この本面白かったよ 猫ばあ ブック・レポート
vol.65 2008 .4/25
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猫と本が好きな団塊世代です。面白かった!読んでよかった!誰かに読んでもらいたい!と「!」の付く本を紹介、というより「ねっ?おもしろいでしょ」と言いたくて、そして面白 いと思う本があったら紹介して、と初めてのブログを開きました。女性著者の小説、エッセイが多いかも。理数系、スポーツ物、時代物はゴメン、ほぼゼロです。
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なんともセンセーショナルなタイトルです。ゴッホ関連の本は40年以上も昔、中学生のとき茗荷谷駅ビルの茗渓堂で買ったのが初めてです。その本は文庫本「炎の人ゴッホ」だったと思っていました。このブログを書こうと調べてみると、文庫版は1990年に中公文庫から初めて出版されたということなので、私の間違いらしい。そのときの本屋さんの匂いまで覚えているのに、記憶とは変なものです。
忘れっぽい私が何で40年以上も昔にゴッホの本を買ったことを覚えているのか不思議ですが、独特なうねるようなタッチの絵、耳に包帯をした自画像、ピストル自殺など強い印象を持ったのに、本の内容が面白くなく、それでも我慢して少しずつ読んだあげく、さっぱり理解できなかったからかもしれません。
「ゴッホは殺されたのか」は、本文の前に年表とゴッホが暮らした街や村の地図が載っていて親切です。資料とした書簡集の手紙は整理してゴッホの人生にかかわる事柄を分かりやすいように提示した、とのことですけれど、中学生の時「なんだか分かんな〜い」と思ったように隔靴掻痒という思いは残ったのです。
でもそれは本書の最終章で「そうか!分からないのも道理じゃ」と納得でき、長年のもやもやが晴れた思いです。この本のエッセンスは最終章「事件の検証 ゴッホ伝説の情報操作」に詰まっていると思います。
キーポイントのひとつは、世の中に数あるゴッホ関連の本は皆、弟テオの妻であった愛称ヨーの書いた「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 弟への書簡集」を資料としたものである、ということ。
ヨーは身内とはいえ弟の妻であって、ヴィンセントとは一緒に暮らしたことはありません。合計でも5日間をともにしたことがあるだけです。 この書簡集はゴッホの死後24年経った1914年に出版されたものです。冒頭に書いたように「記憶とは変なもの」ですから、その記憶が事実とは限らないし、まして意図的にあることを隠そうとか、事実とは違う方向に持ってゆこうとして書かれたとするならばどういうことになるでしょうか。事実ではないことでも「近しい人の正しい証言」ゆえに簡単に定着してしまうでしょう。
実はゴッホ関係の資料はすべてテオの息子ヴィンセントの設立したゴッホ財団の下、厳重に管理されていて、今までに公開されたもの以外の資料、たとえばテオがほかの兄弟に書いた手紙、両親がこどもたちに書いた手紙などは一般の人は見ることができないのだそうです。
ヨーの著した「書簡集」もテオとヴィンセントの手紙のすべてではなく、抜かしたものや時系列を操作したところがあるのだそうで、それなら分からないところがあって当然ではありませんか。
ではゴッホの死の真相はこの本で明らかになったのでしょうか。「殺されたのか」と書いて、「殺された」と断定はしていません。事件の時間、場所もはっきりしていないこと、傷の状態が不自然なこと、そしてなによりも凶器のピストルが発見されていないことなどをあげて従来の自殺説に「殺されたのか」と疑問を呈して、殺されたとしたら誰に、なぜ?という問いへの答えを導き出しています。
その答えは合理的なもののように思えます。思えはしますがでも信じたくはない。最大の謎、凶器のピストルが見つからなかったという点、本当に見つからなかったのでしょうか。時間も場所もはっきりしていないというのにどこをどうやって探したのでしょう。見当はずれの場所を探したとしたら見つかるわけがありません。120年も昔の捜査がそんなに徹底していたでしょうか。
エピローグに「実は本書は『小説 ゴッホ殺し』の創作ノートとして書き始められたものだった。」と書いてあります。ゴッホの人生は謎だらけで創作意欲を掻き立てるものではありましょうが、その死の真実はこんなに時間が経ってしまった今、そしてこれからもはっきりすることはないと思うのです。
あんなにたくさんの目撃者がいたケネディ大統領の暗殺や、ダイアナ妃の死の真相だって諸説があって何がなんだか分からないのですから。
ちょっと気分を変えてゴッホの絵について。損保ジャパン東郷青児美術館のあの「ひまわり」が公開されたときは大行列でした。でも私は上野の西洋美術館にある「バラ」のほうがすきです。いつ行っても誰もその絵の前にはいませんからゆっくり眺められます。ピンクの愛らしいつるバラ。そのバラは神経を病んで入院していたサン・レミ療養院の庭にあったものだということです。 ゴッホ展で見たブルーの空を背景にした満開のアーモンドの花を描いた絵(1890年作)もとてもきれい。同じ年にピストルの弾を受けて亡くなるなんて(自殺にしろ、他殺にしろ)考えもつかない明るさです。
===== 本日の1冊 =====
発行者 早田 和
発行 まぐまぐ ID=0000223214
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