******************************** ★9月の兼題  太刀魚
 
◇兼題 太刀魚 (歳時記より抄出)

 タチウオ科の海水魚。名のごとく太刀に似て長く、その体は銀箔を置い
たような色で、体長1メートルを超す。
    太刀魚の銀はくもれど悪友なり       飯島 晴子
    太刀魚を買ふ汚れなき夕銀貨        黒田 杏子
    太刀魚の銀の移りし箸を置く          石丸ただし
    太刀魚の尖る尾の水滴らす          本間 愛子

    なかむら句会(07 9月19日)

    太刀魚の天空めぐる水族館          赤澤美智子
    太刀魚や硬骨漢の古稀の膳         久保 菜水
    太刀魚やいつも下座に母の席        麻植 国栄
    太刀魚のはねて銀めっき剥げ落ちる    岡部 史郎
    播磨灘落暉に踊る太刀魚よ          芦田麻衣子
    太刀魚のレシピと戦う新婚の嫁        一之瀬正子
    太刀魚の味は忘れし親不幸         杉浦 正勝
    太刀魚や未練切りたし居合い抜き     高津 葆
    エラメルにまさかの太刀魚銀の爪      高橋 英美
    太刀魚の視線は少し左向き          市原 虎児
    太刀魚や藤原鎌足立ち眩む           鶴澤 文次
    四国路に太刀魚巻のにおいする      島田圭佑子
  
       ◆作品鑑賞◆  市原 虎児

 句会席上で「太刀魚」を食したことがないという人が幾人かいた。食し
たことはあっても一度ぐらい。それも家庭料理ではなく、飲み屋で出会っ
た程度という、東京人の生活には馴染みのない魚であった。
 あまり知られていない魚とあれば、水族館にわざわざ見にいったという
方もあり、地方出身の方には郷愁を誘われる素材であったらしい。
 ともあれ、その太刀魚という名前から日本刀のイメージが強く、比例し
て古い日本男児の印象に結びつける作品が多かった。

    太刀魚や硬骨漢の古稀の膳        久保 菜水

    太刀魚やいつも下座に母の席       麻植 国栄

 硬骨漢は古式ある頑固な父の風格であり、そんな時代の母はいつも
下座に控えているものだった。その意図は、父の時代を批判するという
のでなく、そういった時代もあったのだと受け入れ、現代の家庭・風俗と
の違いから同調を得た。

    太刀魚のはねて銀めっき剥げ落ちる    岡部 史郎

 これは、昔の男の威厳の喪失である。魚であっても、ウロコのない銀色
の皮膚こそ虚飾の喩えであるかのようにいわれては、それこそ太刀魚の
あずかり知らぬことであり、はなはだ迷惑な人間に都合のよい解釈である。
 
★新橋なかむら句会に参加興味ある方は「藤田三保子オフィシャルサイト」
 にリンクして下さい。今後の開催日・兼題の予定が出ています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 124号        編 集 後 記     莫迦正直
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 小説家・評論家といえば、詩人・歌人・俳人という言い方がある。それ
ぞれ文芸の形態によってその呼称が分けられているわけだが、その「家」
と「人」の違いこそ、それぞれの詩形の体質を表している。
 それこそ「○○家」は、それが生計として成り立つものの、「○○人」
の方はどんなに旨くとも粋な趣味人として終わることが多い。さらにその
違いを解析してみれば、それは技術の問題で、「家」なればそのための能
力・オリジナリティーは玄人と素人とでは、その差は歴然としている。そ
れに対する「人」の場合は、いくら年季経験があってもその作品の優劣は
いつも付け難いものがある。
 句会に限ってみればそれはよく理解されよう。高得点が佳句の条件とい
うのなら、それはベテラン勢がいつも上位にいてよいはずなのに、必ずし
もそうとはならないからである。
 句の評価は、詠み手の心を深読みできる読者に出会えてはじめて佳句
となるわけだが、読者はわがままなもので、時と所によってもその評価は
揺れ動く。まして万人に共通の伝達こそ難しいものである。
 俳句は俳人という生業の成立が難しいだけに、それは俳句作品という
より俳句の評論によってその糊口をしのぐということになる。一流の俳人
と呼ばれるようになるためには、俳句作品はもとより、論評こそ書けなく
てはならぬということになる。
 なお、俳人には二種類ある。それは「業俳」と「遊俳」である。その件は
次の機会があればーーー。 

    句の投稿・句会情報はこちら omiyage@kai-raku.net
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー