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2008/09/15

学園改革支援の『開窓』−「二つの目標」−

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【 学園改革を支援する『開窓』 -078-】2008年9月号

私立学校の改革をお手伝いするメールマガジンです。
現場の声でトップを動かし、改革を推進するためのヒント集。
改革をゴールにせず、スタートにしなければ意味がありません。
そのプロセスを実現するのは、あなたです!

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○○「二つの目標」○○


朝夕はだいぶ過ごしやすくなったものの、昼間の蒸し暑さは変わりません。
東京の暑さは自然のものではなく、人工的な臭いがして嫌な感じです。
敬老の日。私は卒寿の祖母を連れ、佐島マリーナまで逃避ドライブ。
砂浜の貝殻を、時間を忘れて眺めたり集めたりしました。
この連休が明ければ、いよいよ入試準備も本格化しますね。
気候の急変にも気を配り、健康第一で私学界のために頑張りましょう。



前回のメルマガでは「視点の制約」についてお話ししました。
今回はそれに関連して、「目標」の設定の違いについてお話しします。
目標には二つの種類があり、それぞれが相互に連関しています。



学校改革においては企業の事業計画と同様、目標は大きく二つに分かれます。
一つは学校の将来における存続や発展を実現するための中長期目標です。
もう一つは現存する問題を打破し、方向性を転換させるための短期目標です。
(ただし短期目標には、現状強化や突発事項への対応なども含まれます。)

中長期目標と短期目標との上記存在理由の違いを明確に意識すべきです。
両者の存在理由の違いが分かれば、正しい目標設定の順序が見えてきます。

中長期目標は将来における学校の存在理由そのものにもかかわる指針です。
したがって、現場の声を集約して設定するだけでは不十分な内容となります。
職員会議を学校の最高意思決定機関としている場合、この危険が高まります。

逆に、短期目標は現場の諸問題や負荷を解消することが主たる目的であり、
上意下達型の指令のような目標設定では、かえって事態を悪化させます。
オーナー学校に見られる唐突な方針転換は、まさにこの典型例であります。



「経営悪化や問題発生の根幹は、システムにある」とよく言われます。
ではそのシステムとは具体的に、何にかかわるどのシステムなのでしょうか。
財務管理なのか、募集組織なのか、それとも学事決定のシステムでしょうか。
こうした感覚的かつ漠然とした気持ちでの発言は、原因を看過しやすいもの。
事態の大もとをたどっていけば、必ず目標設定の過ちに到達するはずです。

単純に目標設定の過ちと言っても、その態様はまさに千差万別。
私の知る限り、最も多いケースは、目標設定そのものが不在である場合。
何となく現場が動き出し、それを執行部が追認したために発生したケース。
上下の意思疎通が不十分だと、そんな馬鹿げた事態も発生してしまうのです。

中長期目標でありながら、職員会議の意向によって決定される場合も然り。
短期目標でありながら、オーナーの思いつきによる上意下達の場合も然り。
管理者と運用者との意思疎通は、組織におけるライフラインなのです。
執行部は現場の苦渋に思いを馳せ、現場は執行部の意思決定に知恵を貸す。
こんな当たり前のことが、実は多くの学校でなされていない事実があります。



では、なぜこのような不可解な実態が存在するのでしょうか。
それは多くの場合、そこに去来する人心のすれ違いに端を発します。
「自分より先に後輩や同輩が出世したから。」そんな心の狭い人間もいます。
「自分の考えに従わない周囲の人間が悪い。」そんな荒んだ心の人もいます。
「自分は誰よりも優れているから今のままで良い。」これは論外ですね。

誰もが学校の将来を憂え、協同による組織の成長を下支えする。
そのような理想的な職場を築くのは、上長や上司の仕事ではありません。
誰もが同じ責任と義務と権利とを、学校組織との間で共有しているのです。
現場の一人一人がその意識を持続しなければ、組織に将来はないのです。

そもそも個人的な遺恨から組織に対する発言をなせば、それだけで有害です。
そのような人物は、教育という尊い土壌で職務に当たる資格はありません。
もし度が過ぎるようなら、証拠を集積して威力業務妨害で告訴すべきです。
そうした人物は現場の生徒に対しても、きわめて有害であるからです。
私は一方的な個人排除には反対ですが、生徒の将来を守る義務を優先します。

これから社会に旅立つ生徒たちのために、我々教員はどうあるべきか。
その答えは単純で、「よき社会人であれ」の一言に尽きます。
目先の我欲を捨て、より大きな理由のために全身全霊を傾ける姿勢を示す。
それができなければ、どんなエリート教員でも生徒からは受容されません。
当たり前のことですが、職場の同僚からも相手にされなくなってしまいます。

しかし残念ながら、教員の性として、職場では個人主義的要素が強くなる。
授業、学級担任、部活動。お山の大将でいる時間は案外と長いものです。
「自分自身を制御し組織観を持って大局を見渡せる人物」を雇用しましょう。
相手の立場に立つことのできない人物は、生徒指導も中途半端で終わります。



厳しいことを書き連ねましたが、私学はある意味において企業です。
公立よりも高い学費をいただいて、それをベースに学事を提供しています。
相手の立場に立つことは顧客意識の源です。顧客満足度に直接影響します。
それを考えれば、OJTなどの人材育成の重要性がご理解いただけましょう。
ひいては学校の将来を左右する目標設定にも、重大な影響が見込まれます。

このことを踏まえ、もう一度、目標設定について整理してみましょう。
なぜ踏まえる必要があるのかと言えば、組織の人的資質が重要だからです。
大局を見ることのできない現場。小局への着手に満足する上長や上司。
そんな組織では、将来はおろか、今を生き抜くことも困難になりますから。



ほとんどの学校組織では、学事再編や重要案件の決定に職員会議を要します。
確かに現場の意見や情報を織り込むことは、大切な基礎事項です。
しかしその職員会議が目先の意見一辺倒であるとしたら、これは無意味です。
時と場合によっては、中長期目標に対する悪しき瑕疵をはらむことにもなる。
先読みのできない、個人主義的な意見が横行するなら、まさに逆効果です。

職員会議がそうした方向に進むのは、実は現場の責任ではありません。
人材育成の努力を怠り、馴れ合い的に現場を管理している上長の責任です。
(言い換えれば、管理そのものができていない管理者と言えるでしょう)
職務を現場に丸投げし、結果についてのみ発言をさしはさむ上司は不要です。
もしあなたがそのタイプの上長だとしたら、今すぐに考え直してください。

上長上司であれ、現場の一教員であれ、組織の大切な屋台骨なのです。
正しい視野を持ち、正しい意見を発することのできる人材を揃えたい。
そう思うなら、上長上司が率先して腹を切る姿勢を示さなければなりません。
また、現場教員に対する人材教育を、適時適切に遂行しなければなりません。



中長期目標の設定には、現場の日常業務からの意見集約は避けましょう。
職員会議を通す必要があっても、それは瑕疵発見のためでしかありません。
将来的な学校の在り方である中長期目標は、総括総和目標地点をめざします。
つまり、個々の教員の目先の反応に、すべて対応をとる必要はないのです。
必要なのは歯車の噛み合わせのために、誤解を解く説明をすることだけです。

中長期目標は企業で言うところの「事業計画案」と同等の内容をめざします。
財務の知識と勘が必要であり、現場教員が左右できるレベルではありません。
もちろん中には、財務管理の学習を積んだ人物もいるかもしれませんね。
そうした人物を経営企画に取り込むことは、現場との意思疎通に有益です。
ただし、特別な存在として扱うと、彼が現場から敵視されるので要注意です。

実際には現場の教員であっても、減価償却さえ正しく理解できていないもの。
学校の存続をテーマに財務管理の学習会を開会するのも、有効だと思います。
その流れの中で、現場教員から中長期目標への提案を収集するのであれば、
意外と有益な意見や意思表示が得られるかもしれませんね。
あくまでも大局に立った立場で、一人一人が考えることが重要です。
そして、執行部は自覚を持って主導的に目標設定しなければなりません。



さて、短期目標の方ですが、実はこちらの方が扱いは厄介です。
先述の通り、現場の諸問題や負荷を解消することを主たる目的とします。
これには冷静な現状分析と、正確な原因分析が要求されるのです。
プラス加速型とマイナス修復型。どちらのケースでも同じ手順です。
だからこそ、現場次第でその内容は大きく明暗を分けることになります。

人材育成を怠っている組織では、感覚的な意見ばかりが横行しています。
その結果、冷静かつ正確な対応ができずに、付焼刃的な反応となります。
これは恐ろしいことで、真綿で自分の首を絞めても気付かない状況です。
その状態を放置するならば、数年のうちに組織が破たんする危険を孕みます。
財務状況が悪化傾向にある場合、5年と持たないケースもあり得るでしょう。

短期目標の設定においては、ある程度、劇的な変化を誘発したいものです。
そうは言っても、奇を衒うような奇異な発想は絶対に避けてください。
(一例として、教員を一般企業に一年間出向させるなど。本末転倒です。)
できれば、生徒や保護者の発想を取り入れたいものですね。
ただし、現実的な対応の範囲を超えるのは、組織として過重負担になります。

短期目標の怖さは、達成そのものではなく、実は別の箇所に存在します。
最大の恐怖は目標が目的化してしまうこと。短期ならではの落とし穴です。
目標達成そのものが目的化してしまい、学事が置き去りになるケースです。
目標設定に理由があったことを忘れてしまい、ノルマだけが生き続ける。
そうなるのは、理由のない仕事を現場が遂行していることに起因します。

短期目標については一覧表を作り、設定理由を併記するのが良いでしょう。
部署ごとの任務パッケージと期限、着地点も併記するよう努めましょう。
他部署間で影響し合う任務パッケージを、同色で表示する工夫も必要です。
執行部の許認可が必要と思われる任務は、着手前に上長上司に説明を。
そして何より、「生徒のために」の6文字をタイトルに記載したいものです。



目標を達成することは、組織に課せられた当然の責任と言うことができます。
しかし大切なのは、教育機関として、血の通った信頼性を確保すること。
それには様々な工夫と我慢、そして説明責任が常に付きまといます。
だからこそ、我々教員は、いつでも「よき社会人であれ」ということです。

成長心を持って、自戒を込めながら職務に向き合って生きましょう。
冷静に状況判断し、自我を極限まで抑え、公共公益のために生きましょう。
その姿勢こそが凋落したこの国の教育を立て直し、若者の自己を呼び覚ます。
私はいつも、その考えを崩さずに毎日の職務に当たっていきたいと思います。
卒業生に恥をかかせないこと。その親心が教育の原点ではないでしょうか。






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 【発行者】       【 学園改革を支援する『開窓』】
               スクール・アイデンティティ研究室
                       代表  藤井 宗茂

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