さてさて、ご無沙汰してしまいました。スピーカーセッティングの続きです。

どのスピーカーが良い、といった話はあちこちで議論されていますし(ま、あまり当てになりませんが)ここではなるべく大局的な話をいい加減に書きたいと思います。

現在の主流はパワードモニターですね。確かにコストパフォーマンスの他、メリットがいくつかありますが、私は聞かれればいつも、パッシブモニターを勧めています。パワードは精密にセッティングしにくいからです。

何度かこのコーナーにも書きましたが、セッティングはケーブルとプラグの選別で行い、そこから精密なセッティングは、ケーブルの長さで調節します。パッシブの場合、スピーカーケーブルの長さで非常にシビアに微調整出来ます。1cm単位で切って試聴して、切って試聴して、100%納得するところまで比較的簡単に辿り着けます。

パワードの場合、背面についてる調整スイッチもありますが、+-3dBなど、おおざっぱな物ですね。ケーブル切りもやろうと思えば出来ますが、ケーブルを切るたびに、プラグを半田付けしなくてはなりません。モニターセッティングのために、半田キットを用意するはめになりますし、そもそも手間がかかりすぎて、5回も切るうちにうんざりしてきます。しかし、ある程度の調節はもちろん可能です。

これを読まれてる皆様、1cm単位と聞いて、そんなバカな、おれはそんな耳は持ってない、と思っているかもしれません。でも実際やってみると、あー3cm切りすぎたー、やり直し!という判断が、誰でも必ず出来るようになってるはずです。セッティングを煮詰めていくと、人間の耳は自然に研ぎすまされていくように思います。

試しにやってみて下さい。一度この精度でまじめにセッティングして、自宅リファレンスを完成させた後、他人のスタジオに遊びに行ってみて下さい。
「なんでこの人は、11kのピークが気にならないんだろう、このプラグ変えればいいのに・・・」
みたいな、そのスタジオのモニター環境が、いかに不完全なものか、またその解決策までも、すぐに思い浮かぶようになると思います。

YAMAHA NS-10Mを使っている方は多いと思います。私もサブとして愛用していますが、10Mは実はこのようなシビアなセッティングの違いを、あまり繊細に出してくれないスピーカーです。そこが互換性として良い所でもありますが、とりあえずセッティングはもう少し大雑把となります。


★リファレンスモニターの目標

さて、世界共通の普遍のセッティング。それが出来ればベストですが、そもそもそんなモノがあるのか無いのか、その議論はまた別の機会に譲るとしまして、ここでの目標は、あくまで「自分の理想の音」です。
まずアナタが尊敬する音、素晴らしいと評されるCDを何枚か鳴らして、この曲を自分がミックスしたと想定し「自分だったらこのくらいにする」というバランスにピッタリ合わせます。

「おれだったら、もっとハイを強調するかな」と思えば、これ以上必要ないと思う所までハイを出すセッティングにします。そのバランスは必然的に、アナタの理想の音です。その環境で作業すれば、自分が何も考えずに正しいと思ったバランスが、素晴らしいCDとイコールという事になります。このスピーカーだからこの位がちょうどいいはず、といった余計な計算は不要になるわけですね。


★高域のセッティング

そのセッティング方法をご紹介します。そこには万物?の法則があります。とても簡単です。

銀色=硬い
金色・銅色=柔らかい

これだけです。
スピーカーケーブル、オーディオケーブルの内部の線材、電源ケーブル、プラグ、これら全てにこの法則は当てはまります。分かりやすいです。

例えば銀色の線材を使っているケーブル(ベルデンやバイタル等)を長く引くと、どんどん音が硬くなっていきます。銅色の線材が使われるカナレ、モガミ、これを長く引くと柔らかくなっていきます。金プラグは音を柔らかくし、銀プラグは鋭くします。電源プラグも、銀色のメッキされたものは音を硬くし、銅色ムキ出しのものは、ふくよかな印象を与えます。

この見分け方さえ知っていれば、始めて使うケーブルも、プラグを空けて、中の線材を見るだけで、およそどういう傾向の音か予測出来ます。高価な電源ケーブルも、プラグを見ただけで一目で傾向が分かりますから、自宅リファレンスの問題点と照らし合わせ、買うべきかどうか事前に判断出来ます。

もし、現在の音がちょっと硬いな、と感じる場合、まずやる事は原因の特定です。ケーブルに銀色線を使っていたら、銅色線に変更します。プラグも、ノイトリック金に変えてみます。電源の変更も検討すべきかもしれません。電源プラグの音変化は絶大です。
ケーブルを銅色線に変える時、わざと長めにケーブルを用意します。一旦柔らかすぎる環境を作り、ケーブルを少しづつカットしていき、適正のバランスまで戻して行く作業です。

現在の音が柔らかい場合は、反対の事をします。ノイトリック銀に変え、スピーカーケーブルにWEなど銀色線を長く引き、一旦硬すぎる音を作ってから、少しづつカットし、柔らかくしていきます。


★補足

ケーブルは出来るだけ短く使わなければいけない、とよく言われますが、これは必ずしも正しくありません。音を汚すダメケーブルなら短い方がいいですが(そもそも使わない方がいいですが)フラットなケーブルの場合、遠慮なく長く引いて、積極的にセッティングに利用した方がメリットが大きいです。一旦硬すぎる音、柔らかすぎる音を作る場合、まず10mくらいから試してみると分かりやすいです。

私は一時期、トランスやアース機器の影響で、硬くなりすぎた音を柔らかくするために、VVFケーブル(銅色線)を17mも引いていた時期があります。8畳の部屋で、です。馬鹿げた話ですが、しかし狙い通りの音を鳴らしていました。

もちろん、この法則だけでは一筋縄にいかない場面もあります。モガミ2534はある所まで音は変わらず、そこから柔らかくなっていく、とか、3m、5mだと硬くて使えないのに、ある一定以上、とても長く引くと、銀メッキ線でも硬い印象が無かったり、といった現象もあります。

そこには様々な要因がありますが、面白い一例があります。
長い距離の間、電源ノイズを受けるだけ受けたケーブルは、特に高域が劣化してしまう事をベルデンはあらかじめ想定して設計してあるそうで、そのため相当距離を引くと、増強していった倍音が電源ノイズ分を相殺し、プラスマイナス0に近くなる・・・のだそうです。なんという技術力!

その他にも、太さが倍になると、距離を倍にした事になるのか、ならないのか、線を2本束ねると距離2倍分の音に相当するのか、などなど、、、、

つきつめていくと複雑ですが、基本は常に、変わりません。銀色は硬い、金メッキ・銅ムキ出しは柔らかい、です。あとは付加的要因です。

少し細かく書きます。金メッキは確かに音を柔らかくします。柔らかく、というのは、高域のチリチリした部分が収まる感じです。銀色メッキはその部分を強調します。で、メッキレスの銅色ムキ出しプラグですが、柔らかくするというより、メッキによる音変化をバイパス出来る、と言った方が正確かもしれません。


★メッキレスの効用

普通の自宅環境で使われている電源タップ、プラグのほとんどは、普通、銀色のメッキです。ニッケルですね、そのメッキが、何十個も合わさった音を我々は当たり前のように聞いています。

具体的にメッキの数を数えてみます。電源タップ内のメスプラグ、電源ケーブルのオスプラグ×2、コンピューターのメス、オーディオインターフェイスのメス、バランスケーブルのオス×2、卓のメス×2、アンプまでのケーブルオス×2、アンプのメス×2・・・・

つまり最終的に、ほとんどメッキの音を聞いてる状態です。とても硬い音に変わっています。それでも音楽が聞けるのは、それほど硬くしないと合わないくらい、電源ノイズによって高域が濁り落ちているとも言えます。何らかの方法で電源ノイズを減らすと、硬くて聞いていられなくなります。

ここに、銅色のメッキレスプラグを入れると、メッキが作っていた高域のゆがみが取れ、多くの場合、元々はもっとふくよかで、リッチな音だった事が分かると思います。結果的にメッキレスは柔らかい印象となります。
スピーカーケーブルに銅色線を使う場合、長く引くほど柔らかくなる理由は少し異なります。これは後述します。

正直に書きますと、本当は今の音が硬かろうが柔かかろうが、電源プラグのメッキレス化、シールド化は、どなたもやって頂きたい事ではあります。ここが出発点のように思います。次にアース対策もどうしても必要と言えます。これらでDAWの音がまるっきり変わってきますから、そこから、上記のようなセッティングが始まると考えています。
セッティングだけで何とかする事は、ピンぼけした写真を後からシャープ加工するようなものです。本来は最初からビシっと撮らなければなりません。しかしまあ、金がかかるわけですし、簡易的なセッティングだけでレベルアップ出来る事も確かです。


★低域のセッティング

ここまでの考え方は、ミッドに対して、ハイをどの程度出すか、というセッティングになります。ミッドに対して、低域をどの程度出すかというセッティングは、スピーカーの位置決めで行います。

基本は周知の通り、背後の壁に近づけると低域増強、離すと反対の効果がありますが、その時、壁からの反射音は逆相関係となり、特定の帯域に干渉し、打ち消し合ったり、濁らせたりするため注意が必要です。

下記はスピーカーの前面から背後の壁まで距離と、その干渉が起こる周波数です。

10cm 858hz
20cm 429hz
40cm 214hz
80cm 107hz
1m  86hz
1.6m 54hz
2m  43hz
2.6m 33hz
3m  29hz

参考:クリストファ・アーネット(ジェネレック)

壁から20cm以内であれば、その帯域はスピーカーの指向性が強いため大きな問題となりにくく、3m以上離せば干渉する周波数が可聴範囲を超えるため問題となりません。まあ、天井や床、卓などの干渉もあるので、あまり考え過ぎるとはまります。


その3に続く(かも)

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