[ ゴキカブトシリーズ[Part2] ]

<これまでのお話>ゴキカブトとなって有名になりながらも、ゴキブリの姿に戻ってしまったゴキ太郎には、弟のゴキ次郎がいた。ゴキ次郎は兄のことを憎んでいた。ゴキカブトだった頃、まったく相手にされなかったからだ。ゴキ次郎は兄のようにだけはならないと、強く思っていた。

第2話 「まさかの運命」

 ゴキ太郎がメスになったといううわさを聞いて、しばらく経ったある日のことだ。
「しまった!」
 ゴキ次郎が気づいたときは、もう遅かった。人間のしかけたワナに、まんまとひっかかってしまったのだ。
 たいていのワナは、おいしそうな匂いに誘われて部屋に入り込むと、強力なのりに足がとられて動けなくなってしまうもの。または、エサだと思って食べて、いつものようにねぐらに帰ると、そのまま苦しんで死んでしまうもの。ゴキ次郎が知っているのは、大方そんなものだった。
 しかし、ゴキ次郎がひっかかったワナは違っていた。大好物のタマネギのかけらが入ったビンに、一度入ったら二度と出られない仕掛けがしてあったのだ。
「ただのタマネギだと思ったのに。あのタマネギにも毒がついていたんだろう。もうそろそろ、毒が回って死ぬんだろうなあ。」
 そう覚悟を決めていたときだ。人間の子どもが近づいてきて、ふたを開けるとゴキ次郎をつまみ出し、瞬間接着剤でカブトムシの角をゴキ次郎の頭にビタッと、くっつけた。
「おかあさ〜ん、見て見て! ほら、ゴキカブトだよ! すごいでしょ。僕がつかまえたんだよ!」
 子どもは、ゴキカブトに変身させたゴキ次郎を持って自慢げだった。
 ゴキ次郎はあせった。このワナはゴキブリをおもちゃにするためのワナだったのだ。
 しかも最悪なことに、自分がゴキカブトにされてしまったのだ。
(ゴキ太郎のせいだ。あいつが、ゴキカブトとかいって有名になるからだ。クソ〜!)
 しかし、いまいくらゴキ太郎のことをうらんでもはじまらない。なんとか逃げ出さなければ。ゴキ太郎と同じ運命になってしまう。ゴキ次郎にとって、兄、ゴキ太郎のように人間の目にさらされることだけは、絶対にゴメンだった。
 ゴキ次郎は全身の神経を集中した。そして、子どもの握る力がほんの少しゆるんだすきに、はねを広げ、思いっきり飛んだ。死にものぐるいだった。

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