シネマトコラムvol.68「トウキョウソナタ」レビュー
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
シネマトコラム vol.68 (2008.10.12)
* 新作レビュー 「トウキョウソナタ」
* ちょっと蛇足
* 次号予告
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
*新作レビュー
「トウキョウソナタ」(黒澤清監督・日本)
香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海ほか出演
現代社会の断面を背景に、東京に住む4人家族に起こる波乱を描いたドラマ。
個人を追いつつ家族が浮かび上がり、東京を追いつつ日本が見える奥行きのある
好作品。一家4人の配役が全員好演で、特に小泉今日子のみせる表情が圧巻だ。
線路際の少し古びた一軒家に住む佐々木家。主の竜平(香川照之)は、大手企業の
総務課長だったが突然リストラされる。しかしそのことを家族に言えず、会社に
行くふりをして職安に通う毎日。妻の恵(小泉今日子)は、夫や子供たちとの意思
の疎通がない日々に少し疲れている。大学生の長男タカシ(小柳友)は、バイトと
遊びに明け暮れ夜もろくに帰らない。小学6年の次男ケンジ(井之脇海)はピアノ
を習いたいのだが、父が許さないため給食費をくすねてピアノ教室に通い始める。
やがて恵が竜平の失職に気付く頃、タカシが突然米軍への入隊を志願する。竜平
はこっそり清掃の仕事に就き、ケンジのピアノは思わぬ方向に展開、そして恵に
も事件が起こる……。
展開のギアチェンジが特徴的な映画だ。スローで入り中盤まで淡々と流す。ずっ
とこのトーンかと思いきや三分の二あたりからストーリーがグンと加速し、一気
にトップに。そしてまた中速を抜かしてすとんとローに戻り着地する。まるで熟
練操縦士のようなテクニカルなメリハリである。
家族のバランスも平凡なようで凝っている。
竜平は保守的で威厳にこだわり変化を受け入れられない古いタイプだが、臆病な
本心と背中合わせ。2人の息子たちも父親譲りの理屈を振りかざすが、子供たち
の方がよほどシャープである。恵は特に個性はないが、物事を客観視して適切な
対応が出来る。子供たちには高圧的な竜平も、反抗的なタカシも彼女には逆らわ
ない。この家の均衡を保っているのは恵なのだ。
また佐々木家は個人主義でもある。小学生のケンジも含め価値観の違う4人が必
要以上に詮索せず同居している。声高な家族愛もなく、といって険悪でもない。
それぞれの秘密のトリップの後、ばらばらにみえた彼らは、とっ散らかった心を
片付けるように黙して帰る。その様は修復ではなく「収納」にみえる。
随所に現れる現代社会の断面も鋭い。職安、面接、路上生活者への配給…「仕事」
の現場の描写がリアルだ。やはり失職中の黒須(津田寛治)という竜平の同級生が
出てくるが、リストラの事実よりそれがバレないように腐心する様子は本末転倒
で滑稽だ。保身のために関わりを避けるケンジの担任教師にも「今」がのぞく。
一方で黒澤監督は前向きなメッセージも込めている。
「あなたの得意なことは何ですか?」職安でも面接でも繰り返し竜平はそう聞か
れる。雇用不安の世の中でも、得意なことがあれば先が開けるのだという示唆の
ようだ。傷心の中、それでもケンジを後押ししようとするピアノ教室の先生(井
川遥)の役目を貫く姿勢もいい。
香川照之はいつもながら熱演。うろたえるシーンが多いこの役はうってつけであ
る。しかし狼狽のリアクションがどの作品でも同じなので、そろそろバリエーシ
ョンも見たい。ややオーバーアクション気味の動きだが、そこが海外でウケる由
縁でもあろう。
小泉今日子はいつものキョンキョンスマイルを封印し、表情で演技する新しいパ
ターンで挑んでいる。大写しになった無言の顔は言葉以上の素晴らしいインパク
トがあった。
子供役の2人も監督がオーディションで選んだだけあって、新人とは思えない安
定した演技である。ただ泥棒役、役所広司のあまりにもわざとらしい(あえてそ
うした?)そぶりと台詞は拍子抜けだった。
製作陣の力量が充分うかがえる作品である。
日本に詳しい脚本家マックス・マニックスと黒澤監督、そして恵のパートを新人
作家の田中幸子が担当する3人体制で土台となるシナリオに厚みがある。いつも
開いている裏の窓や、恵が身分証明代わりに取った運転免許など、後半の伏線と
なるディテールの見せ方が上手い。
また普通食卓のセットは天井を作らず上からライトを当てて撮るところを、本作
は天井の下で自然な暖色の明りを表現しているそうだ。道理で家のシーンは独特
のほの暗さがある。エンドロールの最後まで効果音が続くエンディングも見事だ。
そして見終わって初めて、このタイトルが希望を表現したものであることに気付
く。実に映画らしい映画、秋にぴったりの秀作である。
*「トウキョウソナタ」公式サイト(予告編もみられます) ↓
http://tokyosonata.com/index.html
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
*ちょっと蛇足
線路際に建つ家のロケーションも印象的です。映像から察するに、井の頭線の「
駒場東大前」駅周辺と思われます。良い作品は舞台となる建物の立地条件が視覚
的に優れていることが多い気がします。
緒方拳さんが亡くなりました。味のあるベテランがまたひとりスクリーンから去
ることになります。それにしても亡くなると同時に、入れ替わるように最後のド
ラマがスタートするなんて、いかにも現場主義の緒方さんらしい巡り合わせを感
じます。「風のガーデン」、遺作にふさわしい良さそうなドラマです。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
*次号予告
次回新作レビューは「ボーダータウン 報道されない殺人者」を取り上げる予定
です。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
シネマトコラム
発行者 上間秀彦
連絡先 g-note.uema@nifty.com
『まぐまぐ』感想フォーム↓
http://form.mag2.com/trigawiowo
発行板
*『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
配信中止はこちら→ http://www.mag2.com/m/0000231303.html
*『めろんぱん』http://www.melonpan.net/index.html
配信中止はこちら→ http://www.melonpan.net/mag.php?010476
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


![転職なら[en]社会人の転職情報!転職成功者続出 転職なら[en]社会人の転職情報!転職成功者続出](http://kamogawa.mag2.com/bn/recommend/sya.gif)
![派遣のお仕事探しなら[en]派遣のお仕事情報 派遣のお仕事探しなら[en]派遣のお仕事情報](http://kamogawa.mag2.com/bn/recommend/haken.gif)
![アルバイト探しは[en]本気のアルバイト アルバイト探しは[en]本気のアルバイト](http://kamogawa.mag2.com/bn/recommend/baito.gif)
![就職サイトは[en]学生の就職情報 就職サイトは[en]学生の就職情報](http://kamogawa.mag2.com/bn/recommend/gakusei.gif)
![転職なら[en]転職コンサルタントキャリアを活かした転職に! 転職なら[en]転職コンサルタントキャリアを活かした転職に!](http://kamogawa.mag2.com/bn/recommend/consul.gif)