この本面白かったよ 猫ばあ ブック・レポート
vol.67 2008/5/09
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猫と本が好きな団塊世代です。面白かった!読んでよかった!誰かに読んでもらいたい!と「!」の付く本を紹介、というより「ねっ?おもしろいでしょ」と言いたくて、そして面白 いと思う本があったら紹介して、と初めてのブログを開きました。女性著者の小説、エッセイが多いかも。理数系、スポーツ物、時代物はゴメン、ほぼゼロです。
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本が好き、なんて言っておきながら、ドストエフスキー、ちゃんと読んだことがありません。昔読みかけて挫折、それ以来なんとなく敬遠していました。ドストエフスキーのみならず、トルストイも読んでなくて、「アンナ・カレーニナ」も映画で見ただけ。ロシア文学で読んだのは、プーシキン「スペードの女王」、ゴーゴリー「外套」「鼻」。短編だけ。あ、トルストイは「イワンのばか」を読みました。絵本で、ですけど。
今、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」が売れているそうです。「カラキョー」って言うんですって。びっくりです。新訳も出て文庫本が本屋さんで平積みされていますし、TVで若いお笑いタレント(たぶん)が、1ヶ月かけて通読、紹介していました。そうか、おもしろいのか、では読まねばならぬ、と大決心をしようか(大決心をしなければ読めない重厚超大作というイメージ)と思っていましたら、この本が目に付きました。
「ドストエフスキーのおもしろさ」サブタイトルは「ことば・作品・生涯」。岩波ジュニア新書です。この新書は、平明な文章で分かりやすく書いてありジュニア向けとはいえ大人にだって、いろいろな分野の入門書として最適なものだと思います。 前書きにこうあります。
< ドストエフスキーの小説、評論、手紙などから、意味深い「ことば」を選び、それと共鳴する私の短い話を80編付しました。―略― 全体としてドストエフスキーがどういう人手どのようなことを考えていたかを分かってもらえるようにしました。>
本書は、「ドストエフスキー早わかり」の本ではありません、と著者はいっていますけれど、“ドストエフスキー像”をおぼろげながらにでもつかむにはありがたい本でした。まず巻末の「ドストエフスキーの生涯」から。
1821年モスクワ生まれ。父は田舎に領土を持つ偏屈な医師でドストエフスキーは父親を少年時代から「奇妙な性格な人」と見ています。15歳の時母親を亡くし、軍人養成のための学校で共同生活を送っていた時、今度は父親が亡くなります。なんと自分の領土の農民の恨みをかって喉に布切れを詰め込まれるというむごい殺され方で。 少年時代の夏をすごした懐かしい村は、凶行の場にもなったわけで、ドストエフスキーの記憶の奥には幸せな思い出と、思い出したくもない惨事とがいつも絡みあっていました。
卒業後工兵団製図局に勤めるものの、「勤めはじゃがいものようにつまらない」といってやめてしまい、小説を書き始めます。デビュー作は「貧しい人びと」。その後社会主義思想の感化を受け、帝政ロシア政府に危険分子として逮捕され銃殺刑の判決を受けますが、処刑直前にシベリア流刑となります。 政治犯として4年間の服役、その後も5年兵役を務めます。28歳から37歳にかけてのことです。兵役時代に結婚、妻とその連れ子を伴ってぺテルベルグヘ行ったものの7年後妻は病死、同じ年に兄も急死。多額の負債も抱えることになります。この頃書き始めたのが「罪と罰」。
その後「賭博者」を執筆した時の速記者、若いアンナと再婚、債権者などを振り切って西欧へ旅立ちます。出版社から前借したお金があるとはいうものの、ギャンブルが好きで生活は苦しく4年半後帰国。この間「白痴」「永遠の亭主」「悪霊」などを書いています。
「カラマーゾフの兄弟」は彼の最高傑作だそうですが、最後の作品でもあります。「ロシア報知」に掲載されてから2ヶ月足らずで喀血して亡くなったのです。少年時代両親から「火の玉」といわれた性格で、環境、時代とあいまってその人生は激烈でした。病的な体質でもありました。その文学が穏やかなものであるはずはないのでしょうね。
ドストエフスキーは小説のなかで、しばしば「言葉遊び」をしているそうで、たとえば「地下室の手記」の怠け者でゴマすり男の名前はトリュドリューボフですが、これは訳せば「働き好き」。原語のこんな仕掛けに気がついたらさぞ嬉しいでしょうけれど、翻訳しか読めない私にはこんな皮肉は解説してもらわなければ分かりません。
P53 < ドストエフスキーを語れば、直ちに向上や進歩といったプラスの志向へ人を誘うわけにはいきません。―略―人間のさまざまな病的な苦痛や悪の事実を示すことになります。―略―私が今それらの忌まわしい事実に対する内的感受性の目覚めを若い人にうながすのは、もちろん露悪趣味からではないので、人間の内なるさまざまな危険な可能性にたしかな知覚をもち、自分と他者の苦しみや涙を知ることが必要と考えるからです。>
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発行者 早田 和
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