[ ゴキカブトシリーズ[Part2] ]  

<これまでのお話>ゴキカブトになった兄さんを憎んでいたゴキ次郎は、人間の子どものいたずらで兄さんと同じ運命を背負い、ゴキカブトになってしまった。しかし、雑木林で出会ったメスのカブトムシのカブリリーと出会い、その悔しさや悲しみも癒されていくのだった。

第4話 「複雑な2世誕生」

 つやつやに光って、固くて丸みを帯びたカブリリーの背中。黒くてまるまるしたカブリリーのつぶらな瞳。どれもたまらなく美しく、「あなた」と呼んでくれるその声は、メロメロになるくらいかわいかった。

「あなた…。」
「なんだい、リリー。」
「わたしね、どうやらできたらしいの…。」
「できたって、なにがだい?」
「いやだわ、あなたったら…。」
「えっ?! もしかして、もしかすると、もしかしちゃってかい?」
「ええ、その、もしかしての、もしかするとの、もしかしちゃってよ。たぶん。」

 ゴキ次郎は、その日がくるのがたまらなく待ち遠しかった。けれど、うれしい気持ちと同じくらい不安もいっぱいだった。
「いったい、どんな子どもたちが生まれるんだろう…。」
 もしかして、ゴキブリそのものの子どもが生まれてしまったら、カブリリーになんと言ったらいいんだろう。いまのうちに、本当のことをカブリリーにだけは話しておいたほうがいいかもしれない。
けれどもし、本当のことを言ってカブリリーに嫌われてしまったら、この幸せは壊れてしまう。たとえ、この雑木林一強いカブトムシと戦うことになったとしても、カブリリーだけは絶対に失いたくなかった。
そんなことを考えたら、やっぱり本当のことを言うのだけはやめようと思うのだった。
 そして、ついにその日はやってきた。カブリリーの産んだ卵から、二匹の愛の結晶が姿を現したのだ。

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