[ 横浜人物伝 ]

 
★この本から感じる「横浜」:中学校を変える塾経営者・小嶋勇

毎年2月1日は、開成、麻布、駒場東邦、桜蔭、雙葉、フェリスなどの難関私立中学校の入試が行われ る、いわば私立中学校受験の天王山となっている。
現在、こうした難関校「上位10校」の合格者数日本一を誇っているのが横浜発の学習塾、日能研である。

日能研は「中学受験専門予備校」のパイオニア。
有名な「四角い頭を丸くする」シリーズの電車社内広告のほか、任天堂DS用ソフト
脳鍛え日能研スケジュール帖の発売など、PRも上手な「横浜らしい」塾だと言える。
私自身、昔から上大岡の駅などで「N」のマークが入っている日能研のカバンを持った
子どもを見かけることが多く、「日能研は受験戦争の象徴」という認識を持っていたが、
本書を読み、そのイメージは若干修正されることになった。

日能研理事長である著者の小嶋勇氏は、1941年6月26日、港北区日吉に生まれた。
建設会社を経て1968年(昭和43年)に26歳で日吉英数学園を創業。
設立6年目に菊名で日本能率進学研究会を主催する恩師・高木知巳氏と出会い、
日能研グループとしての切磋琢磨を開始。
能力別のクラス・席順編成、生徒アンケートも活用した先生に対するシビアな評価、
塾生以外も参加できる無料テスト会
など、業界の常識にとらわれない取り組みを進め、
1999年(平成11年)には難関「上位10校」の合格者数日本一を達成。
2000年には都筑区センター北に、株式会社日能研関東予備校の本社ビルを建設。
現在、日能研グループ4社で124校を全国に展開している。
小嶋氏は2006年に日能研関東予備校社長の座を退き、会長職を務めている。

本書は学習塾経営の教科書として読んでも示唆に富む本であるが、
進学指導以外についての記述にも、思いがけず興味を惹かれる部分が多い。
例えば、小嶋氏は情報収集のために毎年100校以上の私立中学高校を訪問しているが、
その際、その学校に対する「要望事項」を申し入れているという。
子どもや保護者のニーズを踏まえた提案を毎年積み重ねてきた結果、これまでに、
2日間入試の1日化、出願書類郵便代の学校側負担、入学金前納に代える
入学手付金制度の導入「入学金ゼロ」(6年間分割払い)などを実現してきた。
現在では私立学校向けのコンサルティング業務を行うための子会社まで設けている。

そして、私が小嶋氏を筋金入りだと思ったのは、次のエピソードを読んだとき。
平成10年に私学関係者を集めた初めての講演会を品川プリンスホテルで開いた際、
202人の参加者に、前列から学校の偏差値の低い順に座らせたというのだ。
「努力の足りない学校にこそ自分の話を聞いてほしかった」とは言うものの、
よほど肝が座っていないとこんな荒業はできない。
「日能研の付加価値は熱いハート」と小嶋氏は言うが、確かに熱い!

1月26日、学習塾と学校の新しい連携の形として、東京都杉並区立和田中学校と
サピックスとによる「夜スペ」がスタート
したというが、このニュースを聞いて、
小嶋氏は何を思っただろうか。ぜひお聞きしてみたいものだ。


【書誌データ】
書 名:いきざま 日能研と歩んだ起業家人生40年
著 者:小嶋勇高嶋健夫編)
出 版:日経BP
出版年:2007年5月
価 格:1,800円
ISBN: 978-4-86130-238-1