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ラルフ達主人公の友情と恋愛、そして戦いを描いた新しい形のSFファンタジー。エミリーを助けるべく、ヴェスターに乗り込んだラルフ達の前に、皇帝アーリアの罠が次々と立ちはだかる。果たしてラルフ達は、エミリーを無事に救出できるのか?全てを賭けた戦いが今始まる。

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2008/08/31

ヴェスター第294話 「久しぶりの2人」

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  ヴェスター(Vester) : Vol.294
  発行日:2008/08/31
  発行元:VesterProject
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◇第294話 久しぶりの2人◇
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 ラルフ達は、ティアナの案内で、ワープポッドの部屋までやってくると、
そこでは既にセッティングが完了していた。
「ワープポッドの準備・・・もう終わってたのか?」
 ラルフが驚いた表情で尋ねると、ティアナはぎこちない笑みでウンと頷く。
「実はね・・・イリノア様が準備してたらしいんだよ。」
「・・・てことは、イリノアは、まさか最初から・・・」
「ウン、最初から、ラルフちゃんとニーナちゃんを、フィールに連れていく
つもりだったみたい・・・」
「ったく、イリノアも、意地が悪いな。」
「ティアナさん、イリノアさんにありがとうって伝えてください。」
 ニーナが会話に入ってきて、ようやくティアナはホッとしたのか、体から
少し緊張がとける。
 それがニーナにもわかったのか、そんなティアナの様子を見て、思わず苦笑を
浮かべる。
 ティアナは、ラルフのことを恐れているのだ。
 さっき見せた、まるで別人のようなラルフの凄まじさに・・・
 感情を爆発させたラルフの鬼神のような表情と強さに・・・
 そして、ラルフもティアナの様子が少し変だと感じたのか、ティアナの方を
不思議そうに見つめる。

「そ、それじゃ、2人ともワープポッドの中に入って・・・」
 ティアナがそう言うと、ラルフとニーナはワープポッドの中に入る。
「あっ、そうだ。ニーナちゃん、これ持って行って。」
 ティアナはそう言うと、謎の小型アイテムをニーナに渡す。
「なんだ、それ?」
 ラルフが尋ねると、ティアナは恐る恐る答える。
「そ、それはね・・・携帯用のテントだよ。
 スイッチ押すだけで簡単に使えるし、片付けるのも楽だから使ってね。」
 ティアナはそう言うと、ワープポッド制御装置の方へ向かう。
「な、なあ・・・なんか、ティアナの様子、おかしくないか?」
 ラルフがこっそりニーナに尋ねるが、ニーナは苦笑するしかなかった。
 自分を必死に守ってくれたラルフのことを、ティアナが怯えている。
 ニーナには、とてもラルフにそんなことは言えなかった。
「さ、さあ・・・どうしたんだろうね?」

 2人が入ると、ワープポッドが閉じられる。
「転移先は、浮遊大陸フィールの南東の端、ヴェルガント神殿から約10キロ
離れた位置です。
 ヴェルガント神殿の近くは、現在、最高レベルの警戒態勢が敷かれていて、
いきなり突入するのは危険だから、少し離れたところにしてるよ。」
「何から何までありがとう、ティアナ。」
 ラルフが笑顔でそう言うと、ティアナの表情が突然曇る。
「ゴメンね、ラルフちゃん・・・」
 突然のティアナの謝罪に、ラルフは驚く。
「どうして、謝るんだ?」
「ラルフちゃんが、本当はとっても優しい人だってこと、すっかり忘れてた。
 でも、さっきのラルフちゃんの笑顔で、そのことを思い出すことができたよ。」
 ティアナはそう言うと、笑顔を見せる。
「?」
 一方、ラルフには、何のことやら、さっぱりわからずにいた。
「ラルフちゃん、ニーナちゃんのこと、しっかりと守ってあげるんだよ。
 ニーナちゃんも、ラルフちゃんのこと、守ってあげてね。
 ラルフちゃん、目を離すと危ないからね。」
 ティアナがそう言うと、ニーナは笑顔でウンと応える。
「おい、それじゃまるで、俺が危ない奴みたいじゃないか。」
 ラルフが少しムッとした表情を浮かべるが、そんなラルフの表情を見て、
ティアナはクスクスと笑う。
「ゴメンゴメン・・・それじゃ、そろそろいくね。」
 ティアナがそう言うと、ラルフとニーナは静かに頷く。
 とはいえ、エネルギーも充填しており、あとはスイッチを入れるだけだった。
「ワープポッド、発射!!!」
 ティアナが静かにスイッチを入れると、ワープポッド内部は眩いばかりの
光に覆われる。
 そして、その中にいたラルフとニーナは、その光に吸い込まれるかのように、
姿を消していく。
 やがて、光が収まると、ワープポッドの内部には、誰もいなくなっていた。
「ラルフちゃん、ニーナちゃんに、いつかまた、きっと会えるよね。」
 2人を送り出した無人のワープポッドを見つめて、ティアナは静かにそう
呟いた。

 気がつくと、ラルフとニーナは、森の奥深くに姿を現していた。
 日はもうすぐ暮れようとしており、辺りは暗くなり始めていた。
「ここが、フィールなのか?」
 ラルフが、周りを見渡すが、辺りは木が生い茂っていて、よくわからなかった。
「やっと、ここまで来れたね。」
 ニーナはそう言うと、ラルフの方を笑顔で見つめる。
「体の方は大丈夫、ニーナ?」
 ラルフがニーナに尋ねると、ニーナは笑顔で大丈夫と答える。
 とはいえ、さすがに、ルードとメキドとの連戦で、ニーナに休養が必要なのは
明らかだった。
 ラルフは辺りを見渡す。
 すると、森の奥の方に、小さな洞穴があるのが見えた。
「街の方に行くと、いろいろやっかいなことになりそうだから、今日はあの
洞穴で一晩過ごそう。」
 ラルフがそう言うと、ニーナは嬉しそうにウンと頷く。
「じゃあ、私、先に行ってるね。」
 突然、ニーナが走りだすと、慌ててラルフが追いかける。
「ちょ、ちょっと、ニーナ?」
 ニーナは、今、体力も魔力もないはず・・・
 それなのに、妙にはしゃぐニーナのことが、ラルフは心配で仕方がなかった。
 ラルフは、前方を走るニーナに追いつくと、ニーナの肩を掴む。
「ニーナ、今は、大人しくしていた方が・・・」
 だが、ニーナは笑顔で首を横に振る。
「ウウン、大丈夫だから・・・」
 ラルフには、どうしてニーナがこんなに楽しそうなのか理解できなかった。

 洞穴は、それほど大きくなかったが、テントを張る分には十分の大きさだった。
 2人は、携帯用テントを洞穴の中に張り、中に入る。
 テントと言っても、それはコテージに近いものだった。
 しかも、中には、冷蔵庫、キッチンから、トイレ、シャワールーム、ベッドまで
生活するのに十分な設備が整っていた。
「うわあ、ティアナさんからもらったこれ、すごいね。」
「超人類の技術を、こういうところだけで生かしてくれればいいのにな。」
 ラルフがそう言うと、ニーナはクスッと笑う。
 とにもかくにも、ニーナが回復するには、最適の環境のようだ。
 ラルフは、テントの中を見渡して、安心した表情を浮かべる。
「お腹すいたでしょ?もうそろそろ夕方だし、夕飯作るね。」
 ニーナはそう言うと、キッチンへと向かう。
 冷蔵庫を開けると、そこにはたくさんの食材が入っていた。
「ラルフ、これ、本当にすごいね。」
 改めてニーナが感嘆の声をあげる。
 そんなニーナの姿を見て、ラルフの表情にも笑みが浮かぶ。

 ニーナは冷蔵庫の中から色々と取り出すと、食事を作り始める。
 そう言えば、ニーナの作る夕飯を食べるのは、どれくらいぶりだろう?
 夕飯を作るニーナの後ろ姿を見て、ふとそんなことを考える。
 それは、何だかとても暖かくて懐かしい光景。
 そして、なぜか、泣きたくなる光景。
(そうか、ガイガードにいた頃以来だな。)
 思えば、ガイガードにいた頃は、ずっとこんな感じの生活だった。
(もっとも、あの頃はエミリーやガルックも一緒にいたけど、でも、今は俺と
ニーナの2人きり・・・)
 そこで、ラルフはようやく気がつく。
(そうか、今、俺とニーナの2人きりなんだな。)
 2人っきりになるのも、一体どれくらいぶりだろう?
 そう考えると、この時間がとても貴重なもののように感じられてくる。
 ヴェスターに突入してから、ニーナとはずっと離れ離れだった。
(それもみんな、俺がふがいなかったからだ。)
 ヴェスターに突入してから、ニーナを守りきれなかったことを思い出すと、
ラルフは今でも自分自身への怒りが湧いてくる。
「どうしたの、ラルフ? 怖い顔して・・・」
 いつの間にか、ニーナが、ラルフの目の前に来ていた。
「な、何でもないよ。」
「そう・・・よかった。」
 ニーナはそう言うと、笑顔を見せる。
(せっかくニーナと二人きりになれたのに、何で、こんなくだらないことばかり
考えてるんだろう、俺?
 これから、ニーナのことを守り通せばいいだけのことじゃないか。)
 そう考えると、スーッと胸につかえていたものが取れたような気がした。
「夕飯の手伝い、俺もしようか?」
「ウウン、いいよ。私がやるから、ゆっくりしてていいよ。
 ラルフにご飯作るの、これが久しぶりだしね。」
 ニーナはそう言うと、嬉しそうにキッチンに戻っていく。
(そうか、もしかして、ニーナがはしゃいでいたのって、これのことだった
のかな?)
 そんなことを考えると、ラルフの表情に自然と笑みがこぼれる。

 そんなラルフとニーナの2人が、楽しそうに過ごしているテントの映像が、
既にヴェルガント神殿の中央作戦室のモニターに映し出されているなんて、
ラルフとニーナも全く想像していなかった。
「侵入者、発見。」
「テントを張っているところを見ると、今日は来ないつもりか?」
「聞けば、四天王と戦った後だって言うしな。さすがに今日は無理だろ。」
 司令室にいた兵士達は、少しだるそうにそう言っていた。
「あーあ、早く非番にならないかなあ・・・」
 そう言った兵士の一人があくびをしながら後ろを振り向く。
 その瞬間、兵士の体が、恐怖で凍りつく。
 それに気づいた周りの兵士達も、その兵士の見ている方に視線を向けて、
思わず固まる。
「ザ、ザビデム様!!!」
 司令室には、いつの間にかザビデムが姿を現していた。
「ほう、ようやくフィールにやって来たか。」
 モニターを見ながら、不気味な機械声でそう呟く。
「せいぜい、楽しい夜を過ごすがいい。この世で最期の夜をな。」
 ザビデムはそう言うと、カラカラカラと不気味な笑い声を上げる。
 それを聞いていた周りの兵士達は、そのあまりの不気味さに、思わず鳥肌を
立てていた。

(続く)
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◇登場人物◇
・ラルフ=ガートナー
ガイガードに住む17歳の少年。伝説の武器ヴェクト・ソードを使いこなす。
・ニーナ=ルクライエ
ガイガードに住む17歳の優しい女の子。不思議な能力を持っている。
・ガルック=ソート
キルアに住んでいた17歳の少年。魔法と覇王流という剣術を使う。
・エミリー=ガートナー
ラルフの妹で、15歳の女の子。子ども扱いされるのを、非常に嫌う。

なお、登場人物の紹介は、VesterProjectのHPで詳しく紹介しています。
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