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  ◆真夜の戯言メールマガジン◆ by とがみ源太郎
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■愛のポークソテー

 ライブが始まる前の楽屋は独特の雰囲気がある。鏡に向かって化粧をしている人。
黙々と楽器を拭いている人。なんだかまるで死刑執行を待つ死刑囚みたいな顔をして
所在なげにしている人。屈伸運動をしている人。眼を閉じてウォークマンを聞いてい
る人。友人と他愛ない話を延々と続けている人。それぞれそれなりに過ごし方っても
んがあるのだろう。まんじりともせずケツの座りの悪いパイプ椅子で、僕等は出番を
待っている。楽屋に取り付けられた電話が鳴るのを待っている。まるで引き絞られた
弓矢のようで、そのまま弦が切れてしまいそうな危うさを伴って。「ぱ、ぱんだにょ
ろ〜!」わたわたと落ち着かない怪人が楽屋を走り回っていた。困ったことにウチの
バンドメンバーだった。僕はダレまくりでパイプ椅子に浅く腰掛けて煙草を吸いなが
ら、あー、気持ちは分からんでもないなー、とか思ってそれを眺めていた。「にょろ
〜!」

 実際不安なのである。ステージから眺めるお客さんの視線というのは、結構「こわ
い」ものがある。自分を見つめる幾つもの瞳。群集オーディエンスというのは、それ
だけで圧倒的な何かをプンプン発しており、一段高いところからそれに立ち向かう自
分など、パチンと軽く消し飛んでしまいそうになるんだ。パプテマス・シロッコさん
(26)でなくても「何だこのプレッシャーは!」とか叫びたくなる。客席はいつもSっ
気たっぷりのボンテージ女王様のよう。「なに?この汚らしい豚は。さっさと演奏を
始めて頂戴。ハッ。下手ね。ポークソテーにしてほしいの?」そんな幻聴さえも聞こ
えてきそうになる。そりゃあ不安にもなる。焦りもする。たじたじである。何もして
ないのに視線が痛い。そんな僕等を、いつもスポットライトは照らし出していた。

「大丈夫だよ」

 かつて、自分の存在をミジンコ以下だと思っていた僕にあの子は云った。失敗して
もいいじゃないと。そりゃあ失敗はよくないことだけれど、何度失敗してもさ。いつ
かきっと上手く出来るよと。今日出来なくても明日、明日出来なくても明後日、一年
後、十年後、百年後。ソレ生きてないんじゃないか?別に来世でもいいじゃない。あ
の子はそんな風に言い切った。「だから大丈夫」「そんな気の長い話はよく分かんね
ー」それも今なら何となく分かるような気がした。本当に不安だったのはさ、キミを
怒らせることよりも。キミともう会えなくなることの方だったから。「大丈夫、気持
ちはまだ続いてるよ」

 そして楽屋の電話が鳴った。
 僕は煙草を灰皿で揉み消して席を立ち上がった。

「さて、鉄板の上で焼かれに行こうか」

 そしてステージの上で、ポークソテーにされるわけである。


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鉄板が熱い内に召し上がっていただきたい
めくるめく愛と情熱の駄目コラムブルース
http://www.gt-works.com/togami/

■ライブ情報 お暇なら観に来てやって下さい
2008/02/23(土)17:30 名古屋栄MUJICA
▽音楽活動ホームページ
http://cloudbuster.raindrop.jp

■真夜の戯言本店
http://togami.sakura.ne.jp/

▽とがみ源太郎へのご連絡はこちら
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