<ゴキカブトシリーズ.Part1のお話>弱虫で臆病なゴキブリのゴキ太郎は、ゴキブリ以上の生き物になると決意し、さまざまなチャンレジの後、カブトムシの角をつけてゴキカブトとなった。新種の昆虫として有名になったゴキ太郎だったが、たった一匹で暮らす生活に耐え切れなくなり、角を捨ててゴキブリに戻ったとき、人間の殺虫剤によって殺されそうになるゴキブリの親子を助け、自分が殺虫剤をかけられてしまった。ところが、その殺虫剤は、死に至る薬ではなく、オスがメスに転換してしまう薬だった。
第1話「因縁の兄弟」
「あいつはバカだったんだ。人間界でいくら有名になったって、結局、人間のどれいじゃないか。その成れの果てがあのざまさ。」
ゴキ太郎がメスになってしまったことを仲間から聞いて、ゴキ次郎は吐き捨てるように言った。
「おいらは、あいつのことを兄さんだなんて思っていない。あいつがどんな暮らしをしようと、おいらには関係ないね。」
ゴキ次郎はゴキ太郎と同じ母親の子だったが、ゴキ太郎が一人立ちをしてから生まれた年の離れた兄弟だった。
(あいつが有名になったとき、おれはたしかに鼻が高かった。一度も一緒に暮らしたことはないが、やっぱりすごい兄さんだと自慢だった。けどよ…。)
ゴキ次郎は思い出していた。
ゴキ太郎がゴキカブトとして有名になったある日、ゴキ次郎は一度、昆虫博士の家に忍び込んだことがあったのだ。
上等の土が敷かれたピカピカのガラスケースの中で、ゴキ太郎はあぐらをかいて座っていた。
ゴキ次郎が近づいてノックすると、
「おいらは、おまえらの仲間でもなんでもねえ。おいらは新種の昆虫だ。おまえらとは別格だ。住んでる世界が違うんだ。とっととかえってくれ。二度とおいらに近づくんじゃねえぞ。人間に妙に思われるじゃねえか。」
ゴキ太郎はそういうと、ゴキ次郎の顔さえ見ようとしなかったのだ。
危険を冒してやっとたどり着き、一言「おめでとう」の気持ちを伝えたかっただけなのに。兄弟のちぎりさえ、交わすことができなかったのだ。
ゴキ次郎はそのときの気持ちを決して忘れることができなかった。
兄さんを尊敬する気持ちは、そのとき一気に憎しみに変わった。
「おれは、たとえ角をつけたとしても、あんなやつにはならない。」
それは強い決心になった。
でもまさか、本当に角をつける運命が待っているとは、そのときのゴキ次郎は夢にも思っていなかった。
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