東北ザリガニの薬用効果 その1
第175回
ザリガニの胃石は、薬になる
ザリガニと言うと、アメリカザリガニを、真っ先に連想するでしょうが、
あれは外来種ですから、薬用についての経験は見当たりません。
今回は、東北ザリガニ(Cambaroides dauricus)を取り上げます。
東北ザリガニは、東北の寒い河川、湖などに生息しています。
ザリガニは漢字では、蝲蛄と書き、
この蝲(虫+刺)は、蝲ラツは辞書にもあまり出てこない珍しい字です。
蝲ラツは、ラッパ(喇叭)のラツだといえば、
そういえば、見たことがあるでしょう。少し違うけど。
喇蛄を音読みすれば、ラッコとなり、ザリガニっぽくないですね。
現代中国の簡体字では、刺蛄と書きます。
江戸時代に描かれた「千蟲譜」栗本丹洲(くりもとたんしゅう)著には、
ザリガニCambaroides japonicus の図が有って、胃石についてもふれています。
図で見ると、アメリカザリガニの大きくないのに似ています。
「奥州の南部、津軽の谷川に多い。最近では、蝦夷に多い。
喜んでアトズサリする。それ故にサリガニという。」
「蝦夷方言では、シャリカニという。
冬の間、冬眠しているものの腹に、白い石があるものもあり、ないものもある。」
「拉姑、別名蝲蛄。サリガニ、シサリガニの略語である。」
ザリガニの名称の由来と、胃石について、述べています。
なお、栗本丹洲は、江戸幕府の医官で、
本草学(薬物学)の一環として、蟲の研究をしたと、
前書きには書かれています。
しかし、本草学的な記載は少なく、生き物そのものに興味があるようです。
さて、ザリガニが虫類かどうかですが、やはり虫類薬です。
虫偏の漢字名ですし、「千蟲譜」にも収載されていますから。
足があるから、蟲ですね。
「動物本草」 楊倉良先生、斎英傑先生 主編、中医古籍出版社 2001年
「中国海洋湖沼薬物学」学苑出版社、玉賈海先生編著、1995年
の二つに、東北ザリガニ(東北刺蛄)の薬用についての
記述がありましたので紹介します。
その両方に、図がモノクロで載っているので、
色は分かりませんが、アメリカザリガニと形は良く似ています。
肝硬変に対する動物薬 その4
第174回
肝硬変にはロバの乳
◎ 驢馬の乳100ml
用法:朝早くロバの乳を搾る。
その後、ハトの卵大の白い石を、ロバの乳の中に半時ほど入れる。
濾過して、飲む。1日1回。
解説:この処方はウイグル自治区のハミ地区の民間の秘方である。
かって、多くの例の肝硬変の患者を治癒した。
出典:新彊ハミ地区約医験方
◎紫珠125g、鶏卵4個
用法:紫珠(しじゅ)と鶏卵を一緒に鍋で煮、卵の殻を取り除き、
もう3時間煮ると卵が黒くなる。1日に2回、1回に1個たべる。
50日間連続で食べると、肝臓が軟らかくなって治癒する。
解説:紫珠(しじゅ)は馬鞭草科の植物 大葉紫珠であって、
この処方では、枝と葉を半分ずつ用いる。
出典:貴州民間方薬集
◎鯉魚1匹、紅花子30g
用法:紅花子(こうかし)を搗きつぶして、布袋に入れ、水を加えて魚を煮る。
スープを飲み、魚も食べる。
出典:河南省万城県「浮腫病土単験秘方彙編」
◎螻蛄(ロウコ:おけら)6匹、
用法:炙って乾燥させ、研いで細かい粉にする。
上記の量を1日分とし、3回にわけて服用する。
解説:この処方は肝硬変による腹水を治療する。
服用後1〜2時間で尿量、回数が増加し、腹水がだんだん消退して行く。
軽症者は2〜5日、重症者は8〜15日で、腹水が消除される。
出典:延辺中草薬
◎小気蛙(?)1匹、巴米7個
用法:巴米を蛙の腹に詰め込み、火で炙って乾燥させる。
上記の量を1回分とし、黄酒に入れて服用する。
注:気鼓を治す。重症者は3匹、軽症者は2匹で、好転する。
出典:信陽市竜学純先生
(注:小気蛙が何であるか、調べたが不明)
脾臓肥大
◎五霊脂(ゴレイシ:ムササビの糞)、香附子各240g、黒白丑30g
用法:一緒に研いで細かい粉にする。丸めて、緑豆大にする。
朝夕空腹時に各6g服用する。年齢により加減する。
(黒白丑は、朝顔の種のこと。ウシではない。)
脾臓肥大
鼈甲(ベッコウ:亀の甲羅)500g
用法:黄色くなるまで炙り、研いで細かい粉にする。
1日に3回、1回に6g、黒砂糖で味付けし服用する。
肝硬変に対する動物薬 その3
第173回
鯉は意外なことに薬効がある
◎鯉魚1匹(500g〜2kg)、大腹皮、猪苓、防已、沢瀉 各9g
用法:魚の腹を開いて洗浄し、内蔵を除去し、
上記の4薬を魚の腹のなかに納める。
それを煮て、滓を取り去り、魚を食べ、スープも飲む。
注:500gの鯉は、1日で食べること。500g以上のは、2日で食べること。
1日平均500g前後でよい。
鯉を7日間食べた後は、大腹皮など4薬を煎じて、服用し続けること。
出典:山東省衛生庁編「山東中医験方集錦」
◎鯉魚(約500g)1匹、紅皮蒜9弁、砂仁(研いで粉にしたもの)9粒、
ダイコンの種(研いで粉にしたもの)9g、
ソウ礬(ソウハン。研いで粉にしたもの)、小棗(核をとったもの)、
花椒(研いで粉にしたもの)2.7g、黄酒250ml
用法:はじめに サイカチの棘を小棗に差し込む。
加熱して炭化させ、研いで粉にする。
鯉の鱗を除去し、腹を開いて内蔵を除去し、上記の薬を腹につめる。
胡麻油で揚げて、黄酒を加えて煮る。
魚およびスープを、何回も食べ飲む。
◎穿山甲片(センザンコウヘン)90g
用法:炙って、研いで細かい粉にし、1回に4.5g、1日2回、お湯で服用する。
解説:この処方は肝硬変の患者の肝腫大を治療する。
穿山甲片がない場合は、鼈甲で代用してもよい。
ただし、量は二倍にする。
(センザンコウの皮。センザンコウは、アルマジロに似た動物。
うろこ状の皮膚があり、それを甲という。
また、うろこ状の皮膚があるので、鱗部に分類されることもある。
つまり、竜や蛇や魚と同じ部門に入ると考えられていた。)
◎穿山甲(センザンコウ)、三棱(サンリョウ)、莪朮(ガジュツ)、
土別(ドベツ。しゃ虫:サツマゴキブリ類)各9g、
鼈甲(ベッコウ)、当帰、北芪、白朮、法夏各30g、
田七3g、鬱金15g、党参18g、雲24g、炙甘、乾姜各6g、桃仁12g
用法:始めに、水を5椀で鼈甲を煎じて、穿山甲と水を2椀分加える。
それに、その他の薬を加えて煎じて1椀半にする。
さらに、その煎じ液に田七を加えて服用する。
1日1剤を、症状が消失するまで服用する。
患者が発熱している場合は、党参、北芪、白朮、炙甘草を除去し、
秦艽18g、沈香、黄ゴン各9g、地骨皮18gを加える。
解説:終末期の肝硬変を治療する。10数剤で治療する。
出典:柳州李紅軍先生
◎青蛙一匹、砂仁20g、鶏矢醴3g、二丑10g
用法:青蛙の内蔵を取り除き、上記の3薬を腹に入れる。
紙でしっかり包み込み、泥で封をする。
弱火で炙って黄色くなるまで焦がす。(炭化させないこと)
研いで粉にし、丸剤とする。1回に2g、1日3回服用する。
解説:鼓腸を治す。油ものを食べることと、酒、タバコを禁止する。
出典:遼寧中医雑誌。1982年
肝硬変に対する動物薬 その2
第172回
肝硬変には、ヒル、ガマガエル、オケラ
(肝硬変に対する動物薬 その1は、第143回。2007/10/30)
「民間祖伝秘方大全」北京科学技術出版社、呉静先生、陳宇飛先生編 より
◎水蛭(スイテツ:ヒル)10g、仙鶴草60g、接骨草15g、車前子20g
用法:始めに水蛭を研いで細かい粉にする。
他の3薬を一緒に水で煎じて、その煎じ液で水蛭1gを服用する。
1日2回、上記の量を10回にわけて服用する。
解説:この処方は貴州のイ族の医学での、
肝硬変による腹水の治療をする方剤である。
一定の治療効果がある。
出典:貴州省 大方県医院 黄克燕先生
◎ 鼈甲(ベッコウ)18g、穿山甲(センザンコウは、アルマジロに似た動物))3g、
用法:水で煎じる。1日に上記の量。1日に1剤。1回に服用する。
解説:肝硬変、肝脾腫大を治療する。
◎虎杖根、竹節根、金桜根、絨毛鴨脚来(根皮)、
土杜仲(根皮)、奶汁藤(藤茎)、三叉苦釣鈎藤 各10g
用法:上記の量を1日分とし、水で煎じて、2回に分けて服用する。
他に穿山甲、一匹綢葉を等量、搗きつぶして臍部に敷く。
1日1回。
解説:この処方は活血去瘀、痛絡除湿の効能効果がある。
かって、12例の肝硬変の腹水を治療したが、
すべて腹水が消失し、仕事に復帰した。
出典:広西 祟左県 新和郷 那顔村 医療站 壮医 凌大富先生
◎ 蝦蟇(がま)5匹、大蒜(ニンニク)49弁、豚の胃1個。
ガマの頭と内蔵を除去し、ニンニクと一緒に豚の井の中に入れて煮る。
煮た後、数度にわけて食べる。
肝硬変の腹水を治療する。
出典:不明
◎ ハトムギ(薏苡仁)15g、鶏の胃膜(鶏内金:ケイナイキン)15g、
砂仁15g、陳皮12g、沈香12g
上記の薬を一緒に粉にし、12gを1剤とする。
赤い雄鶏1匹に、紅高粱を食べさせ、その糞をとる。
120mlの酒で煎じて、糞を濾過して取り除く。
濾過した酒で、上記の薬を服用する。
朝夕2回、各1剤を服用する。
服用後は僅に発汗する。
長期間服用すべきで、そうすれば、おのずと根治し、再発しない。
ムクミを治療する。
◎螻蛄(ロウコ:オケラ)7匹(足をとる)、甘遂末、大黄末各3g
用法:一緒につきつぶして、へその上に敷き、布でおおう。
3日で1回取り替え、3回連用する。
薬の粉を乾燥させ、少量の酢で混ぜるとよい。
出典:江蘇 射陽県 科学技術委員会等編(祖国医学彩風録)
ハンミョウの致死量
第171回
毒薬としてのハンミョウ
少し前に、ハンミョウの抗がん作用について書きました。
では、ハンミョウの毒性は、どのくらいかというと、調べて見ました。
「毒薬本草」という本には、多くの有毒生薬が記載されています。
実用本草系列叢書の内の一冊です。
なかなか すごいですね。
「毒薬」と名のついた本が、実用書というシリーズで刊行されているのですから。
ただし、内容は、表題から期待できそうな「毒薬」ではなく、
多少毒性のある生薬についての記載です。
ハンミョウの項に、半数致死量(LD50)が記載されています。
紹介しましょう。
半数致死量(LD50)と言うのは、文字通り100匹のうち、50匹が死ぬ量です。
マウスの胃に、直接注入した場合のLD50。
ハンミョウの懸濁液では、131.8mg/kg、水で煎じた液では、457.1mg/kg。
カンタリジンをマウスの腹腔に注射した場合の半数致死量は、1.71mg/kg。
犬に体重1kgあたり1mgを、内服させたところ、
蛋白尿、血尿、円柱尿(cylindruria)
及び血清非たん白窒素化合物の上昇がみられた。
人間に対する中毒量は1gで、致死量は3gである。
中毒症状は以下の通り。
主に消化管と尿道系統に中毒症状が現れる。
始めに、口腔の灼熱痛、それから舌が腫れ、水泡が出、
嚥下困難、悪心嘔吐で、
はなはだしい場合には吐血水、吐血塊がみられる。
中毒が激しい場合には、うわ言、痙攣、
または全身麻痺、四肢厥冷、脈の微弱、
血圧降下、大汗、息切れが見られる。
急性腎機能衰弱または全身衰弱で死亡することもある。
「山家薬方集」中の虫類を用いた毛生え薬
第170回
「紅毛流」の毛生え薬には、カエルとカタツムリ
「山家薬方集(サンカヤクホウシュウ)」は、
江戸時代の3大農学者の一人である大蔵永常の著わした、実用処方集です。
山家とあるように、人里離れたところに住む人、
それと貧しい人のために、著わしたものでしょう。
以前紹介した、「救民妙薬」と同じ主旨です。
違う点は、「救民妙薬」は、上から与えられたもの、
「山家薬方集」は、下から自発的に出てきたもの、という所でしょう。
今回は、動物薬、虫類薬を用いた、毛はえ薬の処方を紹介しましょう。
蛙、蝙蝠、蛭は、全て虫偏の虫類薬です。
最初に出てくる処方には、紅毛流とありますから、
オランダ風ということになります。
しかし、内容から見て、そうとは、とても思えませんね。
毛生え薬
紅毛流
◎蛙の皮(1匁、黒焼き)、カタツムリ(1匁、黒焼き)、
マコモ(2匁、黒焼き)、サイカチ(2匁)、
いぬひり草(?)(2匁)。
シキミの葉の汁3匁、ショウガの汁2杯、
この二つの汁を合わせて「やしほの油」1杯に入れて煎じ、
布でこす。
それに上記の5種の薬を混ぜ、その後、唐蝋を入れて、
ねりあわせる。
◎コウモリ(蝙蝠)黒焼き、マコモの黒い粉、各同量をゴマの油でつける。
2、3度つけて、毛が生えないということがないほど、
不思議と効く処方である。
◎ネズミの新生児、ヒル(蛭)の腹をしごき、
マコモの根、以上の3種を黒焼きにし、ゴマの油でつけるとよい。
不思議なことに毛が生える。
海岸で、宝をひろった話
第169回
竜のヨダレの薬用効果
虫類薬ではないのですが、
竜のヨダレ、龍涎香(りゅうぜんこう)という変わった名前の生薬があります。
2008.3.14の在日中国人向けの新聞「網博週報」に、
龍涎香についての記事が載っていました。
「イギリスの北ウェールズの海岸で、
灰白色の大きな石ころ様のものを、二人の男性が見つけた。
大学に送って調べてもらった所、竜涎香であることが解ったという。」
龍涎香は、高価な香料であり、薬でもあります。
昔は、竜の涎(よだれ)と信じられていました。
竜の涎が海上を漂い、それがたまたま海岸に打ち上げられ、
見つけた人は、宝くじに当たったように幸運であるとされてきました。
龍涎香(リュウゼンコウ)を、何とか手に入れたいと、
様々な面白い話が作られています。
「本草綱目」などにも記載されています。
「本草綱目」では、龍涎香は、動物部門の鱗部の内の竜類に入っています。
鱗部は、文字通りウロコのある動物の部門です。
魚、ヘビ、その他ウロコのある動物を原料とした生薬が、
この部門に入ります。
竜にもウロコがありますから、龍は鱗部に分類されます。
竜部には、9種類の竜類の生薬が載せられています。
龍(龍骨、龍歯、龍涎香も含む)、 ゼンザンコウ(穿山甲)、
ワニ(揚子江鰐)、ヤモリ、オオヤモリ(ゴウカイ)、トカゲ等です。
なかなか、面白いでしょう。
龍は実在の動物ではありませんが、
龍骨(りゅうこつ)は、現在でも使われています。
保険適用の漢方薬にも龍骨が入っているのもあります。
例えば、「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」
「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいかかりゅうこつぼれいとう)」。
つまり、竜骨は、今も広く使われている鱗部の竜類薬です。
さて、
今では、竜涎香(りゅうぜんこう)は、
マッコウ鯨の腸内の分泌物(生成物)であることが、わかっています。
イカの口(あの大きな大王イカ)や、その他の食物の残渣が、
腸を刺激して分泌物が出てきて形成されたものようです。
龍涎香(りゅうぜんこう)は、糞と一緒に海に排泄されます。
始めは、浅黒色で、だんだん灰色になり、浅灰色になり、
最後には白色になります。
白色の竜涎香が最高級品で、
100年以上海水に浸からないと、白くはならないそうです。
「その拾った龍涎香(りゅうぜんこう)は、50kgで、
市場価値は50万(英)ポンドとのことです。」
まさに、宝を拾ったということでしょう。
龍涎香(リュウゼンコウ)の価値は、香料としての価値です。
龍涎香(リュウゼンコウ)を拾ったということは、
日本人には、ピンとこないでしょう。
しかし、中国人にとっては、幸運でうらやましく、面白い話なので、
新聞に取り上げたのでしょう。
竜骨(りゅこつ)の正体が、何かといいますと、
新生代あたりの動物の化石骨です。
精神安定作用があります。
竜歯(りゅうし)も、歯の化石です。
マンモスの歯などが、竜歯として、消費されていたのでしょう。
龍歯は、竜骨に効能効果は、ほぼ同じです。
マンモスの歯を薬にするなんて、実にもったいないことです。
今は、どこに行ったかわかりませんが、
昔、マンモスの歯の化石を買った事があります。
安くは、ありませんでした。
現在、竜歯は、生薬としては、あまり用いられていません。
龍涎香(リュウゼンコウ)の効能効果
「中国海洋湖沼薬物学」より、
薬性は甘く、酸。温。無毒。
化痰、散結、利気、活血、利水、通淋。
龍涎香(リュウゼンコウ)の薬効について、詳しくは、別の機会に述べます。
アカガエルの薬用効果 その2
第168回
子供の病気には、アカガエルを食べさせる
さて、
「東邦薬用動物誌」 任地楼、大正14年、梅村甚太郎先生編 には、
アカガエル Rana japonica Guenther
●捕まえて皮と内臓を取去り、醤油をつけてあぶり、子供に食べさせる。
労痩、疳の虫に不思議と効く。
●疳の薬として赤蛙の股を醤油につけて焼き、
1日に二度 食べさせるとよい・・・経験千方。
●蝮蛇(フクダ:マムシ)にかまれたのには、赤蛙を丸のまま黒焼とし、
胡麻油に溶いてつけるとよい。・・・「此君堂薬方」。
●「桑山小粒丸 ソウザンコツブガン」
子供のさまざまな病気を治す秘方である。
赤蛙(日干しにしたのを七匁)使君子(二匁五分、)、
胡黄連(一匁五分)、麻沈(一匁:麻仁が正しい、)、
蕪夷仁(三匁:ヨクイニンが正しい。ハトムギのこと。)、
檳榔子(二匁:ビンロウジ)、熊胆(一匁:ゆうたん=熊の胆)
以上を細かい粉にし、熊胆を水で溶いてつける。
其の汁で●程(? 原文のまま)に丸くし、子供の年数の数ほど服用させる。
疳の虫で、色々な病気をし、変わった症状が出た時に用いると、
不思議と効く。・・・医便大成。
「薬虫薬畜の効用と療法」啓文社、昭和31年、酒井則天先生著
1、アカガエルの皮をはぎとり、足だけを付け焼きにして食べると、
疳つまり削り痩せ症が治る。
2、漢方では、乾し赤蛙(七匁)、使君子(二匁半)、麻仁(一匁)、
黄連(一匁半)、ヨク苡仁(よくいにん)(三匁)、檳榔子(二匁)、
熊胆(一匁)、(以上いずれも生薬屋にある)を粉末にし、
これを飯粒で練って丸薬とする。
子供の年齢ほどずつ、1日に二回服用させると、
五疳の大妙薬としている。
ゴカンとは、何を指しているのかよくわからないが、
子供の食欲増進・消化不良・栄養不良・貧血・下腹膨満感・
顔色蒼白・寄生虫病などの総称であろうと考えられる。
3、アカガエル一匹の肉に対して、水あめ5匁の割合で加え、
それを煮つめ、これを1日3回ずつ10日間ぐらいに食べると、
肺病に効能があるという。
☆☆☆孫引きの危険性について
「東邦薬用動物誌」の桑山小粒丸と、「薬虫薬畜の効用と療法」の2とは、
よく似ている、というより、同じ原典「医便大成(イベンタイセイ9」よりの引用でしょう。
生薬名からすると、「薬虫薬畜の効用と療法」のほうが正しいので、
「東邦薬用動物誌」の生薬名は、
書き移したときに書き間違えたか、印刷ミスでしょう。
また、薬効についても違いがあります。
これは、原典である「医便大成」の文、多分、擬古文でしょう、を、
それぞれ当時の文に訳したから、差異が出たのでしょう。
実は、「東邦薬用動物誌」と「薬虫薬畜の効用と療法」からの引用文は、
原文どおりではなく、私が現代文に置き換えています。
原典よりの直接引用でも、省略や、訳によって、
本文からすこしズレます。
ですから孫引きになると、元の文から更にズレて行きます。
場合によっては、完全な間違いになることもあり得るでしょう。
孫引きは、本来は好ましくないわけです。
とはいえ、本草学は、引用より成り立っているので、
やむをえない場合もあります。
また、すべての原典に当たるのは、不可能です。
そういうわけで、
この「虫ブログ」では、すべての情報について、
煩雑ではありますが、出典を記しているわけです。
この、ブログの内容を、引用したい方は、自由に引用してください。
ただし、必ず、原典と、孫引き、またはひ孫引きであることも、記してください。
アカガエルの薬用効果 その1
第167回
霊伝赤蛙丸(レイデン アカガエルガン)
前回は、ヒキガエル(ガマガエル)の薬効について述べましたが
、今回はアカガエルの薬効について書いてみましょう。
カエルは、蛙ですから、虫偏の薬です。
立派な虫類薬です。
アカガエル(赤蛙)は、一種類ではなく、
茶色から赤茶色のカエルを、
一般に、アカガエルと呼んでいます。
したがって、多くの種のカエルが、薬用とされてきたことになります。
アカガエル(赤蛙)は、ほんの少し前まで、
小児の疳の薬としてももちいられてきました。
アカガエルが、効くかどうかですが、
多分、ある程度効いたのでしょう。
そうでなければ、川柳にまで詠まれることはないでしょう。
用いられ方をみると、
服用するというより、食べるという感じです。
江戸時代の食事には、動物性の蛋白質は少なかったでしょうから、
なんであれ動物性の蛋白質をとれば、
体調がよくなることがあるでしょう。
ですから、子供の疳の虫に効くことは大いにあり得るでしょう。
しかし、そうであれば、アカガエルである必然性はなく、
動物性のものなら、なんでもいいことになります。
アカガエルが疳の薬として用いられたのは、
それなりに理由、
つまり効果が他のものより良かったからではないかと、推定します。
「日本の名薬」宗田 一 先生、2001年5月、八坂書房、には、
アカガエルが、疳の虫の妙薬として、用いられたことが記されています。
橘屋助惣発売の「霊伝赤蛙丸」というのが、
「江戸買物独案内(えどかいものひとりあんない)」
今風に言えば、「江戸ショッピングガイド」といったところでしょう、
に広告があるそうです。
江戸の町では、生きたまま持ち歩き、
注文があれば、その場で料理して売られたと。
関西では、赤蛙(あかがえる)の腹をさいて、
一匹ずつ串刺しにし干したのを、かごに入れて売り歩いた。
それを、醤油に付け焼きして、子供に食べさせた。
また、川柳がいくつか載せられています。
「青い子のため忠義の赤虫」
「一人子に草を分かって赤蛙」
「蛙つる女郎の側に薬鍋」
また、昭和20年代まで、蛙売りの姿が見られたとも、記しています。
ヒキガエル(蝦蟇)の薬用効果 その3
第166回
ヒキガエル(ガマガエル)の日本での薬用 その3
「東邦薬用動物誌」梅村甚太郎先生。任地楼。大正14年 より。
◎耳に虫が入った場合には、ヒキの油を入れると不思議と効く。・・・秘方録。
◎尿閉には、蝦蟇を黒焼きにし、
細かい粉にして、三包ずつ白湯で服用する。・・・和方一萬方。
◎シロナマズには、曼珠沙華(マンジュシャゲ)の地下部を、
水に一晩つけて、陰干にして、粉にし(鉄を忌む)、ヒキガエルの油に混ぜて,
風呂あがりにつける。
其他の時には、入浴してはいけない。・・・奇方録。
◎下疳(性病)には、ハスの葉を黒焼きにして単独で用い、
くづれがつよい場合には、蝦蟇を黒焼にし、
ハスの葉を三分の加えてつけると良い。
◎ヒョウソには、ひきがえるの皮をまきつけると良い。
青蛙(トノサマガエル)でも良い。・・・救民単方。
◎疥癬には、蝦蟇を焼いて灰とし、豚の脂で溶いてぬる。
但し早く治してはいけない。シイタケ、松茸等を食べさせて、
多く出すのをよいとする。・・・懐中妙薬集。
◎黄疸には、蝦蟇を丸一疋、黒胡麻一合、餅米一合を水五合に入れ、
よく煮つめて用いる。・・・掌中妙薬集。
◎病気の犬にかまれた場合には、蝦蟇の手足並に皮を取り去り、
焼いて灰とし飯の上湯にて、何度も飲む・・・妙薬手引大成。
◎又、蝦蟇の黒焼きを、白湯(さゆ)で服用する。・・・諸国古伝秘方。
◎蝦蟇の身をそいで食べても良い。・・・妙薬博物筌。
◎刺が刺さった場合にはひきがえるの皮を貼るとよい。・・・経験千方。
◎また、ガマガエルの皮をはいで、乾しておく。トゲが刺さった時に、
お湯で皮をふやかし、刺(トゲ)がささっている所にご飯をつけ
その上に皮を貼り付ける。よく、刺を吸い出してくれる。
その上に墨を塗っておくこと。人に知られないようにするためである。
今日の昼時分につけたならば明日の昼時分には、
刺が抜けている。・・・和方一萬方。
◎香蟾丸(コウゼンガン) 保童円ともいう。小児が五疳の病で、
寄生虫で腹が大きく膨れたのを治す。このほか、小児の何の病気でもよい。
即ち三稜、莪蒁、青皮、陳皮、麦芽、神麹、竜胆、檳榔子、白朮各一匁、
川レン子、使君子、黄連、胡黄連各八分、木香四分、ガマガエル一匹、
以上をそれぞれ別々に散薬にし、竜胆(リュウタン:リンドウ)を糊にあわせ、
小さい丸薬とする。・・・医便大成。
◎疳疾奇効丸(カンシツキコウガン) 大きいガマガエル1匹、腸を取り除き、
皮が白くなる程洗って、蚕の糞(蚕砂サンシャ)を腹一杯につめて、
黒焼にし、金箔五枚を加えて、丸剤にして用いる秘方である。・・・妙薬手引大成。
(注:錠剤の外を金箔で覆うのは、昔からよくあります。
今でも、そういうのがあります。金は人体に無害とされています。)
◎間違って、針を飲んだ場合には、ガマガエルを3、4匹つかまえて、
頭を切って、逆さまにし、流れ出る血を、お椀の様な物にうけて、
一杯ばかり取る。
喉の中にそそぎ入れて、しばらく待てば、針は、
自然と柔らかくなって、抜け出るものである。・・・廣恵済急方。

