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2003/08/12

ILO駐日事務所メールマガジン【No.15】

この記事を取り寄せる

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    ILO(国際労働機関)駐日事務所マガジン
     2003年8月12日号 No.15

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     ◎お問い合わせはこちらまで tokyo@ilo.org
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:::::::::::<目  次>:::::::::::::::::::::
:《1》数字で見る国際労働基準(2003年8月1日現在)::::::::::::
:《2》ILO駐日代表雑記−しごとと人権::::::::::::::::::
:《3》ILO駐日事務所お知らせ−しごとと人権トークショー ほか::::::
:《4》ILO新聞発表−船員の月額最低賃金改定:::::::::::::::
:《5》新刊紹介−小規模金融機関で保険を機能させる方法 ほか::::::::
:《6》ILO事務局ニュース−行政審判所第95期決定集 ほか:::::::::
:《7》トピック解説−多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言:::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

□■□■□■ 数字で見る国際労働基準 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
                           (2003年8月1日現在)
 ◇加盟国数...176        ◇日本の批准条約数.........46
 ◇条約の数...185(うち撤回5) ◇加盟国の平均批准条約数......41
 ◇勧告の数...194(うち撤回20) ◇OECD諸国の平均批准条約数...71

□■□■□■ 堀内光子ILO駐日代表雑記 □■□■□■□■□■□■□■□■■

          ★ ☆ しごとと人権 ☆ ★

 働く人々の基本的人権の擁護・推進機関であるILOは、今年初めて、日本の人権
フェスティバルの中で、ILOトークショー「しごとと人権」を開催し、しごとがい
かに人権問題に中心的に関わっているか、理解していただく広報を展開する予定です。
例えば、平等問題では、人々の一生を決めかねない採用での差別、セクシュアル・ハ
ラスメントの問題がありますし、貧困や理解・意識が不十分で子どもたちの教育を受
ける権利を奪い、人間らしく成長する機会を奪っている児童労働、最近世界的に大き
な問題となっている現代の奴隷制であるトラフィッキング(人身売買)などなど、し
ごとと人権は非常に幅広い問題を含んでいます。
 去る7月、女性の総合的な人権規約である国連の女子差別撤廃条約の日本報告が女
子差別撤廃委員会(CEDAW)で審査されました。10年前の審査と比べて法制化の
整備などで進展・改善があったことを評価している一方で、日本への委員会最終コメ
ントでは、直接の雇用関連だけでも、人身売買、雇用差別及び職業と家族的責任との
両立、間接差別(差別の具体的定義を促したもの)などについて勧告しています。日
本の社会に根強く残っている固定的な男女のステレオタイプが、労働市場の女性の現
状に反映されていることに懸念を表明し、意識啓発キャンペーンの強化を勧告してい
ます。
 世界の中での日本の女性の現状は、最近発表された国連開発計画(UNDP)のジェ
ンダー・エンパワーメント測定指数では2002年の32位から44位(70カ国中)へと大幅
に後退しています。これは日本の男女平等の現状が改善されていない(停滞している)
のに引き替え、他国が改善しているために起こっています。この指数で見る限り、日
本は中進国です。ちなみに、人間開発指数は9位です。「ジェンダーと人権」はやる
べき課題が多く残されていることを念頭に、人権問題の理解の浸透に努めていきたい
と思っています。それにつけても10年前と比べての顕著な進歩は、NGOの積極的な
活動です。45NGOの女子差別撤廃条約NGOネットワークが2002年12月に結成され、
NGOレポートを国連に送付し、委員会にも16団体55名が参加しています。ジェンダー
と人権の促進にNGOは欠くことのできない貴重なアクターであることが日本でも明
確になってきたと思っています。人権問題が全ての人に関わるものとの認識を広める
ためにもNGOの役割には大きなものがあると考えています。

□■□■□■ ILO駐日事務所お知らせ □■□■□■□■□■□■□■□■□■

◆◇ILO駐日事務所職員募集:プログラム・アシスタント(応募締切:8月18日)
               代表秘書(短期)(応募締切:8月29日)◇◆

 ILO駐日事務所では2003年9月1日(希望)から勤務を開始していただけるプロ
グラム・アシスタント及び駐日代表秘書(2003年末までの短期契約)を募集していま
す。応募締切はプログラム・アシスタントが8月18日、駐日代表秘書が8月29日です。
応募方法等詳細については下記PDFファイルをご覧ください。

プログラム・アシスタント募集要項----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/pdf/programme_assistant.pdf
駐日代表秘書募集要項----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/pdf/secretary.pdf

 ※PDFファイルをご覧になるためにはAcrobat Readerが必要です。お持ちでない
  方は、こちらからダウンロードしてください。
  http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep.html

◆◇日本人技術協力アソシエート・スペシャリスト募集のお知らせ
  (応募締切:8月20日)◇◆

 ILOでは、厚生労働省の財政支援による、日本人専門家のための1年間の研修プ
ログラム参加者を募集しています。応募締切は2003年8月20日。応募方法等詳細につ
いては下記PDFファイルをご覧ください。なお、本件について、駐日事務所へのお
問い合わせはご遠慮ください。

上記求人情報の詳細----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/pdf/as-jp.pdf

◆◇しごとと人権トークショー(東京・8月29日)◇◆
 ILOでは、平成15年度人権啓発フェスティバル(主催:法務省、文部科学省、全
国人権擁護委員連合会、人権教育啓発推進センター)の行事として、人権教育啓発推
進センターとの共催により、「しごとと人権:ディーセント・ワークを考える」と題
するトークショーを開催します。玄田先生は著書「仕事のなかの曖昧な不安」(中央
公論新社)でサントリー文芸賞を受賞されています。入場無料。
◎日時:8月29日(金)18:00〜19:30(受付開始17:30)
◎場所:東京都庁(新宿)ふれあいホール(議会棟1階、都民ホール)
◎ゲスト・スピーカー:玄田有史(東京大学社会科学研究所助教授)
◎コーディネーター:堀内光子(ILO駐日代表・ジェンダー特別アドバイザー)
 参加ご希望の方は、FAXまたはEメールで、郵便番号・住所・氏名・連絡先(電
話、FAX、Eメールアドレス)を明記の上、8月22日(金)までは、ILOトーク
ショー係(FAX:03-3503-3161、Eメール:event@jinken.or.jp)、23日(土)以降
はILO駐日事務所大間知(omachi@ilo.org)宛お申し込みください。先着250名様
まで受け付けます。

上記イベントの詳細----->
http://www.jinken.or.jp/event/2003_tokyo_decent.html

◆◇人身売買フォーラム(東京・9月23日)◇◆
 ILOは、1919年の創設以来、強制労働、児童労働、移民労働、ジェンダーなど
様々な観点から人身売買の廃止に向けて取り組んでいます。1998年に採択された仕
事における基本的な原則と権利に関する宣言でもこの問題が取り上げられ、宣言フォ
ローアップ活動の一環として、強制労働廃止のためのILO特別行動計画が開始さ
れています。この度、人身売買(トラフィッキング)に関する今年3回目の公開フォー
ラムとして、「人身売買をなくすために〜ヨーロッパの経験から学ぶ〜」と題し、
来る9月23日(火)に国連大学本部ビルにて、このILO行動計画のロジャー・プ
ラント統括責任者及び、この問題の専門家ヘルガ・コンラッド博士(欧州安全保障
・協力機構(OSCE)、前オーストリア・ジェンダー担当大臣)を迎え、この問題への
取組みが進んでいるヨーロッパの経験から日本の今後の取組みの方向を探るフォー
ラムを開催します。フォーラムにはアジア8カ国政府の「ジェンダーと仕事」担当
者も出席します。入場無料。日英同時通訳付。

上記イベントの詳細----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm#trafficking2

◆◇第16回国際労働問題シンポジウム(東京・10月9日)◇◆
 法政大学大原社会問題研究所、ILO駐日事務所共催、日本ILO協会後援で、
第16回国際労働問題シンポジウムとして、「雇用関係の範囲(労働者性)−働く人
の保護はどこまで及ぶか?−」と題し、今年のILO総会で一般討議が行われたこ
のテーマに関し、来る10月9日(木)午後1時〜4時半に、法政大学市ヶ谷キャン
パス(最寄駅:市ヶ谷駅または飯田橋駅)ボアソナードタワー26階A会議室にて、
総会出席者の方々を中心に報告していただき、総会報告と討議についての理解を深
める機会を設けます。参加ご希望の方は、葉書、FAX、E-mailなどで、法政大学大原
社会問題研究所(〒194-0298 町田市相原町4342 FAX: 042-783-2311 E-mail:
oharains@mt.tama.hosei.ac.jp)にお名前、ご所属、ご連絡先をお知らせください。
入場無料。
 詳細は準備ができ次第、駐日事務所ホームページに掲載します。

★ILO駐日事務所からのお知らせは、What's Newページをご覧下さい----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm#information
★ILO会議・行事予定----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm

□■□■□■ I L O 新 聞 発 表 □■□■□■□■□■□■□■□■□
                     (2003年7月8日〜8月8日発表分)
◆◇2003年7月8日(火)発表ILO/03/39◇◆
★船員の月額最低賃金改定

 ILO合同海事委員会小委員会は7月8日、現行465米ドルの船員月額最低賃金の有
効期間を2004年12月31日まで延長し、2005年1月1日より500米ドルに引き上げること
に合意しました。合同海事委員会では、労働時間、残業、休暇資格、週休日、公休日を
考慮した上での解釈・運用に関する手引きも提供しています。
 このILO唯一の特定産業向け月額基本賃金の設定メカニズムは、1996年に採択さ
れた船員の賃金、労働時間及び船舶の定員勧告(第187号)で定められています。勧告
は政府が立法を通じて法的効果を持たせない限り強制力はありませんが、船主や労働
組合が賃金スケールを設定する際に広く用いられています。
 客船上の飲食施設・ホテルの従業員なども含み、この改定は150万人を上回る世界の
船員人口のかなりの割合に影響を与えるものと思われます。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2003/39.htm
ILO第187号勧告(英語)----->
http://www.ilo.org/ilolex/cgi-lex/convde.pl?R187

★ILO新聞発表の日本語概要----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm
★ILO新聞発表(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/index.htm

□■□■□■ 新 刊 紹 介 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
◆◇「労働者教育シリーズ
   Labour Education」◇◆
   英・仏・西語 年4回発行定期刊行物
   1冊1,500円・年間購読料5,500円

 2004年のILO総会では、国際労働力移動に関する一般討議が行われます。ILO
では現在、討議のたたき台となる報告書作成に向け各方面より情報を収集中ですが、
労働者教育シリーズの2002年4号(第129号)は、移民(外国人)労働者特集号として、
ILO職員、ジャーナリスト、国際労働者団体職員などが、総会での討議に役立つよ
う、このテーマをめぐる国際的な現状や問題点を多面的かつ簡潔にまとめて紹介して
います。ILOの移民労働者関連基準、女性化する国際労働力移動、人身売買、出稼
ぎ労働者の海外送金といった国際的な状況、移民と労働者の権利、HIV/エイズと
人の移動のような労働組合から見たこの問題への取り組みと懸念事項、アフリカの難
民と移民労働者、中南米の国際労働力移動、インドネシアの外国人労働者、欧州の高
齢化と外国人労働者、アラブ労働力移動といった地域的な動きなどに関する24の短い
記事と、この問題に対するILOの取り組みを述べるマノロ・アベラ国際労働力移動
部部長インタビューが含まれています。
 なお、国際労働力移動の分野におけるILOの活動、高技能労働力の国際移動や日
本の外国人研修生制度など幅広いテーマを取り上げた研究資料の原文、国際労働力移
動データベースなどは、国際労働力移動部の下記ホームページでご覧になれます。

ILO国際労働力移動部(International Migration Branch)ホームページ(英語)
----->http://www.ilo.org/public/english/protection/migrant/

◆◇「小規模金融機関で保険を機能させる方法
  Making insurance work for microfinance institutions:
  A technical guide to developing and delivering microinsurance」◇◆
  英語 2003年刊 246pp. 5,000円

 「小規模保険開発・提供技術ガイド」の副題がついているこのハウツー・マニュア
ルは、小規模金融機関が基礎保険商品を提供する方法をわかりやすく解説しています。
保険は、低所得者や小規模金融機関のリスク管理を支援する一つの方法ですが、唯一
の解決策でもなく、必ずしも最適の解決策でもありません。本書では、(1)給付設計、
保険条件、価格設定、管理を含む保険業務の基礎、(2)任意保険と強制保険の双方に関
し、信用と連携した短期基礎保険政策の設計、(3)保険責任の一部または大部分を正式
な保険会社または有能なコンサルタントに外注すること、(4)保険業務の運営を小規模
金融機関に統合することとその財務管理の四つの観点から、小規模金融機関における
保険の提供が適切かどうか、どんな種類の保険商品を提供するべきか、そしてどのよ
うな保険制度を用いるべきかについて決定する助けを提供することを試みています。

書籍等購入方法----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/index.htm
駐日事務所資料室新着図書一覧(2003年6月分)----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/new.htm

□■□■□■ I L O 事 務 局 ニ ュ ー ス □■□■□■□■□■□
                    (ILOウェブサイト新着情報等より)
◆◇国際労働問題研究所◇◆
★ディーセント・ワークの労働・社会政策国際インターンシップ・コース
 今年5〜6月に開かれた政労使を対象とする研修コースの報告書

ディーセント・ワークの労働・社会政策国際インターンシップ・コース報告書(英語)
----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inst/edu/courses/2003/report.pdf

◆◇行政審判所◇◆
★第95期決定集
 ILO行政審判所は、ILOその他同審判所の管轄を認める国際機関の職員から提
起された処遇上の不満を処理しています。最近閉廷した第95開廷期では、昨年不当に
解任された化学兵器禁止機関(OPCW)事務局長からのものを含む58の申立につい
て判断が下されています。OPCW事務局長の件については、解任を無効とし、損害
賠償を命じています。

第95期決定集(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/tribunal/lastsesn.htm

★ILOWhat's Newページ(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/new/index.htm

□■□■□■ ト ピ ッ ク 解 説 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
 ILOの活動内容、仕事の世界に関係するトピックの解説を行っていきます。
 第15回は、ILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(Tripartite
Declaration of Principles concerning Multinational Enterprises and Social
Policy)」です。

◆◇多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(Tripartite Declaration of
Principles concerning Multinational Enterprises and Social Policy)◇◆
★宣言の採択
 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言は、1977年11月に開かれた第204回
ILO理事会で採択されました。その後、1986年3月の第232回理事会で宣言の適用に
関する争いを規定の解釈に基づいて審議するための手続きが採択され、1987年、1995
年、2000年に、宣言に関連する条約・勧告を列挙する付属文書に、宣言採択以降に採
択された関連基準などを追加する改正が加えられました。2000年の改正では、1998年
にILO総会で採択された「仕事における基本的な原則及び権利に関するILO宣言」
の目的も考慮に入れることになりました。
 宣言設定に向けた動きは60年代に始まりました。当時、多国籍企業が進出先で引き
起こす問題が幅広く議論され、その行動を規制し、進出国との関係を規定する国際文
書の必要性が唱えられるようになりました。多国籍企業の活動が引き起こす懸念の中
には、労働関連問題や社会政策事項が含まれていたため、必然的にILOはその権限
の枠内で国際的な指針を策定するよう求められることになりました。
 労働・社会政策分野の調査研究を求める声に応え、ILOの国際労働問題研究所は
1967年に国際的な労使関係に関するシンポジウムを開催しました。1971年3月のIL
O理事会で多国籍企業と社会政策の関係に関する技術会議を開催することが決定され
た後、同年6月のILO総会で、多国籍企業の活動が引き起こす社会問題に関する決
議が採択されました。決議では、3月の理事会の決定が歓迎され、会議の結論に照ら
し合わせ、ILOが取るべき活動をさらに検討するよう求められました。
 こうして1972年10〜11月に開かれた多国籍企業と社会政策の関係に関する政労使三
者構成の会議では、この分野において可能な望ましいILOの活動範囲について、理
事会に提言を行うことを目指し、日本からの出席者を含む24人の専門家が多国籍企業
の活動を、人的資源、雇用、所得保障、訓練、労働・生活条件、労使関係といった観
点から検討しました。1976年5月に開かれた2回目の会合では、第1回会合の提案に
沿ってなされた作業を見直し、原則または指針の有用性と実現可能性を検討し、理事
会に提言を行うことを目指し、話し合いが行われました。この会合の最も重要な提言
が多国籍企業と社会政策に関する原則の三者宣言策定に向けた作業の開始を求めるも
のでした。採択される三者宣言の方向性としては、強制的な性格をもたないこと、多
国籍企業と国内企業の処遇の不平等をもたらさないこと、所有形態にかかわらずあら
ゆる多国籍企業を対象とすること、既存のILO文書に十分配慮すること、政府、多
国籍企業(使用者)、労働者に向けたものであること、準備ができ次第、当時検討さ
れていた国連の行動綱領に組み込まれるよう国連に伝達されることが求められました。
 1976年6月に開かれた三者構成の世界雇用会議では、多国籍企業に関する議論が行
われました。労働者側グループも途上国政府グループも多国籍企業に関する条約の採
択を求めました。使用者側はこの見解は共有しなかったものの、任意原則の三者宣言
の有用性には同意しました。
 このような展開を経て、ある程度の意見の集約を見たものとして、三者構成の諮問
会議の限定されたメンバーから構成される作業グループが招集され、1977年1〜3月
に一連の原則を起草しました。1977年4月に開かれた三者構成の諮問会議で作業グルー
プの文案が検討され、会議で合意された草案が同年11月の理事会に提出されました。
これを理事会が承認したことによって、多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者
宣言が誕生しました。
★宣言の内容
 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言は、企業、労働者、政府の三者が
合意した多国籍企業の社会政策に関する世界唯一の任意指針です。宣言の本文は59項
からなり、これに関連する条約・勧告の一覧、適用に関わる紛争審査手続きが添付さ
れています。
◎導入部分(1〜7項)
 宣言の規定は相互に関連し合い、全体としてその目的を規定します。導入部分では
任意原則の適用範囲と目的を規定し、宣言の目的においては多国籍企業の正確な法律
上の定義は必要ないことを強調します。相互に関係する宣言の二つの目的は、(1)経済
及び社会の進歩に対する多国籍企業の貢献を奨励し、(2)その事業活動が引き起こす可
能性のある問題を最小限に抑え、解決することです。宣言の原則は政府、労使団体、
多国籍企業の取る措置と活動を導くことによってこの目的を進めていくことを目指し
ています。この指針は、動的な企業家精神と社会の安定との調和に向けて、相互に関
わり合う政労使及び多国籍企業の取り組みを促進するよう設計されており、特定の当
事者が宣言の主たる受益者となるようなものではありません。
 原則は国際的に許容される以下の五つの分野の基準と価値をカバーしながら、地域
の社会規範や優先事項に応えるものです。これらの指針は主として、政府の義務を扱
うILOの条約、そして拘束力のない指針を提供するILOの勧告を基盤とする原則
から導かれています。国際労働基準は大半が国の活動を規制するものですが、適用が
成功するかどうかは本質的に、労使団体、多国籍企業並びに地元の事業パートナーの
活動に依存します。
◎一般方針(8〜12項)
 多国籍企業、政府、労使団体に対し、国内法に従い、現地の慣行を考慮に入れ、国
際人権基準及び国際労働基準を尊重するよう求めています。基本的人権文書と共に、
全ての当事者は、持続的な進歩にとって表現及び結社の自由が不可欠と謳うILO憲
章及びその原則を尊重するよう求められています。政府の優先事項は、基本的労働条
約を批准・遵守し、常にそこに含まれる原則をできる限り幅広く適用することとされ
ます。多国籍企業の戦略には、その事業活動が事業を行っている国の国内政策、開発
上の優先事項、社会目標、国内体制に沿ったものとなるよう支援するため、政府、そ
して適切な場合には、国内労使団体と協議することを含むものとします。多国籍企業
についても国内企業についても、原則は良い慣行を反映するものとし、どちらにも関
係がある原則の場合、どちらも同じ期待に添うよう求められています。多国籍企業本
国政府の重点は、多国籍企業の良い社会慣行を推進し、受入国政府と協議することと
されます。
◎雇用(13〜28項)
 (1)雇用促進、(2)雇用平等、(3)雇用の安定の三つの部分から構成されます。(1)で
は、完全雇用、生産的な雇用、職業の自由な選択の目標の追求を掲げ、政府に対して
は焦点を定めた積極的な政策の追求を、多国籍企業に対しては、事業活動開始前及び
活動中に、地元の政府、企業、労働者と協議することによって、そのような政策に配
慮することを求めています。多国籍企業にとって、このように活動することは、受入
国における雇用機会及び雇用水準の増大、受入国労働者の採用、昇進、訓練、直接及
び間接に雇用を創出する技術の利用、原則に従う地元企業との連携の構築を意味しま
す。雇用平等の推進と雇用差別の撤廃に関する措置を求める(2)では、政府の優先事項
は、差別と平等に関するILO条約に沿った政策を追求し、多国籍企業にもそれを奨
励することとします。多国籍企業に対しては、資格、技能、経験が採用、配置、訓練、
昇進の基礎となれば平等が推進されるとします。多国籍企業の事業活動が雇用及び労
働市場に与える影響に対する対策を記した(3)では、政府に対し、安定性を高める方策
として、さまざまな産業分野の雇用に対する多国籍企業の影響を研究し、雇用終了の
場合の所得保護を提供するよう求めています。多国籍企業の雇用安定策には、国内企
業と同様に、積極的な人的資源計画の実施、雇用の安定と社会保障に関する自由に交
渉された義務を遵守し、従業員に安定した雇用を提供し、一方的な解雇手続きを回避
すること、雇用に大きな影響を与えるような事業活動の変更可能性について事前に通
知し、地元政府及び労働者団体と共に、変化が雇用に与える悪影響を緩和する措置を
検討することが含まれます。
◎訓練(29〜32項)
 雇用可能性を推進するため、訓練にてこ入れする方法が記されています。政府は、
多国籍企業が推奨される訓練政策を追求する枠組みを提供するような、職業訓練及び
職業指導のための国内政策を開発するべきとします。多国籍企業が、地元政府、そし
て適当であれば労使団体と協力し、行うよう推奨される具体的な活動には、(1)受入国
従業員に対する訓練の提供、(2)訓練の実施を支援する人材が得られるようにすること
を含み、国内企業と共に、技能形成を奨励する地元の事業計画に参加すること、(3)多
国籍企業現地管理者が経験を増す機会を世界的に提供すること、が含まれます。
◎労働・生活条件(33〜40項)
 (1)賃金、給付及び労働条件に関する勧告、(2)2000年に新たに追加されたものとし
て、多国籍企業も地元企業も、児童労働を効果的に廃絶するため、就業の最低年齢を
尊重するよう求める部分、(3)職場において安全衛生基準を実施するための提案の3分
野から構成されています。(1)では、政府、特に途上国政府に対し、多国籍企業の活動
が低所得層と低開発地域に恩恵を与えるよう優先的に支援することを求めています。
多国籍企業に対しては、少なくとも比較可能な規模と資金を備える使用者と比較して
不利にならないような賃金、給付及び労働条件を提供すること、比較可能な使用者が
存在しない途上国では、少なくとも労働者とその家族の基礎的ニーズを満足させられ
るだけの可能な限り最高の賃金、給付及び労働条件を提供することを目標とするよう
求めています。(3)では政府に対し、適切な安全衛生水準を確保する助けとして、国際
労働基準を適用するよう求めています。多国籍企業に対しては、最高水準の安全衛生
の維持を求めていますが、この具体的な措置には、地元の政府、企業、労働者に新し
い製品及び工程と関連する特別の危害及び保護措置を伝えること、安全衛生基準を定
める国際組織と協力すること、労働者団体との協約に当事者が実施すべき安全衛生事
項を組み込むこと、他国で遵守する安全衛生基準に関する情報を共有することが含ま
れます。
◎労使関係(41〜59項)
 多国籍企業の事業活動において健全な労使関係を世界的に達成するための指針が記
され、多国籍企業は少なくとも当該国の比較可能な使用者と比べて不利にならない程
度の労使関係基準に従うよう求められています。(1)結社の自由と団結権推進の目標、
(2)団体交渉権を効果的に認めるための指針、(3)協議、(4)苦情審査、(5)労働争議の
5分野それぞれに関する指針から構成されます。(1)の目標を推進することは、多国籍
企業に雇用される労働者が団体を設立し、自ら選択した団体に参加する権利を備え、
反組合的差別行為から保護され、企業活動の機能を損なわない範囲で、労働者代表同
士の協議機会が確保されることを意味します。指針は、多国籍企業に対し、使用者団
体の支援も奨励します。政府が取るべき具体的な措置には、多国籍企業の事業活動に
関与する組合と地元企業が国際組織に加入することを許し、協議を目的としたその代
表者の入国を許可すること、投資インセンティブが労働者の結社の自由並びに団結権
及び団体交渉権を制限しないことの確保が含まれます。(2)の目標には、多国籍企業に
雇用される労働者が団体交渉目的で認められた、自ら選択する労働者団体によって代
表される権利が確保されること、使用者・使用者団体と労働者団体の自主交渉の推進、
労働協約にその解釈及び適用から生じる紛争の解決に関する規定を置くことが挙げら
れます。また、労働者代表に労働協約の開発に必要な便宜を提供すること、労働者代
表との交渉は、当該事業所に配属されていない管理者を含め、決定権のある使用者代
表に当たらせること、交渉または労働者の団結権に干渉するため、事業移転または労
働者の転勤のような脅迫を行わないこと、労働者代表に有意義な交渉に必要な情報を
提供し、政府の情報要請に応えることが含まれます。政府に対しては、団体交渉過程
の客観的な基準設定を支援するため、多国籍企業が活動する産業に関する情報を労働
者代表に提供することも含まれます。(3)〜(5)では、多国籍企業が取るべき戦略とし
て、国内企業同様、労働者代表と共同で、相互に関心のある事項に関する定期協議の
仕組みを考案し、労使紛争の予防または解決を支援する自主調停機構を設置する上で
の協力が含まれますが、このような協議は団体交渉に代わるものであってはならない
とされます。多国籍企業に対しては、不利益を受けることなく、苦情を提出し、それ
を審査される労働者の権利の尊重を確保することとします。
★フォローアップ
◎定期調査
 宣言の実施状況における進歩をはかる手段として定期調査が行われています。
 1978年2〜3月に開かれた第205回ILO理事会で、加盟国政府に対し、宣言の実施
のためにとった措置を、国内の関係労使団体と協議の上、ILOに報告するよう要請
することが決定されました。この報告書は理事会に提出され、審議されます。1980年
に最初の報告書が発表され、その後、第5次までは3年おきに、第6次からは4年お
きに出されてきました。1996〜99年をカバーする最新の第7次報告は2001年3月の理
事会に提出されています。
 調査報告は多国籍企業の事業活動に関心のあるあらゆる人々の意思決定と活動の有
用な基盤となる豊かなデータベースを提供しています。最新の報告では、海外直接投
資の急速な変化の中で、約100カ国の政府、労使より、多国籍企業宣言の実施における
経験が寄せられています。多国籍企業によるテクノロジーの利用並びに地元企業との
連携におけるプラス効果とマイナス効果、変化する市場において雇用を維持するため
の技能開発に向けた社会的パートナーシップ及び事業協力に対する多国籍企業の貢献、
安全衛生面での多国籍企業の良い慣行の地域波及効果、柔軟性、事業再構築、外注化
の動きの中で雇用保障を推進する利点と問題点、輸出加工区及びその他の投資インセ
ンティブにおける多国籍企業及び政府の政策と慣行、民営化並びに合併・買収の雇用
効果といった分野における経験が扱われています。
◎解 釈
 多国籍企業原則の意味について紛争が生じた場合、ILOにその解釈を求めること
ができます。これはある実際の状況に関し、労使団体、政府、多国籍企業といった宣
言が対象とする当事者間で、宣言の特定の規定の意味について意見が一致しなかった
場合、ILO加盟国政府、全国レベル・産業レベルでの代表的労使団体、または国際
的な労使団体が、ILOに解釈請求を行うものです。この手続きは既存の国内手続き
またはILOの手続きと重複または対立してはならず、また、労使団体が請求を送付
できるのは、当該政府がILOに請求を送ることを拒否するか、労使団体が政府に請
求送付を働きかけて3ヶ月が経過しても政府がその意向を明らかにしなかった場合に
限ります。国際的な労使団体が請求できるのは、その加盟組織である各国の代表的な
労使団体に代わって請求する場合です。
 このような依頼を受けると、ILOは関係当事者にその旨を通知し、理事会の多国
籍企業小委員会役員が受理可能性を審査し、ここで全員一致の決定が得られなかった
場合には、理事会本会議に決定を求めて提出されます。解釈請求が受理されると、I
LOは多国籍企業小委員会役員と協議の上、回答案を起草し、小委員会の承認を得て
理事会本会議に決定を求めて提出します。小委員会で承認されないと、解釈は行われ
ません。理事会で承認された回答は関係当事者に送付された上、ILOの公報(Official
Bulletin)とインターネット上の国際労働基準データベース(ILOLEX)で公表
されます。
 これまでに理事会が決定を求められた解釈請求は5件あります。このうち4件が受
理され、解釈がなされています。例えば、米国の在英外資系銀行がリストラに際し、
英国雇用省には英国法に従い90日以上前にリストラ通知を行っていたものの、一部行
員が加入しているが銀行が認めていない組合にはその事実を通知せず、行員によって
はほんの2日前に解雇を通告したことに対し、宣言の雇用の安定に関する規定(26項)
の解釈について、国際労働者団体が行った解釈請求の場合、理事会は、国内の法及び
慣行に基づき、把握できる団体が存在する場合には、影響を受ける個々の労働者に通
知するだけでは不十分で、事業活動の変更についてそのような団体及び労働者代表に
妥当な事前通知を行うべきことを宣言は求めていると解釈しました。
★企業の社会的責任との関わり
 企業の社会的責任が環境、不正取引、人権など幅広い問題を捉えて、今日議論され
ています。これらの問題のうち、雇用、訓練、労働条件、生活条件、労使関係など労
働・社会分野における企業の海外活動について、多国籍企業宣言は指針を示していま
す。日常の活動や事業計画策定のための枠組みとして用いることができるでしょう。
企業は、宣言に含まれる原則を、自らの活動を測定し、報告する際の正統な国際的な
手段として用いることも考えられます。多国籍企業と国際労働組合の間で交渉される
協約の基準とすることもできるでしょう。
 経済協力開発機構(OECD)が2000年に採択した多国籍企業ガイドラインは雇用
と労使関係の章で、ILOの多国籍企業宣言に含まれている基準に触れています。O
ECDのガイドラインとILOの宣言の違いは、後者が政労使三者の国際的な合意を
反映しているのに対し、前者はその監視における決定が政府によって行われるという
点です。
 近年、特に90年代以降、社会、経済におけるグローバル化の進展に多国籍企業が顕
著な役割を演じており、「仕事における基本的な原則及び権利に関するILO宣言」
の謳う諸原則は、ますます重要性を増しているといえます。多国籍企業宣言は、国連
のグローバル・コンパクトにも反映されているこの四つの基本的な原則と権利(結社
の自由と団体交渉、児童労働・強制労働の廃絶、雇用差別の撤廃)の実施上の指針も
提供しています。

多国籍企業計画(英語):宣言原文、定期調査報告、解釈など----->
http://www.ilo.org/public/english/employment/multi/

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