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2005/12/28

ILO駐日事務所メールマガジン【No. 43】

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   ILO(国際労働機関)駐日事務所マガジン
    2005年12月28日号 No. 43

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:::::::::::<目  次>:::::::::::::::::::::
:《1》数字で見る国際労働基準(2005年12月1日現在)::::::::::::
:《2》ILO駐日代表雑記−締めくくりはジェンダーで...:::::::::
:《3》ILO駐日事務所お知らせ−駐日事務所再開設50周年記念事業 ほか:::
:《4》新刊紹介−最低賃金設定の基礎条件 ほか:::::::::::::::
:《5》ILO事務局ニュース−第2回船舶解体合同作業部会会合 ほか:::::
:《6》トピック解説−主要労働市場指標(KILM):::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

□■□■□■ 数字で見る国際労働基準 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
                           (2005年12月1日現在)
◇加盟国数..178            ◇日本の批准条約数.......47
◇条約の数..185(うち撤回5、棚上げ25)◇加盟国の平均批准条約数....41
◇勧告の数..195(うち撤回36)     ◇OECD諸国の平均批准条約数.72

□■□■□■ 堀内光子ILO駐日代表雑記 □■□■□■□■□■□■□■□■□

   ★ ☆ 最終号:締めくくりはジェンダーで... ☆ ★

 2003年7月から始めた雑記も今日で最後となりました。12月に退任し、1月1日か
ら新代表が長谷川真一に代わりますので、引き続きILOのご支援・ご指導を宜しく
お願い申し上げます。
 雑記を書いているときには、こうした貴重な機会を与えてもらっていることを十分
に感謝も実感せず、一度ぐらいはない知恵を絞ってちょっとしたことを書きたいと思っ
ていたのですが、常に時間に追われて駄記というのでしょうか、駄文ばかりだったこ
とをひどく反省しています。
 残念ながら最終稿も幾つか思いつくままに最近気にかかることを書いて締めくくり
たいというか、締めくくらざるを得ない状態です。
 まず第1に、全てについて変化のスピードがきわめて速いことです。ICTの発達
による情報社会の進展と深く関わっていると思います。そのため、少し先を見通せる
勘・知識を持って、いかに今柔軟に発想し、対応するかがきわめて重要になっている
と思います。個人レベルでも既に、働く人々にとってはエンプロイヤビリティ(就業
継続性)が大きな課題となっており、「エンパワーメント」が必要な時代です。
 第2に、ここ最近、日本で新しい形の人々の活動の活発化や拡大が見られ、良い形
の市民社会が形成されつつあることです。私の過去20年間は国連やILOでの仕事、
または国連機関を相手の仕事で、その大部分は海外での勤務でしたが、私が海外で仕
事を始めた80年代初め、あるいはそれより少し前の70年代終わりに、日本では様々な
エンパワーメントに結びつく市民社会組織が芽生えた時期でもありました。特に女性
たちのコミュニティレベル・地域レベルでの政治・経済活動の歴史が私の海外勤務の
歴史とも重なり、5年前に帰国してこのことを学べたのは大変有意義でした。女性た
ちが行っている市民社会組織活動が、今まできちんと認識・評価されていなかった事
実には愕然としますが、今後こうした地域というか、コミュニティの視点がグローバ
ル時代だからこそ重要になると思います。それにしても日本の女性たちのコミュニティ
でのパワーは素晴らしいと思います。
 第3にグローバル化の深化です。既にグローバル化といわれて久しいですが、グロー
バル化とは相互依存の世界であり、一国では生きてはいけない世界になったというこ
とです。日本で起きていることは世界で起きており、逆も真で、世界で起きているこ
とは日本でも起きています。結論を急げば、「社会問題」をグローバルな視点で捉え、
国内の状況にあった適切な対応が求められる時代になったと思います。労働市場の柔
軟化・非正規化が世界を席巻していますが、こうした問題への対応に伝統的な労働法
の修正だけでなく、それを越えた新しい枠組みが必要だと思います。
 最後に「ジェンダー」で締めくくりたいと思います。ジェンダーとは、男女の生物
学的差異を指すのではなく、社会的に構築された差異を意味するものです。したがっ
てジェンダー平等とは、男女が生物学的に同一になることを目指しているのではなく、
むしろ経験などの社会的に築かれたその違いに注目することです。ジェンダーについ
ては、2005年9月に開催された国連サミットでも主要課題であり、全国連機関はジェ
ンダーの主流化を、ジェンダー平等への戦略と位置づけ、進めています。最近の進歩
として、平和構築の場におけるジェンダーの取り組みが好事例です。このジェンダー
平等の核は、女性の人間としての尊厳の尊重であることを最後に申し上げたいと思い
ます。国際社会との仕事で、日本も含め、世界の多くの女性たちと友人になれたこと
が私の財産と思っています。
 長い間の皆さまのご指導、ご支援、ご協力大変有り難うございました。どうぞ良い
お年をお迎え下さい。
                         ILO駐日代表 堀内光子

□■□■□■ ILO駐日事務所お知らせ □■□■□■□■□■□■□■□■□■
◆◇ILO駐日事務所再開設50周年記念事業報告ページ開設◇◆
 ILO駐日事務所(旧ILO東京支局)は1923年に開設されましたが、1940年の日
本のILO脱退に伴い一時期閉鎖されました。日本は、第2次世界大戦後の1951年に
ILOに再加盟し、駐日事務所も1955年に再開設されました。ILO駐日事務所再開
設50周年に当たる今年、記念事業として9月にUNハウスにおいてILO歴史写真展
とシンポジウム「変化する仕事の世界とILOの現代的意義」を開催しました。シン
ポジウム講演者のスピーチ、写真展に寄せられたソマビアILO事務局長のメッセー
ジを掲載した記念事業報告ページを新設しました。

ILO駐日事務所再開設50周年記念事業報告ページ----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/2005tbo/index.htm

◆◇広報誌「ワールド・オブ・ワーク」2005年第2号発行◇◆
 ジュネーブのILO本部コミュニケーション・広報局より年3回発行されている広
報誌の一部記事の和訳と日本における関連記事を掲載した日本語版広報誌の最新号
(通巻第4号)が完成しました。本号では強制労働に関するILO新報告書を特集し
ています。また、ILO駐日事務所再開設50周年記念事業記事、ILOと日本略年表
も掲載されています。

ワールド・オブ・ワーク----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/newsletr/index.htm#wow
ワールド・オブ・ワーク(英語版)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/magazine/index.htm

◆◇近刊「日本における性的搾取を目的とした人身取引」◇◆
 ILO駐日事務所では現在、2004年12月に発表した英文報告書「Human trafficking 
for sexual exploitation in Japan」の日本語版を準備中です。英文報告書は日本
における性的搾取を目的とした人身取引の現状を、実際のケース、統計資料、国内外
の政策・対応といった観点から紹介したものですが、日本語版には新たに「人身取引
対策行動計画」発表からの1年を振り返る補章が加えられています。日本語版は準備
ができ次第、ILO駐日事務所のホームページ上で公開します。

英文報告書----->
http://www.ilo.org/public/english/region/asro/tokyo/downloads/r-japantrafficking.pdf

 ※PDFファイルをご覧になるためにはAdobe Readerが必要です。
  お持ちでない方は、こちらからダウンロードしてください。
  http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep2.html

★ILO駐日事務所からのお知らせは、What's Newページをご覧下さい----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm#information
★ILO会議・行事予定----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm

□■□■□■ 新 刊 紹 介 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
◆◇「最低賃金設定の基礎条件
   The fundamentals of minimum wage fixing」◇◆
   F. Eyraud, C. Saget著 英語 2005年刊 140pp. 3,000円

 本書は世界各国の法令を集めたILO労働・雇用条件オンライン・データベースを
基礎に、データベースに含まれる最低賃金に関する情報を分析・補足するものとして
出版されました。同じデータベースを基礎とするものとして、労働時間と母性保護に
関する書籍も別に発行されています。世界約100カ国の最低賃金設定の仕組みについ
て、設定の手続きを第1章で、設定の際に考慮される規準を第2章でまとめた後、後
半部分で経済・社会政策の手段としての最低賃金の実効性を検討しています。第3章
は「最低賃金と雇用」と題し、雇用状況に最低賃金が与える影響を検討し、幾つかの
状況の下では、最低賃金を引き上げても失業率の上昇はほとんどまたは全く見られな
いことを示します。第4章は「最低賃金と社会政策」と題し、最低賃金が低賃金労働
者と高賃金労働者間の賃金格差を縮小する可能性、最低賃金水準と貧困水準の比較、
最低賃金が貧困に与える直接的・間接的影響といった問題の検討を通じ、最低賃金の
社会的影響の測定を試みます。これまでほとんど研究されてこなかった分野として、
どんな賃金稼得者層(家事労働者、農業労働者等)が主要な法令の適用対象外となっ
ているかといった点や法が順守されない原因に関する分析も行われています。米ドル
表示と購買力平価による各国の最低賃金水準を示す表も添付されています。
 本書の基礎となっている労働・雇用条件データベースの最低賃金部門には、最低賃
金設定の手続きや協議機関などの設定メカニズム、対象範囲、賃金率設定に際し考慮
される規準、最低賃金の水準、改訂頻度、執行体制といった事項に関する世界約100
カ国の法令が収集されています。

労働・雇用条件データベース(英語)----->
http://www.ilo.org/travdatabase

書籍等購入方法----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/index.htm
駐日事務所資料室新着図書一覧(2005年11月分)----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/new.htm

★オンライン無料出版物★
◆◇「ゲームのルール:国際労働基準概説入門
   Rules of the game: 
   A brief introduction to International Labour Standards」◇◆
   英語 2005年刊 96pp.

 加盟国の政府、使用者、労働者の代表が出席するILO総会で採択されるILOの
国際労働基準(条約と勧告)は、今日のグローバル経済において社会正義を確保する
ための国際法の枠組みを確立しています。今までに採択された条約は185、勧告は195
にのぼり、結社の自由と団体交渉、児童労働、機会・待遇平等、三者協議、労働行政、
労働監督、職業訓練、社会政策、雇用政策、賃金、労働時間、労働安全衛生、社会保
障、母性保護、移民労働者、船員、漁船員、港湾労働者など働くことに関わる幅広い
分野をカバーしています。専門家以外の方々に国際労働基準を知ってもらう入門書と
して作られた本書は、強制労働、先住民・種族民など主な条約と勧告の分野別解説に
加え、国際労働基準の内容、仕組み、機能、そして結社の自由委員会や条約勧告適用
専門家委員会といった適用監視機構の仕組みを簡単に説明しています。
 条約・勧告の原文、批准国リスト、適用監視機構の各種報告書、ILO総会討議資
料・議事録など国際労働基準関連文書のほとんどはILO国際労働基準局のウェブサ
イトでご覧になれます。ILO駐日事務所のウェブサイトでも条約・勧告の日本語訳、
簡単な解説、日本の批准条約リストを掲載しています。

書籍本体(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/norm/download/resources/rulesofthegame.pdf
国際労働基準局(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/norm/index.htm
条約・勧告日本語訳----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/list.htm

□■□■□■ I L O 事 務 局 ニ ュ ー ス □■□■□■□■□■□
                    (ILOウェブサイト新着情報等より)
◆◇社会保障局◇◆
★途上国の社会健康保険国際会議(ベルリン・2005年12月5〜7日)
 毎年、世界全体で約1億人が保健医療費の負担によって貧困に陥ることを余儀なく
されています。ILOが、この度、ドイツ技術協力公社(GTZ)、世界保健機関
(WHO)と共催した標記の会議には、40カ国より200人を超える参加者があり、病
気が家計に与える影響から人々を保護する方法について話し合いました。会議は2004
年に達成された社会保護分野における共通活動に関する合意を受けて開かれる初の国
際会議です。ILOでは、社会的排除と貧困に対する闘いの中で、社会健康保険に焦
点を当てています。会議では、全ての人の健康保護は国家的関心事項であるとの認識
がますます高まってきていることが感じられました。ILOは会議に、WHO、経済
協力開発機構(OECD)と共同で実施した社会的健康保護の影響に関する比較研究
を提出し、貧困と社会的健康保護のつながりを示しました。会議のホームページから
は、この他にも途上国における社会保護及び社会保障制度の推進など各種の背景文書
及び会議発表文書をご覧になることができます。

途上国の社会健康保険国際会議(英語)----->
http://www.shi-conference.de/index.html
関連広報記事(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/berlin.htm

◆◇労働安全衛生・環境国際計画◇◆
★第2回船舶解体合同作業部会会合(ジュネーブ・2005年12月12〜14日)

 船舶解体に関する各組織の活動が重複せず、相互に支え合うものとなることを確保
するため、船舶解体に関わる事業計画や活動の協議、調整、協力の場として設置され
た、ILO、国際海事機関(IMO)、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処
分の規制に関するバーゼル条約」事務局から構成される合同作業部会の第2回会合が
標記の日程で開かれました。シングルハル(一重船体)タンカーの段階的廃船スケ
ジュールを前倒しし、そのようなタンカーが重質油を輸送することを禁じるIMOの
改正文書の発効に伴い、船舶解体における健康、安全、環境問題への取り組みが急務
になってきています。解体される船舶は、アスベスト、重金属、炭化水素、オゾン減
少物質といった環境に有害な物質を含む場合があり、船舶解体労働者の労働・環境条
件も懸念されています。2005年12月2日に閉幕したIMO総会では、船舶解体に関し、
法的拘束力のある文書の開発を求める決議が採択されています。作業部会はこのプロ
セスに関わっていくことが期待されていますが、今回の第2回会合では、国家間の事
前情報提供に基づく船舶解体同意についての経験など3機関に直接関係する事項に関
する初めての実質的な討議が行われました。この他に、3機関それぞれが有する船舶
解体に関わる指針の実行推進、内容検討、共同技術協力活動といった諸活動の進展状
況に関する話し合いも行われました。合同作業部会では相互の会議招聘、相互の指針
情報提供が提案されると共に、各国政府に対して関連活動についての情報提供を呼び
かけました。
 労働安全衛生・環境国際計画の船舶解体に関するホームページには、2005年2月に
開催された第1回会合の報告書や、ILOの船舶解体における安全衛生指針(アジア
諸国及びトルコ対象)を初めとする各機関の指針や関連情報が掲載されています。第
2回会合の報告書も準備ができ次第、掲載される予定です。

労働安全衛生・環境国際計画船舶解体情報ページ(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/sectors/shipbrk/index.htm
関連広報記事(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/news/2005/shipscrapping.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/news/2005/shiprecycling.htm

◆◇アフリカ総局◇◆
★アディスアベバへ移転
 ILOアフリカ総局はこれまでアビジャン(コートジボワール)に所在していまし
たが、コートジボワールの政情不安に伴う治安悪化により、2005年9月7日にエチオ
ピア政府と新受入国協定を結び、既に東アフリカ準地域総局が所在している同国アディ
スアベバに総局を移転することとなりました。アフリカ総局の機能は2006年1月1日
より全面的にアディスアベバに移行しますが、ILOでは技術協力計画の充実を通じ
て、アビジャンにおける存在を継続していく予定です。

◆◇出版局◇◆
★ILOの論文集「International Labour Review」最新号:2005年第3号(電子版
年間購読料75スイスフラン・季刊)
 [目次]◇ILOの基準設定と監視活動:法的問題と実践経験◇ロシア連邦の新労働
法◇安定雇用労働力は生産性に利するか。

International Labour Review 2005年第3号概要(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/support/publ/revue/sommaire/144-3.htm

□■□■□■ ト ピ ッ ク 解 説 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
 ILOの活動内容、仕事の世界に関係するトピックの解説を行っていきます。
 第43回は、12月初めに最新版が発行されたILOの統計資料「KILM(主要労働
市場指標)」です。

◆◇主要労働市場指標(KILM - Key Indicators of the Labour Market)◇◆
★KILMとは
 労働市場に関する後述の20の主要指標について国別データを掲載した英仏西3カ国
語による包括的な有料データベースであるKILMは、労働市場の機能を監視・評価
する手段として政策関係者や研究者の方々を中心に利用されています。印刷物と電子
ファイル(CD−ROM)の形態があり、1980年以降入手できる最新の年までのデー
タが収録されています(印刷物の場合は5年刻みで表示)。1999年の初版発行後、ほ
ぼ隔年毎に改訂を繰り返し、今年12月に第4版のCD−ROM版が定価70スイスフラ
ン(円価格7,000円)で発行されました(印刷物は2006年4月刊行予定)。CD−R
OMには、データの自動アップデート機能もついています。
 KILMは、1)労働市場に関わる中核的な指標集合を提示し、2)新しい雇用情
勢を監視するため、それらの指標の入手可能性を改善することを主たる目的として設
計されています。含まれる指標の内容も、最初、経済協力開発機構(OECD)や複
数国の統計局の代表らと協議の上、決定されました。
 KILMは多様な目的に用いることができます。例えば、1)労働市場の機能に関
わる多くの事項を監視・評価する手段として、2)ILOが21世紀の活動目標とする
ディーセント・ワーク(人間らしい、まともな仕事)に関わる問題点の多くを評価す
る手段として、3)国連が2000年に採択したミレニアム開発目標の進展度合いを計測
する手段として、4)ほとんどのKILM指標が男女別で提供されているため、労働
市場における平等性の度合いを分析する手段として、5)グローバル化に関わる雇用
の動きを監視する手段として、6)男女賃金格差がない国や失業率低下に成功してい
る国の把握など、好事例・成功例を把握する手段として用いることができます。

★ILOの労働統計活動
 ILOは創立年の1919年に、憲章に規定されている国際労働事務局の任務である
「労働者の生活状態及び労働条件の国際的調整に関するすべての事項についての資料
の収集及び配布」のため、事務局内に統計課(現在は局)を設置しました。その後、
80年以上にわたり、統計局は国際基準の設定や技術支援の提供を通じて、必要不可欠
な労働統計を収集し、使用するILO加盟国の機能の向上を支援すると共に、これら
の統計の編纂、分析、頒布を続けてきました。
 ILO統計局は国連システムの中で労働統計のフォーカル・ポイントの地位を占め
ています。50年代初めから、世界銀行、OECD、欧州連合(EU)など他の国際機
関の統計局とも密接な協力を保っています。
 統計局は1921年から、世界各国より働く人々の特徴、労働条件や生活状態を表す労
働統計を収集し、その頒布に努めてきました。このデータは1935年から「Yearbook 
of Labour Statistics」と題する出版物の形態で毎年発行されています。1955年か
らこの書籍の英和対訳版が(財)日本ILO協会より「国際労働経済統計年鑑」の邦題
で発行されています。このデータは現在、インターネット上のILO統計局のウェブ
ページより無料で閲覧・ダウンロードできるようになっています。
 年鑑とKILMの違いは、その範囲と内容にあります。年鑑は各国から提供された
労働統計をそのまま転載しているのに対し、KILMは他により正確なものがあると
考える場合、またはより完全で国際比較に適していると考える場合、他のデータソー
スのデータで補足しています。つまり、KILMは時間的な推移を追ったり、国際間
の比較を行うのにより適したデータを提供するよう努めています。範囲の点からいう
と、例えば、年鑑にはKILMに含まれていないストライキやロックアウトに関する
データがあるのに対し、KILMにあって年鑑にないデータとして、労働生産性や労
働時間から見た不完全就業率といった指標をあげることができます。KILMはまた
帰属推計を出し、それを実データと組み合わせて雇用弾性値や貧困労働者率といった
新しい指標を導いてもいます。

★KILMの20の指標
1.労働力率
 一国の生産年齢人口(生産活動ができる年齢の人々。国によって異なり、日本の場
合は15歳以上)に占める労働力(現に働いているか、仕事を探しているといった形で
労働市場に積極的に関わっている人々)の割合で、財やサービスの生産に従事できる
労働者をどれだけ供給できるかといった相対的な規模を示すものです。KILM第4
版では各国から寄せられたデータをそのまま掲載する表の他に、国毎のデータの違い
を調整した年齢別・性別労働力率、労働力人口、総人口の数値も示されています。

2.就業率
 一国の生産年齢人口に占める就業者(働いている人)の割合で、国の雇用創出力を
示すものです。これが低いと、失業しているか、非労働力化している人が多く、市場
関連活動に直接関わっていない人が多いことを意味します。

3.従業上の地位
 就業者をa)賃金または給与をもらって生活している労働者、b)自営業者、c)家族従
業者(事業主の家族である労働者)の三つに分類し、合計就業者数に占めるそれぞれ
の割合を出したもので、労働市場の変遷と国の発展度合いを理解する助けになります。
例えば、国の成長が進むと典型的に農業から工業・サービス業へと雇用がシフトし、
それに伴い賃金・給与労働者が増大し、自営業者や以前は農業に従事していた家族従
業者は減っていきます。

4.産業別就業人口
 農業、工業、サービス業の三大産業別に合計就業者数に占めるそれぞれの就業者数
の割合を示すもので、国際産業標準分類(ISIC)の大分類レベルまで分類が行わ
れています。産業間における雇用流動は、例えば、産業内における生産性の伸びを低
生産性部門から高生産性部門へと向かう産業間移動に伴う伸びと区別する必要がある
生産性の傾向分析に際して重要です。

5.パートタイム労働者
 これはフルタイム労働者よりも働く時間が短い労働者に関する指標です。フルタイ
ムとなる最低週労働時間に関する国際的に合意された定義がないため、フルタイムと
パートタイムの区別については、主に各国独自の規準が用いられています。KILM
第4版では、合計就業者数に占める合計パートタイム労働者比率とパートタイム労働
者に占める女性の割合が示されています。

6.労働時間
 労働時間は労働者の健康や福祉だけでなく、事業所の生産性水準や労働費用にも影
響を与えるため、労働時間の程度や動向を計測することは、労働条件や生活状態の監
視のみならず経済発展を分析するにも重要です。KILM第4版では、20時間未満や
40時間超などといった週労働時間別の就業者比率と労働者1人当たりの年平均労働時
間数といった二つの数値を示しています。

7.インフォーマル経済就労者
 第15回国際労働統計家会議は、インフォーマル・セクターを「世帯保有の非法人企
業内における生産単位」と定義しています。インフォーマル経済就労者には、所定の
基準期間中にこの定義を満たす一つ以上の生産単位で働いた全ての人が含まれます。

8.失業
 第13回国際労働統計家会議は、失業者を「基準期間中に、働いておらず、現在働く
ことができ、仕事を探している特定年齢以上の人口」と定義しています。したがって、
失業率とは積極的に仕事を探している失業者が労働力人口に占める割合を示すもので
す。

9.若年者失業
 この指標では、若年者を15〜24歳の若者と定義しています。KILM第4版では、
若年者失業率、25歳以上失業率と若年者失業率の比率、合計失業者数に占める若者の
割合、若者人口に占める若者失業者数の割合の四つの数値が示されています。この指
標は四つ同時に用いないと誤ったイメージを伝えることになりかねません。例えば、
ある国の25歳以上失業率に対する若年者失業率の比率が高くても、失業者全体に占め
る若者の割合は低いかもしれません。若者人口に占める若者失業者数の割合を示すの
は、若者の多くが労働力外から新たに失業者に加わっている事実を認識してのことで
す。

10.長期失業
 失業給付がない場合や受給期間が終了してしまった場合など特に、1年以上の長期
失業は家計にとって大きな問題となる可能性があります。この指標は1年以上の長期
失業について、労働力に占める1年以上失業者の割合と合計失業者数に占める1年以
上失業者の割合を示しています。途上国では、失業補償がないことやほとんどの人が
長期間働かない状態でいるには耐えられないといった生活事情から失業期間は短くな
る傾向があり、長期失業は一般に重要な指標と考えられておらず、したがって、この
指標について得られるほとんどの情報は先進国からのものです。

11.教育水準別失業
 この指標は、初等、中等、高等教育水準などといった五つの最終学歴別に合計失業
者数に占めるそれぞれの分類に該当する人々の割合を示します。この指標は失業者の
重要な特徴を識別し、失業しやすい労働者の集団を把握する助けになります。

12.労働時間に基づく不完全就業率
 不完全就業は労働者の生産能力が十分に活用されていないことを反映しています。
今のところ、労働力の不十分な活用を示す代理指標として、国際社会で合意され、適
切に定義されている不完全就業の唯一の要素は、労働時間をもとにした不完全就業で
す。1982年に開かれた第13回国際労働統計家会議で採択された後、1998年の第16回会
議で改正された労働時間に基づく不完全就業者の定義には「本人が従事したいと希望
し、従事することのできる代替的な雇用状況に比してその労働時間が不十分な全ての
就業者」が含まれます。KILM第4版では労働力と総就業者数のそれぞれに占める
労働時間に基づく不完全就業者の割合が示されています。

13.非労働力率
 非労働力率とは、現に働いてもいないし、仕事を探してもいない人(つまり、労働
力でない人々)の人口に占める割合と定義されます。KILM第4版では年齢集団別
の非労働力率を示しています。女性の非労働力率は特に、その国の社会風習や働く女
性に対する姿勢、家族構造一般を示すものになっています。

14.教育水準及び非識字率
 労働力の技能水準は、労働市場の成績と国の競争力のますます重要な側面になって
きています。現在、技能水準を表す指標として得られる最善のものは教育水準に関す
る情報です。KILM第4版では労働力と全人口の教育水準と成人の非識字率が示さ
れています。

15.製造業の賃金指数
及び
16.職業別賃金率・賃金収入指数
 一般的な勤労所得の水準を測定するものとして、賃金は広く用いられています。指
標15は、産業レベルにおける実質賃金を含む平均賃金の推移を示すのに対し、指標16
は溶接工、職業看護婦など特定職業における賃金率(労働時間など単位当たりの基礎
報酬額)・賃金収入(総報酬額)の推移と格差を明らかにします。指標16では、19の
職種について名目及び実質で賃金率と賃金収入を指数表示しています。ある産業内に
おける平均賃金の変化は賃金率や賃金収入の水準だけでなく、職種構成の変化や男女
就労比率の変化に基づく可能性もありますが、職業別に賃金を見ていくことによって
幅広い平均値を用いることに関連した制約の一部を回避することができます。

17.時間当たり報酬費用
 賃金・給与の総報酬額に加え、年金・社会保障の企業負担分など、企業が従業員を
雇用するのに関連して支払う費用の合計を労働費用と呼びます。報酬費用とはこのI
LOの定義する労働費用の定義から、募集費、訓練費、法定外福利費などを除いたも
のを指します。KILM第4版では、市場為替レートによる米ドル表示の製造業生産
労働者の時間当たり報酬費用、指数表示による各国の米国に対する相対的な位置の表
示、合計報酬費用に占める賃金外労働費用の割合、そして1980〜2003年の期間を対象
とした合計報酬費用の年変化率が示されています。これは国際競争力を示す一つの要
素で、この指標だけを単独で用いると誤った解釈を招く場合がありますが、指標18の
ような他の指標と一緒に用いると相対的な変化が競争力の推移を評価する助けになり
ます。

18.労働生産性と単位労働費用
 この指標は指標17と組み合わせると労働市場の国際競争力を評価することができま
す。労働生産性とは投入した労働単位量当たりの産出量、単位労働費用とは逆に産出
単位量当たりの労働費用と定義されています。KILM第4版では、この数値を経済
全体と製造業、運輸、通信、小売・卸売業、農林漁業の産業別に示しています。国や
産業の経済成長は雇用増による場合と就業者の作業効率の改善による場合があり、労
働生産性のデータは後者を説明するものとなります。

19.雇用弾性値
 経済生産の伸びに伴いどれだけ雇用が成長するか、つまり、1ポイントの経済成長
に対する雇用量の伸び率を示すもので、経済成長と雇用成長の推移を見る有用な手段
となります。KILM第4版では、90年代前・後半、99〜2003年の三つの期間におけ
る合計経済成長1ポイント当たりに対する雇用の男女別変化量と、農業、工業、サー
ビス業の各産業内における付加価値1ポイント当たりの変化に対する就業者数の変化
をそれぞれ示しています。

20.貧困、貧困労働者、所得分布
 最低限の生活水準を維持できるだけの収入がないとき貧困が生じますが、貧困を定
義する上で用いられる最低限の基本的ニーズの内容は国によって異なるため、KIL
M第4版では各国独自の貧困率に加え、世界銀行が定めている1日1人当たり1ドル
及び2ドルの国際貧困線に関連したデータ、所得または支出に基づく不平等度を示す
ジニ係数、そして今回初めて貧困労働者(貧困線以下の世帯に属する就業者の割合)
の推計も示されています。

★KILM第4版の新しい特徴
 KILM第4版から、指標1、2、4、8、9、13、19、20について、世界全体の
推計と地域別の推計が出されています。また、電子データの自動アップデート機能も
追加されました。この他にも新しい指標(19)の追加や比較可能性の向上といった指
標面の改善、全国データ以外を隔離できる機能や系列の中断をなくすためのデータの
整理などといった国別比較機能の改善、EU新規加盟国を「移行経済諸国」から「先
進経済諸国とEU」の分類に移動し、それ以外の旧移行経済諸国を「中・東欧(非E
U加盟国)及びCIS(独立国家共同体)諸国」に分類するなどといった地域分類の
改善などの新しい試みが幾つかなされています。

★KILM第4版が示す世界の労働市場の主要動向
 KILM第4版は、世界の経済成長は貧困減少につながるより多くのより良い雇用
にますます転換されなくなってきているとし、この世界的な傾向の中で、雇用創出、
生産性、賃金改善、貧困減少の点から見た地域の状況は多様であるとしています。本
書が示す労働市場の動向には以下のようなものがあります。

<労働力率(指標1)>
 依然女性は生産性が低く、低賃金のパートタイム雇用に従事する割合が高いものの、
中・高所得国を中心に、生産年齢の中心を占める25〜54歳の年代の女性の労働力率は
過去20年間上昇を続けてきました。しかし、15歳以上の全生産年齢人口で見ると、学
問に従事する若者が増えたことを主な原因として、世界全体における女性の労働力率
は2004年(52.5%)には10年前の1994年(53.2%)より低下しました。
 男女間の労働力率の差が最も大きいのは中東と北アフリカで、10年間で幾分改善し
たものの、2004年現在で男性の労働力率は女性の労働力率を約48ポイント上回ってい
ます。

<雇用(指標2、3、4)>
 国別の状況にはばらつきがあり、結論を出すのは難しいものの、地域集計からは女
性の就業率が歴史的に低かった幾つかの地域でゆっくりとした進歩が示されています。
しかしながら依然、先進国(2004年現在で男性の就業率が女性の就業率を16ポイント
上回る)と、中東・北アフリカ・南アジア(同40ポイント)及び中南米・カリブ(同
約30ポイント)とでは男女間就業率格差に大きな開きがあります。
 ほとんどの先進国で大部分の労働者が賃金・給与労働者であるのに対し、サハラ以
南アフリカとアジアの途上国では依然、大半が自営業者や家族従業者として働いてい
ます。
 先進国で自営業者が増加している証拠はほとんどなく、KILMに含まれる全ての
国において、1980〜2003年の期間に合計就業者に占める自営業者の割合は長期的な低
下傾向を示していますが、イタリアだけは例外でほぼ横ばいです。
 世界の総就業人口の43%が農業に従事していますが、サービス業は過去10年に急成
長を示しています。データのある全ての先進国で産業別就業人口の首位はサービス業
が占め、ついで工業、そして農業は通常1割未満となっています。

<労働時間(指標5、6、12)>
 先進国では女性の就業率とパートタイム雇用の間に正の相関関係があり、これはパー
トタイム労働の機会の拡充が女性の労働力化を促していることを意味する可能性があ
ります。中南米諸国ではパートタイム就業者に占める女性の割合が比較的低い事実か
ら示されるように、パートタイム労働が男女ともに一般的ですが、他方、ボリビア、
エルサルバドルなどでは定期的に週50時間を超えて働く人の割合が労働力の4分の1
に達しています。
 得られるデータから欧州諸国では年平均労働時間がわずかに低下したことが示され
ています。例外はギリシャで過去20年間にわたってほとんど変わっていません。2004
年に10年前に比べて年平均労働時間が最も減ったのはアイルランド(10%減)で、デ
ンマークとポルトガルがこれに続きます(3%減)。
 失業率と不完全就業率を合わせると労働力の生産潜在力不完全活用の度合いを評価
する一つの手段になります。フランスとイタリアではこの数値が2004年に21%に達し
ました(1994年にはフランス17%、イタリア12%)。

<失業(指標8、9、11)>
 統計収集目的での失業の国際的な定義は、基準となる週の間に1時間以上働いてい
ないというものです。これは定職や定期的な収入はなくても何らかの生計を得る手段
を探さなくてはならない途上国の労働者の多くが失業者の範疇に入らないことを意味
します。この点に留意しながら得られた情報を見ると、失業率については世界的に大
きなばらつきがあります。国別データで見るとどの地域も失業率が5%未満と低い国
が圧倒的で、失業率が高い国は中・東欧(EU非加盟国)とCIS、そして中南米・
カリブに集中しています。
 世界全体の失業率は2004年に前年の6.5%から6.3%に低下し、世界経済が急成長し
た過去3年間に観測された失業率の低下傾向が確認されています。
 若者の失業率は世界中どこでも25歳以上失業率よりも高く、2倍以上になっていま
す。
 失業者の分布は、少なくとも先進国で見た場合、低学歴者に集中しています。2003
年にデータが得られる先進国で初等教育の学歴しかない人は高等教育を受けた人の少
なくとも3倍は失業の可能性が高くなっていました。

教育、非識字率(指標14)>
 男女ともに労働力に占める割合は中等教育水準の人が一番多く、次いで初等教育
準となっていますが、労働力の教育水準向上を示す明確な傾向があります。データの
ある諸国の大半で、25歳以上の非識字率が若者の非識字率を上回っています。これは
若者の識字率が高まり、したがって、両親世代よりもより高い技能基盤を獲得してい
るというプラスの動向を推測させます。
 25歳以上女性の非識字率が男性より25ポイント以上も高い国は、アンゴラ、モロッ
コ、イエメンなど9カ国あります。この傾向は格差を縮小しつつも若者世代でも続い
ており、若者の非識字率における男女間格差が25ポイントを超えている国はベニン、
チャドなど5カ国見られます。

<賃金(指標16)>
 専門の訓練、高い技能・教育水準、そして主としてサービス産業に属する職種(例
えば、会計士、コンピュータ・プログラマーなど)はより低技能の職種(例えば、肉
体労働者、食料雑貨店の店員など)よりも賃金水準が相当高いことが示されています。
高技能職種は賃金が高いだけでなく、全世界的に、90年代を通じて低技能職種よりも
高い賃金の伸びを示しています。先進国における賃金不平等の拡大は主として供給不
足に陥っている高技能労働者に対する需要の拡大と低学歴労働者に対する需要減が原
因とされます。これより影響力は小さいものの他の説明要因としては、途上国との貿
易拡大や低技能労働者の流入拡大が挙げられます。途上国における賃金不平等の拡大
に影響する要因としては、特定産業の労働者を優遇する貿易政策、一般的に賃金が低
く、労働条件も低いインフォーマル経済の拡大、そして高技能労働者の不足が挙げら
れます。

<生産性、単位労働費用(指標18)>
 就業者1人当たりの付加価値で計測した労働生産性水準が一番高いのは依然として
米国で、1980年以降格差が徐々に縮まってきているアイルランドを除き、ほとんどの
先進国との生産性格差は依然広がり続けています。ただし、労働時間当たりの付加価
値で計測するとベルギー、フランス、ルクセンブルク、ノルウェーの4カ国が米国よ
り高くなります。
 2001年以降、米国の生産性は多くの先進国を上回る速度で伸び、米国の一人当たり
付加価値水準は63,000ドル強になっています。生産性の伸びが最大だったのはアジ
ア太平洋諸国ですが、この水準はまだ他の先進国をはるかに下回っています。EUは
新加盟国の特に強い伸びに支えられ、EU経済全体としての労働生産性は1980〜2003
年の期間に平均で米国よりも少し速い速度で成長しましたが、他の地域では80年代以
降、生産性の伸びはあまり高くありません。
 一部新EU加盟国(チェコ、ハンガリー、ポーランド)では生産性水準と労働報酬
が米国及びEU15カ国よりもはるかに低くなっています。その上、比較賃金水準が比
較生産性水準より低いため、単位労働費用レベルで見ると新EU加盟国は米国の7割
近くと相当の優位を示しています。2000年以降は幾分逆転傾向が見られますが、これ
らの国の通貨が対ドルで安いことも競争上有利に作用しています。EU15カ国の対米
競争力を脅かしている要因は高い労働費用よりも製造業の生産性低下とユーロ高にあ
ります。
 日本の製造業の単位労働費用の水準は米国だけでなく、EU15カ国と比べても高かっ
たものの、日本の賃金の伸びが鈍化したこと、2005年の円安ドル高傾向、そして製造
業の比較生産性向上によって、90年代半ばからこの差は縮小してきています。
 韓国の労働生産性は対米比で急上昇を示していますが、90年代初めの急激な賃上げ
によって単位労働費用も高くなっています。
 メキシコでは生産性の伸びが低下したものの労働報酬水準が低いため、単位労働費
用は米国よりも依然低いままです。

<雇用弾性値(指標19)>
 近年、経済成長が自動的に新規雇用に転換されない傾向が強まってきています。雇
用弾性値から見ると国内総生産(GDP)が1ポイント成長する毎に世界の雇用は19
95〜99年には合計0.38ポイント伸びていたのに対し、1999〜2003年には0.3ポイント
に低下しました。
 1991年から2003年にかけて、サービス業は産出量の点で最も高成長産業であったと
同時に最も高い雇用弾性値を示した産業でもありました。サービス産業では付加価値
が1ポイント伸びる毎に雇用量は0.57ポイント増加しました。
 1999〜2003年に北米では経済成長率が急落したものの、雇用の経済成長に対する弾
性値は、1991〜95年の3分の1未満となり、失業者数は300万人以上増えました。西
欧ではほとんど逆の動きが見られ、1999〜2003年の雇用弾性値はそれ以前の時期より
も高く、失業率は1ポイント減となりました。しかし、西欧では低経済成長が期間後
半に雇用や生産性の伸びに影響し始めているのに対し、北米では高経済成長と高い生
産性の伸びによって雇用弾性値の低下は短期間で終わる可能性が高まってきています。
 日本とデンマークでは1999〜2003年に、生産年齢人口は幾分増えたもののGDPが
2%未満と低い成長を示し、雇用も低下しました。

<貧困、貧困労働者(指標20)>
 現在、世界の労働者の半数が自分とその家族を1日2ドルの貧困線から抜け出させ
るだけの稼ぎを得ることができず、その数は過去10年で低下していません。
 人口の半分以上が1日1ドル未満で暮らしているような貧困率が高い国は、東・西
アフリカに見られます。最も深刻な貧困状態にある労働者の比率はアフリカでは上昇
しているものの、アジアや中・東欧では低下しています。アジアでは貧しい労働者の
数が1994年から2004年の期間に1億3,100万人も減ったことから示されるように、1
日1ドル未満で暮らす労働者の数が大幅に減少し、一部地域では経済成長が堅調な雇
用成長と生活状態の改善をもたらしています。

KILM(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/employment/strat/kilm/
統計局(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/stat/index.htm

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ています。購読解除、送付先アドレスの変更等は----->
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