ILO駐日事務所メールマガジン【No.12】
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国際労働機関(ILO)駐日事務所マガジン
2003年5月20日号 No.12
駐日事務所(日本語・英語) http://www.ilo.orgよりJapaneseを選択
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:::::::::::<目 次>:::::::::::::::::::::
:《1》数字で見る国際労働基準(2003年5月1日現在)::::::::::::
:《2》ILO駐日事務所お知らせ−児童労働イベント ほか::::::::::
:《3》ILO新聞発表−仕事における差別グローバル・レポート ほか:::::
:《4》新刊紹介−デンマークにおけるディーセント・ワーク ほか:::::::
:《5》ILO事務局ニュース−若者雇用ネットワーク広報誌 ほか:::::::
:《6》トピック解説−仕事における差別:::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
□■□■□■ 数字で見る国際労働基準 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
(2003年5月1日現在)
◇加盟国数...175 ◇日本の批准条約数........46
◇条約の数...184(うち撤回5) ◇加盟国の平均批准数.......41
◇勧告の数...194(うち撤回20) ◇OECD諸国の平均批准数....71
□■□■□■ ILO駐日事務所お知らせ □■□■□■□■□■□■□■□■□■
〜雇用及び職業における差別の排除に関するグローバル・レポート刊行に寄せて〜
(2003年4月27日付東京新聞サンデー版世界と日本 大図解シリーズ No.577より)
◆◇同じ仕事なら同じ賃金、待遇を◇◆
日本は、世界から働く場での男女の格差が大きい国と見られている。例えば管理・
行政職での女性の割合は9%と世界的にみて最も低いことや、女性の賃金は男性の50
〜60%程度(統計により異なる)で主要国で最も低い。
もちろん、この統計は男女の勤続年数の差、学歴の違い、男女間の職域の違い、特
に女性の管理職が極端に少ないことなどを反映しており、格差は必ずしもすべて差別
であるということにはならない。しかし日本の女性差別を端的に表している指標とい
える。
加えて、さまざまな意思決定の場に女性の参加は少なく、我が国の男社会を印象づ
けている。例えば、女性国会議員の割合。近年増えているとはいっても10%で、先進
国中最も低い。働く場の政策決定に影響力のある労使団体の幹部の女性割合は、労働
組合が中央組織で12.6%、経営者団体が全組織を通じて1%以下である。
日本人自身も、職場での男女の地位は不平等と思っている人々が圧倒的に多い。職
場が男女平等と思っている人々は男女合わせても約25%にすぎない。一方、男性が優
遇されていると思っている人々は57%にのぼっている(内閣府「男女共同参画社会に
関する世論調査」2002年)。
男女雇用機会均等法があるのに、幾つかの根本的問題がある。一つは、グローバル
化による企業の競争激化に伴う、労働市場の柔軟化。女性は、パート労働、派遣労働
等の非正規雇用に多く就かされている。同じ仕事に対する同一価値(賃金、待遇)の
原則は徹底しておらず、男女の格差は埋まらない。
さらに、家庭内で行われる家事、育児、介護という人間にとって必要不可欠な仕事
は、女性が担っており、無報酬として評価されない。そしてそれゆえに女性が、公式
の労働市場で差別されるというメカニズムになっている。
終身雇用慣行ともあいまって、結婚、出産、育児のために、いったん職場を離れた
女性に復帰の壁は厚い。報酬を得て働く仕事と生活の場との乖離がはなはだしい。我
が国は、女性に、とくに人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を確保する必要が
ある。
ILO駐日代表 堀内 光子
◆◇児童労働反対世界デー・イベント:
ワークショップ(東京・6月12日)と写真展(東京・6月2〜13日)◇◆
ILOでは、昨年から6月12日を「児童労働反対世界デー」として、児童労働に対
する認識を高めるため、世界各地で各種のイベントを開催することとしています。今
年は、毎年世界で推定120万人もの子どもたちが、性・労働搾取の目的で売買されてい
る人身売買(トラフィッキング)の問題に焦点を当てることになっています。
日本では当日、NGOの協力を得て、東京・渋谷区のUNハウス(国連大学本部ビ
ル)で、25歳以下の若い人々が、この問題について理解を深め、自分たちで何ができ
るかを話し合ってもらうワークショップをILO駐日事務所主催で開催します。この
日を中心に、その前後約10日間にわたり、児童労働の悲惨な現状を示す数十点の写真
を展示する写真展も行われます(ワークショップは参加費500円、写真展は無料)。
上記イベントの詳細----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm#youth
◆◇働く女性と法律国際シンポジウム(東京・6月24日)◇◆
来る2003年6月24日(火)午後1〜6時に、カナダ大使館(東京都港区赤坂7−3
−38)で、アジア財団、フリードリヒ・エーベルト財団、カナダ大使館共催、ILO
協力で、「働く女性と法律:男女平等な労働環境をつくるために〜日本、カナダ、ド
イツ、アメリカの取り組み〜」と題する国際シンポジウムが開催されます。シンポジ
ウムでは、「働く女性」に焦点を当て、男女平等の社会を築くために法律が果たす役
割について、アメリカ、カナダ、ドイツ、日本の事例を比較しながら、意見交換しま
す。参加ご希望の方は、アジア財団日本事務所へ、FAX(03-3442-3320)またはE-mail
(general@tafjapan.org)で、お名前、ご所属、ご住所、ご連絡先(E-mail、電話、
FAX)を添えてお申し込みください。シンポジウムの詳細は、準備ができ次第、下記
ウェブサイトに掲載します。
上記イベントの詳細----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm
◆◇人間の安全保障基金、ILO人身売買防止プロジェクト支援へ◇◆
去る5月8日、日本政府及び国連より、ILOが実施する「カンボジア及びベトナ
ムにおける児童及び女性の人身売買のコミュニティ・レベルでの防止」プロジェクト
に対し、人間の安全保障基金を通じ、121万4,464.76ドルの支援が行われることが決定
されました。
このプロジェクトは、児童と女性の人身売買が深刻な問題の一つとなっているカン
ボジア及びベトナム両国の計7地域を対象に、児童と女性の人身売買を予防するため
の住民参加型の取り組みを通じ、コミュニティ全体としての予防能力の強化を目的に、
人身売買の危険性・予防に関する啓蒙活動、食糧確保と所得創出のための技能訓練を
通じた人身売買の危機にさらされている家庭の支援などの活動を行うものです。
上記に関する外務省プレスリリース----->
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/15/rls_0508a.html
児童と女性の人身売買防止ILOメコン小地域プロジェクト(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/region/asro/bangkok/child/trafficking/index.htm
◆◇仕事における安全と健康世界の日フォーラム(東京・2003年4月21日)◇◆
「仕事における安全と健康のための世界の日(4月28日)」を記念し、去る4月21
日、東京・渋谷区のUNハウスにて、「仕事における安全、健康、環境−国際協力が
求められる諸課題」と題するILOフォーラムが開催されました。労働安全衛生につ
いて、特に国際協力に焦点を当てながら、環境・開発問題との関わりやジェンダーな
ど幅広い視点から議論が繰り広げられました。研究所、労働災害防止団体、企業、労
働組合、NGO、そしてILOで安全、健康問題に携わってこられた講師、パネリス
トから具体的事例が紹介され、現実に即した提言が行われました。来場された100人を
超える参加者の皆様には、中身の濃い議論にご満足いただけたようです。参加者の胸
には、世界中の働く現場で安全のシンボル色として使用されている黄と黒に彩られた
リボンが飾られました。
フォーラム冒頭では、堀内光子ILO駐日代表が、世界の労働安全衛生の現状とI
LOのディーセント・ワークを実現するための取り組みを紹介しました。続いて来賓
の大石明厚生労働省労働基準局安全衛生部長より祝辞を頂戴しました。次に、小木和
孝元ILO労働条件環境局長より「仕事における安全、健康、環境と開発」と題する
基調講演が行われました。「ディーセント・ワークの様相」と題するビデオ上映の後、
川上剛ILOアジア太平洋総局産業安全保健専門官より、「アジア太平洋諸国の現状
とILO技術協力」と題する特別報告がありました。「日本の国際協力の現状と課題」
と題するパネル・ディスカッションでは、堀内ILO駐日代表のコーディネートによ
り、五十嵐晃一中央労働災害防止協会国際安全衛生センター所長、小出勲夫豊田安全
衛生マネジメント株式会社代表取締役社長、秋葉美奈子NTT労働組合中央本部国際
担当部長、鈴木良一財団法人ジョイセフ事務局次長の各氏の間で意見交換が行われま
した。フォーラムの配付資料は準備ができ次第、下記のウェブページに掲載します。
上記イベントの詳細----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm#osh
仕事における安全と健康のための世界の日(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/worldday/index.htm
★ILO駐日事務所からのお知らせは、What's Newページをご覧下さい----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm#information
□■□■□■ I L O 新 聞 発 表 □■□■□■□■□■□■□■□■□
(2003年4月11日〜5月16日発表分)
◆◇2003年4月11日(金)発表ILO/03/17◇◆
★第26回アフリカ連合労働・社会事項委員会へILO事務局長出席
ソマビアILO事務局長は、アフリカ連合の第26回労働・社会事項委員会出席のた
め、4月12日から4日間の日程で、モーリシャスを公式訪問しました。委員会は雇用
創出、貧困緩和、児童労働問題、HIV/エイズ問題、グローバル化の社会的影響、
アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)計画の社会的側面など、I
LOにも関わりのあるアフリカ大陸の諸問題について話し合いを行います。
ILOは既にアフリカで広範な技術協力活動を展開しています。これには効果的な
社会対話と労使関係のための能力構築、雇用回復、労働・雇用法起草時の支援、社会・
労働保護制度の推進、労働安全衛生の強化、貧しい人々の組織化、小企業振興と小規
模融資、職場におけるHIV/エイズと児童労働への取り組みなどが含まれます。ソ
マビア事務局長は出発に先立ち、「アフリカは開発の十字路にある」として、「貧困
緩和、社会対話、危機後の復興、職場におけるHIV/エイズ予防、地域統合を支援
する重要な改革に関し、アフリカの政労使に協力する用意がある」との見解を述べま
した。
新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2003/17.htm
アフリカ総局(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/region/afpro/abidjan/
◆◇2003年4月24日(金)発表ILO/03/18◇◆
★仕事における安全と健康のための世界の日(4月28日)
4月28日は1996年から、国際的な労働組合運動によって、仕事に関連して命を失っ
たり、負傷したり、病気になった方々を悼む日とされてきました。ILOではこの日
を「仕事における安全と健康のための世界の日」とし、労働災害と職業病の予防と削
減に、ILOを構成する政府、労働者、使用者の注意を喚起することにしました。今
年は「職場における安全文化の推進」を総合テーマに、世界各地でさまざまな行事が
行われました(日本の行事については「お知らせ」欄参照)。ジュネーブでは当日、
「グローバル世界における健康安全文化の構築と推進」と題する円卓討議が開催され
ました。この他にリマ、ロンドン、バンコク、サンパウロなどで、シンポジウムや関
係団体との共同声明の発表など、各種の行事が行われました。
世界の日に際して発表された小冊子「Safety in Numbers(数字で見る安全・英語)」
は、労働災害及び業務上疾病による年間損失額は世界の国内総生産(GDP)の約4%、
1兆2,500億ドルに相当するとします。毎年、業務上の事故と負傷で世界全体で約200
万人の命が失われ、2億7,000万件近い労働災害が発生し、1億6,000万人が職業病に
なっています。障害による早期引退(労働生涯を平均約5年短縮)、欠勤(産業や仕
事の種類によっても異なりますが、全体の2〜10%)、労働能力の損傷による失業
(失業者全体の平均3分の1)、所得喪失による貧困の発生など、業務上の事故と疾
病によって社会が担う負担にはさまざまなものがあります。小冊子はまた、安全衛生
が不十分な場合に企業の収益に影響があることを強調し、職場の労働安全衛生を向上
させる「安全文化」構築に向け労使がどのように協力していけるかについても記して
います。
ソマビアILO事務局長は、「業務上の事故、負傷、死亡は予防できる」とし、
「より安全で健全な職場を構築するため、適切な国内政策・計画に支援された新しい
『安全文化』を推進する必要がある」としています。
新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2003/18.htm
仕事における安全と健康のための世界の日(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/worldday/index.htm
「仕事における安全、健康、環境−国際協力が求められる諸課題」フォーラム----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm#osh
Safety in Numbers(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/worldday/report_eng.pdf
※PDFファイルをご覧になるためにはAcrobat Readerが必要です。お持ちでない方
は、こちらからダウンロードしてください。
http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep.html
◆◇2003年5月12日(月)発表ILO/03/19◇◆
★仕事における差別に関する初のグローバル・レポート
ILOは、1998年に採択した労働における基本的原則及び権利に関する宣言のフォ
ローアップとして、宣言が扱う基本的原則及び権利の四つの分野について、毎年一つ
ずつ順番に、総合的な報告書を作成し、討議のため総会に提出しています。このグロー
バル・レポートの今年のテーマは、雇用及び職業における差別の排除です。
「Time for Equality at Work(仕事における平等の時・英語)」と題する報告書
は、明白な差別は少なくなってきたものの、依然多くが職場の日常に残っており、そ
の上、新しい、より巧妙な形態をとる差別も現れ、懸念が広がっているとしています。
報告書が指摘する主な事項には、次のようなものがあります。
◎人種差別や、障害、HIV/エイズ、年齢、性的嗜好などに基づく新しい形態の差
別など、差別は依然、職場の共通の問題であること。
◎50年前より女性の収入は良くなっている場合が多いものの、まだガラスの天井が昇
進を阻み、女性は一般に男性より低賃金であるといったように、古くから認識され
てきた仕事における女性差別のような差別でさえ、戦いの進展は一様でないこと。
◎被差別集団内の格差が拡大していること。
◎差別される人々は、しばしば家事手伝いや家内労働のようなインフォーマル経済に
おける低賃金の仕事に就かざるを得ないこと。
◎差別は強制労働や社会的排除を生み出し、貧困を継続させてしまうこと。
◎公平な職場は労働者のモラールを、そして生産性、企業競争力を高めるといったよ
うに、個人も企業も社会全体も、仕事における差別がなくなればみんなが利益を得
ること。
報告書の詳細は下の「トピック解説」をご参照ください。
新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2003/19.htm
労働における基本的原則及び権利に関する宣言----->
http://www.ilo.org/public/japanese/asro/region/tokyo/standards/declaration.htm
労働の基本的原則・権利宣言推進国際重点計画(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/decl/index.htm
グローバル・レポート「Time for Equality at Work」(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/decl/publ/reports/report4.htm
◆◇2003年5月14日(月)発表ILO/03/20◇◆
★新刊−旅行・観光業界の雇用問題
ILOは、今年1月にホテル・観光産業の雇用問題を扱った報告書を発表しました
が、この度、その後の状況変化を盛り込み、同書を改訂した新しい報告書「New Threats
to Employment in the Travel and Tourism Industry - 2003(2003年旅行・観光業界
の雇用に対する新たな脅威・英語)」を発表しました。
1月の報告書は、2001〜02年に旅行・観光業界では約650万人の雇用が失われたとし
ていましたが、新しい報告書は、現在進行中の景気低迷に新たに重症急性呼吸器症候群
(SARS)の影響も加わり、今年だけでも既に500万人の雇用が失われたと推計しま
す。そして、世界全体で下請け業者や関連業界も含むと世界の国内総生産(GDP)の
11%、総就業人口の8%に達する旅行・観光業界で、2001年の同時多発テロ事件以降の
雇用喪失は総計1,150万人にのぼり、7人に1人が職を失った計算になるとします。
特に厳しいのは、SARSの影響を直接受けている香港、シンガポール、台湾、ベト
ナムで、旅行・観光業界の失業者数は同業界就業者数の30%を超えると見込まれます。
オーストラリア、フィジー、インドネシア、キリバス、ニュージーランド、フィリピン、
そしてホテルのキャンセル率が5〜10%に達しているタイ、航空路線の予約率が40%、
ホテル宿泊率が30%も下落したマレーシアなど、東南アジア・太平洋の近隣諸国の同業
界失業者数は15%に達し、それ以外でも平均5%の雇用喪失のおそれがあると報告書は
推計します。
報告書は、旅行・観光業界は最近の出来事にかなりの打撃を受け、回復の見通しは暗
いとした上で、観光活動の長期的な低迷が雇用に与える徹底的な打撃を警告します。ま
た、雇用主は高技能の中核的スタッフを維持しようとするため、パートタイム労働者、
女性、移民労働者といった低技能の「社会的に弱い」スタッフが真っ先に解雇される可
能性が高いものの、こういった労働者はかなりの程度まで成長が回復しない限り収入源
を失い、他の仕事もなかなか探せない危険性が高いとします。
ILOは、より融通を利かせた作業方法、再訓練または残された従業員の技能拡充、
より柔軟な労働時間編成、フロント係がチェックインも手伝うような多技能化といった
新しい作業方法の導入が収益の低下を食い止める助けになるかもしれないとします。ま
た、影響を受けた国が、生き残りをかけて一時的なコスト削減策を実施し、できるだけ
多くの雇用を維持する努力を支援する上で、政府、使用者、労働者による三者の対話が
不可欠と唱え、2001年の同時多発テロ事件直後に開かれた非公式会合で出された提言に
基づき、三者が協力して問題の解決に取り組むことの重要性を指摘します。
新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2003/20.htm
3月の報告書「New Threats to Employment in the Travel and Tourism Industry
- 2003」(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/papers/tourism/emp2003.pdf
1月の報告書「The Impact of the 2001-2002 crisis on the hotel and tourism
industry」(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/papers/tourism/impact.pdf
2001年9月11日以降の出来事の社会的影響に関するホテル・観光産業非公式会合(英語)
----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/sectors/tourism.htm
◆◇2003年5月14日(月)発表ILO/03/21◇◆
★ILOとミャンマー、強制労働廃絶を支援する世話役の設置について合意
強制労働の存在が指摘されているミャンマーに対し、ILO理事会は、今年6月の
総会開催前までに強制労働をなくすための行動計画を立案するよう求めていましたが、
5月14日に、ILO強制労働条約(第29号)の規定及び国内関連法制に基づき得られ
る救済策を用いて強制労働被害者の支援を行う世話役の設置について、ILOとミャ
ンマー政府間で正式な合意ができました。行動計画にはほかに、パイロット地区にお
ける道路建設事業、強制労働利用の代替策、周知広報活動などが含まれることが予定
されています。
ソマビアILO事務局長は、ウ・ティン・ウィン・ミャンマー労働大臣に宛てた書
簡の中で、世話役に関する合意とミャンマー政府が合意文書の中で表明した強制労働
廃絶に向けた公約を歓迎し、行動計画の早期立案の重要性に注意を喚起した上で、総
会で具体的な実施内容について話し合うことへの期待を表明しました。
新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2003/21.htm
★ILO新聞発表の日本語概要----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm
★ILO新聞発表(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/index.htm
□■□■□■ 新 刊 紹 介 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
◆◇「デンマークにおけるディーセント・ワークの実践
Decent work in Denmark:
Employment, social efficiency and economic security」◇◆
英語 2003年刊 111pp. 2,500円
今日、国際社会は、どうすればグローバリゼーションが万人に資するものになるか、
という課題に直面しています。本書では、バランスのとれた社会経済政策を基盤に、
グローバル経済を統合することに成功した数少ない国のひとつであるデンマークを検
証します。
世界的なレベルでの競争力を保ちつつ、高水準の労働と社会保護を維持することは、
大きな課題です。しかし、デンマークは、独自の制度機構を発展させ、この困難なバ
ランスを達成しました。本書は、すべての人にディーセント・ワークを推進していった
デンマークの状況を紹介し、高い生活水準は経済成長がもたらすものでありながら、
同時に経済成長と競争力にとっても不可欠な基盤であることを示します。また、そのた
めには、社会政策と経済政策の統合や社会対話の役割が有用であることも示しています。
同様に、職業教育・訓練、積極的労働市場政策、労働市場の弾力性と所得の安定の組み
合わせ、社会保護と福祉改革、その他仕事と家庭を両立させるためのプログラムなど、
デンマークにおける他の分野のダイナミックな政策も描写されています。
グローバリゼーションの時代において、より力強い経済力と社会的な統合を培おうと
する国々にとって、デンマークの政策は有用な手本になり、その最初の道案内役を本書
が果たすことでしょう。
本書の構成は次の通り。◇第1章:デンマークの労働条件・生活条件―統計指標を中
心に◇第2章:どのようにデンマークはディーセント・ワークを達成したか―制度と政
策◇第3章:今後の課題。
◆◇「ILO じん肺X線写真国際分類(2000)
The ILO International Classification of Radiographs of Pneumoconioses
(2000 edition)」◇◆
英語 2000年刊 コンプリート・セット 82,500円
クワッド・セット 45,000円
じん肺X線写真の異常所見を簡潔で、再現可能な方法で体系化したもので、サーベイ
ランス、疫学的研究、臨床診断の標準的で効果的なツールです。
呼吸器疫学は各国で大きな進歩を遂げているにも関わらず、仕事における粉じんの吸
入が引き起こす障害や早死には、深刻な問題であり続け、ILOと世界保健機関(WH
O)の懸念の的になっています。
過去20年間に、肺疾患の診断技術は目覚しく発展しました。しかし、胸部X線は、仕
事で有害な粉じんの障害を受けた患者を診断する上で、今でも最も一般的で広く用いら
れる手法です。「ILOじん肺X線写真国際分類」は、胸部X線写真の異常を体系的に
記録する方法として、世界的に認められており、仕事で遊離珪酸、炭鉱、石綿、その他
鉱物、有機粉塵に曝露した労働者のサーベイランスのために使われています。数多くの
臨床的、疫学的研究がこのILO分類に拠っており、また仕事で呼吸器疾患になったか
もしれない人の胸部X線所見を表すためにも、頻繁に使われています。
ILO国際分類の改訂版(2000年版)は、旧版(1950、1958、1968、1971、1980)と
の連続性を保ちつつ、1980年版よりもコンサイスながら、これまで曖昧だった点を明確
にしており、胸部異常の分類上のルールを改訂しています。これは、1980年版について
の多くの国での数多くの専門家によるレビューを得て、また幾つかの国際会議(1997年
に京都で開かれた第9回国際職業性呼吸器疾患学術会議も含まれます)における詳細な
検討を経て行われました。
ILO分類の標準X線写真は最新のコンピュータ技術により、1980年版の22枚の標準
X線写真のうち、21枚の画質改善を可能にしました。新たな胸膜肥厚の標準写真(四分
割合成)も含まれます。さらに、今回の改訂版の作成に当たっては、14枚のフィルムか
ら構成されるクワッド・セットも作られました。クワッド・セットはコンプリート・セッ
トが示す異常所見をすべて含むほか、フルサイズのフィルムを四分割してそれを一枚の
フルサイズに合成し直して、重要な所見を示すクワドラントも含みます。
この「ILOじん肺X線写真国際分類(2000)」が、世界各国で職業性肺疾患に取り
組む関係者に歓迎されることを願います。またILOとWHO合同による珪肺撲滅グロー
バル・プログラムの実施において、またじん肺の早期診断のために産業医の訓練を行う
上で、重要な役割を果たすことでしょう。
デジタル画像で画質改善。コンプリート・セットとクワッド・セットの2種類販売中。
コンプリート・セット、クワッド・セットのいずれにもガイドライン1冊が付録として
含まれます。
書籍等購入方法----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/index.htm
駐日事務所資料室新着図書一覧(2003年3月分)----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/new.htm
□■□■□■ I L O 事 務 局 ニ ュ ー ス □■□■□■□■□■□
(ILOウェブサイト新着情報等より)
◆◇渉外・パートナーシップ局◇◆
★ウェブサイト刷新
ILOの対国際機関・組織窓口である同局のウェブサイトの内容が改訂され、各種
国際会議とILOの関わり、提出された報告書及び担当者名、各種国際機関と締結し
た協約文書、グローバル・コンパクトや若者雇用ネットワークなどのテーマ別活動内
容など、国際的な視点から見たILOの活動に関する情報が豊富に掲載されています。
★若者雇用ネットワーク(YEN)広報誌
ILOが国連及び世界銀行と協力して若者の失業問題解決に向けて取り組んでいる
事業の活動や行事予定を掲載した広報誌最新号。記事中の各種資料もリンクで見るこ
とができます。
★国際NGO向けILO総会説明会
今年の総会は6月3〜19日の日程で、ジュネーブで開かれますが、会議冒頭の6月
3、4日に、国際NGOの方々を対象に、各議題の担当者が議題内容を解説します。
渉外・パートナーシップ局(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/exrel/index.htm
若者雇用ネットワーク広報誌2003年4月号(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/exrel/partners/youth/news/newsletter0403.pdf
国際NGO向けILO総会説明会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/exrel/civil/ngo/ilc2003.htm
◆◇部門別活動局◇◆
★公益事業の直面する課題と機会に関する三者構成会議(ジュネーブ・2003年5月19
〜23日)
関心のある政府代表、労使代表各17名が集い、事務局の作成した討議資料をもとに、
公益事業の最近の動向、調査研究上の優先事項、社会対話のための能力構築のニーズ
について検討します。また、1999年の公益事業の民営化と再編の管理に関する三者構
成会議で採択された結論と決議の実施における進展を評価検討するとともに、地域活
動と調査研究の点でフォローアップが必要な分野を確定する結論、その他の決議の採
択に向けて話し合いを行います。
上記会議の詳細(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/techmeet/tmcopu03/index.htm
討議資料「Challenges and opportunities facing public utilities」(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/techmeet/tmcopu03/tmcopu-r.pdf
◆◇ドイツ事務所◇◆
★グローバル化の社会的側面全国対話集会
4月28日にベルリンで行われた会議の模様を紹介。
グローバル化の社会的側面全国対話集会(ドイツ語)----->
http://www.ilo.org/public/german/region/eurpro/bonn/aktuelles/natdial.htm
◆◇南アジア準地域事務所(ニューデリー)◇◆
★インドのHIV/エイズ・プロジェクト
HIV感染者、エイズ患者が397万人いるといわれるインドで、ILOが政労使及び
国立エイズ撲滅機関(NACO)と協力して開発した、働く場におけるHIV/エイ
ズの予防、ケア、支援に向けた事業の紹介。
インドのHIV/エイズ・プロジェクト(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/region/asro/newdelhi/aids/index.htm
◆◇国際労働問題研究所◇◆
★研究所出版物メーリングリスト
ディーセント・ワーク調査研究報告書、21世紀の組織労働など、ジュネーブのIL
O本部内にあるILOの研究機関、国際労働問題研究所が発行する出版物の情報をメー
ルで随時お届けするサービスが開始されました。
★ディーセント・ワークのための労働・社会政策国際インターンシップ講座(ジュネー
ブ・5月14日〜6月3日)
第38回となる今年のインターンシップ講座には、25カ国より25名が参加し、21世紀
のILOの目標であるディーセント・ワークについて、それを推進する戦略目標に関
する講義を中心に理解を深め、意見を交換します。
国際労働問題研究所出版物メーリングリスト申し込み(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inst/index.htm
ディーセント・ワーク労働・社会政策国際インターンシップ講座(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inst/edu/courses/2003/index.htm
◆◇ポルトガル事務所◇◆
★ウェブサイト新設
昨年開設されたばかりの同事務所によるウェブサイトで、ポルトガルとILOの関
わり、国内政労使、同事務所の活動案内などを掲載。
ポルトガル事務所(ポルトガル語)----->
http://www.ilo.org/public/portugue/region/eurpro/lisbon/index.htm
★ILOWhat's Newページ(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/new/index.htm
□■□■□■ ト ピ ッ ク 解 説 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
ILOの活動内容、仕事の世界に関係するトピックの解説を行っていきます。
第12回は、今年の総会に提出されるグローバル・レポートのテーマである仕事にお
ける差別(discrimination at work)について、グローバル・レポート「仕事におけ
る平等の時」の内容を中心にご紹介します。
◆◇仕事における差別(discrimination at work)◇◆
★差別とは何か
雇用と職業における差別とは、特定の人を、業績や職務の必要性とは無関係な、あ
る特徴に基づき、区別し不利に取り扱うことをいいます。ILOの差別待遇(雇用及
び職業)条約(第111号)では、差別とは、「人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、
国民的出身または社会的出身に基づいて行われるすべての差別、除外または優先で、
雇用または職業における機会及び待遇の平等を無にするか、害する結果となるもの」
と規定します。この規定に含まれる7つの理由が本条約の定める差別の共通基準です
が、加盟国は労使協議の上、独自に新しい差別理由を追加することができ、その具体
例としては、年齢、障害、HIV(エイズウイルス)/エイズ、性的嗜好に基づく差
別などがあげられます。反組合的差別も、いまだ根強く広範に行われています。差別
の撤廃は、「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」にも含まれるILOの
中核的な目標です。
一方、生産性の違いに基づいた異なった取り扱いや異なった報酬は差別とはなりま
せん。技能、資格、能力の違いを反映し、特定の労働者、あるいは特定の職業が、他
の労働者、職業よりも生産的で、労働報酬の差につながることがありますが、これは
公正かつ効率的なものといえます。才能、知識、技能などといった個人の資質に基づ
く異なった取り扱いは差別には当たりません。
特定の個人の特別のニーズに応えるための異なった取り扱い、つまり、機会の平等
を確保するための異なった取り扱いも差別に当たりません。例えば、障害を有する労
働者のための通路を確保したり、妊娠した労働者を職場における危険から保護するこ
とは差別ではありません。過去または現在の差別により、不利な立場に置かれている
人々を支援する措置についても同様です。
★どんな形態の差別があるのか
差別を受けている最大の集団は女性です。働く女性は増えてきていますが、先進国
でも女性管理職の割合は3割に達しないなど、依然多くの国で昇進を阻む「ガラスの
天井」が存在し、男女賃金格差がみられます。より低賃金の、より不安定な仕事には、
女性が集中し、失業率もほとんど常に、女性の方が高くなっています。差別は、教育、
報酬、職域分離など、採用時から解雇時に至る、雇用のあらゆる段階で起こる可能性
があります。男女が働く経済活動部門は異なり、同じ職業集団内でも別々の位置を占
める傾向があります。女性が雇用される職業の幅は狭く、パートタイマーや短期雇用
で働く傾向があり(日本や米国ではパートタイマーの約7割が女性)、昇進やキャリ
ア開発における障壁もみられます。輸出主導型工業開発は女性に多くの新しい職業へ
の道を開きましたが、賃金、職階、昇進の点で依然不平等が残ります。一時は女性に
平等な待遇と機会を開く窓として、喝采と共に迎えられた情報通信技術関連の新しい
分野の仕事でも職域分離の存在を示す証拠があります。
人種差別もまだ残っています。チェコにいるロマ民族労働者の平均7割は失業して
いるといったように、影響を受けているのは、移民労働者、少数民族、先住民及び種
族民、その他の弱者集団です。地球規模の労働力移動の増大は移民労働者に加え、二
世及び三世の移民労働者、外国生まれの市民に対する人種差別の形態を大きく変え、
こういった労働者を外国人と(たとえそうでない場合でも)認識することが、これら
の人々に対する差別につながっています。今日の世界では、ある人種または民族が他
より優れているとの古い理論はさすがに見られませんが、外国の「両立し得ない」文
化が、国家のアイデンティティーの統一を乱すおそれがあるとの主張に姿を変えてい
ます。
世界全体でHIV感染者・エイズ患者の数は約4,200万人に達すると推計されます。
こういった人々に対する差別は、特に女性に対するものはますます懸念されるように
なってきています。これは採用拒否を招く可能性のある採用前検査の実施や外国人労
働者の検査義務づけのように、多くの形態をとり得ます。このほかの形態の差別には、
医学的な証拠・通知または意見聴取なしの解雇、降格、健康保険給付の拒否、給与減
額、いじめといったものがあります。
現在、世界人口の約7〜10%とされる障害者数も、人口の高齢化と共に増える可能
性があります。障害者の大半が途上国に住み、その比率は都市部よりも農村部で高い
ように見えます。もっとも一般的な形態の差別は労働市場と教育訓練の双方における
機会の否定です。障害者の失業率は途上国の多くで80%に達し、障害者はしばしば低
賃金のつまらない低技能職に押し込められ、社会保護はほとんどあるいは全く得られ
ません。
この10年、宗教に基づく差別が増えてきたように思われます。現下の国際政治情勢
は宗教集団相互の恐怖と差別の感情をあおり立て、社会を不安定にし、暴力を生む危
険があります。宗教的な差別には、少数派宗教の信者に対する職場の同僚または上司
の攻撃的な態度、宗教的慣習の無視と敬意不足、宗教的な日や祭日における労働の義
務づけ、採用または昇進における偏り、事業免許の拒否、被服上の慣習に対する敬意
の不足が含まれます。
年齢に基づく差別に対する懸念も高まってきています。2050年までに、先進国の人
口の33%、途上国の19%が60歳以上になりますが、その大半が女性です。差別は、採
用年齢制限のような公然としたものから、キャリアの可能性が低いとか、経験があり
すぎるからといった理由による採用拒否など、より巧妙なものまであります。その他
の形態の差別には、訓練受講機会の制限、実質的に退職を強いる労働条件といったも
のがあげられます。年齢差別は退職が近い労働者に対するものに限られません。
多くの人が「複数の差別」を受けています。例えば、先住民及び種族民は最貧困層
に属し、この集団の中の女性はさらにいっそう深刻な影響を受けています。こういっ
た人々が直面する不利の度合いまたは深刻度は、個人的な特性がどれだけ差別を生み、
それがどのように相互に関連しているかによって左右されます。例えば、ある人が差
別を生む複数の特徴を備える場合もあります。様々な形態の差別を被る人々は、貧困
層、特に慢性的貧困層の中の大きな割合を占め、インフォーマル経済にも多く見られ
る傾向があります。
★なぜ差別をなくすべきか
人間の発達と尊厳は仕事における差別の撤廃に左右されます。これは基本的な権利
であり、個人、企業、社会全般それぞれにとって利益になることです。差別の撤廃は、
個人が自由に職業を選択し、能力と技能を高め、個人の資質に応じた報酬を受け取る
ために不可欠です。差別は、労働市場において不平等と不当な不利益を生じさせます。
職場における公正と正義は、労働者の自尊心、意欲、向上心を高めます。より生産
的で忠誠心の高い労働力と、効率的な人的資源、管理との組み合わせは、企業自体の
生産性と競争力を高めます。反対に、差別はストレスを生み、労働意欲と向上心を削
ぎ、自尊心を傷つけ、偏見の増進につながります。社会的緊張と紛争のリスクも、社
会を構成するグループの間で機会がより平等に配分されている場合には、縮小されま
す。
長期的な差別と排除は貧困、そして社会分裂を引き起こし、経済成長を妨げます。
例えばアパルトヘイト時代の南アフリカでは、製造業における技能労働者が不足し、
経済成長の鈍化を招きました。教育制度は、国民の大多数が高いポストへの競争力を
もたない状況を引き起こし、技能不足をより一層深刻化させました。職場における差
別を廃止することは、他での差別をなくすことに向けての戦略的な一歩であり、より
平等で民主的な労働市場と社会を構築し、紛争を減らすことに貢献します。
逆に、多様性は企業の競争力を高めます。年齢、性別、宗教、障害などの、社会に
おける多様性を反映する労働力は、多様な顧客のニーズを理解するのにより適してい
るといえます。生産資源と教育が男女間でより平等に配分されれば、より高い生産性
と成長力を招くでしょう。
★ILOを中心とする差別問題への国際的な取り組み
◎1919 第二次世界大戦終結後、パリ平和会議によって設置された国際労働法制委員
会でILO憲章を起草。憲章は、世界の永続する平和は、社会正義を基礎と
する場合においてのみ確立できることを認め、人々が自由かつ公正に、自己
が貢献した繁栄の分け前を享受できるようにすることを目的とします。
◎1930 1920年代に植民地統治国が先住民に労働を強要し続けていたことに対応し、
ILOは強制労働条約(第29号)を採択。明白な奴隷制度、奴隷売買は1880年
代から既に違法とされていたにも関わらず、このような行為は1920年代でも
まだ広範に行われていました。
◎1944 ILOはフィラデルフィア宣言によって、憲章の範囲を拡大。労働条件の向
上のみならず、戦後経済におけるより公正な成長の促進、そして人間の尊厳、
安全、機会の平等を尊重する完全雇用の拡大を含むようになりました。
◎1945 国際的平和と安全を維持すること、国家間の友好的な関係を発展させること、
及び社会の進歩とより良い生活条件の確保、そして人権の促進を目的として、
国際連合を設立。ILOは国連の専門機関になっています。
◎1946 ILOは世界中の先住民族の生活や労働状況を調査するための専門家委員会
を任命。この調査は1954年の複数機関による計画開始への道を開きました。
◎1948 国連総会は世界人権宣言を採択・公布。
◎1949 ILOは移民労働者に関する問題を取り上げ、移民労働者(改正)条約(第97
号)を採択。その中で特に差別に対する保護が規定され、ILOが絶えず弱者
の権利の保護に関心を抱いていることが確認されました。
◎1951 ILOは同一報酬条約(第100号)を採択。平等の促進と、労働における差別の撤
廃を特に目的としたILO条約は二つありますが、これがその一つ目です。男
女が異なった分野での経済活動を選択する傾向にあることに配慮し、同一労働
同一賃金原則では不十分だということを認識した上で、男女平等に関し、進歩
的な見解をとり、同一価値労働同一賃金を規定しています。
◎1955 ILOは職業リハビリテーション(障害者)勧告(第99号)を採択。障害者の職
業訓練へのアクセス、職業紹介事業等、幅広い分野をカバーするものです。
◎1957 ILOは強制労働廃止条約(第105号)を採択し、強制労働と人種、社会的身分、
宗教を理由とした差別との関連性を明確にしました。この年には、先住民・種
族民条約(第107号)も採択(1989年に改正)。
◎1958 ILOは差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)を採択し、全ての労働者を人
種、肌の色、性別、宗教、信条、国家的出身および社会的身分に基づく差別か
ら保護することになりました。加盟国は、労使団体との協議の上、差別を行っ
てはいけない新たな理由を追加できます。
◎1964 ILOは雇用政策条約(第122号)を採択。差別のない雇用のための政策の枠組み
を提供し、貧困と差別は同時に取り組むことができることを示しています。基
礎となるのは、いかなる社会でも、そのいかなる構成員の才能と能力も無駄に
する余裕などないという考えです。条約は、特に近年に植民地支配から解放さ
れた国々において、貧困の問題がますます懸念されていることを表わすもので
す。
◎1965 国連はあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約を採択。
◎1975 ILOは再び、自国の外にいる労働者の直面する困難に注目し、移民労働者(補
足規定)条約(第143号)を採択。総会はまた、女性労働者の機会と待遇における平
等に関する宣言も採択しました。
◎1979 国連は女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約を採択。
◎1980 ILOは高齢労働者の問題を特に扱った初のILO文書として、高齢労働者勧
告(第162号)を採択。この勧告は、それまでの勧告、条約等に含まれる高齢者に
関する言及を基礎としています。
◎1983 ILOは職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(第159号)及び付随す
る同勧告(第168号)を採択し、障害をもつ人々が労働市場において受ける大き
な不利益に世間の目を向けさせました。
◎1989 ILOは国連システム全体の参加のもと、1957年の条約を基礎に、先住民及び
種族民条約(第169号)を採択。これらは、現在でも、先住民及び種族民の権利を
直接扱った唯一の国際基準となっています。
◎1990 すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国連条約が採択され、
2003年に発効しました。
◎1993 国連世界人権会議が、人権の観点からの開発に焦点を当て、世界でもこのよう
なアプローチに対する理解とコミットメントが高まりました。国連総会は、新
たに国連人権高等弁務官というポストを創設しました。
◎1995 コペンハーゲンで開かれた国連社会開発サミットで、四つの分野における権利
が基本的権利であることが宣言されましたが、その中には、雇用と職業におけ
る差別からの自由も含まれます。これは、労働における基本的原則及び権利に
関するILO宣言採択への道を開きました。また、北京で開かれた国連の第四
回世界女性会議では、男女平等はそれ自体が開発における目的であることが主
張され、政治宣言及び行動網領が採択されました。
◎1998 雇用と職業における差別からの自由を含めた四つの分野の権利をカバーする、
労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言が採択されました。IL
O加盟国は、当該条約を批准していなくてもその原則を守ることを約束するも
のです。
◎2000 ミレニアム開発目標が国連総会で採択され、貧困の削減が目標とされました。
この中で、非農業部門の賃金雇用において女性が占める割合が一つの指標とさ
れました。
◎2001 人種主義、人種差別、外国人排斥およびそれに関連する世界会議が、ダーバン
(南アフリカ)で開かれました。宣言及び行動計画が採択され、働く世界におい
て差別をなくすことの必要性が強調されました。この年、ILOは、HIV感
染者及びエイズ患者の基本的権利の保護、及び感染予防を目指した「HIV/
エイズと働く世界に関するILO行動規範」(日本語訳あり)、採用、雇用、昇
進、仕事への定着、及び職場復帰に関し、障害をもつ労働者の問題の管理につ
いてアドバイスを提供することを目指した「職場において障害をマネジメント
するための実践綱領」(日本語訳あり)を作成しました。
★差別はどうすればなくせるか
職場は差別と戦う戦略的な入り口です。職場が様々な特徴を持った人々を一緒にし、
公平に扱うならば、社会全体におけるステレオタイプをなくすことができます。
差別をなくすには、差別を禁止し、平等を促進する法律が不可欠ですが、法律のみで
は不十分です。仕事における差別は、これを禁止するだけでは廃止できません。有効な
実施制度、ポジティブ・アクション、偏見のない教育、職業訓練及び職業紹介サービス、
そして進歩の状況を評価する統計データも必要です。このような政策と法制度の組み合
わせは、あらゆる形の差別を廃止するのに不可欠です。
仕事における平等の達成に関し、「すべてに通用する」解決策というものはありませ
ん。問題は国によって、集団によって違います。平等を阻止する要素は、公式なものも、
非公式なものも共に廃絶する必要があります。平等を促進する措置は、文化、言語、家
族の事情、識字力や基礎計算能力などにおける多様性に配慮しなければなりません。農
業労働者や中小企業のオーナー、特に支配層でない女性や少数民族にとっては、土地、
職業訓練、技術、資本への平等なアクセスがカギになります。一般社会への広範な啓蒙
活動も必要かもしれません。この、常に変化し続ける現象と戦うためのもう一つの有効
な手段は、労使団体とその代表性の強化です。
仕事における差別の撤廃はみんなの責任です。国家は差別的慣行を禁止し、仕事に関
わる平等な機会を推進する健全な法制度及び政策を整備する義務があります。労使団体
は、個々にそして協力して、職場における差別的慣行を確定し、それをなくさなくては
なりません。最も重要なこととして、働いている場所にかかわらず、差別されている労
働者及び使用者の声が聞かれる必要があります。
このような努力はすでに世界的にみられます。例えば、カースト制がある多民族国家
インドでは、選挙議席や政府及び教育機関における一定職員数を特定カースト及び特定
民族に割り当てるアファーマティブ・アクションが取られています。ILOの米州間職
業訓練・調査資料センター(CINTERFOR)は、米州開発銀行の支援を受けて、
アルゼンチン、ボリビア、コスタリカの低所得女性を対象とした技術・職業訓練強化計
画を実施しています。エストニアではロビー集団の圧力などを通じて年齢差別を受けて
いる高齢女性の雇用拡大を図る計画が進められています。さらに、加盟組織への団体交
渉指針提示を通じて労働組合自ら男女平等を推進している韓国、10年余りにわたり、使
用者団体が女性の小企業開発を支援する活動を実施してきたパキスタンといったように、
労使団体による活動の例もあります。国連グローバル・コンパクトの枠内でも、職場に
おける多様性に関する良い慣行を強調し、推進することを目的とするイニシアチブが
フォードなど企業の主導で進められています。
ILOは政府、労使団体と協力し、この基本的な原則と権利を推進しています。差別
の撤廃は社会正義と貧困削減達成に向けた貴重な一歩になりますが、このいずれもがI
LOの関心事項の中核にあります。ILOは第111号条約を初め、差別を扱う条約の形態
で、法的枠組みを開発しています。
今年6月に開かれるILO総会では、1998年に採択された「労働における基本的原則
及び権利に関するILO宣言」をフォローアップするグローバル・レポートをもとに、
仕事における平等の問題を討議します。この討議を受けて、11月の理事会では、この分
野の技術協力について議論が行われることになります。グローバル・レポートでは、知
識の強化、啓発活動、協力活動の展開を中心としたILOの差別撤廃活動を提案してい
ます。
グローバル・レポート「Time for equality at work」(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/decl/publ/reports/report4.htm
ILOの条約・勧告データベースILOLEX(英語)----->
http://www.ilo.org/ilolex/english/index.htm
実施基準一覧(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/safework/cops/english/index.htm
2003年の第91回ILO総会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/ilc/index.htm
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