この本面白かったよ 猫ばあ ブック・レポート
vol.61 2008.3.28
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猫と本が好きな団塊世代です。面白かった!読んでよかった!誰かに読んでもらいたい!と「!」の付く本を紹介、というより「ねっ?おもしろいでしょ」と言いたくて、そして面白 いと思う本があったら紹介して、と初めてのブログを開きました。女性著者の小説、エッセイが多いかも。理数系、スポーツ物、時代物はゴメン、ほぼゼロです。
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アラブ、と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。アラビアン・ナイト、らくだ、砂漠、油、湾岸戦争、OPEC、ムスリム……。なんとなく使っていますが私の知識はとりとめもなく、恥ずかしいことに、アラビア半島は頭に浮かぶものの、アラブ諸国の名前や位置関係もあやふやで、このブログを書くためにちょっと調べて、「えーっ、エジプトって、ほんとはエジプト・アラブ共和国というの!」なんていうありさま。そんな私にも分かりやすい、アラブの「入門書」です。
オイルマネーという言葉はよく聞きますし、なんとなく「すごーい!(何が、かははっきり分からないくせに)でも原油だって底をつくんだからね。」なんて負け惜しみみたいなことを言っていましたが、では埋蔵量はどのくらいなのでしょう。本の帯に、「石油と天然ガスの埋蔵量は13000000000000000円!今、世界経済を牛耳っているのはこの人たちです!」と書いてあります。ゼロが15個。読めます?1京3000兆円です。PCに「いっけいさんぜんちょう」と入れても変換しませんでした。日常生活でお目にかからないほどの数字です。今原油は高騰していますし為替レートも変動しますからごく大まかな数字でしょうけれど、とてつもない量ということは分かります。
先ほど「湾岸戦争」と書きましたが、「湾岸」は一般名詞。なぜ「ペルシャ湾」といわないのでしょうか。この湾をアラブ側は、ずっと「アラビア湾」と呼んできましたが、つい最近まで世界は「ペルシャ湾」と言い習わしてきました。ペルシャとはアラブ国家と対立しているイランの古称なので、最近力をつけてきたアラブが自分たちの呼び名「アラビア湾」使え、というのでイランとの板ばさみになって、苦し紛れに「ガルフ(湾)」と呼ぶことにした、というわけだそうです。
アラビア半島のほとんどを占めるサウジアラビア。この国名は「サウド家」が支配する「アラビア(半島)の国」という意味だそうで、世界中で支配者の名前を冠している国名はヨルダン(正式国名ヨルダン・ハシミテ王国)とこの2つだけ。「日本」ではなく「徳川国」というようなものですね。そして名前だけではなく現代においても国家を我が物のごとくサウド家が抑えているようなのです。
18世紀ベドゥインの豪胆な若者が厳格な宗教家と組んで近隣を制圧、瞬く間にアラビア半島をおさえます。父の名に因む第一次サウド王国です。その後サウド家は栄枯盛衰を繰り返し砂漠の豹、イブン・サウド(アブドルアジズ)が1932年サウド家によるアラビア即ちサウジアラビア王国の建国を宣言。 現在王位継承権者は1000人以上、継承権のないものを含めれば数万人の王子がいて、いまや政府組織の隅々まで浸透しているそうです。 そんな王族の一人1955年生まれのアルワリード王子は王族としては珍しく、自ら働き巨万の富、米国のフォーブス社によると2兆4000億円もの富を築いたのです。どうやって?公共事業、スポンサー事業、投資。詳しくは「王族投資家アルワリード王子」の項をお読みください。
原油価格が1バレル(159リットル)2ドルだった1970年サウジの収入は20億ドル、いわゆるオイルショック(産油国にとってはオイルブーム)後の1980年には石油産業の完全国有化の道をつけたこともあり、930億ドルとなったのです。1バレル100ドルを越えた今オイルマネーは過剰流動性を引き起こしている、とのこと。どういうことか?
第一次オイルブームの頃、産油国は社会インフラがほとんど整備されておらずお金は道路、電力、水、学校、病院などあらゆるものに注ぎ込まれ、国内で使われていたけれど、今は国民の生活もモノあまり、輸出の増加に輸入の増加が追いつかず、国家と個人の双方にお金がたまってはけ口がないということなのですって!
このお金がいわゆるオイルマネーとして外貨預金、外国政府債、不動産M&Aなど直接投資などの形で世界各国に出回っているわけ。しかしその実態ははっきりとはつかみきれておらず、ミッシング(行方不明)オイルマネーとして世界のどこかに潜んでいるのだそうです。なんせアラブの財閥はほとんどが同属で、株式は非公開、投資などはアラブの名を出さずダミーを使ったりするのだそうですから。
今話題の、アラブ首長国連邦のひとつドバイ、サウジの王族と太いパイプを持つビンラディン財閥(猫ばあVol 9 「おそすぎないうちに」にも書きました)、桁外れの大金もちの中の誇り高い貧乏国ヨルダン・ハシミテ王国などについて、あるいは外国からの出稼ぎ労働者の実情など、手際よくまとめてあります。アラブ世界では王族たちが庶民から搾り取って、民は貧困にあえぎ、という構造ではなく庶民もまた豊かなのが特徴。貧しいのは国民より多い外国からの出稼ぎ労働者のようです。
筆者はアラビア石油に入社後サウジアラビア駐在、間をおいてJETRO(日本貿易振興機構)サウジアラビア・リアド事務所長を務め通産10年近くをかの地で過ごした方です。
===== 本日の1冊 =====
発行者 早田 和
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