この本面白かったよ 猫ばあ ブック・レポート
                  vol.23  2007.6/.29

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猫と本が好きな団塊世代です。面白かった!読んでよかった!誰かに読んでもらいたい!と「!」の付く本を紹介、というより「ねっ?おもしろいでしょ」と言いたくて、そして面白 いと思う本があったら紹介して、と初めてのブログを開きました。女性著者の小説、エッセイが多いかも。理数系、スポーツ物、時代物はゴメン、ほぼゼロです。

 

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昔、憧れのアラン・ドロンの映画をテレビで見ました。吹き替えなので、
アラン・ドロンが「ねえ、ねえ、どうしたの」なんていやに明るく甲高い声で叫ぶのです。当たり前だけど日本語で。なんだかイメージが違ってがっかりし、映画はやっぱり字幕だわ、と思ってしまいました。(声優さんごめんなさい)

  本日の一冊はその外国映画に字幕をつけることを仕事としている女性の本です。フランス語なり英語なりともかく日本語と外国語が分かる人ならすいすい片端から翻訳すればいいのだと単純に思っていました。まったく著者に張り倒されそう。

P23 <ときどき恐ろしい誤解をされるが、字幕翻訳者は映画のせりふを耳で聞き取って翻訳しているわけではない。ちゃんと原語台本というものがありそれを辞書を引きながら読んで翻訳している>

  その原語台本にせりふごとに区切りマークをいれ、せりふの長さ、俳優が喋る速さを考慮して日本語に置き換えて行くのだそうです。字幕は14文字が原則。

P34 <たとえば、こんな字数制限をされたら、どう短縮すればいいだろうか。むっつり黙り込む女に、男が問いかけるシーン。

 男「どうしたんだ」→ 5文字以内
 女「あなたが私を落ち込ませてるのよ」→ 5文字以内
 男「僕が君に何かしたか」→ 5文字以内

 これをどう5文字以内にしろというの?ムリよ、と思いますがちゃんとまとめてしまいます。

 男「不機嫌だな」
 
女「おかげでね」
 
男「僕のせい?」

 すごい!制限はこのような字数ばかりではありません。差別用語はダメ、常用漢字を使わねばならぬ、などなど。吹き替え版なら字数制限もゆるくもっと自由に訳せると思いきや、吹き替えならではの別の苦労もあるといいます。

P29 <たとえば、主人公が大声で「NO!」(ノー)」と叫んでいるとしよう。口の形は「お」になっている。これに「よせ」という吹き替えのせりふをあてたら、最後の口の形は「え」。「だめだ!」だと「あ」。どちらもダメだ。見ている者の目に違和感が生じる。そこで「やめろ!」を選択する。>
 
わ〜大変そう!

また、英語ではない映画の翻訳の際、日本語の堪能な外国人に下訳を頼むと文法的にはけちのつけようがなくても、なんか変、ということがあるといいます。

 P41(外国人の和訳は)<「日本語の文章を書く上で一番難しいのは性別や年齢や立場の違いを表す言葉の使い分けらしい」ということ。とりわけ敬語や女言葉は難題のようだ。―略― 「どうかなさったの」といっていた名門のたおやかな令嬢が、次のページでは「私が悪かった」とオスカル化していたりする。時には屈強な山賊も、「やめて!」と嬌声を上げる。>

  考えてみれば外国映画は何もアメリカハリウッド映画やフランス映画ばかりではないわけで、アラビア語やグルジア語、モンゴル語やスワヒリ語etc翻訳者はいるのでしょうか。びっくりするような翻訳事情も書いてあります。

  ちょっと脱線しますが、コンピュータ翻訳はどうでしょうか。まだあまり実用的ではない気がします。日本昔話をコンピュータで英語に自動翻訳、それをまた日本語に再自動翻訳してみた、という本を読みました。
「匂いをかがれるかぐやひめ」。
昔々あるところに…というおなじみの出だしも「古代です。あるところにタケ盗品の老人が…あら変なタケ…それが匂いをかがれるとすぐにプリンセスに指名されて…」ということになってしまいます。
敬語だのニュアンスだのという以前に、言葉として意味を成さない、あるいは全く意味が違う、という文章になっています。言葉って本当に難しいものなのですね。

  字幕翻訳といっても映画は言葉だけではありません。その国の生活や文化を理解していないととんでもない誤解をしてしまうことになりその誤解を観客に押し付けることにもなりかねません。

著者が「青空が僕の家」というインドネシア映画に字幕をつけたとき、貧民街に住む人たちの映像を見て、「そんなもんもらうんじゃねえ。さっさと返してきやがれ」というような口調に訳したところ、インドネシア語の専門家から、「極貧で、最低水準の生活をしていてもこんな乱暴な言葉使いではなくもっと論理的で穏やかな言い方をしている」と指摘された、これには恥じ入った、と書いています。

  外国映画を見るとき字幕に頼るしかないのにちっともそのことに気が付かず、ノーテンキに映画を見ておりました。この本を読んで翻訳者の苦労のすえの「字幕」ということを意識して映画を見るようにしま〜す。

 =====  本日の1冊  =====

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

太田 直子
価格:¥ 735 (定価:¥ 735)

http://www.amazon.co.jp/dp/433403392X /ref=nosim/?tag=konohonomoshi-22

 

   ***** おまけの1冊 *****

 匂いをかがれるかぐや姫〜日本昔話Remix

文・原倫太郎  絵・原游   マガジンハウス ¥952

(アマゾン検索では出てきませんでした。珍しいこと)

 発行者 早田 和
発行 まぐまぐ ID=0000223214
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