[ 本 読書 ブック ]
この本面白かったよ 猫ばあ ブック・レポート
vol. 62 2008.3.28
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猫と本が好きな団塊世代です。面白かった!読んでよかった!誰かに読んでもらいたい!と「!」の付く本を紹介、というより「ねっ?おもしろいでしょ」と言いたくて、そして面白 いと思う本があったら紹介して、と初めてのブログを開きました。女性著者の小説、エッセイが多いかも。理数系、スポーツ物、時代物はゴメン、ほぼゼロです。
この本は2005年の直木賞受賞作品ですが、なんだか味気ない殺風景な物語だろうと勝手に思い込んで、読んでいませんでした。なぜそう思い込んだのか、今はよく分からないのですが……。
ちょっとしたところでたまたま話を交わした青年が本好きで、自分で小説なども書いているということで、「面白い本ある?」とたずねましたら、「風に舞いあがるビニールシート」との答え。で、読んでみました。
表紙の言葉から
「愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、今日も思っている。大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語」
裏表紙には
「自分だけの価値観を守って、お金よりも大事なものを持って生きている―。あたたかくて強くて、生きる力を与えてくれる、森絵都の短編世界。」
とあります。本の紹介に表紙のキャッチコピーをそのまま書くなんて手抜きみたいだけど、まったくその通り、よくまとめてあるなあと思ったのでご紹介した次第です。
表題作は6つの短編の最後。外資系投資銀行からUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に転職した里佳と、上司であり、夫となったエドの出会いから別れ。エドは紛争の危険な現場にいつも志願して出てゆき、7年の結婚生活ののち離婚。一緒に過ごしたのは通算わずか1ヶ月。エドは赴任先で亡くなります。
別れた妻、という中途半端な立場である里佳は、現地に飛んで行き、遺体にすがり付いて泣くことも、その死を知人と悼みあうこともできません。でも、悲しみは深く、心ここにあらずという状態で仕事も手につきません。
「ビニールシートが風に舞う。獰猛な一陣に翻り、揉まれ、煽られ、もみくちゃになって宙を舞う。天を塞ぐ暗雲のように無数にひしめきあっている。雲行きは絶望的に怪しく、風は暴力的に激しい。吹けば飛ぶようなビニールシートはどこまでも飛んでゆく。とりかえしのつかない彼方へと追いやられる前に、虚空にその身を引き裂かれないうちに、誰かが手をさしのべて引き留めなければならない―。」と言っていたエド。ビニールシートとは不安定な過酷な状況にいる人たちのことでしょう。エドは平和な東京に戻ったわずかの間にもビニールシートを煽る風の夢にうなされるほどです。
そんな夫を見るにつけ、自分には現地での仕事は絶対に無理、といっていた里佳。エドの死にあい、その事情を知り変化していく心境。国連難民高等弁務官事務所の活動も絡めて描いてずっしりと重い短編です。
実際多くのとても優秀な若い人たちがこのような団体で働き、何とかしなければと奮闘している現実には頭が下がります。「おまけ」としてそういった団体のひとつ(民間ですが)の現地レポートが載っているHPアドレスを書いておきましたのでクリックしてみてください。
料理研究家の華やかな女性の下で長年縁の下の力持ちをしてきた弥生、婚約者と仕事と板ばさみになりながら……という「器をさがして」。
捨て犬の世話をするボランティアをするためのお金が必要なためにスナックに勤める恵利子。客や舅姑、夫とのやりとり、そして捨てられた動物たちの様子やボランティアの実態などを描いた「犬の散歩」。
「鐘の音」は琵琶湖近くのお寺の仏像と仏像修復士、その師弟関係、辞めていった元修復士と残った人の思い、などが描かれ、不空羂索(ふくうけんじゃく)観音とか准胝(じゅんてい)観音なんていう仏像についての知識も得られます。
「ジェネレーションX」は通販情報誌のベテラン社員健一が、その情報誌に載せた商品の会社の若い社員石津と苦情処理に行く、という設定。遅刻して直立不動でわびるもののどこか変に図太い石津。健一の頭には「新人類」という言葉が浮かび、最初からなんだかそりが合わない雰囲気。石津は運転も健一に任せ助手席で私用の携帯電話をかけまくります。狭い車内での二人の会話と、携帯に向かってしゃべる石津の言葉。当然相手の言葉は健一には届きませんがいろいろなことが少しずつ分かってきます。内心面白くない健一、意にも介していないような石津、ですがある一瞬で二人の心のバリアが崩れ、空気が明るく動き出します。なにがあったのか?
それぞれまったく違う世界、違う話を描きながら、自分の価値観を持って生きているそれぞれの主人公。いろいろな世界があるものだなあとおもいました。本を読む楽しみのひとつですね。小学生の感想みたいでスミマセン。
===== 本日の1冊 =====
風に舞いあがるビニールシート
森 絵都
価格:¥ 1,470 (定価:¥ 1,470)
***** おまけ *****
http://www.shaplaneer.org/tayori/top.htm発行者 早田 和
発行 まぐまぐ ID=0000223214
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