[ 「坂の上の雲」 要 約 ]  
「ロジェストウェンスキー航海」といわれるバルチック艦隊の苦難の航海は、まだアフリカ大陸のはしにさしかかったばかりであった。

ロシアから極東の島国まで一万八千海里、この記録的な目標にむかって、性能のそれぞれ違う大小四十数隻をひっぱって、この宮廷むきの司令長官はいどもうとしているのである。

しかし一万二千の乗組員のうち、確乎とした必勝の見通しをもっている者はいなかった。
かれらの苦難は、この大遠征が、その遠征に必要な条件のすべてを供給されているのではないことであった。

一万八千海里の航海のうち、大半の港が、イギリスによって握られているか、その影響下にある。イギリスは、世界の海上における日本の代理者であった。イギリスは、国際法のゆるすぎりぎりにおいてバルチック艦隊の航海をさまたげようとし、その艦隊を疲労させようとした。

航海中、英国海軍の巡洋艦は相変わらずつけてきていた。英国艦隊のおもなねらいは、水兵を疲労させてしまうことにあった。水兵を疲労させることは、国際法上の違法では決してない。

産経新聞連載 新聞小説要約  下高原健二挿絵 切抜