[ ビジネス・自己啓発 ]
●隔日刊 心が元気になる オンリーワン見聞録●
ビジネス活動や参加したセミナー、話題の書等で啓発を受けた情報から日々人間として成長し続けるヒントを求め、社会全般に対する考察をオンリーワンの目線でブレンド。

●発行   肝 付 博 昭 (きもつき ひろあき)    (有)新規事業開発 代表

2008年4月20日(日)

フランスに対する抗議活動が起き騒然とするスーパー、カルフールの入り口付近=20日、中国湖北省武漢市(共同).
写真:フランスに対する抗議活動が起き騒然とするスーパー、カルフールの入り口付近=20日、中国湖北省武漢市(共同=中日新聞より)  

どこの企業や官庁にも多かれ少なかれ「不都合な真実」がある。 国家にも、当然「不都合な真実」がある。 裏にどんな情報操作や謀略があるか分かったものではない。

連日報道される北京オリンピックの聖火リレーの儀式は、チベット問題を力で抑え込もうとする中国政府の意志を内外に示すもの。 聖火防衛隊なる警護隊に守られた異様な映像は世界に発信されているが、それで「民主化された中国」というイメージは大きく損なわれるという事に考えがゆかないところが、中国人の発想なのだろうか。 全体主義国家という点では、北朝鮮と何ら変わらないオソマツさである。

中国の湖北省武漢では、フランス製品のボイコットを呼び掛ける抗議デモが行われた。 「フランス製品にノーと言おう」と書かれた旗を持った抗議者らによるデモが行われ、安徽省合肥や雲南省昆明でも同様の抗議活動が、仏小売り大手カルフール店舗の外などで行われた。 おそらく、なにがしかの意図による扇動からの抗議であろう。

国家の「不都合な真実」を、力で覆い隠そうとするのは、何も中国に限った事ではない。 これはどこの国でも同じで、「自由と民主国家と言われている国の方が全体主義国家より多少マシ」というだけの事である。 むしろ民主国家と言われる国の方が、もっと巧妙に行われているのである。 民主国家の「不都合な真実」は、「情報操作」と表裏一体の関係にある。

今週は、「得するのは誰か 格差拡大を望む人々がいる 不都合な真実」と題して、目にあまる「不都合な真実」を、テーマとしている。 2回目は、堤 未果氏の著作「ルポ 貧困大国アメリカ」から、「過激な市場原理が経済的弱者を食いものにした貧困ビジネスの一つ「サブプライムローン」」を取り上げたい。

堤 未果氏は、その著書で、サムプライムローン問題などで自己破産した人々のに救済に携わるマサチューセッツ州のNPO「EACA」の住宅問題カウンセラー、バージニア・プラット氏の「私達は初め、これは人種差別だとして声を上げようと考えました。 でも、そのうちに、どうもそうではない気がし始めました。 人種や宗教などを超えた何かもっと別の巨大な力が勧いている様に思えるのです」という直感を伝えている。

この直感はおそらく当たっているだろう。 同じアメリカ国内には、貧しい為に大学に行きたくても行けない、又は卒業したものの学資ローンの返済に圧迫される若者たちや、健康保険がないために医者にかかれない人々、失業し生活苦から消費者金融に手を出した多重債務者、強化され続ける移民法を恐れる不法移民達がいる。 こうした人達が今、束の間の「夢を見せられ」、暴走した市場原理に引きずり込まれているのである。

何か巨大な力によって、貧困層は最貧困層へ、中流の人々も尋常ならざるペースで貧困層へと転落していく。 急激に進むアメリカ社会の二極化の足元で何が起きているのか。 弱者を食いものにし一部の富裕層が潤ってゆくという世界構造の中で、それでもあきらめす、この流れに抵抗しようとする人々に、「新しい戦略」があるのだろうか。

●今日の引用資料

堤 未果:著 ルポ 貧困大国アメリカ 

■199−得するのは誰か 格差拡大を望む人々がいる「不都合な真実」

▼199−2 過激な市場原理が経済的「弱者」を食いものにした貧困ビジネスの一つ「サブプライムローン」

アメリカ発の金融不安、「サブプライムローン」とは、社会的信用度の低い層向けの住宅ローンである。 2001年1月にアメリカ金融監督当局が出した通達によると、具体的には以下の4項目のうちどれかにあてはまる者が対象となる。

1)過去回1ヶ月以内に30日延滞を2回以上、又は過去24ヶ月以内に60日延滞を1回以上している。 2)過去二四か月以内に抵当権の実行と債務免除をされている。 3)過去5年以内に破産宣告を受けている。 4)返済負担額が収入の50%以上になる。

その利率は、一般のプライム(優良顧客)と比べ非常に高く、最初の2〜3年は利子が低いがその期間を過ぎると急激に10〜15%に跳ね上がる。 月々の返済をするために親族15人で1軒の家に住みながらローンを返す家族もいるが、ほとんどは途中で払いきれなくなり、家を追い出されるケースが占めている。 アメリカの住宅ブームが勢いを失い始めた時、業者が新たに目をつけたターゲットは国内に増え続ける不法移民と低所得層だった。 自己破産歴を持つ若やクレジットカードが作れな人達からでも住宅ローンを組めるという触れこみで顧客をつかむやり方だ。

英語のできないヒスパニック系には、あまりきちんと説明をせずに契約させるケースが非常に多く、利率も同じ所得層の白人と比べもともと3割から4割高だったという。 連邦政府のデータによると、2007年1月から6月までの半年間に差し押さえられた物件数は全米で約547万3400件で、前年より58%増加している。

この債権を担保としたサブプライム担保証券は、一般の住宅ローンを担保にした証券よりリスクは高いものの金利自体が高いために利回りが大きく、ヘッジファンドや銀行が飛びついた。 住宅価格が下がり貸し倒れが増えると、日米欧の中央銀行は銀行間の決済が滞りパ二ックになるのを防ぐために、巨額の資金を市場に供給し始めた。

2007年7月に、アメリカの大手格付機関がこれらのサブプライム担保証券の格下げを発表すると株価は大きく動揺。 更に翌月フランスの大手銀行であるBNPがファンドの一部凍結を実施した事で、ヨーロッパ市場からアメリカ、東京まで株安の波が拡大し、世界中の株式市場を大パニックに引き入れたのである。

日本のメディアは、連日金融界におけるこの混乱を報道し、日本銀行は利上げのタイミングについて頭を抱える事になった。 だが「サブプライムローン問題」は単なる金融の話ではなく、過激な市場原理が経済的「弱者」を食いものにした「貧困ビジネス」の一つだ。 この言葉はもともと生活困窮者支援のNPO法人「もやい」の事務局長である湯浅誠氏が生み出したもので、貧困層をターゲットに市場を拡大するビジネスのことを指す。

アメリカで中流階級の消費率が飽和状態になった時、ビジネスが次のマーケットとして低所得層を狙ったシステムである「サブプライムローン」。 連邦政府が発表した2005年のデータによると、同年、国内でアフリカ系アメリカ人の55%、ヒスパニック系の46%がサブプライムローンを組んでいる。 白人はわずか17%である。

2007年の夏にこの状況を振り返った時、リスクに無防備な低所得層の人々を「商品」として市場原理に組み込もうとしたことは大きな間違いだった、とニューヨークに住む金融アナリストのジェイソン・マクフライは言う。 「時代が上昇気流の時はいいが、一度その流れが変わって破綻した時に一番先に影響を受けるのはリスクに対するセイフティネットのない低所得層の人々だ。 その結果、彼らは夢だけでなく人生も壊され、人間として最低限の生活をすることすらできなくなってしまった」

サブプライムローン問題などで自己破産をした人々の救済に携わるマサチューセッツ州のNPO、「ESAC」の住宅問題カウンセラー、バージニア・プラット氏は、低所得層を狙ってサブプライムローンを押しつけた金融機関のやり方を怒りを込めてこう表現する。

「まるでハゲタカです。 最近人ってきた移民達にはクレジットカード利用歴もなく、ヒスパ二ック系の家族の35%はそもそも銀行口座すら持っていません。 こういう人たちの個人情報が金融機関に出回っているんです。 それを見ながら地図上に印をつければ、カモの分布図ができあがる。 金融機関の営業マン達はそれを見てピンポイントで勧誘に回るというわけです」

これらの金融機関による勧誘やその結果による現状は、連邦政府側からも非常に実態がつかみにくいという難点がある。 どこの機関にどんな苦情がどれだけ寄せられているのかは、相手が民間企業である為なかなか調査しにくい。 しかしその実態が、今アメリカ社会のスミズミから噴き出している問題の一つひとつを検証し、それらをつなぎ合わせると鮮明に見えてくる。

そこに浮かび上がってくるのは、国境、人種、宗教、性別、年齢などあらゆるカテゴリーを超えて世界を二極化している格差構造と、それをむしろ糧として回り続けるマーケットの存在、私達が今まで持っていた、国家単位の世界観を根底からひっくり返さなければ、いつのまにか一方的に呑み込まれていきかねない程の恐ろしい暴走型市場原理システムである。

そこでは「弱者」が食いものにされ、人間らしく生きる為の生存権を奪われた挙げ句、使い捨てにされていく。 それは日本国憲法第25条でいう、全ての国民が健康で文化的な最低限度の暮らしを営める権利を侵される事である。 私達には一体この流れに抵抗する道はあるのだろうか? 単にアメリカという国の格差・貧困問題を超えた、日本にとって決して他人事ではないこの流れが、いま海の向こうから警鐘を鳴らしているのである。

アメリカがそうであった様に、日本でも中間居のサラリーマンが国を支えていた時代には、大学を出れば就職、そして結婚し、家庭を持ってマイホームを購入、退職したら年金暮らしが待っているという「一位総中流の人生計画」が存在した。 だが「規制緩和」「民営化」「自己責任」などのキーワードと共に加速していった流れの中で、日本の中開展にいた人々は過労死やリストラの犠牲となり、「ワーキングプア」「ネットカフエ難民」「医療制度の崩壊」「派遣社員」「教育格差」などの言葉がメディアにあふれるようになった。

2006年7月に公表されたOECD(対日経済審査報告書)のデータによると、「OECDにおける相対性貧困率ランキング」において、日本はアメリカに次いで第2位になっている。 相対性貧困率とは、すなわちその国の格差レベルを指すのである。 国内に中開展が厚く存在していれば、この数字の上昇にはブレーキがかかる。 だが、アメリカの後を追った結果、日本の中間居は貧困層に転がり落ち、格差は急激に拡大しつつあり、さらにこの先「教育格差」が進めば、国内は一部のエリートとスペシャリスト、低賃金労働者という三層に分かれ、この所得格差は強固に固定化されていくだろう。

調査ジャーナリストのナオミ・クラインは「過激な市場原理主義の流れに呑み込まれないためには、まず何か起きているかを正確に知ることが不可欠だ」と言う。 「サブプライムローン問題」一つをとっても、それを金融の世界に起きた災難としてとらえ、中央銀行の苦渋の決断やそれが与える株価の数値だけに目を向けるのか、医療費が払えずにひっそりと死んでゆく高齢者や、人間らしい生活と引きかえに海の向こうの戦争に行くワーキングプアの若者達と同列の現象と捉え、新しい世界の構造自体に目を向けるのかという選択は、私達自身の手の中にある。

そして又、そうやって抵抗する際、決して失ってはならないものの一つに「メディアの中立性」がある事も、アメリカの事例がはっきりと示してくれている。 アメリカは9・11以降まずメディアを抑えたが、これはベトナム戦争の教訓で、戦争の情報が流れ出てしまったために国内で反戦運動が盛り上がり、撤退する事になったという歴史から政府が学習したからである。

9・11以降のアメリカ政府による個人情報の一元化や、大資本所有のメディアによる戦時下の報道がいかにアメリカ国民を偏った方向に暴走させたかという事実は、日本の現状を映しだす、合わせ鏡になるだろう。

2006年度に「国境なき記者団」が発表した「世界168ヶ国における報道の自由度ランキング」で、日本は51位になっている。 2005年度の37位から14位も転落して50位のイスラエルよりも低い位置になったという事実は、アメリカで起きている一連の流れが、決して他人事ではない事を教えてくれる。

「受け身の消費者から選択する市民へ」という人々へのメッセージをゴスペルの調べに込めるビリー牧師の歌声が、クリスマス前のマンハッタンに響き渡る。 音楽に国境はないと信じる彼の言葉が、多くのアメリカ人が上げる声とともに海を越えて日本に届けられる時、それを受け止めるアンテナと、新しい眼で世界をとらえなおす視野が、私達に求められている。

堤未果(つつみ みか)
東京生まれ。 ニューヨーク州立大学国際関係論学科学士号取得。 ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号取得。 国連婦人開発基金(UNIFEM)アムネスティ・インターナショナル・NY支局員を経て米国野村鐙券に勤務中、9・11同時多発テロに遭遇。 以後ジャーナリストとして活躍。 現在はNY一束京間を行き来しながら執筆、講演活動を行っている。 著書に『空飛ぶチキン』(創現社出版)、『グラウンド・ゼロがくれた希望』(ポプラ社)、2006年『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命−なぜあの国にまだ希望があるのか』(海鳴社)で黒田清・日本ジャーナリスト会議新入賞受賞。 2006年より朝日ニュースター「ニュースの深層」サブキャスター。 「デモクラシー・ナウ!」解説者。