[ ビジネス・自己啓発 ]
●隔日刊 心が元気になる オンリーワン見聞録●
ビジネス活動や参加したセミナー、話題の書等で啓発を受けた情報から日々人間として成長し続けるヒントを求め、社会全般に対する考察をオンリーワンの目線でブレンド。
●発行 肝 付 博 昭 (きもつき ひろあき) (有)新規事業開発 代表
●2008年4月22日(火)
写真:新生銀行本店ビル
●2001年、破たんした旧東京相和銀行を400億円で買収したのは、米大手投資ファンドの「ローンスター」。 2005年10月25日に東証1部に東京相和銀行から東京スター銀行に衣替えして上場させた後、残りの株式を売却するために今年2月、アドバンテッジ・パートナーズが株式公開買い付け(TOB)を実施、成立している。
NHKなどの報道によると、同社は、不良債権の回収で得た利益は、英国領バミューダ諸島のファンドに吸い上げており、日本の税務当局に対して税務申告を行っていなかった。 東京国税局は意図的な税金逃れだとして、2003年までの2年間で140億円の申告漏れを指摘し、加算税を含めて約50億円の追徴課税処分を行った、と報じていたのが先月3月末。 ファンド側は、督促に一切応じておらず、国外に拠点があるため強制的な徴収もできない事態になっているという。
もっと大型なのが、新生銀行に投入した国民資金の8兆円。 1998年に経営破綻し、8兆円に及ぶ公的資金が投入された旧日本長期信用銀行(長銀)をわずか10億円で買収したのは、リップルウッドというフアンド。 その後、自己資金1200億円を投入。 2004年2月長銀から衣替えした新生銀行として上場した事で2200億円以上の利益を得た。 大前研一氏によると、10億円で買ったリップルウッドは、1兆円近く儲けて、サッさと手を引いている、という。
他にあおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)を買ったサーベラスなども含めて、結局はこの様な結果からみても「ハゲタカファンド」と呼ばれれても仕方はないだろう。
複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金を事業会社や金融機関に投資し、同時にその企業の経営に深く関与して「企業価値を高めた後に売却」することで高い利回りを獲得することを目的とするのが「ファンド」である。 本来は、バイアウト・ファンドと呼ばれているが、その買収対象が主に経営危機に瀕した、もしくは破綻した企業であるものが多く、その様がマルで屍肉を漁るハゲタカを思わせることから、ハゲタカファンドとネガティブな表現で揶揄されている。
日本政府が、「ダメな銀行は潰す」という資本主義の鉄則を守っていれば、外資系のフアンドに、いい様に公的資金をカスメとられる事もないおだろう、というのが大前研一氏の見解である。 破たんしている銀行を救おうとして、その原資を国民・預金者に求める政府、これこそ「不都合な真実」の極みであろう。
マスコミや一部評論家からバラ色の未来を運んでくるかのようにうたわれた「市場原理主義」。 競争によりサービスの質が上がり、国民の生活が今よりももっと便利に豊かになるというイメージだが、実態は全く逆の事態を招いている。
政府が、国際競争力をつけようと規制緩和や法人税の引下げで大企業を優遇し、その分社会保障費を削減する事によって帳尻を合わせようとした結果、中間層は消滅し、貧困層は「勝ち組」の利益を拡大するシステムの中にしっかりと組み込まれてしまった。
再び問いたい。 小泉内閣と竹中氏の政策は、一体誰の為に行ったのだろうか。 この内閣の5年間で得したのは、誰なのか。 この答えは、単なる固有名詞でない事は、明らかである。
今週は、「得するのは誰か 格差拡大を望む人々がいる 不都合な真実」と題して、目にあまる「不都合な真実」を、テーマとしている。 初回は、中山治氏の著作「格差突破力をつける方法」から、2回目は、堤未果氏の著作「ルポ 貧困大国アメリカ」から引用した。
最終の今回は、大前研一氏の「貯めるな 使え!」から「、国家全体が夕張化する日本 一気にハイパーインフレに進む危険性は高い」を、取り上げて締めとしたい。
どこの企業や官庁にも多かれ少なかれ「不都合な真実」がある。 国家にも、当然「不都合な真実」がある。 裏にどんな情報操作や謀略があるか分かったものではない。
●今日の引用資料
大前研一:著「大前流心理経済学 貯めるな使え」
■199−得するのは誰か 格差拡大を望む人々がいる「不都合な真実」
▼199−3 国家全体が夕張化する日本 一気にハイパーインフレに進む危険性は高い(FIN)
2006年6月、北海道の夕張市が財政再建団体の指定を申請、2007年3月に再建団体に移行した。 企業で言えば事実上の「倒産」で、潰れるはずがないと思っていた自治体の破綻にマスコミは大騒ぎになった。
しかし、少し考えてみれば夕張市と日本国家の財政状況は、全く同じである事がわかる。 夕張市の人口は約13000人、日本の人口は13000万人。 夕張の債務残高は、一時借入金、地方債、第三セクターなどの損失補償費などを含めて約630億円、日本の国債発行残高は2006年末で676兆円(財投債含む)
。 一人当たりの借金のレベルはほぼ同じで、規模を1万倍にして考えれば夕張市も日本国家も置かれた状況は全く変わらない。 それどころか地方の債務を含めた国の債務残高は約840兆円もあり、実は日本国の財政状況は夕張市よりも遥かに深刻なのである。 日本全体が今や完全に「夕張化」しているのである。 本来であれば、日本国家も夕張市のように大幅な職員の削減や給料カットを行い、一方で税金を上げなければ、ならないという議論になる筈だが、何故かそうはならない。
地方自治体が破綻しているのに、国が破綻しないのは何故か? その理由は簡単で、輪転機を持っているからである。 普通は輪転機を回しすぎるとインフレになって経済がおかしくなるが、国民心理が冷え切っているのでそのお金が消費に回らない。 在庫にもならない。 ごく限られた土地、商品(コモディティ)、ファンドなどに化けて出てくるだけで、一般の消費財には物価高という形で、波及していない。
目本国家の抱える危うさは、地下のマグマとしては大爆発寸前なのであるが、固い地表を突き破って出てくる迄には至っていない。 それゆえ国には危機感がなく、国民にも今の危機的状況に対する自覚症状がないのである。 しかし問題は、勝手に輪転機を回し続けても良いのだろうか。
輪転機を回し続け、国債を発行し続ければどうなるのか。 当然、今の冷え切った心理がどこかでプッツンしてハイパーインフレとなる。 日本人の集団心理としては、ひとたびインフレとなると一気に飛びつく可能性が高い。 お金は過剰供給されているわけだから、調整インフレ等と悠長な事を言っている場合では無くなる。 ブレーキが利かなくなって円も日本国債も完全に信用を失い、2001年末にアルゼンチンの国債が債務不履行を引き起こした時と同じ様な事態が起こるだろう。
日本政府が金融緊急措置法を発令して預金封鎖するといった最悪のケースも、無いとはいえないのである。 この時、21世紀になって初めて、日本に古典的な経済学の世界が到来する事になる。 現在は、国民の集団心理のおかげで金利さえつかない預金等に滞留しているが、その集団心理が崩れると、インフレから操縦の困難なハイパーインフレに進む可能性が高い。 日本国の公的債務は、対GDP比で見ればOECDでは最高値なので、そうした憂慮すべきレベルにある事は間違いないのだ。
更に日本の債務は、約800兆円だけではない。 実はそれ以外に特別会計歳出が、国の一般歳出の6.7倍ほどもある(一般会計と各特別会計の重複を除いた歳出統計、2006年予算ベース)。 この無駄遣いにはメスが入らないどころか、ブレーキすらかからず、特別会計を含む国・地方の歳出統計額は伸び続け、租税総額の3.6倍に速している。 こうした無駄遣いは、国会の審査も承認もいらないヌケ穴を使って行われているので、通常は公的債務を探しても出てこない。 各省庁が持っている特殊団体の特殊財源は、財投債などを発行してまかなっているからである。 しかしそうした団体の大半が赤字で、返済の目処が立だないのである。
これらの借金は、いずれ焦げつけば国家予算の側に付け替えなければならない。 道路公団の場合は、40兆円の債務の返済を45年間先送りしたが、民営化した道路会社がその利益を用いて返済する事は不可能だろう。 なぜなら、そのような負債を持った会社が上場できるはずもなく、仮に上場して利益を出そうとすれば、高速道路の通行料をさらに上げなくてはならない。
しかし、北海道で既に起こっている様に、税金で建設される国道が整備されてくれば通行料のかかる高速道路の利用者はいなくなるからである。 国鉄も民営化したときに借金を10年先送りしたが、その間に借金はむしろ増えてしまった。 その返済に充てる為にタバコ増税を行うなど、政府は思いつきで迷走したが、いまだに返済の目処はたたず、結局は国民が税金で払うしかない。
こうした国民の目には見えない借金主(特殊法人)が、大小合わせて全国に1000ほどもある。 これらの特殊団体が財政破綻した場合には最終的には国の責任になり、ツケは国民に回ってくる。 則政投融資というなの「裏」の借金は275兆円以上も存在しており、「表」の借金を合わせると1200兆円を超えるのだ。
更に年金の隠れ債務の存在もある。 深刻な少子高齢化の結果、国が今約束している年金を支払おうとすると、800兆円の財源が不足する。 つまり支払わなければならない年金という形で、国はここでも膨大な債務を抱えているのである。
当然、役人は三つの事を企む。 一つは年金の掛け金を上げる。 二つ目は支払額を減らす。 三つ目は支払い開始年齢を上げる。 今、年金問題が国民の怒りを買っているが、政府はこれを機会に今までバラバラにあった年金制度の統合を考えるだろう。 そして新しい制度にする時に、過去と脈絡のないものを作る事によって、隠れ負債を一気に解消しようとするだろう。 これが役人という種族の思考パターンである。
健康保険でも、赤字の政府管掌部分を黒字の民間のものと統合する機会を狙っている。 要するに今まで払ってきた人、特に大企業などで潤沢な年金や保険を目指して払ってきた人は泣きを見る反面、今まであまり払ってこなかった人も統合された新制度ではちゃんと受給できるようになる。 どちらが多数かといえば後者だろうから、選挙で問えばそうした新制度の温情政策がまかり通ってしまうのだ。
多数決で決めるという民主主義社会においては、為政者が無責任である場合、常に少数から多数への利益移転が行われてきたことを肝に銘じておくべきである。 国民を編さないと、国家自体が成り立たないところまで来ているのである。 誰がそんな国にしたのか、と今さら騒いでももう遅い。 それに気がつかない、あるいはそうした無責任な政府を許容してきた国民の作り出した問題なのだから。
国の債務が実際にいくらあるのか、その数字は今言われている公的債務676兆円の3倍、2000兆円規模と考えなければならない。 「公的債務」+「特殊団体の隠れ債務」+「年金の隠れ債務」の総計である。 これは国民一人あたりに換算すると2000万円。 勤労者一人あたり3000万円を超える。 どう考えてもこれだけの公的借金を勤労者が返済する事は不可能だろう。 しかもこの額は、日本が世界に誇る個人金融資産の合計額1500兆円を超えている。 つまり、税金で返済・負担できないばかりでなく、国民の金融資産を全部没収して使っても間に合わないのだ。 国がなぜ国民の貯金などを国内に留めておこうしているのか、じっくり考えてもらいたい。
●今週の引用資料
中山治:著 「格差突破力」をつける方法
堤 未果:著 ルポ 貧困大国アメリカ
大前研一:著「大前流心理経済学 貯めるな使え」
大前研一(おおまえ けんいち)
ビジネス活動や参加したセミナー、話題の書等で啓発を受けた情報から日々人間として成長し続けるヒントを求め、社会全般に対する考察をオンリーワンの目線でブレンド。
●発行 肝 付 博 昭 (きもつき ひろあき) (有)新規事業開発 代表
●2008年4月22日(火)
写真:新生銀行本店ビル
●2001年、破たんした旧東京相和銀行を400億円で買収したのは、米大手投資ファンドの「ローンスター」。 2005年10月25日に東証1部に東京相和銀行から東京スター銀行に衣替えして上場させた後、残りの株式を売却するために今年2月、アドバンテッジ・パートナーズが株式公開買い付け(TOB)を実施、成立している。
NHKなどの報道によると、同社は、不良債権の回収で得た利益は、英国領バミューダ諸島のファンドに吸い上げており、日本の税務当局に対して税務申告を行っていなかった。 東京国税局は意図的な税金逃れだとして、2003年までの2年間で140億円の申告漏れを指摘し、加算税を含めて約50億円の追徴課税処分を行った、と報じていたのが先月3月末。 ファンド側は、督促に一切応じておらず、国外に拠点があるため強制的な徴収もできない事態になっているという。
もっと大型なのが、新生銀行に投入した国民資金の8兆円。 1998年に経営破綻し、8兆円に及ぶ公的資金が投入された旧日本長期信用銀行(長銀)をわずか10億円で買収したのは、リップルウッドというフアンド。 その後、自己資金1200億円を投入。 2004年2月長銀から衣替えした新生銀行として上場した事で2200億円以上の利益を得た。 大前研一氏によると、10億円で買ったリップルウッドは、1兆円近く儲けて、サッさと手を引いている、という。
他にあおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)を買ったサーベラスなども含めて、結局はこの様な結果からみても「ハゲタカファンド」と呼ばれれても仕方はないだろう。
複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金を事業会社や金融機関に投資し、同時にその企業の経営に深く関与して「企業価値を高めた後に売却」することで高い利回りを獲得することを目的とするのが「ファンド」である。 本来は、バイアウト・ファンドと呼ばれているが、その買収対象が主に経営危機に瀕した、もしくは破綻した企業であるものが多く、その様がマルで屍肉を漁るハゲタカを思わせることから、ハゲタカファンドとネガティブな表現で揶揄されている。
日本政府が、「ダメな銀行は潰す」という資本主義の鉄則を守っていれば、外資系のフアンドに、いい様に公的資金をカスメとられる事もないおだろう、というのが大前研一氏の見解である。 破たんしている銀行を救おうとして、その原資を国民・預金者に求める政府、これこそ「不都合な真実」の極みであろう。
マスコミや一部評論家からバラ色の未来を運んでくるかのようにうたわれた「市場原理主義」。 競争によりサービスの質が上がり、国民の生活が今よりももっと便利に豊かになるというイメージだが、実態は全く逆の事態を招いている。
政府が、国際競争力をつけようと規制緩和や法人税の引下げで大企業を優遇し、その分社会保障費を削減する事によって帳尻を合わせようとした結果、中間層は消滅し、貧困層は「勝ち組」の利益を拡大するシステムの中にしっかりと組み込まれてしまった。
再び問いたい。 小泉内閣と竹中氏の政策は、一体誰の為に行ったのだろうか。 この内閣の5年間で得したのは、誰なのか。 この答えは、単なる固有名詞でない事は、明らかである。
今週は、「得するのは誰か 格差拡大を望む人々がいる 不都合な真実」と題して、目にあまる「不都合な真実」を、テーマとしている。 初回は、中山治氏の著作「格差突破力をつける方法」から、2回目は、堤未果氏の著作「ルポ 貧困大国アメリカ」から引用した。
最終の今回は、大前研一氏の「貯めるな 使え!」から「、国家全体が夕張化する日本 一気にハイパーインフレに進む危険性は高い」を、取り上げて締めとしたい。
どこの企業や官庁にも多かれ少なかれ「不都合な真実」がある。 国家にも、当然「不都合な真実」がある。 裏にどんな情報操作や謀略があるか分かったものではない。
●今日の引用資料
大前研一:著「大前流心理経済学 貯めるな使え」
■199−得するのは誰か 格差拡大を望む人々がいる「不都合な真実」
▼199−3 国家全体が夕張化する日本 一気にハイパーインフレに進む危険性は高い(FIN)
2006年6月、北海道の夕張市が財政再建団体の指定を申請、2007年3月に再建団体に移行した。 企業で言えば事実上の「倒産」で、潰れるはずがないと思っていた自治体の破綻にマスコミは大騒ぎになった。
しかし、少し考えてみれば夕張市と日本国家の財政状況は、全く同じである事がわかる。 夕張市の人口は約13000人、日本の人口は13000万人。 夕張の債務残高は、一時借入金、地方債、第三セクターなどの損失補償費などを含めて約630億円、日本の国債発行残高は2006年末で676兆円(財投債含む)
。 一人当たりの借金のレベルはほぼ同じで、規模を1万倍にして考えれば夕張市も日本国家も置かれた状況は全く変わらない。 それどころか地方の債務を含めた国の債務残高は約840兆円もあり、実は日本国の財政状況は夕張市よりも遥かに深刻なのである。 日本全体が今や完全に「夕張化」しているのである。 本来であれば、日本国家も夕張市のように大幅な職員の削減や給料カットを行い、一方で税金を上げなければ、ならないという議論になる筈だが、何故かそうはならない。
地方自治体が破綻しているのに、国が破綻しないのは何故か? その理由は簡単で、輪転機を持っているからである。 普通は輪転機を回しすぎるとインフレになって経済がおかしくなるが、国民心理が冷え切っているのでそのお金が消費に回らない。 在庫にもならない。 ごく限られた土地、商品(コモディティ)、ファンドなどに化けて出てくるだけで、一般の消費財には物価高という形で、波及していない。
目本国家の抱える危うさは、地下のマグマとしては大爆発寸前なのであるが、固い地表を突き破って出てくる迄には至っていない。 それゆえ国には危機感がなく、国民にも今の危機的状況に対する自覚症状がないのである。 しかし問題は、勝手に輪転機を回し続けても良いのだろうか。
輪転機を回し続け、国債を発行し続ければどうなるのか。 当然、今の冷え切った心理がどこかでプッツンしてハイパーインフレとなる。 日本人の集団心理としては、ひとたびインフレとなると一気に飛びつく可能性が高い。 お金は過剰供給されているわけだから、調整インフレ等と悠長な事を言っている場合では無くなる。 ブレーキが利かなくなって円も日本国債も完全に信用を失い、2001年末にアルゼンチンの国債が債務不履行を引き起こした時と同じ様な事態が起こるだろう。
日本政府が金融緊急措置法を発令して預金封鎖するといった最悪のケースも、無いとはいえないのである。 この時、21世紀になって初めて、日本に古典的な経済学の世界が到来する事になる。 現在は、国民の集団心理のおかげで金利さえつかない預金等に滞留しているが、その集団心理が崩れると、インフレから操縦の困難なハイパーインフレに進む可能性が高い。 日本国の公的債務は、対GDP比で見ればOECDでは最高値なので、そうした憂慮すべきレベルにある事は間違いないのだ。
更に日本の債務は、約800兆円だけではない。 実はそれ以外に特別会計歳出が、国の一般歳出の6.7倍ほどもある(一般会計と各特別会計の重複を除いた歳出統計、2006年予算ベース)。 この無駄遣いにはメスが入らないどころか、ブレーキすらかからず、特別会計を含む国・地方の歳出統計額は伸び続け、租税総額の3.6倍に速している。 こうした無駄遣いは、国会の審査も承認もいらないヌケ穴を使って行われているので、通常は公的債務を探しても出てこない。 各省庁が持っている特殊団体の特殊財源は、財投債などを発行してまかなっているからである。 しかしそうした団体の大半が赤字で、返済の目処が立だないのである。
これらの借金は、いずれ焦げつけば国家予算の側に付け替えなければならない。 道路公団の場合は、40兆円の債務の返済を45年間先送りしたが、民営化した道路会社がその利益を用いて返済する事は不可能だろう。 なぜなら、そのような負債を持った会社が上場できるはずもなく、仮に上場して利益を出そうとすれば、高速道路の通行料をさらに上げなくてはならない。
しかし、北海道で既に起こっている様に、税金で建設される国道が整備されてくれば通行料のかかる高速道路の利用者はいなくなるからである。 国鉄も民営化したときに借金を10年先送りしたが、その間に借金はむしろ増えてしまった。 その返済に充てる為にタバコ増税を行うなど、政府は思いつきで迷走したが、いまだに返済の目処はたたず、結局は国民が税金で払うしかない。
こうした国民の目には見えない借金主(特殊法人)が、大小合わせて全国に1000ほどもある。 これらの特殊団体が財政破綻した場合には最終的には国の責任になり、ツケは国民に回ってくる。 則政投融資というなの「裏」の借金は275兆円以上も存在しており、「表」の借金を合わせると1200兆円を超えるのだ。
更に年金の隠れ債務の存在もある。 深刻な少子高齢化の結果、国が今約束している年金を支払おうとすると、800兆円の財源が不足する。 つまり支払わなければならない年金という形で、国はここでも膨大な債務を抱えているのである。
当然、役人は三つの事を企む。 一つは年金の掛け金を上げる。 二つ目は支払額を減らす。 三つ目は支払い開始年齢を上げる。 今、年金問題が国民の怒りを買っているが、政府はこれを機会に今までバラバラにあった年金制度の統合を考えるだろう。 そして新しい制度にする時に、過去と脈絡のないものを作る事によって、隠れ負債を一気に解消しようとするだろう。 これが役人という種族の思考パターンである。
健康保険でも、赤字の政府管掌部分を黒字の民間のものと統合する機会を狙っている。 要するに今まで払ってきた人、特に大企業などで潤沢な年金や保険を目指して払ってきた人は泣きを見る反面、今まであまり払ってこなかった人も統合された新制度ではちゃんと受給できるようになる。 どちらが多数かといえば後者だろうから、選挙で問えばそうした新制度の温情政策がまかり通ってしまうのだ。
多数決で決めるという民主主義社会においては、為政者が無責任である場合、常に少数から多数への利益移転が行われてきたことを肝に銘じておくべきである。 国民を編さないと、国家自体が成り立たないところまで来ているのである。 誰がそんな国にしたのか、と今さら騒いでももう遅い。 それに気がつかない、あるいはそうした無責任な政府を許容してきた国民の作り出した問題なのだから。
国の債務が実際にいくらあるのか、その数字は今言われている公的債務676兆円の3倍、2000兆円規模と考えなければならない。 「公的債務」+「特殊団体の隠れ債務」+「年金の隠れ債務」の総計である。 これは国民一人あたりに換算すると2000万円。 勤労者一人あたり3000万円を超える。 どう考えてもこれだけの公的借金を勤労者が返済する事は不可能だろう。 しかもこの額は、日本が世界に誇る個人金融資産の合計額1500兆円を超えている。 つまり、税金で返済・負担できないばかりでなく、国民の金融資産を全部没収して使っても間に合わないのだ。 国がなぜ国民の貯金などを国内に留めておこうしているのか、じっくり考えてもらいたい。
●今週の引用資料
中山治:著 「格差突破力」をつける方法
堤 未果:著 ルポ 貧困大国アメリカ
大前研一:著「大前流心理経済学 貯めるな使え」
大前研一(おおまえ けんいち)
1943年、北九州市生まれ。早稲田夫学理工学部卒業。 東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツエ科大学大学院で博士号を取得。 現在(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。 2005年にビジネス・ブレークスルー大学院大学を設立、学長に就任。 世界的なオピニオンリーダーとしてグローバルな視点から国内外に提言を続けている。 「新・国富論」「サラリーマン・サバイバル」「ザ・プロフェッショナル」「ロウアーミドルの衝撃」(本稿146便)、ダニエル・ピンク:著 大前研一:訳 ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代 (本稿152便)、など著書多数。
最後までご覧頂き有難うございました。
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