この本面白かったよ 猫ばあ ブック・レポート
vol.66 2008.5/2
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猫と本が好きな団塊世代です。面白かった!読んでよかった!誰かに読んでもらいたい!と「!」の付く本を紹介、というより「ねっ?おもしろいでしょ」と言いたくて、そして面白 いと思う本があったら紹介して、と初めてのブログを開きました。女性著者の小説、エッセイが多いかも。理数系、スポーツ物、時代物はゴメン、ほぼゼロです。
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今回は、何を書こうかなあ、と古いノートを見ていたら「南蛮阿房列車」が目に留まりました。1994年10月に読んだもので、昭和56年(1981年)発行の新潮文庫です。ところがこれが絶版。残念!と思いましたら光文社文庫から「新編 南蛮阿房列車」として出ていることが分かりました。
「新編」は「南蛮阿房列車」「南蛮阿房第2列車」(新潮文庫)「自選 南蛮阿房列車」(徳間書房)の三冊を底本として、12編の世界の鉄道をめぐるエッセイが収められています。
著者は子供のころからの鉄道好きで、小説以外に鉄道関連のものを書いてみたいと思っていたけれど、内田百鬼園の鉄道旅行記「阿房列車」があり、逡巡していたそうですが、昭和30年代海外旅行の機会があって趣の違うものが書けるかも知れないと思い始めました。そして昭和50年にようやく第1話を書いたのです。思いついてから17,8年後、百鬼園先生の亡くなったあとになりました。ずいぶん遠慮深い方。
まずは遠藤周作氏と北杜夫氏と共にしたヨーロッパ旅行のお話。
P19 < まんぼうの行動は終始、スローモーション・カメラが撮影した人物のそれの如く、狐狸庵の方は駒落としで、高崎山の猿のようにせわしない。>
まんぼう氏は突如「愛してるウ」などと叫ぶ始末。「愛してる、助けてくれ、神様、の3つは北氏の口癖なんだそうです。
さてパリについた翌日、阿川氏は、ただ列車に乗りたいがために700キロ以上はなれたトゥルーズまでの旅に二人を誘いますが断られ一人で決行します。それはそうでしょう早朝パリを出発6時間かけてトゥルーズへ着き、そのままタクシーで飛行場へ駆けつけパリへ飛行機でへトンボ帰り、というのですから。
緑の丘を列車は<「ヒーコッコ ヒーコッコ」と単調な音を立てて走りつづける>と描写。オリエント急行、マダガスカルの列車など出てくる汽車の音を全部書き分けています。うろ覚えですが絶版のほうには台湾の列車の音を「ケタタッタ ケタタッタ カタケチャケタコト」。 イタリア人の会話を「シ シ シ。何とかヌート タンテ 何とかナーエ」とイタリア語らしい音を写し取っているし、耳がいいのね、と思いました。
マダガスカルに旧知の人がいるので行ってみようと、またまた狐狸庵氏たちを誘いますが、「あほらし」と断られ、意外にも鬱のまんぼう氏は「行きたいです」と二つ返事で承諾、理由は昆虫が見たいから。現地の知人に、汽車に乗りたいとかカブトムシが見たいという渡航者を迎えるのは初めて、とあきれれながらの二人旅が「マダガスカル阿房列車」。
「アガワ峡谷紅葉列車」は著者と同じ名前であるという理由で紅葉見物かたがたカナダのアガワ峡谷まで出かけた時のもの。行ってみれば「アガワ駅」は列車の停車しない無人駅だといわれますが自分の名刺を見せて同じ名前の駅にぜひ降り立ちたい旨訴え、なんと特別に下車させてもらいます。びっくりですね。
「降誕祭フロリダ阿房列車」はアメリカ建国200年を祝う「アメリカン・フリーダム・トレイン」に乗りに行くお話。ニューヨークのすし屋での会話から唐突にこんな話が出てきます。ちゃんとあとで繋がるのですが。(どう繋がるのでしょうね)
P204<内田百鬼園先生に、「馬は丸顔」と題する名作がある。成島柳北は恐ろしく顔の長い人であった。明治の初年馬上豊かに墨堤へお花見に出かける柳北を、一緒に行った福地桜痴居士がつくづく眺め、感にたえて一首読んだという話が書いてある。“ さてもさても 世は逆さまと成りにける 乗りたる人より馬は丸顔”>
また同じ章で、アメリカ留学中の息子に「お父さんの英語聞いてると疲れるよ。イディオムや前置詞の使い方がああ滅茶苦茶じゃ、自分でも困るでしょ」といわれこう答えます。
<「誰かがな、一世の婆さんに言ったそうだ。お婆さん、言葉ができなくて、長いアメリカ生活、さぞ不自由でお困りになったでしょうね。婆さんがいったそうだ。いいえのう、わたしァ一つも困りゃあしません。困ったのはむこうじゃもん」>
オリエント急行が廃止になるからその前に、と誘われて「過去の栄光の残りかす。食堂車もつけないぼろ汽車に成り下がっている。そうとは知らぬ阿呆が、アガサ・クリスティやグレアム・グリーンの小説に惹かれて時々乗りにいく。僕は鉄道に無知な阿呆と同列に見られたくないね。折角だが、乗ってみる気はありません。」と断ります。でもそれが「郷愁のオリエント急行」なる特別列車だと知って、
< 「ちょっと待ちなさい、君」だぼはぜと思われたくないけれど、餌を見て気が変わった。>
全部鉄道に絡むものなのはタイトル通りですが、鉄道に興味がなくても、あればなおさら楽しい旅行記です。「ここに登場する列車が今も運行しているかどうか、保障はいたしかねる」そうですけれど。
===== 本日の1冊 =====
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発行者 早田 和
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