[ 映画評 ]

2005年に公開された『ALWAYS 三丁目の夕日』は、熱狂的な支持者の輪を広げ「昭和レトロブーム」の決定打となった。山崎貴監督が脚本・VFXを兼任しそのマルチな才能をフルに発揮した傑作だった。

昭和33年の東京を舞台に、俳優陣の名演と配役の妙が功を奏し、建設過程の東京タワー上野駅路面電車3輪トラックが行きかう東京の街がリアルに再現され、その郷愁を誘う背景と共に三丁目の人々の悲喜こもごもが描かれ、特異な連帯感を醸し出した観客達に数回、数十回と映画館に足を運ぶリピーターが続出した。

そして満を持して『ALWAYS 続・三丁目の夕日』が完成。誰しも待ち望んだ続編=駄作という確立の高い法則が当てはまらない事を祈りつつ初日の映画館へ出かけた。

1作目の冒頭、プロペラ紙ヒコーキを追うタイトルまでのワンカット長回しによる見事なオープニングにいきなり魅了されてしまったが、今度もきっと何かやってくれるに違いないと、画面を凝視していたら・・・。懐かしい“東宝スコープ”のロゴのあとに、いきなりドーンと轟音何事だ・・・えっまさか!!そんなぁ〜。むむむ・・・しまったその手があったか!!!!。あの3輪トラックが!!鈴木オートの看板が!!東京タワーが・・・!!。マイリマシタ。そんな不意打ち卑怯だ。でもその迫力と完成度たるや、別バージョンで観てみたい・・・。

このオープニング。やり過ぎとか、合わないとか賛否両論みたいだが、時代背景的にはピッタリだし、なんたって東宝一の看板ですからね。山崎監督もそれを観て育ったはずなんで・・・。監督としてもかなりの冒険だったと思うが凄い映像だったんでOKでしょう。わたくしなんざぁアングリ口を開けて見入ってしまったもの・・・。

冒頭がそんなんで本編はどんなに凄い映像なんだと思っていたら、これが肩透かしなくらい静かに進む。今回は登場人物の説明はいらないし、前作の4ヶ月後の話なんでこれといった新しいエピソードもない。話題だった、真上に高速道路が架かる前の日本橋羽田空港もそれくらい?てな感じで有楽町の旧日劇に至っては建物の下半分しか映らない・・・。

なんだそんなものかと思いつつ、映画が進むにつれ前作とは違う魅力に気づき始めた。それは映像に頼らない物語としての面白さ。それは比喩的表現の構成だ。今回、新しい登場人物が数人登場するが、ほんのチョイ役豪華な俳優が配されている。それは単なる“お飾り的”配役ではなく、きちんと意味のある配役なのだ。その顕著な例が手塚理美だ。ヒロミ小雪)が在籍するストリップ劇場の先輩梅子の役だが、「小説家が踊り子のヒロミなどを迎えに来るはずがない」と厭味を繰り返すばかりの一見悪役的存在だが、後から思い返すと彼女の行動なくして、この物語は成立しなかったのだ。ヒロミをストリップ劇場にすれ違い迎えに来た茶川竜之介吉岡秀隆)の姿を見て、梅子は、大阪へ旅立つヒロミを東京駅で待ち伏せし「餞別。汽車の中は暇だろうから。」と茶川の書いた小説が掲載された月刊誌を渡す。

梅子の出番はそれだけ。しかし観客は想像する。梅子もかつて惚れた男に迎えに来ると言われた過去があったが、その夢は、裏切られて叶わなかった。なのでヒロミに「叶わぬ夢など見るな」と言い続けたが、竜之介の小説をひそかに読み、実際に迎えに来た竜之介の姿を見た梅子は、自分が果たせなかった夢をヒロミに託すべく、夢を諦め旅出つ直前のヒロミにそっと小説を手渡したのだ。

監督は、観る側に敢えて想像させる事により物語に奥行きと余韻を持たせる事に成功している。これは、比喩表現の最たる日本の文化である俳句の精神に通ずるものがある。他にも鈴木家の居候となった生意気お嬢様、美加小池彩夢)が三丁目の子供たちの姿を見て変わっていくエピソードの過程や東京タワーの入場料色鉛筆などの細かい伏線を散りばめ、多くは語らず、観客に考えさせる事によりラストへ集約する手腕は見事だ。

前作は、これが当時の上野駅だ。これが銀座の和光だ。都電だ。という直接模写で観客を魅了したが、今回はワザとそれをせずに間接模写に徹した事がマンネリを感じさせない要因となり、またまた新たな魅了的作品となった。裏を返せば、VFXで創られた昭和の背景がそれほど自然に映画になじんでいたという事だ。

結果として終わってみたら中盤以降ジワジワ溜まっていった涙が不覚にもラストで前作以上に決壊してしまった。前作は古行淳之介須賀健太)が涙のキーパーソンだったが、今回は鈴木オートの長男一平君小清水一輝)にしてやられたり。子役おそるべし。

最近、世間では、自分の子供の学校の給食費を払えるのに払わない阿呆な親が沢山いるという。そんな輩は、この映画の淳之介のあるエピソードを観て自分の恥を知るがいい。でも、そんな奴らがこの映画を観る訳ないか・・・。仮に間違って観たとしても自分の馬鹿さ加減に常識ないから気づかないんだろうな。いや、むしろそいつらにこの映画はもったいない。

2007年度 日本テレビ/ROBOT/東宝  シネマスコープサイズ/SRD/146分

 この映画を観る前に・・・

価格:¥ 1,950(定価:¥ 3,990)
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