[ ゴキカブトシリーズ[Part2] ]  

<これまでのお話>ゴキカブトとしてメスのカブトムシ、カブリリーと結婚したゴキブリのゴキ次郎は、カブジャイアンとの決闘で見事に勝利を果たした。しかし、その喜びもつかの間、子どもたちがしがみついたそのとき、戦いで弱くなっていた角があっけなく取れてしまい、ゴキ次郎は真実を話し、一人飛び去ったのだった。

最終話 「普遍の父親」

 ふと、ゴキ次郎の頭に、ゴキ太郎のことが浮かんだ。ゴキカブトとして有名になったゴキ太郎がなぜ、ゴキブリにもどったのか。ゴキ次郎にはまったく分からなかったが、いまの自分は、あれほど軽蔑していたゴキ太郎と大差ないような気がしたのだ。
(あいつもおいらも、しょせんただのゴキブリさ。)
 そのころ、雑木林に残されたゴキ次郎の家族はまだ誰も口をきけず、ぼうぜんと立ち尽くしていた。
 そこへゴキ次郎のオナラ攻撃で気を失いかけたカブジャイアンが、のそのそとはい上がってきた。手にはゴキ次郎がつけていた角を持っていた。
「ハッハッハッ。おわらいぐさだな。おまえら、ただのゴキブリと家族ごっこをしていたわけだ。けどよ、このおれさまがただのゴキブリに負けたとなったら、この林中の笑いものだ。この角持って、とっとと行きな。取れたものはまたつければいいじゃねえか。早くしねえと、追いつけねえぞ。」
 そう言うと、カブジャイアンはカブリリーに角を投げつけた。
 角の重みを感じながら、カブリリーはゴキ次郎の存在の重さを改めて感じたのだった。
「さあ、みんな行くわよ。」
 カブリリーを先頭に、八匹の子どもたちが後に続いた。
「あなたー!」
「お父さーん!」

 ゴキ次郎の遠い記憶の中で誰かが呼んでいるようだった。(いや、ちがう。いま誰かが呼んでいる声だ。)
 それはまぎれもなく、カブリリーと八匹の子どもたちの声だった。
 ゴキ次郎が振り向くと、そこには必死に追いかけてくる家族の姿があった。
「リリー、それから子どもたち。」
「あなた。」
 カブリリーは息を切らせながら、けれど力強く言った。
「あなた。あなたがゴキカブトであってもなくても、ゴキカブトの父親であることにかわりはないわ。あなたと私が出会わなければ、この子たちは生まれてこなかったんですから。この角は、カブトムシよりも強いあなたへ、私から送る勲章です。」
「リリー。いいのか? こんなおいらでいいのか?」
 ゴキ次郎は胸がいっぱいになり、それ以上の言葉が出てこなかった。
「もちろんよ。あなた。」
 十匹の家族は再び強く抱き合い、一つになったのだった。  (おわり)

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