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「知ることは共に生まれること」(ポール・クローデル)
 connaitre = con + naitre

 ヴィジュアルシンキング、視覚思考の勧め

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“MIND MAPS FOR KIDS”(日本名『勉強が楽しくなるノート術』)を読んで

ここ数年、脳に関する話題が多い。何もニンテンドーDSの「脳トレ」に限らない。その中でも特に、右脳に関する論述が盛んである。以前から養老孟司氏の脳や心に関する論考は「バカの壁」ブームに見られるように、知的なことに関心のある人たちの耳目を集めてきたということはあるが、昨今の脳や脳科学に関わるブームはその比ではないように見える。

この背景には、日本人の「知」に対する危機意識があるようにも見える。そして、そのきっかけはおそらく、あのOECDのPISAのテスト(今まで3回実施)で、日本の学力が惨憺たる結果を招いたことにあるのではないかと見ている。ゆとり教育や総合学習の導入に踏み切った文科省が、1回目の結果ではともかく、2回目、3回目と段々と下落してもはや誰の目にも国際比較のテストで日本の学力低下が明らかで言い逃れがができなくなったのである。


これに対する処方箋は何か。当初文科省は子どもたちの学校での学習時間を増やせば何とかなると思っていた節がある(あるいは、当座の間に合わせでそう言ったのかもしれないが)。百ます計算など基礎の徹底が叫ばれたのもこれを契機としてである。だが、基礎の反復だけで応用力が養われたり、高度な思考力が身につくものだろうか。そういう根本的な疑問を抱いた人も少なからずいたはずである。そこから、「考える力」というキーワードが引き出された。

では、「考える力」はどうすれば身に付けられるのか。ここでまた様々な意見が飛び交う。百家争鳴(ブレインストーミング)の感がある。そこで日本人の国語力の見直しがなされ、言語による論理的思考やイメージによるヴィジュアルシンキングが論じられるようにもなった。そして、それに連動して、論理を司る左脳とイメージを司る右脳の問題、とりわけ右脳の働きが注目されるようになり、ニンテンドーDSの「脳トレ」に見られる「脳」力の大衆化も進行した。

やはり、その流れと言っていいのかどうか分からないが、ヴィジュアルシンキング、イメージシンキング、図解思考、キーワードシンキングの手法として、そしてOECDのPISAのテストで絶えずトップのランクにとどまるフィンランドの教育方法、いわゆるフィンランド・メソッドにも取り入れられている学習方法として、イギリスのトニー・ブザンが開発した「マインド・マップ」(登録商標)という手法がある。手法は違うが、どこか川喜多二郎氏の「KJ法」に近いものを感じさせる。

「マインド・マップ」の手法は、教育界よりもむしろビジネス界で活用されていた。マイクロソフト、ボーイング、GM、オラクルなど世界のトップ企業で受け入れられ活用されていて、ブザンの本は100カ国以上、30言語以上で翻訳されているという。しかし、もし、それがビジネス界だけにとどまっていたなら、これほどまでに注目されることはなかったのかもしれない。やはり、しれが注目されるようになったのは、フィンランド・メソッドとして教育に活かされ、効果を上げていたからではないだろうか。

「マインド・マップ」について紹介しているブザンのサイトを見れば、そこにBBC放送で放映されたトニー・ブザンのドキュメンタリー番組が紹介されている。底辺校の子どもたちがマインドマップを使用することで半年後に驚くべき成長を遂げた様が映し出されている。

今回、ここで紹介するのはそのトニー・ブザンによって書かれた“MIND MAPS FOR KIDS”(日本名『勉強が楽しくなるノート術』ダイヤモンド社、トニー ブザン著、神田昌典訳、1600円+税)という本である。腰帯の表には“成績と創造性が同時に伸びる「魔法の道具」を手に入れよう”とある。

「マインドマップ」には守るべきルールがある。(1)無地の用紙を使う(2)用紙は横長に使う(3)用紙の中心から描く(4)テーマはイメージで描く(5)1ブランチを1ワードで(6)単語で描く(7)ブランチは曲線で(8)強調する(9)関連づける(10)独自のスタイルで(11)創造的に(12)楽しむ!…ということ。従来のノートを取るときの手法を考えてみよう。(1)言葉を直線的に並べる(2)箇条書きあるいは階層化して書く…というのが従来の手法だ。何が違うのだろう。

▼人間が思考するときの自然な動き(放射思考)を具現化している
▼キーコンセプトで概念やイメージを多面的、多元的に結びつける
▼言葉ではなくイメージを通して考えるイメージシンキングである

ということが、マインドマップの大まかな把握である。それを本書では、子どもたちが実際に勉強をしたりノートをとったり、作文を書いたりする場合などを想定して記述している。「さあ、いっしょに遊びながら学んでいこう!」とブザン氏は言っている。

◆まず第1章では、従来のノートの取り方や物の考え方は左脳思考であり、パワーの半分しか使っていない。そこで左右両方の脳を使う「集中できるノート」の取り方を教える。「脳はイメージで考え、イメージで覚える」と言う。そこで、色と絵で考え、覚えるマインドマップを実際にやってみる。中心の絵から太いブランチを伸ばし、そこからさらに細いブランチを伸ばす。

◆第2章では、マインドマップは暗記や記憶についても画期的な方法であると言う。マインドマップで絵を描けば簡単に思い出せる。また、後で誰かに話すつもりで読むと集中力が高まるという。それには、「クエッション・キット」(なにが・どこで・いつ・だれが・どうして・どうなった…のブランチのマインドマップ)を使う。そこからさらに第2、第3のブランチを伸ばし、数字や単語で書く。用意するのは、紙とカラー鉛筆かカラーペンのみ。また、マインドマップはいいアイディアを思いつく助けになるし、つながりや関係が分かりまとめやすくなる。

◆第3章では、学校の勉強でマインドマップをどう使うかを説明する。国語、歴史、算数/数学、理科/化学、地理、英語について説明しているが、マインドマップでは「整理術」が自然に身につくという。そして、「頭の体操」のところでは、マインドマップは「ものすごく高度な落書きだ」と言う。落書きは集中力を高め、記憶を助ける役目をはたすともいう。

◆第4章では、マインドマップで本を読んだ内容を一枚の紙にまとめ、覚えるやり方を説く。そして、テストは「ゲーム」であり、マインドマップはその「ゲームのルール」を教えてくれるという。たとえば、テスト前の丸暗記は詰め込みすぎて脳の働きを悪くするが、マインドマップを使って学年の最初にこれから習う骨組みを丸暗記するのはいいという。また、テスト前にもう一度見れば「復習」にもなるという。つまりマインドマップはすべての情報を一枚の紙にまとめているので、テストの準備にも見直しにも役立つというのである。そしてこれは、国語や社会、理科などの考える力を養い、長文読解や小論文にも役立つという。

◆第5章では、勉強だけでなく、毎日の生活を楽しくするのにも役立つという。マインドマップを使うと目標や全体がよく見えるようになり、繋がりも分かるようになるという。

最後に、「マインドマップは、キミの魔法の杖だ」とブザン氏は言う。後はマインドマップを自由にいろいろな場面で使いこなせばいいということだ。

これがこの本のあらましであり、全てである。もっと何かを期待していた人は、逆に「えっ、これだけなの?」と思うかもしれない。これだけである。そして、これでいいのである、多分。というのは、これは何かを記憶することを目的としていないからである。マインドマップの基本的な手法を理解すれば、後はいろいろな活動の場面において具体的に実践すればよいのである。果たして、あなたにとってマインドマップが意味のあるものであったかどうかは、それをどう使いこなすかにかかっている。これは他の大人向けのマインドマップの解説書でも書いてあることは基本的に同じである。マインドマップについてのこの本を読むこと、それ自体がすでにマインドマップの実践の始まりなのである。

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