THINKS MAGAZINE RSSを登録する

浜松市にある『BAR THINK』の案内マガジン。新着商品、イベント、カクテルの情報など…。バーを舞台にした小説『チロさんの背中』も好評連載中!!

最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
2006/05/27

BAR THINK 浜松店より

この記事を取り寄せる

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■            THINKS MAGAZINE            ■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
                2006/5/26(No.83)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 このメールマガジンはBAR THINK 浜松店より、新着商品、イベント情報などを
 いち早くみなさまのもとへお届けいたします。
 発刊周期は不定期です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

≪お知らせ≫

◎スコッチ文化研究所会員&日本バーテンダー協会会員募集!!
 詳しい情報を知りたい方、入会希望者はTHINKまで。

◎メルマガのレイアウトがずれて見える方は、http://www.mag2.com/help/r109.htm を
 参考に、等幅フォントに設定してご覧ください。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆                6月のイベント                ◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


★酒味の会 6月4日(日)★

 毎月第1日曜日は新着のシングルモルトを開栓する日です。
 新しいお酒をいち早く飲みたい方はどうぞ!
 予約不要でどなたでも参加できます。

◎ROYAL LOCHNAGAR 12y.o 40% DISTILLERY BOTTLING

◎BOWMORE ENIGMA 12y.o 40% DISTILLERY BOTTLING

◎LONGMORN 1987 2005 18y.o CADENHEAD'S AUTHENTIC COLLECTION

◎GLENCADAM 1989 2005 15y.o CADENHEAD'S AUTHENTIC COLLECTION

http://www.f2.dion.ne.jp/~absinthe/hamatop.htm#malt



★カクテル教室 6月7日(水)★

 毎月第1水曜日はカクテル教室です。
 カクテル作りにチャレンジしてみませんか?
 道具の販売、貸し出しも致します。受講料は3000円。
 第1水曜日が祝、祝前日の場合は、第2水曜日に行います。
 1回から参加できます。要予約。

◎第14期3回 カクテルの王様マティーニ

※第14期生(4月〜9月)生徒募集!
 昼の部 午後1時〜2時30分
 夜の部 午後7時〜8時30分
 詳しくはお問い合わせください。



★6月のおすすめカクテル★

 6月は山梨県産の『桃(白鳳)』のカクテルです。

◎山梨県産桃(白鳳)とラムのフローズンカクテル

◎山梨県産桃(白鳳)とクリームのフローズンカクテル

◎山梨県産桃(白鳳)と紅茶のフローズンカクテル

http://www.f2.dion.ne.jp/~absinthe/hamatop.htm#cocktail


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆           連載小説 ≪チロさんの背中≫ 井口 豊           ◆
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

第三十一話「カウンタ右から五番目」



「誰でもいいのよ。知っててくれれば」
 BAR chinkのカウンタで、私はそんなことを喋っていたと思う。
 右手のカクテルグラスをゆっくり、口元に引き当てる。
 よく冷えたグラスの縁は、柔らかな感触を唇に残した。跡の良い甘さと、芳醇な香りが
印象深い、透き通った濃い紅色のカクテル──メリーウィドウを教えてくれたのは、この
店のバーテンダー、チロさんだった。
 自分で話した言葉を忘れかけた頃、年下のチロさんは答えてくれた。
「いいひとが見つかるまでは、私が智美さん、覚えておきますね」
「──私にいいひとが見つかったら、忘れるつもりなんだ?」
「もちろんです」
 ありえるはずのないふたつの冗談に、私とチロさんはひっそり笑う。
 誰が好きだとか、一緒にいたいとか、そんな想いは、今の私にふさわしくなかった。
 三年前、心からいいひと、と思っていた彼──富岡一志と別れた。
 そのカズの友達から、私は去年、彼が結婚したと聞かされている。


 朝。七時五分。自宅を出る定刻だった。
 ドアを開けると、迷いのない外気の冷たさに触れ、意識が引き戻される。
 アパートの階段を、ヒールの音をたてながら一息で下りる。冷気は包み込むように全身
をくるみ、いろんなものをまとった昨日までの自分の表面を、ゆるゆると溶かしてくれた。
 やさしい硬さ──おろし立てのシャツの襟の感触よりも、夜明けまもない朝の空気が好
きだった。特に、朝日に透けた新緑の香りが鼻先をかすめると、つい深呼吸をせずにおれ
ない。
 体に酔いは残っていない。膝や肩に微かな渋りを感じたが、歩いていくうちに背中や腿
のあたりから抜けていくのがわかる。
 毎朝、乗る電車は決まっていた。
 駅まで徒歩、二十五分。その間、いろんな背中を追い越していく。
 その道のりで、見かける姿はだいたい、見知っていた。
 朝練の高校生の男子グループ。いつもしかめっ面のタバコ屋のおじさん。若く、歩く姿
勢が綺麗な長身の男性は、頭の芯をピアノ線で引き揚げているかのように、姿勢が良かっ
た。それに彼は、毎日違うTシャツを着ている。何着持っているのか一度聞いてみたかっ
た。
 そんな人達の中で、苦手な背中があった。
 通りから繁華街駅構内で見かける、中背のサラリーマン。四十代後半で、紺色のシワの
残った上着とズボンで見かけることが多かった。小さな歩幅と、風が吹けば傾いてしまい
そうな、植物的な弱々しさのせいか、彼の周りだけ、くすんで見えた。
 猫背の背中に、痩せた手足。白い首筋に癖の付いた硬い髪。私は、元気ないなぁ、と声
に出してしまいそうな口を無理矢理閉ざして、追い越していく。
 誰かに合わせている暇はない。カズと別れてからは、それが口癖になっていた。
 改札を抜け、エスカレータではなく、正面の階段を駆け上がる。顔を上げると、ホーム
にあがる人達の隙間から、珍しく青空が見えた。


 平日の会社帰り。残業を早めに切り上げて、普段より少し早い帰りの電車から、降りた。
 今日は、chinkに行くと決めていた。
 過去、連日顔を出したことはなかったから、チロさんは驚くに違いない。
 改札を抜けると、見覚えのある背中と、スーツの色が目を引いた───雰囲気が違った。
 朝、駅構内で見かける苦手な背中だった。
 彼を追うように、私は歩いていた。今まで、彼と、帰りで一緒になったことはない。
 西日の名残か周囲はまだ明るく、人気の多い、通りのにぎわいが新鮮だった。
 彼の足取りは軽く、少しずつ離されていくのがわかる。
 同じビルの角を曲がり、地下道に入り、階段を昇って、細い路地を抜けていく。
 ──chinkじゃないよね。
 行き先が同じような気がして、彼の背中から目が離せなくなる。
 彼は、chinkに入る階段の前を通り過ぎた。
 同じ通りの、三十メートルほど離れた、おでん専門店の暖簾を揺らす。
 灯りに照らされた横顔が見えた。目元の深いシワが笑っている。温かな横顔で、いいな
と思う。
 そんな笑顔、出来るかな。そんなことを考えていた。
 私は階段を見上げる。
 気負いなく、笑えるだろうか。
 控えめなスポットライトが照らす、立てかけられたメニューの文字がよく見えなかった。
 一歩、また一歩と階段を登る──。
 誰かと一緒に歩くのも、悪くないかもしれない。そんなことを、考えながら。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★このメールマガジンの解除、アドレスの変更はこちら。
http://www.f2.dion.ne.jp/~absinthe/hamatop.htm#mag

★ホームページはこちら。
http://www.f2.dion.ne.jp/~absinthe/

★スコッチ文化研究所浜松支部のホームページはこちら。
http://www.h7.dion.ne.jp/~swrc-h/

★その他ご意見、ご感想、全てのお問い合わせはこちら。
bar_think@yahoo.co.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

この記事を取り寄せる
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る