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この本面白かったよ 猫ばあ ブック・レポート
vol. 59 2008.3.14
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猫と本が好きな団塊世代です。面白かった!読んでよかった!誰かに読んでもらいたい!と「!」の付く本を紹介、というより「ねっ?おもしろいでしょ」と言いたくて、そして面白 いと思う本があったら紹介して、と初めてのブログを開きました。女性著者の小説、エッセイが多いかも。理数系、スポーツ物、時代物はゴメン、ほぼゼロです。
10年ほど前に読んだ「ロンドン骨董街の人びと」も講談社エッセイ賞受賞作品です。「も」というのは先週の「日本語ぽこりぽこり」、猫ばあブックレポートVol 23「アフリカにょろり旅」もそうだからです。意識して読んでいるわけではないのですが、ほかにもいくつか受賞作を読んでいて外れはなかったのでこんどは、この賞の受賞作品を順々に読んでみようかしら。
さて、「ロンドン骨董街の人びと」ですが著者は関西学院大学文学部を卒業後ロンドン大学東洋アフリカ研究所およびデヴィッド財団コレクションで東洋陶器について学び、ロンドンの古美術商スピンク・アンド・サンの東洋美術部門で働いていた方です。美人!
ロンドンに到着した著者は早速住まいを探します。「ロンドン大卒シティ勤めのイギリス人女性との同居、ロンドンの夜景が美しい部屋」という広告を見て、イースト・エンドのドックランドという、下町に住むことになる、というところからこの本は始まります。でもそこは、低所得者向けの公営住宅で、治安も最悪のところでした。
P18< 繁華街のピカデリーへさえ一生行かないであろう隣人たちは、休日になると荒っぽく戸を叩きタニアに紅茶をねだりに来た。擦り切れたセーターを着た彼女たちが台所にやってくると、饐えたような匂いが部屋を満たした。―略― のちにもっと多くのイギリス人と知り合うようになってから、ロンドンというところでは、お金がそこそこある階級の人は、一生ゴミさえ見ることなく生きていけるものなのだと思った。食い散らかした後始末を東南アジアやアフリカ系の掃除婦に任せタクシーでこぎれいな通りだけを通り、暖房がいつも足の先まできいているようなホテルや屋敷で、裕福な人間のみ付き合って生きている。>
のちに勤める古美術商の世界とはまったく対極にあるイギリスを最初に体験した筆者はイギリス社会の上澄みだけを掬い取って、「すばらしい!」と言う愚から免れています。無責任な母親に捨てられ孤児院で育った、家主のタニアはこういいます。「この国の階級社会による貧困が深刻なのは、人間としての感性そのものが欠落している人間以下の人間をつくることなのよ。」
大学の就職課から採用募集のある唯一の会社と教えられてスピンク・アンド・サンという古美術商に面接を受けに行きそのたたずまいにびっくりします。大理石とロココ調の装飾の立派な建物で、骨董屋というよりは貴族の館、創業は1666年、顧客はイギリス王室、貴族、各国の王室、ロールスロイスで乗りつけるような人たち、ウガンダのアミン将軍の名まであります。
日本では考えられないことですが、古美術商への就職希望者は多く募集はわずか。蚤の市で本物のゴッホを探すようなことだと言われているくらい難しい面接に合格、「翻訳家兼カルチュラル・アドバイザー」という職を得ます。カタログや広告の日本語訳と日本市場での売り上げ向上のための調査、という仕事で、バブル経済真っ最中の日本に市場を広げようかという会社の方針とタイミングが合致したことも幸いしたらしいですが、創立以来初の日本人正社員、ということで大変なことも多かっただろうと思います。
「階級や国籍の壁を越えて仲睦まじくやっている」と初出勤の日に上司に言われたそうですが筆者は、「上下関係は封建制度の領主と雇用人の関係」だといいます。伯爵令嬢である秘書、お屋敷育ちのディーラーが使う言葉と下働きの人たちの使うコックニー(下町訛り)、職種によって言葉までちがい、壁はちゃんとあるのです。
P96 < 外国人がイギリス人について言う「空惚ける(feign ignorance)とは、まさにこの手の嘘のことなのだ。>
日本のTV番組「お宝鑑定団」の元祖ともいえるTV番組や貴族の館のオークション、コレクターたちの実態など興味深いこともたくさん書かれています。
1997年に書かれた「あとがき」に < この本は私の島が安定してゆく過程で見たイギリスと、イギリスにある東洋美術と、それを愛する人たちのことを記したものである。帰国後も私は、たびたびイギリスに行く。コレクターや古美術商と話すことによってイギリスの変化を知ることになる。>と書いています。
国民の階級意識、王室への感情の変化、大物コレクターの減少、そして老舗の倒産がありスピンクもクリスティーズの傘下に入ったそうです。
それからもう10年以上たってしまったのですからもっともっと事情は変わってしまったことでしょう。現在の「イギリス骨董街の人びと」をも知りたいのですが、残念ながら六嶋さんの新しい本は見当たりません。どなたかご存知でしたら教えて下さーい!
===== 本日の1冊 =====
ロンドン骨董街の人びと
六嶋 由岐子
価格: (定価:¥ 1,995)
http://www.amazon.co.jp/dp/4104210013/ref=nosim/?tag=konohonomoshi-22
発行者 早田 和
発行 まぐまぐ ID=0000223214
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