[ 心の風景 ]

 合掌 おはようございます。

 先の土曜日に、島根在住のSF作家・飛浩隆さんとご一緒する機会に恵まれました。

 電子説法の読者層にとって飛さんの知名度がどのくらいか判断がつきかねるのですが、SFファンなら知らぬ者のない、斯界の最高峰に位置する作家です。単行本は『グラン・ヴァカンス』『象られた力』『ラギッド・ガール』の3冊しか出ていないけれどいずれも非常に高い水準の作品で、ここ数年の間に日本SF大賞をはじめ様々な賞を受賞しています。私なりに一言でいうならば、「人間の経験」の問題に対する感受性の確かさ、そしてそれを表現する手法の巧みさ・緻密さにおいて、文学全体の中でも希有なる高みに達した作品群です。その多面的な魅力については、私が言葉足らずにご紹介するよりも、ネットで検索していただいた方が適切でしょう。

 実は飛さんとはとある関係で以前からの知り合いでした。今回は、私が受講している大学院の文学ゼミで飛さんの作品を取り上げることとなり、せっかくだからとご本人をお招きしたところ快く参加していただいたものです。

 2時間弱のゼミと深夜に及んだ飲み会には、十人ほどの学部生も参加していました。彼らは大学の文芸部員で、同人誌を制作して自ら小説を書いている人たちです。私自身もアマチュアとして二十年以上小説を書き続けています。そうした表現者たちの熱気の中で、トッププロである飛さんから色々なお話を聞くことできました。特に強く感じたのは、飛さんの作品に対する自負と、それを裏付ける執筆態度です。「俺の文章をこれ以上磨き上げることの出来る奴は俺しかいない、そういえるだけの努力をした」そんな彼の言葉が偽りでないことは作品そのものが示しています。ブログLaterna Magika SF作家 飛浩隆のweb録でも時折り編集者とのシビアなやりとりが紹介されていますが、ひとつの作品を創り上げるのにこれほどの集中力を維持できるかどうかが、プロとアマを決定的に隔てるのでしょう。

 優れた作品を創るにはそれだけの努力をしなければならない。当たり前のことです。でも、その当たり前のことを行うためには、意志の力が必要です。自分自身の創作態度を振り返れば、「仕事や子育てが忙しい」「もう締切だから」「枚数オーバーしてるし」「次の話を書きたいな」と色々な言い訳を用意して、作品を磨き上げることを怠っていると認めざるを得ません。電子説法でもそうですね。日刊ペースで発行していた頃はまだしも、月に数度しか発行しない現在ですら文章や論旨のチェックが万全ではなく、後になってブログをちょこちょこ修正することがあります。しかし考えるまでもなく、七百数十人の登録読者に配信されたメールは修正のしようがないのです。それを思えば、常に怠ることなく文章を磨き上げるべきなのです。

 止暇断眠。暇を止め眠りを断って何事かに取り組む真剣さ、そして誠実さ。小説を書くことにせよ仏様の教えを説くことにせよ、「表現」にはそれが欠かせないものであることを思い知った一日でした。

 今日も良い一日でありますように。再拝