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2004/10/15

ILO駐日事務所メールマガジン【No. 29】

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    ILO(国際労働機関)駐日事務所マガジン
     2004年10月15日号 No. 29

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     ◎お問い合わせはこちらまで ilo-tokyo@ilotokyo.jp
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:::::::::::<目  次>:::::::::::::::::::::
:《1》数字で見る国際労働基準(2004年10月1日現在)::::::::::::
:《2》ILO駐日代表雑記−投票するアフガン女性::::::::::::::
:《3》ILO駐日事務所お知らせ−2004年国連デー記念イベント ほか:::::
:《4》ILO新聞発表−予備技術海事会議 ほか:::::::::::::::
:《5》新刊紹介−ジェンダーの役割と男女平等 ほか:::::::::::::
:《6》ILO事務局ニュース−インターナショナル・レイバー・レビュー ほか:
:《7》トピック解説−社会保護:::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

□■□■□■ 数字で見る国際労働基準 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
                           (2004年10月1日現在)
 ◇加盟国数...177        ◇日本の批准条約数.........46
 ◇条約の数...185(うち撤回5) ◇加盟国の平均批准条約数......41
 ◇勧告の数...195(うち撤回36) ◇OECD諸国の平均批准条約数...71

□■□■□■ 堀内光子ILO駐日代表雑記 □■□■□■□■□■□■□■□■□

        ★ ☆ 投票するアフガン女性 ☆ ★

 10月9日、アフガニスタン史上初めての大統領選挙が行われました。新聞でまだブ
ルカで全身を覆った女性が投票のために列をなしているのを見ながら、アフガン女性
に想いを馳せました。
 元々貧しかったアフガニスタンは、1979年のソ連軍侵攻、これに続く内戦で、国土
は荒廃し、1990年代半ば過ぎにタリバンが政権を掌握してからは、女性は特に厳しい
生活を強いられました。私がアジアで仕事をしていたときのタリバン政権下のアフガ
ニスタンは、国際社会から忘れられたと言ってもいい存在の国でした。
 当時、パキスタン北西辺境州はアフガニスタンの多数民族であるパシュトゥン人が
多く住み、しかもアフガン難民キャンプ(当時、パキスタンには約200万人の難民が住
んでいました)が多くあったために、アフガン人の文化・慣習に接する機会は多くあ
りましたが、アフガニスタンを訪れることはできませんでした。2002年3月8日、ま
さに国際女性の日にアフガニスタンを初めて訪れ、感慨を深くしました。
 タリバン政権下では、教育を受けることも、家の外の仕事に就くことも禁じられた
女性や少女への人権抑圧に、国際社会から非難の声が挙がり、国連も調査団を派遣し
たりもしましたが、女性・少女の人権抑圧に改善は見られませんでした。あのときの
憤りと無力感。ILOに関して言えば、第100号条約(男女同一報酬)も第111号条約
(雇用・職業上の平等)も批准していたのに、1つは正規政府のラバニ政権と実質上
の政権のタリバンのはざまに落ちたこともあって、何も動きませんでした。今、翻訳
をしている女性の人権に関する本では、その当時の国連の理念である男女平等原則と
現実の人道的援助活動を続ける必要性との間に揺れた国連の選択を描き、原則を基礎
としたアプローチで国連は譲歩をしたと記述しています。当時のデメロ国連緊急救援
調査官(2003年イラクで国連事務所爆破により死亡)は98年7月の記者会見で、ジェ
ンダーに基づく懸念のために国連支援を打ち切ることが適切かどうか公に疑問を呈し
ています。当時は確かにジェンダー差別への意識・懸念は、アフガニスタンでの国連
プログラムでも、ドナー社会でも高くなく、結果としてタリバン政権下で女性へのひ
どい差別が続くこととなりました。まともな政府が必要と痛感したのも、その当時で
す。タリバン崩壊後、アフガニスタン支援国会合でも、女性の人権回復が大きな焦点
となり、ドナー社会でも意識が高まりました。10月の投票日、相変わらずのブルカ姿
ではありながら、少なくとも1票を投ずることができるという進歩を見たことはうれ
しく感じました。本当の男女平等はまだまだ道遠しの感がありますが。
 10月には、地域公共財の会議に、少し気を引き締めて勉強しようと思い、珍しく2
日間出席しました。何が「国」と「グローバル」レベルの間で価値のある補完的地域
財かという議論は、国際機関のグローバル基準の設定とそれを実現しようとする現場
の活動から考えた場合に、地域の「共通性」の概念をそれなりに考えることができま
した。しかし、何が「公共財」かの議論では、公共財から裨益する人々への視点の必
要性を痛感しました。国際機関の行っている仕事は全て「公共財」の供給であるとい
えるものの、「公共財」の社会的視点、例えばこのジェンダー平等問題も、少なくと
も最低限の標準化が必要という点で、公共財としての認識をもう少し高める必要があ
ると感じました。

□■□■□■ ILO駐日事務所お知らせ □■□■□■□■□■□■□■□■□■
◆◇国連デー記念講演・フォーラム「国連で働くこと」(東京・10月22日)◇◆
 日本にある国連機関の共催で、2004年国連デーの催しが以下のように行われます。
<日時>2004年10月22日(金)午後1〜7時(受付:午後12時半〜1時)
<場所>UNハウス3階ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区神宮前5−53−70)
<ウ・タント記念講演>タルヤ・ハロネン フィンランド大統領
           (グローバル化の社会的側面世界委員会共同委員長)
<基調講演>「国際貢献をめざす若者へのメッセージ」勝野正恒 恵泉女学園大学教授
<7つの国連機関による発表>「国連で働くこと−現場からの報告」
*ILOからも東南アジア・太平洋サブ地域事務所の廣瀬賢一社会保護専門官が出席
<トークと演奏>竹仲絵里(シンガーソングライター)
<申込・問合先>国連デー事務局
        (FAX: 03-3499-2828 E-mail: unday2004@hq.unu.edu)
 ILOをはじめ、各国連機関によるワークショップも開かれます。入場無料。

★2004年国連デーイベントの詳細・お申し込み----->
http://www.unu.edu/hq/japanese/unday/2004/index2004.html

◆◇グローバル化と若者の未来アジア・シンポジウム(東京・12月2〜3日)◇◆
 来る12月2〜3日に、UNハウス3階ウ・タント国際会議場で、厚生労働省、国連
大学、ILO共催による「グローバル化と若者の未来に関するアジア・シンポジウム」
が開催されます。12月2日にはフアン・ソマビアILO事務局長の基調講演も予定さ
れています。詳細は10月後半にILO駐日事務所ウェブサイト上に掲載します。

◆◇World of Work誌日本語版創刊◇◆
 ILO駐日事務所では、ジュネーブのILO本部コミュニケーション局から年4回
発行されている広報誌「World of Work」誌の日本語版を創刊しました。日本語版
「ワールド・オブ・ワーク」誌は、年2回発行予定で、英語オリジナル版掲載記事の
一部に加え、日本関係情報も盛り込んだものとなっています。

★ワールド・オブ・ワーク誌----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/newsletr/index.htm#wow
★World of Work誌英語版----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/magazine/index.htm

★ILO駐日事務所からのお知らせは、What's Newページをご覧下さい----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm#information
★ILO会議・行事予定----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm

□■□■□■ I L O 新 聞 発 表 □■□■□■□■□■□■□■□■□
                       (9月20日〜10月8日発表分)
◆◇2004年9月20日(月)発表ILO/04/42◇◆
★ミレニアム開発目標達成に向け世界の指導者が公正なグローバル化を求める

 ニューヨークの国連本部において9月20日、「国連のミレニアム宣言実施における
公正なグローバル化」と題する特別イベントが開催されました。ILOは今年2月、
グローバル化のマネジメントに向けた整合性のある枠組み作りなどを求める、グロー
バル化の社会的側面世界委員会の報告書「A Fair Globalization: Creating 
Opportunities for All(公正なグローバル化:すべての人々に機会を創り出す)」
を発表していますが、今回の特別イベントは、この世界委員会の共同委員長を務めた
フィンランドとタンザニアの両大統領が主宰し、ソマビアILO事務局長が司会を務
めました。イベントに出席したアナン国連事務総長、シラク・フランス大統領、ルラ
・ブラジル大統領、ピン第59回国連総会議長からは、世界委員会の報告書を支持する
声が聞かれました。
 アナン国連事務総長は、グローバル化の社会的・経済的影響のより良いマネジメン
トに向けた政治的意思の結集を呼びかけました。シラク大統領は、国連等に対し、機
構改革やミレニアム開発目標実施状況についての話し合いの過程で世界委員会の提言
を提示していくことを支持した上で、それを上回る必要事項として、社会対話の奨励、
グローバル化の社会倫理の推進を挙げました。ルラ大統領は、もう1つのグローバル
化への第一歩は、全ての人々が雇用の権利、労働者に尊厳を与える仕事を得る権利を
有することとし、この点で、ILOが提唱する人間らしいまともな仕事である「ディー
セント・ワーク」へのアクセスが貧困と飢餓の削減というミレニアム開発目標の中心
にあるとしました。第59回国連総会の議長を務めるガボンのピン外相は、世界の大半
の人々の恐怖と希望についての革新的で直接的な展望を示す世界委員会の報告書を国
連総会で検討することには特別の意義があるとしました。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2004/42.htm
グローバル化の社会的側面世界委員会(英語)----->
http://www.ilo.org/fairglobalization
CNNによるILO事務局長インタビュー(英語)----->
http://www.ilo.org/dyn/ilosite/ilonews.internetPage3News?p_lang=EN&p_internet_news_id=1611

◆◇2004年9月24日(金)発表ILO/04/43◇◆
★予備技術海事会議(ジュネーブ・9月13〜24日)

 会議には、ILO加盟国中88カ国から政府、船主、船員の代表551名が集まり、最終
日の24日に、2006年初めに開催予定のILO(海事)総会に採択を求めて提出される
海事部門の総合条約案をまとめて幕を閉じました。過去80年間に採択された海事部門
に係わる60以上の条約・勧告に含まれる主な権利原則及び基準の統合をめざす新条約
案は、全体で100ページ以上にわたり、雇用のための最低基準、労働条件、本国送還・
権利の付与・休暇、船上の労働・生活設備に関する基準、社会保護、船員の福祉といっ
た、「船員の権利章典」とも言うべき幅広い事項を含み、過去のILOの基準には見
られなかった画期的な適用範囲とアプローチを特徴としています。新条約案は、今あ
る海事労働基準の法的地位または内容を問うものではなく、むしろより一層の一貫性
と明確化、より迅速な適応性と幅広い適用を狙ったものになっています。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2004/43.htm
予備技術海事会議(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/maritime/index.htm

◆◇2004年10月1日(金)発表ILO/04/44◇◆
★欧州における移民労働者の差別、統合に取り組む新事業計画開始

 ILOは10月1日、欧州連合(EU)の資金協力を得て、欧州における移民労働者
の雇用上の差別に取り組む18ヶ月間の新しい事業計画「多様性における平等推進:欧
州における統合」を開始しました。移民とその子孫が、差別と統合の欠如によって直
面する課題に焦点を当てたこの事業計画は、EU全加盟国を対象に、移民に対する差
別と戦い、その円滑な統合をめざす地域社会の努力を支援するもので、具体的には効
果的な措置の普及、統合度の把握、評価手段の開発、社会的パートナーのネットワー
キングを図る予定です。ILOは既に移民の就労に関する好事例を100近く収集してい
ますが、新事業の成果の1つとして、300の事例を掲載した受発信可能なウェブサイト
の構築が予定されています。45の類型的な反差別・統合措置も含まれる予定です。
 ILOのデータによれば、自国外に住む人の数は現在世界全体で1億7,500万人に達
し、このうち欧州に住む5,600万人中2,750万人(欧州労働力の4%)が何らかの経済
活動に従事していると推計されます。出生率の低下から生じる労働力率の低下を是正
する措置が講じられない限り、欧州では2050年の1人当たり国内総生産(GDP)が
期待水準の78%に落ち込むだろうとILOは推計しています。新しくやってきた人々
は人口の若返り、インフレなき経済成長の促進に貢献する証拠があるものの、欧州で
は移民労働者の35%が差別を受けているとの調査結果も出ており、「移民に対する否
定的感情は受入国を不安定にする」と、この事業計画のコーディネーターであるIL
O国際労働力移動部のパトリック・タランは語り、加えて、「差別と社会的排除は生
産性を激しく低下させ、社会の衝突を招き、相当数の人口集団の孤立化を進める」と
しています。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2004/44.htm
新事業計画「多様性における平等推進:欧州における統合」(英語)----->
http://www.wisdom.at/ilo/index.aspx
国際労働力移動部(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/migrant/index.htm

◆◇2004年10月8日(金)発表ILO/04/45◇◆
★ベラルーシの労働組合運動に関するILO審査委員会報告書発表

 ILOは10月8日、ベラルーシにおける結社の自由及び団結権保護条約(第87号)
並びに団結権及び団体交渉権条約(第98号)適用状況を審査した審査委員会の報告書
を発表しました。この審査委員会は2003年6月に開かれた第91回ILO総会に出席し
た労働者代表14名による苦情申立に応えて設置されたものです。
 委員長のブディスラブ・ブカス・ザグレブ大学国際公法教授(国際海洋法裁判所副
裁判長)他2名の法律家で構成される審査委員会は、2003年11月に設置された後、ジュ
ネーブ及びベラルーシにおいて労働組合指導者や政府関係者等から事情を聴取し、ベ
ラルーシでは労働組合運動が政府から多大な干渉を受け、労組指導者や組合員の意見
表明の自由や結社の自由といった基本的な市民的自由の侵害が深刻との結論に達し、
◇苦情に関与した労働組合組織の即時登録及び現行命令・法規で設けられた団結権に
対するあらゆる障害の撤廃、◇民主労働組合会議などの、内政干渉を受けている労働
者団体が自由に活動できる保護の保障、◇審査委員会の結論及び勧告の全てを遅滞な
く広く知らしめることなどを含む勧告をまとめました。立法その他の行動を伴う勧告
のいくつかは、2005年6月1日が実施期限となっています。
 ベラルーシ政府は、ILO憲章手続きに従い、審査委員会の勧告受諾の有無をIL
O事務局長に通知することになっています。審査委員会の報告と政府の回答は2004年
11月の第291回ILO理事会で審議されます。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2004/45.htm
審査委員会報告書(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/gb/docs/gb291/pdf/ci-belarus.pdf
第291回ILO理事会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/gb/docs/gb291/index.htm

 ※PDFファイルをご覧になるためにはAcrobat Readerが必要です。
  お持ちでない方は、こちらからダウンロードしてください。
  http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep.html 

★ILO新聞発表の日本語概要----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm
★ILO新聞発表(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/index.htm

□■□■□■ 新 刊 紹 介 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
◆◇「ジェンダーの役割と男女平等:社会保障の論点への欧州における解決策
   Gender roles and sex equality: European solutions to social 
   security disputes」◇◆
   I. Heide著 英語 2004年刊 117pp. 2,500円

 社会保障における男女平等は、超国家的な欧州法によって規制されています。この
法律は、法定社会保障制度及び職域社会保障制度における男女平等の推進並びに関連
する職場事項に関する非常に効果的な法的枠組みを提供しています。
 ローマ条約において競争の歪みを防止するために明記されている同一賃金の原則は、
男女平等を実施する基盤としてもっとも関連が深いものになっています。1970年代半
ば以降、超国家レベルで採択されたいくつかの指令は、男女平等の概念を職場におけ
る均等な処遇へと、また法定及び職域年金制度へも拡大しました。これらの文書では、
一定の性に基づく区別を許容してはいるものの、欧州司法裁判所は同一賃金原則を、
男女間の絶対的な平等を要請するものと解釈しています。その平等原則は、全額拠出
かどうかを問わず使用者負担があるすべての年金制度、公務部門及び特定の労働者を
対象とする年金制度に適用されます。男女の区別が許容されている場合にも、それは
職場での異なる待遇を正当化する根拠とはなりません。欧州連合の加盟国は、定期的
にこのような法律上の区別を見直し、漸進的に取り除くことが求められており、平等
の権利が侵害された場合には、司法及び実効的な法的救済へのアクセスを与える必要
があります。加盟国は使用者として、欧州法に違反したことにより、国家当局から財
政上の責任を問われることがあります。それは、指令がタイムリーかつ正確に実施さ
れない場合、また、各国の裁判所制度が、欧州司法裁判所を関与させる義務があるに
もかかわらず、それに明らかに違反した場合などです。
 社会保障給付に関する統計は、書類上の平等と現実との大きな乖離を浮き彫りにし
ます。国内、超国家的な判例法をみると、欧州法は十分に理解され、適用されている
とは考えられない状況です。本書は、その格差を埋めるために著わされました。男女
平等の問題を、歴史的・社会経済的発展、欧州の各国家と欧州共同体間の力の分担、
超国家法の形成と国内法への組み込み、世界でも独特の法執行制度など、より広範な
文脈の中におき、考察しています。

書籍等購入方法----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/index.htm 
駐日事務所資料室新着図書一覧(2004年9月分)----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/new.htm 

★オンライン無料出版物★
◆◇「家族的責任を有する労働者と職場
   How are workers with family responsibilities faring 
   in the workplace?」◇◆
   J. Heymann著 英語 2004年刊 31pp.

 入社面接試験で9ヶ月の赤ん坊がいることを告げたメキシコの女性は採用されませ
んでした。病気の子供を看病するために不安定で低給の仕事を選ばなくてはならなかっ
たロシアの女性は、結局生活が苦しく2つの仕事の掛け持ちを余儀なくされました。
 今年2004年は国際家族年10周年です。これを記念してILOはボツワナ、ホンジュ
ラス、メキシコ、ロシア、米国、ベトナムの労働者約千名へのインタビューを通じ、
家族的責任を有する労働者の問題に光を当て、ILOが1981年に採択し、日本も批准
している「家族的責任を有する労働者条約(第156号)」の重要性に人々の注意を喚起
することを試みました。得られた結果は、個人の事情や地域の違いにかかわらず、妊
娠・育児中の女性や家庭責任を果たそうとする父親は差別に直面する場合が多いとの
明確な傾向を示しています。こういった状況に対し、著者は第156号条約に留意した差
別撤廃、育児・介護休業、家族を世話する労働者が仕事を継続できるような労働時間
編成、十分な賃金、労働者が負担できる料金で質の高い育児・介護サービスが提供さ
れることといった各種措置の整備を通じた労働条件の改善を提案しています。

家族的責任を有する労働者と職場(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/condtrav/publ/wf-jh-04.htm

□■□■□■ I L O 事 務 局 ニ ュ ー ス □■□■□■□■□■□
                    (ILOウェブサイト新着情報等より)
◆◇部門別活動局◇◆
★情報社会における仕事の未来と質に関するメディア、文化、グラフィック部門三者
構成会議(ジュネーブ・2004年10月18〜22日)
 労使代表各21名及び関心のある政府代表が出席し、標題の討議資料をもとに、メディ
ア、文化、グラフィック部門の情報社会における仕事の未来と質、それに取り組む上
での社会対話の役割に関する意見交換を行います。

情報社会における仕事の未来と質に関するメディア、文化、グラフィック部門三者構
成会議(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/techmeet/tmmcgs04/index.htm

★世界教員の日(10月5日)共同メッセージ
 今年の「世界教員の日」に際し、ユネスコ(国連教育科学文化機関)、ILO、国
連開発計画(UNDP)、ユニセフ(国連児童基金)の4国連機関のトップが連名で、
教員の日々の努力を讃える「有り難う」のメッセージを発表しています。

メッセージ原文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/conf/wtd/index.htm

◆◇出版局◇◆
★ILOの論文集「International Labour Review」最新号:2004年第1/2合併号
(有料・季刊)
 今年2月に発表されたグローバル化の社会的側面世界委員会の報告書が扱った事項
をさらに詳しく吟味した論文を集めた「より均等なグローバル化」をテーマとする特
集号。
[目次]◇グローバル化の社会的側面文献評論
   ◇グローバル生産体系と関連する貿易構造の変化がもたらす政策的意味合い
   ◇グローバル化と社会的不平等の知覚
   ◇グローバル化、社会排除、ジェンダー
   ◇包括的な発展と全ての人に対するディーセント・ワーク
   ◇グローバル化とディーセント・ワーク政策:新たな法的アプローチに対する
    考察

International Labour Review2004年第1/2合併号概要(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/support/publ/revue/sommaire/143-1-2.htm

◆◇労働者活動局◇◆
★2004年10月9日付新聞発表:労働政策とグローバル化修士課程入学式
 ILO労働者活動局の発案を受け、独カッセル大学とベルリン経済大学で実施され
る「労働政策とグローバル化」に関する1年間の修士課程の開校式が、ドイツのハイ
デマリー・ヴィチョレク=ツォイル経済協力・開発大臣、ルロイ・トロットマンIL
O理事会労働者側副議長らの参列を得て、10月4日に行われました。16カ国から集まっ
た学生たちは、ILO、南アフリカ、ブラジル、カナダ、英国出身の国際的教授陣か
ら、グローバル化の中における国際労働基準の問題について学ぶこととなります。
2005年10月開講予定の第2期学生の募集締切は来年3月15日。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/actrav/new/091004.htm
労働政策とグローバル化修士課程(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/actrav/glp/index.htm

□■□■□■ ト ピ ッ ク 解 説 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
 ILOの活動内容、仕事の世界に関係するトピックの解説を行っていきます。
 第29回は社会保護(social protection)です。

◆◇社会保護(social protection)◇◆
★社会保険→社会保障→社会保護
 かつて、事故や病気、その他の災難で困窮した人は宗教団体などの慈善団体に頼る
しかありませんでした。徐々に地域社会がこの世話を引き受け、困窮した人々は救貧
院に引き取られましたが、そこではしばしば犯罪者も同様の扱いを受けました。ここ
での根本的な目標は、貧しすぎる人々を保護する安全網の提供でした。産業革命が進
むにつれ、病気にかかったり、負傷した労働者の生計維持を企業に義務づける措置が
幾つかの国で採用されました。病気の際や高齢期にささやかな現金給付を提供する互
助会が形成され、職人の同業者組合や労働組合が基金を積み立て、失業した組合員を
支援し、病人や高齢者に何らかの援助を提供する仕組みが整っていきました。最初の
全国的な「社会保険」制度は1883〜89年にビスマルク政権のドイツで誕生しました。
これは老齢年金と疾病給付を提供するもので、失業給付は含まれていませんでした。
 社会保険は全ての賃金稼得者が拠出する保険料で賄われる強制的な制度でした。そ
の後、1930年代に至るまで、ドイツに倣い、保険料方式(オーストラリアなど)や政
府が財政を負担する社会扶助方式(欧州など)の各種の制度が開発され、第二次世界
大戦後はアフリカ、アジア、カリブ諸国にも広まりました。これらの初期の制度は対
象となる職業の範囲、給付水準と支給期間、そして個人の勘定をもとにした自己財源
型であるという点で限定的で、給付と受給資格は過去の雇用と拠出歴に左右され、相
対的に国の支援はほとんど提供されませんでした。
 「社会保障」という言葉は、ILOの助言をもとに起草され、1935年に制定された
米国社会保障法で初めて正式に用いられました。社会保障とは、社会が個人及び世帯
に対し、保健医療へのアクセスの確保、特に高齢、失業、疾病、廃疾、業務災害、出
産または生計稼得者の喪失といった場合に、所得保障の確保に向けて提供する保護の
ことを指します。今世紀半ば、特に第二次世界大戦後、社会保険に代わって普及して
きた社会保障は若者と高齢者、就業者と失業者、健康人と病人のより大きな連帯を特
徴としていました。対象はあらゆる職業集団に拡張され、財源の全てまたは一部の責
任は国家が負担し、個人の拠出と支出の収支バランスを基本としたものではなくなり
ました。給付は引き上げられ、給付事由は増えました。
 そして、40、50年ほど前から社会保障の概念はさらに拡大し、拠出や雇用歴に関わ
りなく(基礎最低額を上回る一部の給付水準の決定においては依然これらの要素が重
要ですが)、あらゆる市民に一般的基礎的な社会支援を提供する「社会保護」の枠組
みが形成されてきました。これは既得権ではなく必要を基礎として国が個人に所得支
援を広げることを可能にすると共に、保健医療の提供を全人口に広げるのを円滑化し
ました。この新しい体制のもと、給付水準は受給資格よりもむしろ必要に応じて政府
が設定する傾向が生まれ、拠出率は従属変数となり、しばしばその負担において一般
税と区別することが難しくなりました。
 ILOでは社会保護を「社会がその構成員を、疾病、出産、業務災害、失業、障害、
高齢、主たる生計稼得者の死亡といった各種の不測事態の結果、欠勤または勤労所得
の大幅減から引き起こされるであろう経済的困窮及び社会苦難から保護するために提
供する一連の公的措置、保健医療の提供、子供のいる家族に対する給付の提供」と定
義しています。これは社会扶助や社会保険といった伝統的な社会保障措置を包含する
だけでなく、社会保障を提供する法定外の私的な措置を含むことによって社会保障よ
りも広く、より包括的であるといえます。

★社会保障に関する国際労働基準
 憲章に定められるILOの使命の1つには労働条件の改善があり、そのための手段
の例示の中に「失業の防止」、「雇用から生じる疾病・疾患・負傷に対する労働者の
保護」、「老年及び廃疾に対する給付」と明記されているように、ILOは創設以来、
社会保障に特別の重きを置いてきました。これまでに採択された社会保障分野の国際
労働基準には条約31、勧告23があります。このうち、現在も批准・適用が推進されて
いる最新の基準は以下の通りです。
◎社会保障全般:
1952年採択の社会保障(最低基準)条約(第102号)、1944年採択の所得保障勧告
(第67号)
◎医療、傷病給付:
1969年採択の医療及び疾病給付条約(第130号)及び同勧告(第134号)
◎老齢・廃疾・遺族給付:
1967年採択の障害、老齢及び遺族給付条約(第128号)及び同勧告(第131号)
◎業務災害給付:
1964年採択の業務災害給付条約(第121号、附表1は1980年に改正)及び同勧告
(第121号)
◎失業給付:
1988年採択の雇用の促進及び失業に対する保護条約(第168号)及び同勧告(第176号)
◎母性給付:
2000年採択の母性保護条約(第183号)及び同勧告(第191号)
◎移民労働者:
1962年採択の均等待遇(社会保障)条約(第118号)、1982年採択の社会保障の権利
維持条約(第157号)、1983年採択の社会保障の権利維持勧告(第167号)
 このうち日本は第102号条約と第121号条約を批准しています。
 社会保障分野の基準は、そのアプローチによって3つの世代に分類することができ
ます。第1世代は主として社会保険の概念を基礎とした基準で、人口全体ではなく、
特定の種類の労働者にしか適用されません。それぞれが特定の給付事由を扱い、その
上、経済部門毎(特に工業と農業)に別々の基準が採択されています。これらは現在
全て時代遅れとされ、一部は撤回されています。
 第二次世界大戦後、1942年に英国で出されたベベリッジ報告によって開発されたよ
り広範な社会保障の概念をもとに、第2世代の基準が採択されました。1944年に採択
され、憲章の附属書となったフィラデルフィア宣言で、ILOの目的に、「基本収入
を与えて保護する必要のあるすべての者にこの収入を与えるように社会保障措置を拡
張し、かつ、広範な医療給付を拡張すること」が新たに挿入されました。これに基づ
き1952年に採択されたのが第102号条約です。社会保障(最低基準)条約という名前か
ら推測されるように、この条約はそれが対象とする社会保障の9つの部門のそれぞれ
について、最低給付水準を定めています。ILO加盟国は経済発展の度合いに無関係
にこの最低水準を達成し、ある場合は上回ることを目標として求められています。
 第102号条約は、社会保障制度の最低基準を15部87条にわたり、給付の種類別に定め
ています。第1部は一般規定として、条約中に使われている言葉の定義、批准の方法
その他を定め、第2〜10部まで、それぞれ医療、傷病給付、失業給付、老齢給付、業
務災害給付、家族給付(即ち児童手当)、母性給付(即ち出産給付)、廃疾給付、遺
族給付について、その保護を受ける者の範囲、給付の種類、支給期間、受給資格を得
るための期間などを規定しています。例えば医療に関しては、保護を受ける者の範囲
は全被用者の50%以上の者とその妻子、全住民の20%以上の経済活動人口とその妻子、
全住民の50%以上の者、例外的として従業員20名以上を使用する事業場における全被
用者の50%以上の者とその妻子のいずれかとされ、給付の種類は診療・薬剤・入院・
分娩介護・産前産後の手当など、支給期間は原則として給付事由の存続する全期間
(ただし病的状態については26週に制限可)とされています。傷病給付ではこれに加
え、支給期間について3日の待期が規定されています。失業給付の支給期間は、被用
者を対象とする場合には1年中の13週、全住民を対象とする制度では1年中の26週に
制限し、7日の待期を規定できるとされています。第11部では上記各給付のうちの定
期的支払金の算出方法に関する規定が扱われ、標準受給者に対する定期的支払金の算
出基準を示す附表が掲げられていますが、例えば、失業給付は基準賃金の45%となっ
ています。第12部には内外人均等待遇の規定、第13部では各給付の共通規定(給付の
停止規定、救済規定、給付の財源など)、第14部は雑則、第15部は最終規定(批准に
関する規定など)となっています。
 批准国はこの9つの社会保障分野の3以上を受諾するだけでよいことになっており、
日本は第3〜6部を受諾しています(第6部はその後、より基準が高い第121号条約を
批准したことにより、現在は適用されていません)。
 その後採択された条約・勧告は第3世代の基準です。これらは第102号条約を範とし
ながら、保護が及ぶ人口の範囲と給付水準の点で、より高い保護水準を定めたものと
なっています。
 医療・疾病給付(第130号条約と第134号勧告)、老齢・廃疾・遺族給付(第128号
条約と第131号勧告)、業務災害給付(第121号条約と第121号勧告)、失業給付(第
168号条約と第176号勧告)、母性給付(第183号条約と第191号勧告)の各部門で、
第102号条約より高度な保護水準を規定した基準が採択されています。
 第130号条約に盛り込まれた新しい概念の1つは、疾病保護制度の中に、治療はも
とより予防的医療をも含むべきとしたことで、この条約にいう医療には、第102号条
約に規定されたものに加え、歯科治療と医学的リハビリテーションが含まれています。
また、傷病給付の定期金は基準賃金の60%(第102号条約では45%)以上とされ、支
給期間は52週間(同26週間)とされています。
 第128号条約を批准する加盟国は、農業部門と非農業部門に分けて、また障害、老
齢、遺族の3給付事由を部門別に選択することができるようになっています。年金額
の算定額は、障害が基準賃金の50%、老齢と遺族がそれぞれ45%とされ、いずれも第
102号条約の水準を上回っています。
 第121号条約の保護範囲は第102号条約より広く、業務災害給付に関する国の法令は
「協同組合を含む公私の部門における修習生を含むすべての被用者を、また扶養者の
死亡の場合については所定の種類の受給者を保護すべきもの」とし、給付事由として
は、1)負傷・病的状態、2)1)の状態に起因し、かつ所得の停止を伴う労働不能であっ
て、国の法令で定めるもの、3)永久的なものとなりそうな所得能力の全部喪失または
所定の程度を超える一部喪失もしくはこれに相当する身体機能の喪失、4)扶養者の死
亡により所定の種類の受給者が被る扶養の喪失とし、これらに対し、医療と関連給付、
現金給付が支給されるよう確保すべきものとしています。
 第168号条約は、失業者の保護に留まらず、雇用の促進を規定しています。保護事由
には、第102号条約では、労働能力を有し、就労できる状態にありながら職に就くこと
ができない人と定められていますが、第168号条約ではこれに加え、実際に仕事を求め
ていることも条件になっています。保護対象者は、公務員及び徒弟を含む全被用者の
85%以上とし、給付内容は、基準賃金の50%(第102号条約では45%)を下回らない
水準とされています。
 第183号条約は母性保護を目的とした条約であるため、例えば出産休暇(最低14週
間)など、社会保障以外の規定も含まれています。原則として、非正規雇用を含む全
ての働く女性を対象とし、金銭給付水準は、原則として、従前勤労所得または給付計
算のために考慮される所得の3分の2を下回ってはならないとされます。金銭給付は
強制社会保険、公的基金、または国内法及び慣行で定める方法を通じて付与されるも
のとし、例外的な場合を除き、使用者が個々に負担するものではないとされています。
 第118号条約と第157号条約は、社会保障の分野で移民労働者が出会う問題の解決を
めざしたものです。第118号条約の批准国は、第102号条約に定められる9つの社会保
障部門のいくつかを選んで、自国の領土内にある他のすべての批准国の国民、難民及
び無国籍者に対し、適用範囲と給付権の双方につき、自国の社会保障法規下で自国民
に与えるものと均等な待遇を与えることとされます。第157号条約の批准国は、二国間
または多国間の協定によって、労働者とその家族が居住地の如何に関わらず、9部門
の社会保障に関する権利を保全できるよう努めることとされます。第167号勧告には、
この二国間または多国間の協定のモデル規定が示されています。
 ILOの社会保障基準はILO外にも重要な影響を及ぼしています。例えば、欧州
社会憲章は、その締約国に対し、少なくとも第102号条約の批准に等しい保護水準の維
持を求めています。ILOの協力を受け、欧州評議会で採択された欧州社会保障法典
は平等待遇に関するものを除き、第102号条約のかなりの規定を引用しています。

★21世紀の社会保障−2001年総会審議
 社会保障は基本的人権とされるものの、社会保障が十分適用されているのは世界人
口の2割に過ぎず、半数以上は全く保護されていません。
 2001年の総会で、21世紀に向け、新たな課題を見据えた上で、ILOにとっての社
会保障のビジョンの再確定をめざした一般討議が行われました。採択された結論は、
社会保障を基本的人権と位置づけ、フィラデルフィア宣言を想起し、社会保障を改善
し、保護を必要とする全ての人々に保護範囲を拡張する努力を新たにするようILO
に求めました。そして、社会保障の分野におけるILOの活動は、フィラデルフィア
宣言、人間らしい働き方であるディーセント・ワークの概念、そしてこの分野におけ
る関連基準を支えとすべきことを提案しました。
 結論はまた基本的に重要なポイントをいくつか強調しています。◇正しく管理され
た社会保障は保健医療、所得保障、社会サービスを提供することによって生産性を高
めること、◇社会保障の運営に関する正しい唯一のモデルは存在しないものの、制度
の正しい統治がその成功には不可欠であること、◇個人貯蓄勘定に基づく制度の設立
は全ての被保険者間のリスク分担という連帯制度を弱めるものであってはならないこ
と、そして、補足的年金の分野では一般に、社会的パートナーが重要な役割を演じる
ことができること、◇まだ保護されていない人に社会保障の保護を拡張することが最
優先されるべきであり、この点での最大の課題はインフォーマル経済の存在であるこ
と、◇社会保障制度はまた男女平等の原則を尊重し、推進する必要があり、これは特
に家族の世話を無報酬で行っている女性に均等な成果を確保する措置の採用を意味す
ること、◇多くの国で、人口の高齢化は積立式・賦課方式の別なく保健医療及び年金
制度の支出面での課題となり、この課題に対処するにはより幅広い人口集団を生産的
な雇用に導入することをめざした持続的な経済成長の推進を基礎とする必要があるこ
と、◇生産年齢人口にある人々にとって、安定した収入を得るための最適の方法は
ディーセント・ワークが得られることであること、◇HIV/エイズは一部途上国の
社会保障財源に非常に深刻な打撃を与えており、ILOはこのために大きな困難に直
面している国に対する技術協力を強化すべきこと、といった諸点です。
 以上のような基本原則に則って、各国はそれぞれこの問題に取り組む国家戦略を決
定する必要があります。それには雇用政策及び社会政策との密接なリンクが求められ、
この点で、社会保障の整備または拡張の効果を確保するため、社会対話が必要と、結
論は記しています。
 今後の社会保障分野の調査研究及び専門会合で取り上げるべきテーマとして、◇社
会保障の保護範囲の拡張、◇HIV/エイズとその社会保障への影響、◇社会保障制
度の統治と運営、◇平等(特に男女と障害者)、◇高齢化とその社会保障への影響、
◇社会保障の財源、◇良い慣行の共有が提案されました。

★社会保障分野のILOの活動:全ての人への社会保護をめざして
 憲章に基づき、ILOはこの複雑な社会保障の分野において常に加盟国に技術協力
を提供してきました。技術協力がILOの活動として確立する第二次世界大戦以前か
ら既に、加盟国の求めに応じ、実践的な支援や助言を与えてきました。実際、最も初
期の技術支援の1つとして、ILOは第一次世界大戦後、ポーランドが独立を取り戻
し、アルザス=ロレーヌ地方がフランスに再併合されたとき、ドイツ、ロシア、オー
ストリア=ハンガリー帝国で社会保険料を支払っていた労働者の受給資格問題を、仲
裁と勧告によって解決しました。英国のベベリッジ委員会にも、米国の社会保障法制
定時にも、ILOは助言を求められました。
 戦後、中南米でILOは社会保障制度の構築に向け大きな役割を演じてきました。
アフリカでは、ソマリアからザイール、ナイジェリアからタンザニアに至る多くの諸
国において社会保障制度の確立に向けた基礎作りを行いました。社会保障の管理運営
に携わる人々を対象とした訓練コースの開催や、年金の財務評価など社会保障の財務
・数理面に関する助言も幅広く行っています。欧州では欧州連合の社会保障局に技術
的な助言を提供し続けており、欧州評議会21カ国が社会保障協定を締結した際にも協
力しています。ますます多くの国から、二国間や多国間の社会保障協定立案の際の支
援を求められており、アジアや中東アラブ諸国では外国人労働者を保護する社会保障
制度の創設に向けた助言や協力を提供しています。年金改革や健康保険の運営・企画
に対する支援を求める声も増えており、経済危機を経験したアルゼンチンでは、社会
予算分析を行い、政府はこれをもとに社会保護改革案を策定しました。1949年から半
世紀にわたり実施された社会保障費調査など各種統計も収集し、インターネットなど
を通じて提供しています。
 社会保護分野におけるILOの活動は調査研究から一層直接的な政策支援に移行し
つつあります。1995年に開かれた世界社会開発サミットのフォローアップ事業の1つ
として、ILOは4年前からSTEP(貧困と社会的排除に取り組む戦略・手段)と
いう技術協力計画を実施していますが、これは革新的な社会保護制度を用いて最も弱
い集団に対する保護の拡張を推進するものです。人が生産的であるには基礎的な保健
医療が必要との前提のもと、ILOは小規模保険(microinsurance)を含む地域社会
ベースの新しい健康保険制度を幾つか開発し、これは複数の途上国で自営業やイン
フォーマル経済で働く人々、特に女性を対象とした社会保護制度として広まってきて
います。STEPでは、基本的人権である社会保障による保護を、そこから排除され
ている人々に拡張することの重要性を唱え、各地で用いられている革新的な措置の情
報を収集した上で、インターネットや出版物を通じて得られた教訓や良い例の普及に
努め、各地で地域団体の能力育成や戦略・政策立案時のアドバイス提供といった活動
を行っています。
 2001年の総会一般討議の結論の中で、ILOの技術協力には、社会保障の拡張と改
善、人々がインフォーマル経済から公式経済へ移行することを支援する革新的なアプ
ローチの開発、社会保障制度の統治・財源・運営の向上、社会的パートナーが政策開
発に参加し、社会保障機関の二者または三者構成の理事会で効果的に機能できるよう
支援し、訓練すること、社会、人口、経済状況の変化に対応した社会保障制度の改善
及び変化への適応、社会保障の結果における差別を克服する措置の導入を中心とした
幅広い措置を含むよう提案されています。これを受け、ILO社会保護総局では、20
03年6月から「全ての人への社会保障適用世界キャンペーン」を開始しました。社会
対話を通じた社会保障の拡張、排除された人々への社会保障の拡張、地域基盤型社会
保障制度の強化、保健医療受益者層の拡大、資金確保のための国際協力の一構想であ
る世界社会基金パイロット・プロジェクトの5つを柱に、情報の収集、報告書やガイ
ド、セミナー等を通じた社会保障理念及び制度方式の普及、STEPを中心とした国
別プロジェクトの実施、進展状況を評価・監督できる手段の開発といった活動が展開
されるこのキャンペーンは、まずアフリカを中心に既に30カ国以上で展開されていま
す。

★新しい社会保護
 ILOは、「全ての人へのディーセント・ワークの確保」を21世紀の活動目標に置
いています。ディーセント・ワークとは、「権利が保護され、十分な収入を生み、適
切な社会保護が供与された生産的な仕事」と定義されています。したがって、ディー
セント・ワークの中心的な要素の1つは、誰もが基礎的な社会保護を受ける資格があ
るというものです。
 社会保護に対するアプローチ、その定義は国によって異なりますが、ILOのアプ
ローチは常に、政府と労使団体がその政策と事業計画の開発において平等な発言権を
有するという独特の三者構成の仕組みを基礎としています。ILOは、社会保護には
様々な関係者がおり、したがって、その運営と全ての人への効果的な社会保護の拡張
に向けた努力の中心には社会対話とパートナーシップがあることを常に意識していま
す。
 社会保護は、幸福な生活のための生計水準の確保という本来的な安全網機能から進
化し、保護と予防という二重の目的を有するより「事前対策な」機能を備えるように
なっています。最もめざましいこととして、多くの国が失業問題への取り組みにおい
て、技能訓練や技能開発を中心にした事業計画、再訓練、若者の労働奨励策といった
事前対策型雇用促進戦略を備えるようになりました。
 現在、社会保護は新たな進化の局面を迎えています。現代のグローバル化と男女の
ライフサイクル・パターンの変化は社会保護政策・戦略しか応えられない数々の課題
を提示しています。多くの先進国が、貧困層の増加、高失業率、高齢化、労働力移動
の拡大、社会構造の変化、期待の増大といった圧力の高まりに直面し、社会保護制度
とその効果の見直しを始めています。移行経済諸国と途上国では伝統的な社会保護に
よって提供される保護が不十分であることに対する懸念が生まれています。人々の
ニーズの変化により良く対応し、グローバル化する世界におけるリスクと弱さの変化
に適応するため、社会保護の概念をさらに拡張する必要があります。最低限の福祉と
リスクからの保護の提供を越え、人間と社会の潜在力と機会の推進に焦点を当てる必
要があります。
 ILO社会保護総局の職員(A. Bonilla GarciaとJ.V. Gruat)が社会保護に関す
る検討資料として2003年11月に発表したワーキング・ペーパー「Social protection: 
A life cycle continuum investment for social justice, povery reduction 
and sustainable development」は、このようなより幅広い社会保護の概念は次の3
つを主たる目標に含み、段階的に進むことを提案します。1)必要不可欠な財とサービ
スの入手機会の保障、2)積極的な社会保障・経済保障の推進、3)貧困減少及び持続可
能な開発に向けた個人と社会の潜在力の増進。さらに、このような目標を達成するた
めの手段には、社会保険、社会扶助、公共サービスなど様々な形態があるとしながら、
適切な手段を確定する助けとなる5原則として、1)平等待遇原則、2)連帯原則、3)包
括的原則、4)国家の総合責任、5)透明で民主的な管理を挙げています。
             *  *  *
 ILO事務局では社会保障、社会保護事項は社会保護総局が担当しています。以上
のようなILOの活動、各種出版物やワーキング・ペーパー、各種統計情報などは同
総局のウェブサイトでご覧になれます。

社会保護総局(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/index.htm
STEP等技術協力については、社会保障政策・開発部(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/socsec/pol/index.htm
統計、社会保障モデル等については、社会保障財務・数理・統計部(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/socfas/index.htm

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