[ 横浜ストーリー ]
 
★この本から感じる「横浜」:QE2が「滞在」した港・横浜

読みたいのに絶版になっていた本が復刊される。
もしあなたが本好きなら、その嬉しさを分かってもらえるだろう。
本書『横浜QE2号殺人事件』は「復刊本」である。
新書として1989年に刊行され、1992年に中公文庫に収録。
その後長らく品切れになっていたのだが、この度新たに光文社文庫として復刊された。

QE2こと「クイーン・エリザベス2」は20世紀のイギリスが誇った豪華客船。
総トン数は当時6万7140、全長はランドマークタワーとほぼ同じ294メートル
就航は1969年で、今年11月に引退が決まっているという。
市政100周年・開港130周年に当たる1989年、3月31日から6月3日までの
65日間大桟橋に長期滞留し、その間洋上ホテルとして提供されていた。
本書『横浜QE2号殺人事件』では、このQE2が事件の鍵を握ることになる。

この作品をミステリーとして見ると、佳作ではあるものの、日本推理小説史上に残る
大トリックと驚天動地の意外な犯人、というような水準のものではない。
しかし、この作品が存在することで、横浜にQE2が「滞在」したという事実が
「読み継がれる」という意義は大きい
ものと評価したい。
かくいう私自身、QE2の長期滞留のことを、本書の解説を読んで初めて知ったのだ。
私は本書を通じて、ミステリーは現代社会における一つのメディアなのだと実感した。

著者の斎藤栄氏は元横浜市役所の職員で、港湾局に在籍したこともある。
1966年の江戸川乱歩賞受賞作『殺人の棋譜』以来、数々の横浜ミステリーを上梓。
現在入手可能なもので言えば、例えば『横浜殺人結婚式』(1999年)では、
横浜の「ホテル戦争」に題材を得て、「ロイヤル・ガーデン・ホテル」と
「ベイ・オリエンタル・ホテル」で同日に起こる殺人を描いている。
最近は横浜ものが少なくなっているようだが、今年も『横浜トリエンナーレの殺人』、
『TICAD4横浜・アフリカ殺人連鎖』『市営地下鉄グリーンライン殺人事件』
など、
「横浜ミステリー」としてぜひ作品化していただきたいテーマはいくらでもある。
斎藤氏のより一層のご活躍を祈念するとともに、「第二の斎藤栄」の登場も待望したい。

(ご報告)
3月16日に横浜ライセンス1級、受験してきました。
すでに問題と回答がホームページに公開されていますが、自己採点は50点。
合格ラインの70点には及びませんでしたが、本ブログ2冊目で紹介した「下岡蓮杖」、
41冊目の「トーマス栗原」、23冊目で触れたペリー出航の地「ノーフォーク」など、
ンボマハコヨを読んでいればできた問題もいくつかあり、嬉しく思いました。
1級受験者は35人だったようですが、どんな方が合格されるのか楽しみです。


【書誌データ】
書 名:横浜QE2号殺人事件
著 者:斎藤栄
出 版:光文社文庫
出版年:2008年2月(新書版1989年)
価 格:514円
ISBN: 978-4-33474-382-6