<前回のお話>いつもハチマキをしているばあちゃん。家族やぼくはなんとかとってもらいたいと思っている。授業参観にまで、ばあちゃんはハチマキをしてきて、みんなに笑われたんだ。ぼくははずかしくて、ばあちゃんを怒った。ところが、ばあちゃんが風邪をひいて、すごく弱々しいんだ。
後編「ハチマキばあちゃん」
「勝彦、ばあちゃんのハチマキをとってきてちょうだい。」
「なんでこんなときまでハチマキなんだよ。ハチマキなんかで病気は治らないのに」と、ぼくは思いながら、ばあちゃんの引き出しから古びた手ぬぐいを取り出した。
そのときぼくははじめて、きちんと折りたたまれた手ぬぐいを見た。きれいに洗濯されていて、ほのかに石けんの匂いがした。「魚八」という魚屋の名前と、だいぶ薄くなっているけど「勝盛」という名前が書いてある。
「かあちゃん、ここに書いてある勝盛ってだれのこと? とうちゃんは勝典だし…」
ぼくはそばにいたかあちゃんに聞いた。
「勝彦は知らなかったっけ? それは亡くなったじいちゃんの名前だよ。」
「ふーん。」
「ばあちゃんは、いつもじいちゃんと一緒にいたいのよ。」
なんだよそれ! なんでかあちゃん、そのこと知りながらぼくに教えてくれなかったんだよ。ばあちゃんが今でもじいちゃんのことを思っているなんて。だからいつもハチマキをしていたなんて。ぼくはすまないような気持ちでいっぱいになった。ぼくは心の中で、かあちゃんにどなりたかった。でも寝ているばあちゃんのそばだから、必死にがまんした。
「はい、ばあちゃん、ハチマキだよ。」
「ありがとうね、勝彦。授業参観のときはゴメンね。まだあやまってなかったよね。」
なんでいまさらそんなこと言うんだよ。なんだか、遠いところにでも行っちゃうみたいじゃないか。ぼくはちょっと、泣けてきそうになった。ぐっと歯を食いしばった。
「勝彦、ばあちゃんにハチマキをさせてちょうだい。」
ばあちゃんの声が弱々しく聞こえて、ぼくはあせった。寝ているばあちゃんの頭にハチマキをしてやると、ばあちゃんは言った。
「さあ、もうこれで大丈夫。死んだ人のハチマキをしていれば、神様ももう死んでいる人を連れて行こうとは思わないだろうさ。」
「ばあちゃんたら。」
かあさんが言うと、ばあちゃんはわざと低い声で言った。
「ばあちゃんじゃないよ、じいちゃんだよ。」
かあさんも、ぼくも、そしてばあちゃんも笑った。
きょうはばあちゃんの誕生日だ。ぼくはばあちゃんにプレゼントを買った。絶対ばあちゃんは喜んでくれると思う。プレゼントはもちろん、ハチマキにする手ぬぐいさ。模様のきれいな、ぼくのサイン入りのね。
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