぶりに東京へ
行くことがあった。この時も私の頭には新宿へ行きたい。と思いがあったし行
き先は、新宿経由の笹塚というところだったので用が終わってから荷物を持っ
て一度は新宿で降りたものの、西口で多分降りたらしく、見えるのはビルと高
速道路ばかりでどこをどう行けば目的地に行けるのかさっぱりわからず、地図
もなくおのぼりさん状態で途方に暮れ結局、駅前の喫茶店で休憩しただけで又、
電車に乗ってホテルへとりあえず入り、夜もはじめて神保町へ行ったりで新宿
はほんの少しだけ途中下車しただけだった。それからひとりで東京へ行くのが
自分にとって結構楽しい旅行になり、毎年行ってしまうのに何故か新宿は行か
なかったのが、今年の夏に偶然バスで新宿へ行った。それは池袋へ一人でとぼ
とぼと暑い夕方歩いて或る古書店まで行った時に疲れてベンチに座っていたら
目の前に新宿行きのバスが止まり、なんとなくふらふらとバスに乗っていた。
なので全然、そんな積もりはなかったけど「ま、いいか」的に乗り週末の夜の
新宿のど真ん中でバスを降りていた。

 新宿の街へはじめて一人で歩いたけれど、おそろしくデカい街で電飾は輝き
人は大量にうごめき、やはり底知れぬパワーのようなのがあった。そこで適当
に歩いていたら目の前になんと紀伊國屋書店の入口に立っていた。あの中学時
代に勝手に夢見ていたところが、長い月日を経てポンと目の前にあり、なんだ
か少し拍子抜けさへした。勿論中に入り店内をゆっくり見た。そこは、紛れも
なく東京だったが15歳の少女のどこか幼稚な夢は、知らぬ間にしっかり中年
になっている私には夢の跡はどこかへ消えてしまっていて、ひとり立ちすくむ
だけなのだった。

大島なえ(おおしま・なえ):1958年生。神戸在住のふらふら兼業主婦も
している。秋の雨がそぼ降る中を散歩していると、スーパーの前にびしょ濡れ
でつながれている黒犬と目が合った。少し野良犬なったみたいな気持で「よぉ」
と声をかけたら、「ふん」と返事をしたような気がしたな。

フリ−ぺ−パ−「ほんの手帖」発行人。書店巡り愛好者。
http://www.geocities.jp/nmzdrysk/nae/naeix.htm

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■声のはじまり/忘れっぽい天使
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マーケットを信じた潔い表現
―ジョン・エヴァレット・ミレイ展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

 ラファエル前派を代表すると言われる19世紀のイギリスの画家ジョン・エ
ヴァレット・ミレイの展覧会を見にBunkamuraザ・ミュージアムに足
を運ぶ。大宣伝を打っていたせいで、会場は結構混雑している。目玉の「オフ
ィーリア」の前には人だかりがあって、なかなか作品に近づけない程だった。
日本では近代絵画の紹介はどうしても印象派中心になってしまうから、こうい
う企画展があると、ぼくのような一般の愛好者には絵画史に対する見方が是正
できて有益だな、と思う。

 80点に及ぶミレイの作品はどれも細部まで丹念に描き込まれており、構図
は均整が取れていてとても見やすい。しかし見てただ快いというのではなく、
見ている人を挑発してくるようなところがある。この挑発性が、一種麻薬のよ
うな、特別な香辛料のような効果を発揮して、次々に絵を見てみたい気分にさ
せるのだ。

 ミレイは1829年に生まれ1896年に死んでいるから、印象派の画家で
言えばマネやピサロとほぼ同世代。展覧会カタログの年譜を読むと、幼少の頃
から絵の才能を発揮し、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ・スクールズに
史上最年少記録の11歳で見習い生の学期を終了したという。当時のアカデミ
ズムが理想としたラファエルの古典的画風に反発して初期ルネサンス絵画を範
とするラファエル前派兄弟団を結成。アカデミズムに叛旗を翻すが、1849
年にロイヤル・アカデミー展に出品された作品「イザベラ」が『アート・ジャ
ーナル誌』より「恐らく本展で最も傑出した作品」と評されるなど、若くして
才能を高く評価されていた。1896年にはロイヤル・アカデミー会長に選出
されている。つまり、異端派でデビューしながら見事出世して画壇の頂点に上
り詰めることができた、というわけだ。

 ミレイは19世紀の画家であり、王侯の庇護によってでなく、「絵を売る」
ことによって生計を立てていた。つまり、目が市場に向いていた、ということ。
また、ジョン・ラスキンらとのつきあいから、ジャーナリズムの動きを強く意
識していた。想いは込めるが内面に沈潜しきることなく、スキャンダラスな要
素を演出しながらいかに大衆から遊離しないか―。

 初期の作品「両親の家のキリスト」は、大工の仕事場で指にケガをしてしま
った幼いイエスの姿を描いたもの。シンメトリーを基本とする均整の取れた古
典的な構図と、各々の人物の描写の生々しさのミスマッチが魅力的。村のおば
さん風の聖母マリア、ヨセフ他の男たちのゴツゴツした体の線、華奢な小僧と
しか思えない、神々しさに欠けたイエス。古典的な場面設定と猥雑な日常の大
胆な混淆は、現在の我々の目でも若干の嫌悪感を催させる。当時の人からはい
ったいどの程度醜く映ったのだろう。しかし、この醜さは明らかに計算された
ものである。常識を覆されて不愉快な気分になるが、絵として磨き抜かれてい
ることは認めざるを得ない。不愉快を伴う生活感情がかえって絵を見る審美的
な快感を昂揚させずにはいないのだ。

 ミレイの代表作であり、展覧会の目玉である「オフィーリア」。シェークス
ピアの「ハムレット」から題材をとったこの有名な作品は、花を握り締めなが
ら水に流されていく哀れなオフィーリアの姿を描いている。狂気を感じさせる
オフィーリアの表情もさることながら、この作品において目を奪うのは周囲の
植物の精緻な描写であろう。ミレイは写生場所として定めたところの植生を時
間をかけて写し取り、人物は最後に描かれたのだという。各々の植物は学問的
に正確に描かれているだけでなく、象徴的な意味も担わされている。植物をも
う一人の主人公とすることで、この絵にはシェークスピアの戯曲にはない、複
雑な観念性がつけ加えられることになった。人間の一生も自然の営みの一部に
過ぎない、という諦念である。

 ミレイは子供や女性の優美な姿を描いた、ファンシー・ピクチャーと呼ばれ
る風俗画を数多く残している。それらはキッチュな魅力に溢れており、当時の
大衆にとても人気があったという。ミレイが自分の娘をモデルに描いた「初め
ての説教」と「二度目の説教」は中でも傑作だ。初めての礼拝に参加する幼い
娘は、緊張して姿勢を正し、まじめくさった顔をしている。しかし、二回目と
もなると緊張がとけて居眠りをしてしまうのだ。そのかわいらしい様子に、見
た者は思わず微笑まずにはいられない。

 そうかと思うと「遊歴の騎士」(1870年)では、男性の好奇の視線を誘
うような女体を描いてみせる。この作品のシチュエーションは、囚われて木に
縛り付けられた裸体の女性を騎士が救いにくるというものである。この作品の
狙いが女性の豊満な肉体美の描出にあることは間違いなく、ミレイは女性の体
をことの他リアルに描いている。同じ裸婦を描いた作品でも、マネの「オラン
ピア」は娼婦の意志の主体性を表現しているが、「遊歴の騎士」は犠牲となっ
た女性への性的関心を呼び覚ますことを狙っている。要するにポルノグラフィ
ーなのである。

 ミレイの作品を堪能していると、現在の商業美術の源はこの辺りにあるので
はないかと考えさせられる。大胆だが過激ではなく、どの作品も大衆からのニ
ーズが冷静に計算されて作られている。流行に乗っかって絵を描くのでなくて、
大衆の心の中にある潜在的なニーズを掘り起こすようにテーマが決められ、構
図が検討される。周到にマーケティングがなされた、流行を作り出すような絵
なのだ。ミレイの描く優しく柔らかな線は、日本の少女マンガにも直接間接的
に影響を与えたことだろう。

 そうした絵画は二流扱いされかねない。内面に沈潜する印象派の絵画に比べ、
スタイリッシュなミレイの絵の評価が低いのは何となく頷ける。実際、初期の
作品に比べると中期以後の作品はウケを狙いすぎてテンションが下がっている
ような印象も与えられる。しかし、マーケットとアカデミズムの良識を信じて、
誠実に娯楽を提供しようとする態度は潔く、心地よいではないか。ちなみに、
この展覧会でぼくが最も心を揺さぶられたのは晩年の風景画で、それは色彩の
繊細なダンスという印象を与えられる抽象的な作品群だ。
これらの作品の色使いは微妙極まりなく、画集で見てもわからない深い味わい
に満ちている。財をなし、最早「売る」ことを目的としなくてよくなった画家
が、気持ちのままに描きたいものを描いている境地が表われているのだろうか。
とにかく、一度足を運ぶ価値のあるものであること間違いなしの展覧会である。

*ジョン・エヴァレット・ミレイ展
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
会期:2008年8月30日(土)〜2008年10月26日(日)

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■あとがき
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 ひさしぶりに「ベストセラー、一歩手前」に著者登場です。アメリカ在住の
いじりめぐみさんです。

 ブログでは大統領選関係の話も書かれていますが・・・より不安になること
間違いナシですね(笑。(あ)

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 特に古本業界・印刷業界・取次業界で、欲無く無理なく出版業界の未来のた
めの原稿を、無償でコツコツ毎月書ける方を引き続き募集しています。我こそ
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「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」…井口時男
木登りする安吾――「文学のふるさと」再考…中島一夫
大人の仕事…横田創
【60年後の太宰治】
読者失格…島尾伸三
孤独の共犯者――いま、太宰治を読むということ…木村綾子
【『人間失格』で溢れるポストモダン】
逃げ水の行方――太宰治的〈じぶん〉のつくり方…伊藤氏貴
『人間失格』の語り手はなぜダメ人間でなければならなかったのか?神山修一
ケータイ小説として再発見される『人間失格』…速水健朗
【〈太宰治〉を取り巻くものたち】
恋と革命(ラヴ・レヴォリューション)・21世紀(トゥエンティワン)旗手―太
宰治より伊藤整と高見順が好きなんだけど。…千野帽子
より強くアナクロニズムを―「男女同権」と「桜桃」…佐藤泉
男の〈顔〉と喰えない女―『グッド・バイ』の果ての果て…ゆずはらとしゆき
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太宰治/坂口安吾をいま読むための作品ガイド…選・解説=青木純一

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200809刊/四六判/318頁
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ISBN978-4-7917-6442-6

神話から科学へ。そして壮大な時空の旅
大海に沈んだ「失われた大陸」の神話から、世界の大陸が一つになった「超大
陸」の科学へ。アメリカ科学界で相手にされなかった「大陸移動説」が定説と
なり、超大陸が5億年ごとに出現と消滅を繰り返すことが明らかになるまでの
経緯を克明にたどるとともに、生命さえ存在しなかった過去から、人類が消滅
しているだろう未来まで、科学的想像力というタイムマシンに乗って旅する、
壮大にして精緻な科学エンタテインメント。

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