◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

    ★4月の兼題  春 の 星

◇兼題 春の星   (歳時記より抄出) 

 冬星の鋭いまたたき、夏星の燃えるような感じでなく淡い光で、なま
暖かく、洗われたような美しいやさしい印象をいだかせる。
   春の光体(ほし)降るはリルケのわすれもの   高橋比呂子
   轟然と滝落つ春の星の中              岡田 日郎
   春星やとはの氷河を村の空            有働 享
   名ある星春星としてみなうるむ           山口 誓子
   春星発色一戸に一人の母あるべし        磯貝碧蹄館
   春の星西や東に子を散らし             西村 恭子
   春星や太古も女耳飾る               堀  良子

     なかむら句会 (08・4・9)

   春の星抱えて眠るさぬき富士           麻植 國榮
   ジャズピアノ音符ちらかす春の星         市原 虎児
   だまされたやうに眠りし春の星            曽根新五郎

     ちりとてちん不況のヤマに春の星           千葉督太郎
     これからは好きな事だけ春の星           赤澤美智子
     わらべ唄孫との家路春の星             岡部 史郎
     ふたりきりのオフィスの窓の星おぼろ        川津 与志
     春の星テネシーワルツ流れをり           鶴澤 文次
     春の星聖母マリアの懐妊す             藤井 安廣

      目の前の配役遠し春の星               藤田山頭女
     もう一度だけ名を呼んで春の星            曽根新五郎
     春の星散りばめられし金平糖            一之瀬正子
     春の星屋台見上げたらあめん           野谷 真治


       ◆作品鑑賞◆  市原 虎児

   春の星抱えて眠るさぬき富士            麻植 國榮

 この作品は句会で高得点であったが、大きな欠点がある。それは、眠る
のは「さぬき富士」という山であれば、「山眠る」という冬の季語の言い
換えである。「春の星」を抱えてといえば、春の只中であるはずなので無
理が生じる。ただし、その矛盾がシュールなのだと理解して採ったとすれ
ば、それは好意の深読みといえる。

   だまされたやうに眠りし春の星            曽根新五郎

 「春の星」という季語だけで、ロマンッチクな空気が認識される。それ
は、恋人との逢瀬をすっぽかされたとしても、その罪は問わない心の広い
人の叙情か。いやいや、だまされた「ように」というからには、だまされ
ていない。だまされたのは、だまされたがる読者の方なのである。

★新橋なかむら句会に参加興味ある方は「藤田三保子オフィシャルサイト」
 にリンクして下さい。今後の開催日・兼題の予定が出ています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 183号      編 集 後 記     莫迦正直
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 「刷り込み」ということばがある。それは、動物の子が誕生して生まれ
て初めて目にしたものを自分の親と思い込むというその習性である。それ
が実際に本当なのかどうか、先日生まれたばかりの子猫を、まだ目も開か
ぬ内からぼくの手元に置いたりしていたところ、ようやく目が開いて、ど
うやらぼくを親と認識したようである。以来、ぼくが自宅にいる時は、執
拗にぼくの膝を求めて、そこで就寝している。
 これに似たようなことを俳句の方にも言えそうである。特に初学時にお
いて、俳句とは文語という日常とは違うことばで、それも5・7・5の定
型で季節をうたう詩だと仕込まれてしまった人。その方程式の解釈のみで
素直な一行の詩として、新しい叙情を理解できなくなる人がいる。
 しかしそれは、その人が創作者に転じてそれを考えれば、先人の物まね
だけでは本物の芸術でないことに気づくはずである。
 いわゆる文語有季定型は、歴史的に磨かれてきた優秀なパターンと認め
られれば、創作者はそれを越えられるべき叙情があれば良し。しかしそれ
を鵜呑みに、なぞるようでは盗作・盗用という道以外ないでしょう。
 初学の時の刷り込みも、人間ならばことばという文明があって、俳句と
いう文化であれば、学習によって誤った情報から解放される可能性もある。
少なくとも、文語・花鳥諷詠という近代俳句をいまだに信じている人は、
「詩」とは何たるかの基本的な疑問を自問自答されれば、習練による技術
は立派な職人芸であっても芸術ではないと、目が醒めるはずなのである。
 我が家の猫の子に対する刷り込みは成功したといえるが、さてこのまま
で良いわけがない。この先どのようにしようか思案している。ことばが通
じるものなら教育のしがいもあるのだがーーー。

    句の投稿・句会情報はこちら mtora226@gmail.com
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー