日本建築学会さんの「建築ストック時代における法制度を探る ―既存不適格建築ストックの水準向上基準は如何にあるべきか―」というタイトルのシンポジウムに参加させていただきました。いや、コメンテーターとかプレゼンテーターとかでなく、聴衆の一人に過ぎなかったのですが、大変元気をいただいて帰ってきました。
そもそも、「既存不適格建築ってなに?」という方も多いのではないでしょうか?
既存不適格 - Wikipedia
元々は建築基準法が普及するまでの経過措置的な制度だったと思うのですが、昭和25年に建築基準法が施行されてから半世紀以上が過ぎたいまも、5000万戸といわれる住宅のストックのうち二割あまりにあたる1000万戸が既存不適格とされ、現在の基準法に満たない性能しか持っていないと言われています。
既存不適格建築は、ある程度以上の規模の模様替えや改築、使い方の変更を行う場合は、一気に現在の基準法並に耐震や防火などの性能を引き上げなければならなくなり、耐震補強などだけで木造戸建で100万円以上かかってしまうともいわれ、逆に住宅の性能を引き上げることにブレーキがかかってしまっているという意見もあります。
また、現在では、住宅の融資などで建築基準法に基づく検査が済んでますよという「検査済証」といわれる書類が必要となるのですが、既存不適格から一気に厳格化の進む現在の基準法にまで性能を向上できるのかという使い勝手と技術的な問題のバランスがあります。中古住宅として売買するためにも「適法」であるか、建築確認を取得しているかどうかが重要な問題と今後なっていくのでしょう。かといって全面的に法律に則って(それは必要なことなのですが)、模様替えをしようとすれば、お客さまからの要望の多いキッチンや和室の変更といった部分以外に柱や土台の取替えなど広範囲な改修のコストが必要となります。 いわば、住宅などの建築物の資産価値が既存不適格という法律上の扱いひとつで大きく変わってしまう可能性があるということです。そんな問題意識で今回のシンポジウムに参加させていただきました。内容については配布された資料に「引用転載は許可を得てください」と書いてあるので、問題のなさそうな範囲で書きます。
私が感じたのは、法律というのはもともと自分の生活の身近なものであるし、もっと一般に興味を持ってどうあるべきかの問題意識をもたれてよいのではないかということです。今回のシンポジウムの提言のひとつは、「国民と社会のニーズ」によって「合意形成」が行われれば、既存不適格をめぐる法律は変わりうるということだと思いました。
プレゼンテーターの方も「マニアックだ」と自ら認めていらっしゃったので書いてしまいますが、今回のシンポジウムはいかにもマニアックなタイトルでしたし、参加されている方々も一般の方というよりもご専門の方ばかりのようでした。しかし、この「既存不適格」の問題がマニアックなままであること自体が問題なのではないでしょうか?実は、建築基準法の法改正が進めば進むほどすでに建っているごく普通の一般の方の所有される建物の「既存不適格」化が進むことになります。建築基準法が厳格化されればされるほど、新築の建物と既存建物の性能の基準の差も大きくなっていきます。ということは、ついこのあいだ建てた建物の資産価値も減っていまうということにはならないでしょうか?
最初に書きました、既存不適格については「合理化」も行われていますし、耐震強度については特別な法律もできました。
- 耐震改修促進法と耐震診断 @ ホームズ君
それでも、やはり最終的にはごく普通の方々が自分の資産の問題なのだと興味をもって、特例を全面的に認められている重要文化財ではない、ご自身の生活や家族や職場を支える建築資産がどのような水準の性能を持つべきなのかという議論がなされることが必要ではないかと今回のシンポジウムに参加して強く感じました。
すくなくとも私の感じている問題意識を感じていらっしゃるご専門の方々が多くいらっしゃるということを知っただけでも参加したかいがありました。
関係者のみなさん、ありがとうございました。
■参照
ちなみに、この問題は、以前のこのメルマガで木造住宅については、このままでは建て替えができなくなるかもしれないので、「合理化」が行われたという話を少ししました。
おさらいとして具体的な内容へのリンクを張っておきます。 いずれも住宅情報提供協議会さんのサイトへのリンクです。
もともとのシンポジウムへのリンクもはらせていただきます。
@ 住宅ビジネスの総合ポータル - イベント・セミナー情報
- 建築ストック時代における法制度を探る (PDF) @日本建築学会
