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2005/07/07

ILO駐日事務所メールマガジン 【No. 37】

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    ILO(国際労働機関)駐日事務所マガジン
     2005年7月7日号 No. 37

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:::::::::::<目  次>:::::::::::::::::::::
:《1》数字で見る国際労働基準(2005年7月1日現在)::::::::::::
:《2》ILO駐日代表雑記−協同組合・人身取引・HIV/エイズ...::::
:《3》ILO駐日事務所お知らせ−日本人テクニカル・オフィサー募集 ほか::
:《4》ILO新聞発表−第93回ILO総会 ほか:::::::::::::::
:《5》新刊紹介−仕事と食物 ほか:::::::::::::::::::::
:《6》ILO事務局ニュース−ILOの論文集最新号 ほか::::::::::
:《7》トピック解説−労働時間:::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

□■□■□■ 数字で見る国際労働基準 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
                           (2005年7月1日現在)
◇加盟国数..178            ◇日本の批准条約数.......46
◇条約の数..185(うち撤回5、棚上げ25)◇加盟国の平均批准条約数....41
◇勧告の数..195(うち撤回36)     ◇OECD諸国の平均批准条約数.72

□■□■□■ 堀内光子ILO駐日代表雑記 □■□■□■□■□■□■□■□■□

   ★ ☆ 協同組合・人身取引・HIV/エイズ... ☆ ★

 昨年同様、本年の6月も国内外の移動の多い、かつ会議の多い忙しい月でした。6
月のメルマガの発行が大幅に遅れた言い訳ですが。6月はILOの存在理由を鮮明に
思い起こさせる幾つかの会合がありました。感想と共に2、3ご紹介したいと思いま
す。
 6月3日は広島国際会議場で行われた日本労働者協同組合連合会第26回総会の開会
式に出席しました。今でこそ地域での「仕事おこし」は誰もが同意する重要課題です
が、1971年から始め、ここまで道を開いてきたご努力と、そして慧眼に敬服します。
20年前の国連勤務時代に門前の小僧のような感じで近づいた「社会開発」の一部とし
ての協同組合から、今、日本の実践を目の当たりにして、人々のエンパワーメントの
重要性を実感しています。7月2日「国際協同組合デー」に発出されたソマビアIL
O事務局長のメッセージにも、協同組合を「メンバーが主導し、民主的にマネージし、
ローカルに根ざし、価値に基礎を置く企業として、協同組合は貧しい人々の自助、相
互扶助を動員する」と言っています。特に貧しい人々を念頭に置いているのは、本年
9月に行われる国連総会でのミレニアム開発目標達成への見直しが念頭にあるといっ
てよいでしょう。協同組合は、もちろん貧しい人々のためだけのものではありません。
そして、事務局長は、協同組合はディーセント・ワーク(権利・保護・対話)の目標
達成への核となる手段であることを表明しています。
 2つのヨーロッパ、アメリカでの会議の後、6月の最後は日本での2つの国際会議
への出席でした。1つは人身取引について。国連国際組織犯罪防止条約を中心とする
ものでした。もう1つはHIV/エイズについて。いずれも人間の安全保障を脅かす
今日の深刻な世界的課題です。
 人身取引については、6月のILO総会で議論された強制労働に関するグローバル
・レポート(「強制労働に反対する世界的な同盟」)で初めて人身取引被害者の推計
数を発表しました。約240万人います。うち半数近くが18歳未満の子どもであると推
定しています。日本は、性的搾取を受ける被害者の目的地であるとの記述がなされて
います。日本政府が昨年12月、国内行動計画を策定し、取り組みを強化していること
は需要国として当然の対応と言えますが、HIV/エイズとの問題も含め、仕事・労
働という面からのアプローチにももう少し光を当てる必要があると思っています。す
なわち人身取引には、「募集」行為があるわけで、的確な情報提供(これには仕事斡
旋機関の適正な機能確保も含まれます。)と秩序ある移民の流れの確保が重要と思い
ます。もちろん課題は多くありますが。
 長くなったのでごくごく簡単に言えば、昔、日本でもあった悪質な口入屋をなくし、
まともな仕事斡旋エージェンシーを育てるというか、存在させるということにも目を
注ぐべきと思っています。
 HIV/エイズは、7月初め、神戸でアジア会議が行われましたが、予防の重要性
は言うまでもなく、そのために企業というか職場の果たす役割は大きいものがあると
考えています。さらにHIV/エイズ感染者の「差別」なども深刻で、職場での平等
原則の確立も不可欠です。ILOは職場の行動規範を作成しており、日本語訳は駐日
事務所の下記ウェブサイトに掲載しています。是非お読み下さい。また最近日本語訳
を出した「人間中心の企業成功戦略(定価1,000円)」で、南アフリカにある「エス
コン社の被差別採用方針:HIV/エイズとともに生きる人々」も好事例の一つとし
て入れています。これもあわせてお読みいただけると幸いです。

HIV/エイズと働く世界ILO行動規範日本語版----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/downloads/hivcode.pdf

 ※PDFファイルをご覧になるためにはAcrobat Readerが必要です。
  お持ちでない方は、こちらからダウンロードしてください。
  http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep.html

□■□■□■ ILO駐日事務所お知らせ □■□■□■□■□■□■□■□■□■
◆◇ILO歴史写真展・シンポジウム(東京・9月)◇◆
 本年はILO駐日事務所が戦後に東京支局として再開されて50周年に当たります。
これを記念して、9月5〜30日に東京・渋谷区のUNハウスでILOの歴史を振り返
る写真展を企画しています。あわせて、ILOの現代的意義を考えるシンポジウムを
9月最終週に開催予定です。詳細は確定次第、ILO駐日事務所のウェブサイトでご
案内します。

◆◇日本人テクニカル・オフィサー募集◇◆
 昨年に引き続き、今年もILO日本人テクニカル・オフィサーを募集します。詳細
は近日中に、ILO駐日事務所のウェブサイトに掲載します。

◆◇若者:雇用の促進とディーセント・ワークへの道(東京・10月3日)◇◆
 昨年に引き続き、法政大学大原社会問題研究所とILO駐日事務所の共催で、10月
3日に、今年のILO総会で一般討議が行われた若者の雇用について、総会出席者に
よる報告を中心としたシンポジウムを開催します。詳細は確定次第、ILO駐日事務
所のウェブサイトでご案内します。

★ILO駐日事務所からのお知らせは、What's Newページをご覧下さい----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm#information
★ILO会議・行事予定----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm

□■□■□■ I L O 新 聞 発 表 □■□■□■□■□■□■□■□■□
                        (5月30日〜7月6日発表分)
◆◇2005年5月30日(月)発表ILO/05/24◇◆
◆◇2005年5月31日(火)発表ILO/05/25◇◆
◆◇2005年6月6日(月)発表ILO/05/26◇◆
◆◇2005年6月7日(火)発表ILO/05/27&28◇◆
◆◇2005年6月10日(金)発表ILO/05/30◇◆
◆◇2005年6月16日(木)発表ILO/05/31◇◆
★第93回ILO総会(ジュネーブ・2005年5月31日〜6月16日)

 今年のILO総会の主な議題とその成果は以下の通りです。
◇漁 業
 現在この分野について存在する7つの基準を改正し、新たな条約と勧告を採択する
ことに向けた最終的な話し合いが行われましたが、表決の際の定足数に達せず、採択
には至りませんでした。総会は理事会に対し、審議報告書を土台として、2007年の総
会で本議題を再び取り上げるよう求めました。

◇2006/07年事業計画・予算
 組織としての投資ニーズと臨時項目に対応するため、現行予算比実質 1.1%増とな
る総額5億9,431万ドルの2006/07年の事業計画・予算が採択されました。新事業計
画・予算はまともで人間的な働き方を意味するディーセント・ワークを世界の目標と
することに焦点を当て、ディーセント・ワーク国内計画を含み、地方、国家、地域、
国際レベルでそのために必要な活動から構成されています。基準並びに働く上での基
本的な原則及び権利の推進、男女がまともな雇用と収入を確保できる機会及び企業振
興の機会の拡大、社会保護を全ての人々に広げ、実効性を高めること、そして政労使
の三者構成主義と社会対話の強化といったILOの4つの戦略目標の補強に加え、若
者のディーセント・ワーク、企業の社会的責任、輸出加工区、インフォーマル経済に
関する事業が提案されています。

◇若者の雇用
 近年、若者の失業率は世界的に記録的な水準に達し、2004年時点で働ける状態にあ
る若者の半数以上が働いていませんでした。100カ国以上の参加者を得て、若者が生
き生きと人間的に働けるディーセント・ワークを達成できるための道筋と若者の就業
といった課題を前進させる上での国際社会の役割について一般討議が行われました。
ILOは知識構築、広報、技術支援を通じて若者のディーセント・ワークを推進して
いるほか、国連事務総長の提案による若者雇用ネットワーク(YEN)及びミレニア
ム開発目標に関わる国際的な活動で主導的な役割を果たしています。討議では、IL
OがYENで引き続き主導的役割を果たすこと、そしてYENを先進国・途上国を問
わず世界中に広めていくことが奨励されました。また、若者の雇用促進に向けたIL
Oの行動計画は知識構築、広報、国際労働基準に沿った若年労働者の権利促進、技術
支援を基礎とした実践的なものとすべきことが提案されました。6月7日には「国際
開発の課題と若者の雇用」をテーマとするYENのハイレベル対話も開かれました。

◇労働安全衛生
 労働安全衛生の分野における促進的な枠組みの形成に向けた第一次討議が行われ、
そのための文書は勧告に補足された条約の形式を取ることが決定されました。内容と
しては、労働安全衛生を各国の課題の上位に位置させることを支援することに加え、
マネジメント・システムズ・アプローチを通じた予防原則に基づき、より安全でより
健康的な作業環境、労働安全衛生国内計画の開発、国内の労働安全衛生制度の継続的
改善を推進するものとすることが提案されました。来年の総会で、この提案を元に準
備される最終的な文書の採択に向けた討議が行われます。

◇国際労働基準
 基準適用総会委員会では25の個別ケースに加え、ミャンマーの強制労働問題が審議
されました。ミャンマーの問題が委員会特別会合で審議されるのは今年で5年目です
が、最悪の形態の強制労働が依然存在するなど状況にあまり変化が見られず、強制労
働の苦情を申し立てた人を虚偽申立てとして政府が起訴するつもりであるといった警
戒すべき状況の存在や、ILO連絡駐在員の移動の自由の問題や深刻な申立て案件が
未解決のままであることなどに鑑み、2001年以来大半の加盟国が取ってきた見守る姿
勢をこれ以上続けることは不可能として、加盟国政労使に対し、対外直接投資や国有
・軍有企業との関係を含み、ミャンマーとの関係を早急に見直し、11月の理事会まで
に報告するように求めました。また、この問題の存続は結社の自由が全く保障されて
いない現状と切り離して考えられないとして、ILO連絡駐在員の任務に結社の自由
及び団結権保護条約(第87号)の適用に対する支援も加えるよう求められました。
 ILO審査委員会が設置されたもう1つの事例であるベラルーシの結社の自由問題
については、審査委員会の勧告に従う具体的な目に見える措置が講じられていないと
して、政府を支援し、対策を評価するILO使節団をベラルーシに派遣することが求
められました。
 今年は労働時間が総合調査の対象となり(下記「トピック」欄参照)、審議の結果、
グローバル化する世界における公正な国際競争に寄与するため、労働時間を制限する
国際労働基準は依然必要であるとの結論が導かれると共に、1919年採択の労働時間
(工業)条約(第1号)と1930年採択の労働時間(商業及事務所)条約(第30号)は
労働時間の規制に関する現状を十分反映しておらず、ますます多くの国に過度に硬直
的な基準と見られるようになってきている事実が再確認されました。審議においては、
労働者の安全保障・健康・家族の生活の保護と、柔軟性の2つの要件を調和させるこ
との必要性が強調されました。また、この分野における規制的枠組み、団体交渉、社
会対話の重要な役割も指摘されました。ILOは審議の結果を理事会に提出し、フォ
ローアップの方向を決定することになります。

◇強制労働
 1998年に採択された「仕事における基本的な原則と権利に関するILO宣言」のフォ
ローアップ活動の一環として作成されたグローバル・レポートに基づく強制労働に関
する6月8日の特別会合では、強制労働は人間の尊厳を侵害するものとして強く非難
され、この世界的な問題に取り組むため国際的に手を組もうとのILO事務局長の提
案が支持されました。そして、強制労働を世界から廃絶するための基本的な要素とし
て、法の執行、啓発キャンペーン、政府及び社会的パートナーの能力構築、被害者の
社会復帰、地域レベル及び世界レベルでの協力、持続可能な技術協力計画があげられ
ました。総会での審議をもとに、理事会で強制労働に関する今後4年間の具体的な行
動計画が決定されます。グローバル・レポートは政府間機関が発行したこの種のもの
としては初めて、世界各地の様々な経済における現代の強制労働の実態とその背景原
因について報告しています。

◇ゲスト・スピーカー
 今年のゲスト・スピーカーはアルジェリアのアブデラジズ・ブテフリカ大統領とナ
イジェリアのオルシェグン・オバサンジョ大統領でした。アラブ連盟の議長も務める
ブテフリカ・アルジェリア大統領は6月7日に演説し、2005年9月に予定されている
ミレニアム宣言見直しのための国連サミットが、平和と国際安全保障の維持に寄与す
るグローバル化の社会的側面の構築を促進することへの望みを表明しました。アフリ
カ連合(AU)の議長も務めるオバサンジョ・ナイジェリア大統領は、6月10日に演
説を行い、2004年9月に開かれた雇用と貧困緩和に関するAU特別サミットで、雇用
創出をアフリカの経済・社会政策の明確で中心的な目標とすることが確認された事実
を紹介し、今年9月の国連サミットでもILOの提唱するディーセント・ワーク目標
を世界全体の目標とすることを真剣に検討するよう呼びかけました。

◇ILO理事選挙
 6月6日に理事選挙が行われ、日本からは使用者側正理事として、日本経団連国際
協力センターの鈴木俊男参与、労働者側正理事として、日本労働組合総連合会の中嶋
滋総合国際局長がそれぞれ再選されました。ILOの理事会は、正理事56名(政府側
28名、使用者側14名、労働者側14名)及び副理事66名(政府側28名、使用者側19名、
労働者側19名)から構成されています。理事の任期は3年で、今回選出された理事の
任期は2008年の総会時までとなります。日本や米国を含む十大産業国の政府理事は常
任の理事となっています。

◇総会役員その他
 総会の議長はヨルダンのバシム・カリル・アルサリム労働大臣、副議長はアンドリュー
・J・フィンレー・カナダ使用者代表、イルダ・アンデルソン・メキシコ労働者代表、
そしてエクアドルのガロ・チリボガ・サンブラノ労働・雇用大臣が務めました。
 6月6日に演説を行ったソマビアILO事務局長は、2004年に世界経済は5%成長
し、生産高は4兆ドル近く増大したにもかかわらず、雇用の伸びはわずかに1.7%で、
失業者数は50万人減少したに過ぎないとして、富と雇用が大きく分断された現状は、
世界の安全保障、開発、民主主義にますます大きな脅威を与え、早急に対処が必要と
唱えました。そして、ILOが推進しているディーセント・ワーク目標に対する支持
が世界的に表明されている現状を紹介した上で、ディーセント・ワークを世界の目標
とするために必要な、相互に連結した3つの行動として、1)労働組合、使用者団体、
雇用・労働・社会問題担当省庁の強化を通じた集団的な能力構築、2)ILOが各国の
優先事項により効果的に貢献できるよう、国及び地域レベルでディーセント・ワーク
を推進するILOの努力の強化、3)成長、投資、雇用を国際協力の中心に据えること
によってディーセント・ワークを開発に関する論議の主流に移行させることをあげま
した。
 総会では、この他に、アラブ被占領地の労働者の状況に関する話し合いも行われま
した。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/24.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/25.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/26.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/27.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/28.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/30.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/31.htm
第93回ILO総会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/ilc/ilc93/index.htm
ILO第1号条約----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/st_c001.htm
ILO第30号条約----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/st_c030.htm
ILO理事会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/gb/index.htm
関連広報記事:YENハイレベル対話(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/ilc_yen.htm
関連広報記事:英国のYEN参加−西欧先進国で初(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/yen_uk.htm

◆◇2005年6月9日(木)発表ILO/05/29◇◆
★児童労働反対世界デー(6月12日)

 ILOは2002年より、6月12日を児童労働反対世界デーとして、この問題に光を当
て、児童労働、特に最悪の形態の児童労働の撤廃に向けた世界的な動きに注目を喚起
する日としてきました。2005年の世界デーでは、鉱山及び採石場で働く子どもたちの
問題に焦点を当て、世界各地で様々な行事が行われました。日本では、6月12日当日
にシンポジウムを開催したほか、5月9日〜6月15日に児童労働写真展を行いました。
ジュネーブでは6月10日に、ブラジル、ブルキナファソ、コロンビア、パキスタンな
どの国々の政府、労働者、使用者の代表が参加して、5〜10年以内に小規模鉱業と採
石業から児童労働を廃絶する行動を呼びかけるイベントが開かれました。
 世界全体では少なくとも100万人の子ども(5〜17歳)が、小規模の鉱山や採石場
で働いているとILOは推計しています。作業場の機械化率は典型的に低く、労働者
はトンネルや岩盤の崩落、爆発事故、水銀や鉛などの有毒物質への暴露といったよう
に死亡と負傷の危険に絶えずさらされているにもかかわらず、労働者を保護する道具
や安全装置も不足しています。ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)が作成し
た背景資料は、小規模鉱山・採石場は、人が立ち入りにくい僻地にあることが多いた
め、規制が難しい上、地元の雇用選択肢がほとんどなく、子どもたちは貧しい家計を
分担して支えるよう期待されているといった問題点を指摘しています。
 1999年及び2002年に開かれた鉱業に関する政労使三者構成のILOの会議で、小規
模鉱業における児童労働問題に積極的に取り組むことが求められました。これを受け
て、モンゴル、タンザニア、ニジェール、南米アンデス諸国でパイロット・プロジェ
クトを行ったIPECの経験から、この部門で働く子どもたちを支援する最良の方法
は、地域社会と協力し、小規模鉱業の経済的将来性、安全性、環境面の持続可能性を
改善し、通学しやすいまともな学校、訓練、基礎的サービスを通じて、子どもの将来
展望を高めることであることが示されています。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/29.htm
児童労働反対世界デー(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/ipec/wdacl/2005/index.htm
日本における児童労働反対世界デー行事----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/downloads/c20050612.pdf
IPEC(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/ipec/index.htm
関連広報記事:鉱山・石切場における児童労働とILOの活動(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/wdacl_digging.htm
関連広報記事:ウクライナの炭鉱における児童労働(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/wdacl_ukraine.htm

◆◇2005年6月17日(金)発表ILO/05/32◇◆
★第293回ILO理事会(ジュネーブ・2005年6月17日)

 第293回ILO理事会では、2005〜06年の新議長として、アルゼンチンのカルロス
・A・トマダ労働・雇用・社会保障大臣を選出しました。2003年5月から現職にある
トマダ大臣は、弁護士として労使関係や団体交渉の分野で豊富な経験を有しています。
労働者側副議長には、理事会労働者側グループのスポークスマンでもあるルロイ・ト
ロットマン・バルバドス労働者組合書記長、使用者側副議長には、ダニエル・フネス
・デ・リオハ・アルゼンチン産業連合社会政策局長がそれぞれ再選されました。
 理事会はまた、結社の自由委員会の第337次報告書を承認しました。委員会には現
在、120件の案件が付託されていますが、今回はそのうち35件が審議され、労組指導
者2名が相次いで暗殺されたカンボジア、労組指導者に対する殺害その他の暴力行為
の存在が1995年から取り上げられているコロンビア、複数労組指導者の逮捕に至った
政府保安部隊との衝突が見られたイラン、結社の自由の法的枠組みがなく、公認労働
者団体も存在せず、労働問題の苦情を提起した組合活動家や労働者が逮捕・投獄され
ているミャンマー、組合員や労組指導者の専断的な逮捕・勾留、脅迫等が行われてい
るジンバブエの案件に特別の注意が喚起されました。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/32.htm
第293回ILO理事会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/gb/docs/gb293/index.htm

★ILO新聞発表の日本語概要----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm
★ILO新聞発表(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/index.htm

□■□■□■ 新 刊 紹 介 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
◆◇「仕事と食物:職場における栄養不良、肥満、慢性疾患解決策
   Food at work: Workplace solutions for malnutrition, obesity and
   chronic diseases」◇◆
   C. Wanjek著 英語 2005年刊 448pp. 6,000円

 十分な栄養摂取は他の重要な労働安全衛生事項と同様、職場の生産性と安全の基礎
的要素ですが、これまであまり注目されてきませんでした。栄養があり、安全で、高
価でない食品、十分な食事休憩、まともな飲食環境を労働者に確保することは、社会
的に重要で経済的に成り立つだけでなく、利潤につながる企業行動であることを示す
ことによって、本書は十分な栄養摂取と高生産性のつながりを明らかにします。
 第1部で職場における栄養に関する歴史と経済学、各種栄養素の概要、職場を十分
な栄養摂取の場とするための各種配慮事項など、職場と栄養の関係を理論的に説明し
た後、第2部で日本を含む世界28カ国より、企業内食堂、食券、飲食スペース、簡易
炊事設備、地元販売業者との提携、飲料水などに関する様々な企業の好事例を幅広く
紹介しています。日本のお弁当の例も取り上げられています。第3部には、会議等で
脂肪分やカロリーの少ないヘルシーな食事を出すためのガイドラインなどを含み、食
事休憩と職場における栄養に関わる法規、ガイド、各種チェックリストなどの資料が
豊富に掲載されています。

書籍等購入方法----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/index.htm
駐日事務所資料室新着図書一覧(2005年5月分)----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/new.htm

★オンライン無料出版物★
◆◇「公務員改革における社会対話強化のための実務ガイド
   Practical guide for strengthening social dialogue in public
   service reform」◇◆
   V. Ratnam・S. Tomoda共著 英語 2005年刊 44pp.

 社会対話には、政府、使用者、労働者の代表が、経済・社会政策に関わる共通の利
害関心事項について行うあらゆる情報の共有、協議、交渉が含まれます。構造調整の
一環として世界各国で実施されている公務員改革は、国の役割の縮小と市場の力への
依存の拡大は効率性とサービスの向上に結びつくという理念に基づいて進められてい
ますが、逆の結果を示す例も多数存在します。ここから得られた最大の教訓は、影響
を受ける全ての利害関係者との協力・協議、つまり社会対話を伴って設計・実施され
た場合に限り、改革は成功するというものです。ILOは2001年10月にジュネーブで、
地方公務員に対する分権化と民営化の影響を政府と労働者の代表が検討する国際会議
を開催しました。会議で採択された結論の1つで、ILOは公務員改革の過程であら
ゆるレベルにおける社会対話を促進する教材・助言資料を開発し、これを加盟国政府、
労使、国際機関に提供するよう求められました。これに応えて作成された本書は、第
1部で公務員の社会対話の概念を説明した上で、第2部でニュージーランド、アメリ
カなど幾つかの国の社会対話の好事例を紹介し、第3部で社会対話の強化に向けた実
践的なステップとチェックリストを掲載しています。

公務員改革における社会対話強化のための実務ガイド(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/papers/pubserv/pracguide.pdf

□■□■□■ I L O 事 務 局 ニ ュ ー ス □■□■□■□■□■□
                    (ILOウェブサイト新着情報等より)
◆◇事務局長官房◇◆
★国際協同組合デー(7月第1土曜日)
 毎年7月第1土曜日は、国際協同組合同盟(ICA)の国際協同組合デー(国連で
は協同組合の国際デーと称しています)ですが、今年の国際デーを祝し、ソマビアI
LO事務局長は2005年が国際マイクロクレジット年であることに鑑み、協同組合と金
融サービスのつながり、そして貧困削減に向けた効果的な戦略におけるその役割に焦
点を当てた声明を発表しました。

国際協同組合デーに際しての事務局長声明原文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/dgo/speeches/somavia/2005/cooperating.pdf

◆◇出版局◇◆
★7月の新刊
 仕事と家庭責任の両立、使用者団体と男女平等好事例集、世界の労働時間法など、
7月のILO新刊書が紹介されています。

7月の新刊(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/support/publ/intro/

★ILOの論文集「International Labour Review」最新号:2005年第1号(電子
版年間購読料75スイスフラン・季刊)
 [目次]◇労働法と新しい会社組織形態◇平和の経済学:パレスチナの経済及び労働
市場の動向と展望◇保守的マクロ経済政策の回避:成長、雇用、貧困削減に向けた政
策枠組み◇失業、仕事の質、貧困:ブルガリアの事例研究。

International Labour Review 2005年第1号概要(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/support/publ/revue/sommaire/144-1.htm

◆◇社会対話・労働法・労働行政国際重点計画◇◆
★カンボジア衣料産業労働条件第11次総合報告書
 カンボジアにおける衣料工場の労働条件を調べ、生産性向上を支援するILOの
「カンボジアのより良い工場」プロジェクト(旧衣料産業労働条件向上プロジェクト)
に基づき、強制労働、児童労働、差別待遇など50の衣料工場の労働条件の調査結果を
まとめた報告書最新版。2001年に第1次報告書が出された後、過去10冊が発行されて
います。

カンボジア衣料産業労働条件第11次総合報告書(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/ifpdial/publ/cambodia11.pdf

◆◇労働安全衛生・環境国際重点計画◇◆
★労働監督リンク集
 2005年6月13〜15日に労働監督国際協会(IALI)の第11回大会がジュネーブの
ILO本部を会場に開催されたのを機に、今年採択された林業における労働監督指針、
ILOの労働監督関連活動や関連基準の紹介、各種会議報告書、関連出版物等へのリ
ンク集が作成されました。

労働監督リンク集(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/labinsp/index.htm

◆◇アジア太平洋総局◇◆
★2005年6月24日付新聞発表:スマトラ沖地震・津波復興支援活動
 2004年12月26日に発生した地震・津波の結果、アジア沿岸部の被災地では100万人
を超える人々が生計を得る能力を失ったと推計されています。新聞発表では、災害か
ら半年経った現在、ILOが地域で展開している被災者の雇用と生計手段の回復支援
に向けた大規模な所得創出・社会保護整備活動を紹介します。
 ILOのホームページ上には津波復興支援活動をまとめたリンク集もあります。I
LO広報誌「World of Work」最新号でもILOの津波復興支援活動を特集していま
す。

アジア太平洋総局新聞発表(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/region/asro/bangkok/public/releases/yr2005/pr05_17.htm
津波復興支援リンク集(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/event/tsunami/index.htm
津波復興支援リンク集(日本語)----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/tc/tsunami.htm
World of Work 2005年4月号(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/magazine/printed/index.htm

◆◇コミュニケーション・広報局◇◆
 ILOの活動に関わる広報記事が随時掲載されています。最新の記事には次のよう
なものがあります。
★広報記事:インフォーマル経済情報展
 今年のILO総会の会期中に、ジュネーブのILO本部では2002年の総会で一般討
議が行われたインフォーマル経済に関する情報展が開かれ、各地で実施されているI
LOの関連事業から得られた具体的な成果や好事例等の展示、ILOのインフォーマ
ル経済資料データベースの紹介、パネル討議等が行われました。記事ではこの模様を
紹介しています。

広報記事:インフォーマル経済情報展(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/ilc_knowledge.htm
インフォーマル経済資料データベース(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/employment/infeco/index.htm

★広報記事:社会保障の再考
 1981年に大規模な年金改革を行ったチリを筆頭に、この10年、多くの中南米諸国が
個人貯蓄に依存する年金制度を導入してきました。この変化を見守ってきたILOの
上級社会保障専門家が私的年金に対する賛否両論について語ります。

広報記事:社会保障の再考(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/socsecu_latin.htm
社会保障財務数理統計部(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/socfas/index.htm

★国連ミレニアム開発目標2005年報告書
 国連がこの度発表したミレニアム開発目標の進展状況に関する報告書は、極端な貧
困の半減や万人に対する初等教育の達成といった8つの目標の達成度合いを48の指標
を用いて報告しています。ILOも非農業部門における女性賃金労働者の割合(指標
11)、若者の失業率(指標45)といった指標の作成に協力しています。

ミレニアム開発目標2005年報告書−国連サイト(英語)----->
http://unstats.un.org/unsd/mi/pdf/MDG%20Book.pdf

□■□■□■ ト ピ ッ ク 解 説 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
 ILOの活動内容、仕事の世界に関係するトピックの解説を行っていきます。
 第37回は、今年の総会に報告書が提出されている労働時間です。

◆◇労働時間(working time)◇◆
★労働時間に関する国際労働基準
 純粋に労働時間に関するものに加え、夜業、週休、有給休暇といった関連事項、そ
してパートタイム労働や家族的責任を有する労働者といった関連分野を扱ったものま
で含むと、ILOは労働時間の分野でこれまで条約31、議定書1、勧告25を採択して
います。条約と議定書は批准によってその国で効力を持つ法的文書ですが、勧告は指
針的な役割を有し、拘束力はありません。
 労働時間を扱った最初の条約は、ILOが1919年の第1回総会で採択した初めての
条約でもあります。労働時間(工業)条約と題するこの第1号条約は、工業における
労働時間を1日8時間、1週48時間に制限します。1930年には商業と事務所を対象に
同様の規定を定めた条約が、労働時間(商業及事務所)条約(第30号)として採択さ
れました。1935年に採択された40時間制条約(第47号)は週40時間原則を提唱するも
ので、この原則はその後、1962年に採択された労働時間短縮勧告(第116号)で段階
的に到達すべき社会的基準とされました。
 週休の分野では、工業労働者については1921年の週休(工業)条約(第14号)、商
業及び事務所で働く労働者については1957年の週休(商業及び事務所)条約(第106
号)で最低限の週休の権利が定められています。第14号条約と第106号条約はいずれ
も7日毎の中断されない24時間以上の週休を定めていますが、第106号条約と同時に
採択された同名の勧告(第103号)は36時間の週休を提案しています。
 年次有給休暇の分野では、1936年に初めて基準が制定されています。この有給休暇
条約(第52号)は勤続1年で6日間の年次有給休暇を与えられる権利を定めています
が、これは1970年に有給休暇条約(改正)(第132号)によって改正され、年次有給
休暇は1年の勤務につき3労働週を下回ってはならないと定められました。
 この他の関連基準として、1981年に採択された家族的責任を有する労働者勧告(第
165号)は労働時間の漸進的短縮と家族のいる労働者に対するより弾力的な労働時間
編成の導入を提案しています。また、1990年に採択された夜業条約(第171号)は夜
業労働者のキャリア開発の可能性の確保や家族的責任及び社会的責任の行使の促進を
目指し、幅広い保護措置を定めており、1994年に採択されたパートタイム労働条約
(第175号)は雇用条件や社会保障関連事項を中心に、パートタイム労働者の差別か
らの保護を規定することによって生産的で自由に選択されたパートタイム労働の推進
を目指しています。

★日本の労働時間法規
 日本では労働時間、休憩、休日、年次有給休暇に関する規定は、労働基準法第4章
に定められています。労働時間は原則1日8時間、週40時間となっていますが、1ヶ
月単位や1年単位で週労働時間を平均できる変形労働時間制やフレックスタイム制、
1日の労働時間を最大10時間とできる1週間単位の非定型的変形労働時間制や災害等
の場合の時間外労働などの特別規定や管理監督者などの適用除外も存在します。時間
外・休日労働の割増賃金率は25〜50%の範囲内で政令によって定める率以上、深夜労
働の割増賃金率は25%以上とされています。休憩時間は労働時間が6時間を超える場
合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上と規定されています。週休は1
日と規定されていますが、4週間の期間に4日以上の休日を与える使用者には適用さ
れないなど例外規定があります。年次有給休暇は6ヶ月継続勤務など所定の要件を満
たした労働者について10日間与えられ、20日間を上限に一定の割合で漸増することに
なっています。

★労働時間をめぐる最近の動向
 ILOは2004年に、先進国の労働時間と労働者の希望する労働時間について調べた
調査報告を発表しました。これによると人々が実際に働いている時間と働きたいと思っ
ている時間の間には大きな差があることが明らかになりました。大部分の欧州諸国で
は、2004年の拡大以前の欧州連合(EU)加盟国で、週の労働時間が50時間以上の労
働者の割合は、1.4%のオランダを最低に、ギリシャやアイルランドでも6.2%といっ
たように1割に満たないのに対し、米国とオーストラリアでは90年代後半にこの割合
が15%から20%に増え、2000年に日本では28.1%が週49時間以上、ニュージーラン
ドでは21.3%が週50時間以上働いているといったように2割以上になっています。
欧州諸国で唯一の例外は英国で、労働者の約15.5%が週に50時間以上働いていると
されています。調査報告書は米国、英国、オーストラリアといった労働時間の規制が
比較的緩い国で長時間労働が行われている傾向が高いと結論づけています。
 一方で、短時間労働の普及によって、生計を維持するのに十分な長さの仕事を見つ
けることがますます難しくなってきています。中には、健康保険や年金にも加入でき
ないといった悪条件のパートタイム労働やフルタイムの仕事が見つからないためやむ
を得ずパートで働くといったような非自発的な短時間労働も見られます。調査報告書
のデータによれば、米国では全労働者の半数が労働時間の短縮を、17%がもっと長く
働くことを希望しているとされています。EUでは、週労働時間が20時間未満の労働
者の46%がもっと長く働くことを、50時間以上の労働者の81%が短縮を希望している
とされます。
 先進国と途上国ではパターンが異なる可能性があるものの、全世界的に労働時間多
様化の傾向が見られ、多くの国で標準的な週労働時間から乖離した層が増え、標準的
な週労働時間の周辺にある労働者グループが減ってきています。先進国及び一部途上
国では、仕事の要請に応え、一部管理職と高学歴知識労働者の長時間労働が増えてき
ています。このような労働者は少なくとも給与の高さと相当の自己裁量権を伴う働き
方という点でグローバル化の恩恵を第一次的に受けている人々と言えます。これに対
して、途上国及び一部先進国では低賃金の低技能労働者がまともな収入を得るために
行う長時間労働も見られます。例えば、最近発表された中国の労働時間に関するIL
Oの調査研究は、低学歴労働者の方が高学歴労働者よりも長時間働く傾向があること
を見いだしました。北京における週平均労働時間は中卒者が60時間近くに達するのに
対し、大卒者は43時間であるとの調査結果が得られました。また、例えばセネガルに
おけるILOの調査結果が示したように、インフォーマル経済における労働者の労働
時間は休日でも関係なく仕事量に左右されます。
 労働時間多様化のもう一つの側面は労働時間制に関わるものです。この傾向は先進
国に限定されず、ますます多くの企業が営業時間の延長や24時間操業体制を導入する
につれ、交替勤務や圧縮週労働時間のような異なった労働時間編成のもと、夜間、夕
刻、週末に働く労働者の割合が増えてきています。例えばチリではこういった労働者
が全体の約4分の1に達しています。
 その多くが途上国に外注されているコールセンターのような事業は、時間帯が異な
る顧客を相手に年中無休24時間体制で営業している場合があります。コールセンター
では労働時間は非常に予測がつかず、特にオペレーターが高い業績目標達成を求めら
れたり、電子的な監視を受けている場合は非常にストレスの大きな労働条件となり得
ます。
 非標準的な新しい労働時間形態は健康と安全、家族的責任とのバランスに否定的な
影響を与える場合がありますが、同時に、労働時間の短縮やより都合の良い労働時間
制を希望する労働者のニーズや生産性向上により良く対処する機会を形成するもので
もあります。労働市場制度がより体系的な支援を提供する場合、使用者と組合の双方
に便益をもたらす状況が形成される可能性があります。例えばブラジルのある金属加
工会社は労働協約に「時間銀行」の規定を設け、より長い期間で労働時間を平均する
制度を導入した結果、市場の需要に応える柔軟性が増すと共に通常時の週平均労働時
間が44時間から40時間に低下しました。
 競争の熾烈化に伴う圧力と、民営化、業務の下請け、外注、家内労働や臨時契約そ
の他の非典型的な雇用形態の活用といったそれに関連した現象は、全ての国に新たな
課題を提示しています。十分な結論を導くに足るデータはまだ集まっていませんが、
こういった変化が労働強度を高め、その結果、ストレス増やその他一連の心理社会的
リスクの原因になることが懸念されています。これは先進国、途上国を問わず、事故
や負傷、疾病、欠勤の主な原因となる可能性があります。労働時間が安全と健康に与
える影響を調べたILOの調査報告は、労働者の健康に最も重大な影響を与える要因
は長時間労働とある種の交替労働、特に労働時間の不規則な配分と夜間労働を伴うも
のであると指摘しています。報告書は、週の労働時間が常時48時間を上回ると重要な
ストレス原因となり、メンタルヘルス問題発生のリスクが非常に高まり、60時間を上
回ると心血管疾患の危険性が明らかに高まるとします。また、交替労働が心血管障害
や胃腸障害を引き起こすとの強い証拠も存在します。交替勤務労働者の睡眠障害も広
く報告されており、交替勤務が生殖障害を引き起こすとの証拠も幾つか存在します。
ILOでは第171号条約によって夜業を「午前0時から午前5時までを含む7時間以
上の継続する期間に遂行される全ての労働」と定義していますが、報告書は健康を損
なう危険性は夜間労働によってさらに高くなり、例えば、女性夜間労働者が乳ガンに
なる危険性が高いとしています。

★新しい形態の労働時間制
 ILOの条約では1日8時間、週48時間が標準的な労働時間編成となっていますが、
中国やガボンのように1日8時間、週40時間を標準とする国もあれば、ブラジルやメ
キシコのように1日8時間、週44時間とする国もあります。また、米国やスウェーデ
ンのように標準的な労働時間制が存在しない国もあります。こういった標準的な取り
決めと異なるものには次のようなものがあります。

<パートタイム労働(part-time work)>
 法規上は通常のフルタイム労働よりも短い労働時間で行われる労働を指し、多くの
国で見られます。統計上は特定の上限が用いられ、週30または35時間が一般的です。
米国を除くほとんどの先進国でこの20年間に就業者全体に占めるパートタイマーの比
率が1.25〜1.5倍に増えています。パートタイム労働者比率は特に女性で高く、また、
サービス産業と低技能労働者で高くなっています。

<圧縮週労働時間(compressed work-weeks)>
 これは短い労働日数で標準の週労働時間をこなす方法で、ベルギーや米国などで見
られます。通常は1日の労働時間が法定上限を超えない限り認められますが、例えば、
ポーランドのように1日最大12時間とする国もあれば、米国のように上限がない国も
あります。この労働時間制は石油産業や海運・航空産業など労働者の自宅と職場が遠
い産業でよく見られます。

<時差式労働時間制(staggered working-time arrangements)>
 労働者の始業・終業時刻が個人またはグループ単位で、通常と少し異なる労働時間
制で、カナダやスイス、米国などで見られます。休憩時間や昼食時間がずれている場
合もあります。一度決定されると固定される点でフレックスタイム制とは異なります。
日本の時差通勤制のように、通勤ラッシュの緩和や昼食時の混雑を避ける手段として
用いられています。

<日単位変動制交替勤務(variable daily shift lenghts)>
 交替勤務は病院や工場など24時間稼働の職場で一般的で、例えば2000年にEU労働
者の22%が従事していましたが、トルコや米国などのように、勤務時間が日によって
変わる交替労働制が法に規定されている国もあります。

<年単位変形労働時間制(annualized working hours)>
 ドイツやギリシャなどで見られるように、労働時間を週ではなく年単位で規定する
もので、通常の日及び週の最大労働時間が守られている限り残業手当を支払う必要は
ありません。これは季節的その他の需給調整手段や交替労働に関連して比較的最近登
場した制度で、国際的にはあまり普及していませんが、ある調査によれば、ドイツで
は全企業の28%、日本では36%で導入されているとされます。

<フレックスタイム制(flexitime)と時間貯蓄制(time banking schemes)>
 フレックスタイム制は日本やイタリアなどで見られますが、通常、全員勤務してい
ることが求められるコア勤務時間帯を含み、所定の平均労働時間が達成されれば、労
働者が労働時間を自由に決めることのできる制度です。時間貯蓄制とは、所定より長
く働いた分を貯蓄し、必要なときに引き出して勤務時間を短縮したり、長期の有給休
暇を取る際などに利用できる制度です。フレックスタイム制は70年代以降多くの先進
国で見られるかなり広く普及している制度で、対象者は米国やイギリス、日本などで
は労働者10人に1人に達しているとされます。時間貯蓄制はより新しい制度で、EU
諸国以外ではほとんど見られませんが、2001年のEU労働力調査によるとフィンラン
ドなど欧州6カ国では平均6%の社員がこの制度を用いているとされています。

<呼び出し勤務(on-call work)とゼロ時間労働契約(zero hours contracts)>
 呼び出し勤務とは、労働者が自宅や電話ですぐ呼び出せる場所で待機し、呼び出し
に応じて働く制度で、ドイツ、メキシコ、米国などで見られます。例えば、フィンラ
ンドでは待機時間の長さと頻度が労働者の自由時間を過度に乱さないとの条件の下、
自宅待機その他の呼び出しに応じる勤務体制を個々の労働者が企業と合意することが
できます。手待ち時間は労働時間に含まれませんが、取り決め合意事項の中に報酬に
関する事項も含む必要があり、待機時間の少なくとも半分は有給とするか通常の労働
時間内の自由時間に換算すべきとされています。これを進めたゼロ時間労働契約のも
とでは、労働者には最低労働時間の保障が与えられません。2001年のEU労働力調査
速報データによるとEU4カ国とスイスにおいて面談調査を受けた労働者の7%がこ
のような臨時労働に従事していると回答しています。米国の場合、1997年の調査によ
ると呼び出し勤務労働者が全雇用者の1.6%を占めるとされ、1996年に実施された事
業所調査では呼び出し勤務制を導入している企業は大規模事業所で27.3%にのぼると
されています。呼び出し勤務労働者を利用する理由として最も多く挙げられたのは予
期せぬ臨時の労働力需要への対応であり、このような臨時性は雇用の質の低さにも関
連するように見え、例えば、パートタイマーでは53.7%に有給休暇があるのに対し、
呼び出し勤務労働者ではこの割合は15.3%に過ぎないことが示されています。

<週末勤務(weekend work)>
 ILOの条約(第14号条約と第106号条約)では、労働者は7日毎に中断されない
24時間以上の休暇を取る権利があると規定し、この休日は可能な限り同一事業所の全
ての従業員に同時に与え、国の伝統や習慣に対応するものとするよう定めています。
週末勤務は通常の労働者の休日に行われる全ての労働を指します。日本や欧米ではこ
れは通常土日を意味しますが、アラブ諸国の大半では金曜であるなど、宗教や伝統、
風習によって異なります。週末勤務が許可されている多くの先進国で、週末勤務の場
合は通常、平日勤務の場合より高い割増手当が支払われています。EU労働力調査に
よれば、2000年にEU加盟15カ国の雇用者のうち男性の47%、女性の41%が土曜に、
男性の26.5%、女性の22.5%が日曜に働いているとされます。EU15カ国中、日曜
に働く人の割合が最も高いのはギリシャ、フィンランド、スウェーデンで、EU15カ
国全体としては1995〜2000年の期間に土日に働く人の割合は少し低下していますが、
サービス産業と販売業ではかなりの増加が報告されています。

<ワークシェアリング(work-sharing)とジョブシェアリング(job-sharing)>
 ワークシェアリングとは一時解雇の回避策や雇用増の手段として一定の仕事量をよ
り多くの労働者に割り振るために取られる労働時間短縮策です。たいていの場合、労
働時間の減少は賃金や給付の引き下げも伴い、労働市場政策の一環としてワークシェ
アリングを促進する国では、賃金補助金や失業手当のような社会給付で補填されるこ
ともあります。一方、ジョブシェアリングとは1人分のフルタイム職を2人の労働者
が担当し、使用者との取り決めに従い労働時間を分割する自主的な取り決めを指しま
す。ワークシェアリングを推進する背景には週労働時間短縮の運動があり、推進派は
労働時間の短縮が追加的な雇用を生むと主張し、反対派は新規に労働者を雇用するに
は追加的な費用が発生するため、労働時間の短縮は仕事量の変化をもたらすだけと主
張しています。1984〜89年のドイツの製造業について行われた2つの調査はどちらの
説も部分的に正しいことを示しています。週労働時間の1時間の短縮は時間給労働者
の雇用を0.3〜0.7%、給与労働者の雇用を0.2〜0.3%増大させましたが、高技能労
働者や管理職の場合は、サービス残業の増大によって労働時間の短縮分が完全に相殺
されていることが示されました。

<複数就業(multiple job-holding)>
 東欧移行経済諸国を中心に、生計水準の維持等を目的に複数の仕事をする人の数が
近年急増しているように見られます。ロシアでは5.6%(1992年)から10.1%(1996
年)と、90年代前半にほぼ倍増しました。一部先進国でも増えており、例えば、米国
では1979年からの10年間で雇用者の4.9%から6.2%に増大しました。増大の傾向は
女性に強く、複数の仕事をする女性は1979年には男性の6割に過ぎなかったのが、19
96年にはほぼ同数になっています。途上国のデータは少ないのですが、得られる情報
からかなりの割合に達していることが推測されます。例えば、ブラジルでは複数の仕
事をしている人の数が1992年には290万人であったものが1999年には340万人(総労
働力人口の5%)に増えたと推計されています。これらの労働者の主たる職場以外で
の労働時間は週平均21時間とされています。ネパールではこの割合はさらに高く、19
98〜99年で労働者の40%以上が複数の仕事をしているとされています。アルバイトの
職種は農業、漁業、そして初歩的な仕事に集中しています。

★ILOにおける取り組み
 ILO事務局内では労働時間関連事項は、社会保護総局に属する労働・雇用条件計
画(Conditions of Work and Employment Programme)が扱っています。ただし、
条約・勧告に関わる業務は国際労働基準局が分野にかかわらず一括して担当していま
す。労働・雇用条件計画では情報収集や調査研究を通じて、労働時間や作業組織に関
する知識基盤の構築に務め、蓄積された情報を元に実践的なツールを開発し、加盟国
政労使が全国レベルまたは職場レベルで労働時間や作業組織に関する政策・方針等を
開発・実施する際に要請に応じ、専門的な助言を提供するといった活動を行っていま
す。労働・雇用条件計画のホームページには、労働時間に関する各国・地域の法制デー
タベースなど、このような調査研究等の成果が多数掲載されています。

<総会での審議>
 今年の総会に提出された第1号条約と第30号条約に関する総合調査報告は、「固定
的労働時間から柔軟な労働時間へ?」と題し、両条約の内容に沿って、関連する各国
の法規、条約の適用状況、統計情報、最新の国際的な動き、条約未批准国からの批准
と実施の見込みに関する報告を記しています。両条約とも未批准の日本は、今回の調
査に対する回答で、労働基準法上、労使の書面による協定で、労働時間の上限を超え
ることが認められているため、労働時間の上限を定める条約の規定が批准の障害になっ
ていると報告しています。報告書は結論部分で、条約勧告適用専門家委員会の意見と
して、両条約の歴史的価値を十分評価しつつも、今の時代を反映していない硬直性が
あることを認め、改正に向けた提案を幾つか具体的に行っています。
 総会における審議は、この専門家委員会の見解を裏付けるようなものとなり、参加
者は第1号条約と第30号条約が今日でも適切であるとの意見を強く主張しながらも、
労働者の安全保障・健康・家族の生活の保護と、柔軟性の間のバランスを見つけるこ
との必要性や、この分野における規制的枠組み、団体交渉、社会対話の重要な役割を
強調しました。ILOでは審議の結果を理事会に提出し、フォローアップの方向を決
定することになります。将来の総会で一般討議の議題とするための指針を策定する政
労使三者構成の専門家会議開催の提案もなされました。

第93回ILO総会−総合調査報告書全文、審議模様等へのリンク(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/ilc/ilc93/index.htm
労働・雇用条件計画(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/condtrav/index.htm
関連広報記事:世界の労働時間−柔軟性と保護のバランス(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/ilc_workinghours.htm

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