[ 「坂の上の雲」 要 約 ]  
この石炭積込みと、その炭塵のなかでの息苦しさを、ノビコフ・プリボイは「拷問」という言葉をつかっている。

ダカール港の昼間ときたら、体じゅうが燃え上がるようだった。過労で倒れる者が続出した。

「早くやれ」と、ロジェストウェンスキーは、口うるさい下士官のようにたえずどなっていた。

黒人が、艦のまわりを小さな舟で漕ぎまわっていた。金を投げてくれ、とせがんでいるのである。

このダカール港はフランスの植民地であったが、開戦後時間がたつにつれロシアに対する態度がつめたくなってきている。満州の野におけるロシア陸軍の連戦連敗が、フランスの態度を冷たくしているようである。

フランスは、日本の勝利が重なるにつれ、日本の同盟国であるイギリスに遠慮しはじめたのである。「石炭を積み込むために碇泊させてもらいたい」と、西アフリカ総督に申し入れると、その変事はなんと、「本国に照会してみる」という、意外なつめたさであった。

夕方になると、「残念ながら当港における石炭の積み込みはこれを許可しません」と、ロジェストウェンスキーに対し申しわたした。

産経新聞連載 新聞小説要約  下高原健二挿絵 切抜