[ 映画評 ]


『フラガール』

拝啓
『常磐ハワイアンセンター』様
 今まで小バカにしててご免なさい。あなた様の事は、幼少の頃より存じておりましたが、「フン、福島にハワイなんてダサ〜」なんて行ったこともないのに思っていてご免なさい。
 この程、映画『フラガール』を拝見しそれらの思いは、全て私の先入観による偏見であることに気付きました。あなた様が誕生される際にこんなに素晴らしい逸話があったとは・・・。
 現在『スパリゾートハワイアンズ』となられ40年間繁栄され続けているあなた様のお姿を拝見しに、お詫びを兼ねて近いうちにお伺いしたいと思っております。
まずは、取り急ぎ非礼を謝りたくお便りしました。乱筆乱文をお許し下さい。   かしこ

と言う訳で『フラガール』。脱帽です。
現在、今年観た映画の中でNo.1だ。今後、よほど凄い映画が現れない限り『フラガール』が06年の私的ベストは必至であろう。公開前の宣伝でこの映画の存在を知った時、正直また邦画の得意な地方都市出資のローカル映画か・・・位にしか思っていなかったが、ある月刊誌の映画評で皮肉屋がそろう5人の評価が全員、星★★★★★5個の満点。かつてそんなの見たことなかったので、うむ〜これは観に行かねばなるまい・・・と映画館に出かけたのだが、予想以上の傑作だった。

特に適材適所の配役の妙が一番の見所だ。お高い感じであまり好きでなかった松雪泰子だが、なかなかどうして、こんなにウマイ役者だったのかと感心した。かつてSKD(松竹歌劇団)で踊った経験もありながら母親の借金のために都落ちし福島の片田舎の温泉施設オープンのための『フラダンス』の講師となり、始めは馬鹿にしていたものの地元娘達の熱意に打たれ彼女達を立派に育て上げる役を自ら華麗なダンスも披露して熱演した。

教え子となる蒼井優は最近“映画女優”として活躍著しいが、またも作品に恵まれた。盆踊りしか知らない田舎娘が『フラダンス』と出会い人間としても成長して行く炭鉱の娘を力演。かつて『花とアリス』(2004年/岩井俊二監督)で世の男性陣をクギ付けにした『ひとりバレエ』のシーンを彷彿とさせるダンスシーンで今回も魅せてくれる。クライマックスはもう彼女の独り舞台だ。この他にも蒼井優の兄役でぶっきらぼうだが心優しい炭鉱夫に豊川悦司。二人の母親役には富司純子があたり日本の強い母を体現しさすがである。岸部一徳は相変わらず名バイプレーヤーを発揮し、これが映画デビューとなる『南海キャンディーズ』のしずちゃんは素のまんまで面白い。他の出演者達も含めて皆この映画に出られた事を喜び、熱演していることがひしひしと伝わってくる。

監督は若干31歳の李相日。長編劇場映画としては『69sixty nine』(2004年/宮藤宮九郎脚本)に次ぐ2作目だそうだが。今後の活躍が楽しみだ。

昭和40年の常磐炭鉱町の再現も見事だし、昨今の『昭和レトロブーム』にも乗り、ノスタルジーだけで押し切った秀作『ALWAYS三丁目の夕日』(2005年/山崎貢監督)よりも人間を描いた作品としては『フラガール』の方が上だ。なんでもハリウッドでリメークの話があり、はたまた今年の米アカデミー賞外国語映画賞のノミネート候補作品となったとか。CGに頼らず、アニメでもない実写の日本映画が世界で通用するようになってきた。『フラガール』現在最も多くの人に観てもらいたい映画だ。

『常磐ハワイアンセンター』あっぱれである。

2006年/120分/ビスタサイズ/SRD
採点  作品★★★★★ 音響★★★