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[ 横浜ドキュメント ]
1冊目は6月2日にアップしようと決めていた。
安政6年(1859年)6月2日、
アメリカを始めとする欧米5カ国との修好通商条約に基づき、横浜は
開港した。
「横浜本」を紹介するブログを始めるのに、これ以上の日取りはないに違いない!
しかし、いきなりこの構想は崩れてしまい、現在すでに6月3日。
ブログの開設手続きに思いのほか手間取ってしまったのが原因で
ある。
まあ、そんなことを気にするのは発行者本人だけだろうから、
気を取り直してブログをスタートしたい。

このブログを構想してからというもの、何を1冊目にするかに迷い続けていたのだが、
1ヶ月くらい前に本書に決めた。
横浜の長所は「フロンティア・スピリット」に尽きるというのが現在の私の考えである。
1859年の開港までわずか100戸弱の漁村だった横浜に「歴史」の蓄積はない。
そんな横浜が現在359万都市まで発展してきた原動力は、新しいものに飛びつく、
ある種「山師」的な部分をも持った精神性にある。
より構造的な物言いをするならば、そういう精神性を持った人々がこぞって集まり、
形成された街が横浜
なのだ。
西洋からの新しい文物が流入する中で、それを拒絶することなく受け入れ、消化し、
さらにはそれをビジネスチャンスにもしてしまう。
こうした精神性を失ったとき、横浜は横浜でなくなる。そう思う。

そこでバッタの登場である。
国際現代美術展「横浜トリエンナーレ2001」で展示された中で、おそらく
最も有名な作品がこの「バッタ」(作品名は「インセクト・ワールド」)だと思う。
臨港パークにそびえたつインターコンチネンタルホテルに
全長50メートルを超えるバッタバルーンをとまらせようというこの作品。
そのバッタがどんなものであったか、まずは下記ページのCGを見ていただきたい。
http://hmuroi.edhs.ynu.ac.jp/yokotori/main.html
ページ最下部の「CG画像」をクリック!
個人的には「その他の画像」の左から3枚目が一番見て欲しい。

本書によると、インターコンチに昆虫をとまらせるというアイディアは室井氏のものだが
実際にこのプロジェクトを動かす原動力となったのはこのCGのようである。
このCGのインパクトが関係者を動かした。
バッタがホテルにとまることに何の意味があるのか、という議論を不要にしてしまう、
誰もが「おもしろい!」と思ってしまうような、そんなパワーがこのCGにはあった。

本書はこの巨大バッタプロジェクトの発端から終焉までを丹念に追ったドキュメント。
「事実は小説より奇なり」という使い古された言葉の通り、
このドキュメントは文句なしに面白い。
しかし、本書を読み進むうちに、このプロジェクトがいかに困難なものであり、
そして「無謀」なものであったかも、よく分かってくる。

例えば制作費・展示作業費について、
トリエンナーレ主催者が用意した予算額の超過分(約2,000万円!)は
著者たちが自腹で負担するという積算になっていた。
また、バッタをホテルに展示する作業には、室井研究室などの学生がボランティアとして
フル稼働していたのだが、ある日起こったアクシデントで、学生1人が死にかけている。
今もう一度このプロジェクトをやるかと問われれば、
間違いなく「やらない」という結論が出る。

それが「巨大バッタプロジェクト」だった。
しかし、人類の歴史に残る偉大な試みの多くはそういうものなのではないか。

確たる見通しがなくとも内発的なエネルギーに突き動かされてともかくやってみる、
いや、「やらずにはいられない」
そんな精神性こそが横浜の誇るべきフロンティア・スピリットである。
そんな気持ちで「ンボマハコヨ」1冊目にこの本を選んだ。

ここまで読んで下さったみなさま、ありがとうございました。
記事への感想はもちろん、この1冊目の選択についてのご意見もお待ちしています。

★この本から感じる「横浜」:計算を越えたチャレンジ・スピリット


【書誌データ】
書 名:巨大バッタの奇蹟
著 者:室井尚
出版社:アートン
出版年:2005年9月
価 格:1,400円
購入場所:上大岡あおい書房
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