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★五月の俳句 その2
◇兼題 新馬鈴薯 (歳時記より抄出)
新鮮な大地のめぐみから、健全な生命力をいただくことができる。それは、
農事にたずさわる人びとにも、感謝の気持ちを忘れずにいたいものである。
新じゃがや朝市農夫地に生えて 林 翔
新じゃが掘る裸アポロの力瘤 平畑 静塔
新じゃがのゑくぼ噴井に来て磨く 西東 三鬼
新馬鈴薯や農夫掌よく乾き 中村草田男
なかむら句会(05 5月11日)
新馬鈴薯の転がってゆく笑い声 林のりゆき
新じゃがをつるりとむきて旅にでる 赤澤美智子
新馬鈴薯の地の喜びは空へ向く 鶴澤文次郎
新じゃがの愛しみじゃがじゃが洗うひと 千葉督太郎
新じゃがやうす皮むけるお月さま 市原 正直
たぎる鍋おどる新馬鈴薯塩化粧 麻植 国栄
雲の行きさき新じゃがほうばる朝の顔 野谷 真治
稽古場の差し入れ新じゃが大笊(おおざる)に 高橋 英美
新じゃがの皮弾けたり笑顔かな 増田倭久枝
◆作品鑑賞◆ 林のりゆき
今月の皆さんの選評の中で気になったことは、「や」「かな」「けり」の
「切れ字」を使った句に対する抵抗感でした。確かに一時期、「や・かな・
けり」を使う俳句は古いという考え方が存在したことは確かです。しかし、
最近、「切れ」に対する重要性の見直しがされて以来、むしろ積極的に使わ
れているのです。「切れ字」の問題ではなく「切れ」の問題なのです。
新じゃがやうす皮むけるお月さま 市原 正直
うす皮がむけたのが新じゃがと読むと詰まらない句になってしまいます。
上五で切れていますから、お月さまのうす皮がむけたのです。
新じゃがをつるりとむきて旅にでる 赤澤美智子
つるりと新じゃがの皮をむく事と、旅に出る事との間には何の因果関係も
ない。この二つの異なる事柄に「詩的飛躍」が成り立つかが句の評価であり
ましょう。私は充分な詩的イメージの飛躍が成り立つと見ましたが、このイ
メージの距離感に対しては違う感じを持たれる人は勿論あるでしょう。
◇兼題 葉桜 (歳時記より抄出)
桜は、その存在だけで日本の歴史を想起させるものがある。木の葉の表現
にこだわれば、若葉→新緑→万緑と、春から初夏に向けての生命力のときめ
きが見えてくる。
葉桜の中の無数の空さわぐ 篠原 梵
葉桜や発つときめたるときの雨 久保田万太郎
葉桜の奥で大和がふりむいた 筑網 敦子
葉桜に爆ぜているのは赤ん坊 大口 元通
なかむら句会(05 5月11日)
葉桜や隅田の川も人静か 増田倭久枝
月ほそりゆく葉ざくらの旅路 野谷 真治
花は葉に空にさざ波残りけり 林のりゆき
女生徒の声ひょいと抜け葉の桜 指田 和子
葉桜は来年迄の落とし前 高橋 英美
裏富士や葉桜を見し一寒村 斉藤 英之
なさぬまま葉桜となり窓みがく 赤澤美智子
葉桜やキャッチボールを暮るるまで 森岡 都
葉桜よあの日秘め事そよそよと エンゼル南海
葉桜に呼び止められし同行二人 麻植 国栄
葉桜の掌を染めし影こぼしをり 鶴澤文次郎
公園に葉桜摘んでるコック帽 千葉督太郎
葉のさくら子育て中の胸さわぎ 市原 正直
◆作品鑑賞◆ 林のりゆき
月ほそりゆく葉ざくらの旅路 野谷 真治
上五には時間の経過というものがよく表現されている。この上五に作者の
感性を見ました。「旅路」は「の」を介在してはいますが、葉ざくらが主体
とは読みませんでした。これは俳句独特の省略を効かせた表現で、主体は作
者であり葉ざくらの中を旅する作者の姿が見えているのです。
◇兼題 天使 (歳時記より抄出)
神の使者として、天界から派遣された、神と人との仲介をして、神の意志
を人に伝え人を守護するものといわれる。天使には九階級あり、人間界に派
遣されたものは最下位の天使。
月明の階を降りくる夢精の天使 八木三日女
日出ズル国ノ天使ノ乱レ髪 夏石 番矢
多孔質天使誘い来る夜の突風 江里 昭彦
揺れながら隣で笑う堕天使ジョー 大西 淳二
なかむら句会(05 5月11日)
ふうわりと天使降りたか春の雪 高橋 英美
青田風天使の粒子とんでこよ 赤澤美智子
蹴鞠するはしゃぐ天使に初夏の風 エンゼル南海
呆けし父天使の笑みにおぼろ月 一之瀬正子
マイ天使冑かぶりて武者合戦 深沢 紅炉
噴水に飛び交っている天使の輪 市原 正直
ふらここを揺らす背中は天使なり 斉藤 英之
シャガールの蒼き天使や花林檎 林のりゆき
天使ひっかかった徹夜明けの窓辺 野谷 真治
ひとときの天使の顔や夏に向く 指田 和子
灯ともりてギャマンの天使あざむけり 麻植 国栄
翔失せし天使に贈らむ花水木 岡部 史郎
◆作品鑑賞◆ 林のりゆき
青田風天使の粒子とんでこよ 赤澤美智子
この句は、五月の爽やかさに「天使の粒子」を感受した感性に拍手です。
★新橋なかむら句会に参加興味ある方は「藤田三保子オフィシャルサイト」
にリンクして下さい。今後の開催日・兼題の予定が出ています。
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90号 編 集 後 記 莫迦正直
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今回の三番目の兼題「天使」は四季を表現する季語ではないが、歳時記
の「雑」の部に出てくる。この「雑」というのは季節感にとらわれずして
作品の主体になりえる単語で、人工的な無機質、固有名詞が多い。一般的
に無季俳句といわれる作品ではこのような語彙があって句の成り立ちがあ
る。また、たとえば「風船」「猫」のようにかっては特定の季節に分類さ
れていたものが、現在では一季節にこだわらなくなったものも指す。しか
しその「風船」「猫」は、季語集によってはまだ春の部に出てくる。
句の投稿・句会情報はこちら⇒omiyage@kai-raku.net
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