[ 横浜資料 ]
今回は、「アマゾンで買えない横浜本」を紹介したい。
政令指定都市である横浜市には現在18の行政区があり、
それぞれの区が「白書」を発行しているが、その中区版である。
内容は統計データが中心だが、特集記事などの読み物や写真なども
多数掲載されている。
基本的に資料集なので、通しで読んで感銘を受ける、という類の本ではないが、細かく見ていくと、横浜好きにはたまらないポイントをいくつも見つけることができる。

まず、表紙がいい。(画像をクリックしてみてください。)
白地の中に一川芳員画の写真家と五雲亭貞秀画の西洋犬。
別々の絵からモチーフを抜き出して組み合わせてある。
奥付を見ると、デザインしたのはNDCグラフィックス
横浜を拠点に活躍するデザイナー中川憲造氏が代表を務める横浜の会社である。
中川氏は55年ぶりとなる神奈川新聞の題字刷新を手がけたほか、
みなとみらい線開業時にイメージキャラクターとして青ぶちのダルメシアン、
「ブルーダル」を誕生させた人でもある。
(あっ、つまり中川氏は「犬好き」ということか。)

それから、特集記事がいい
東京芸大大学院や旧第一銀行を活用したBankART1929による「創造界隈」づくりの進展、
黄金町・日ノ出町間の売春宿一掃作戦など、中区エリアの「現状」が語られている。
このあたりの動きはマスコミでは時折報じられているものの、
書籍としてまとめられることはなかなかない。
そういう意味では区役所刊行物ならではの貴重な記事だと言える。

一つ不思議なのは、いわゆる「ドヤ街」であった寿町の宿泊施設を観光客などにも
利用してもらえるように再生した
ホステル・ビレッジ・プロジェクトについて
言及がないこと。
区役所がかかわっていない事業なのかもしれないが、
最近の中区のメイントピックであるはずであり、紹介だけでもしてほしかった。

表紙、特集以外にも読みどころはたくさんある。
旧居留地エリアを含む中区だけに、「もののはじめMap」が掲載されている。
紹介されている14カ所のうちには、「ンボマハコヨ!」2冊目で紹介した
下岡蓮杖の顕彰碑や、4冊目のジョセフ・ヒコを讃える「日本新聞発祥の碑」、
16冊目の高島嘉右衛門による「日本初のガス灯」なども含まれている。

単調になりがちな統計データのページにはコラムや中区にまつわるクイズもついている。
「ンボマハコヨ」発行人のプライドを賭けてクイズに挑戦してみたが、
正直に書くと、40問中正解はわずか20問だった。プライド崩壊である。
例えば「区制60周年を記念して製作された『中区みなと音頭』を歌ったのは?」
選択肢は美空ひばり、青江三奈、島倉千代子、ゴールデンカップス。
こういう問いは、サクっと正解したいところだが、外してしまった。

以上、今回はちょっと趣向を変えて行政刊行物を取り上げてみた。
販売場所については、中区役所のホームページをご覧いただきたい。
ちなみに私は中区役所で入手したのだが、「おまけ」として、中区マップ、
中華街マップ、山手の洋館巡りマップ、ブルーダルの絵はがき(!)
がついてきた。
これはこれで心憎いサービスだと思った。

★この本から感じる「横浜」:個性ある18区の集合体としての横浜


【書誌データ】

書 名:中区白書
著 者:横浜市中区役所
出 版:横浜市中区役所
出版年:2006年9月
価 格:750円
ISBN: なし