[ 昭和一桁 団塊の 先の先を往く! ]

 何して、飯食っているの? と問われるなら、フリーランスの翻訳で…、ということになる。

 翻訳と言っても、文学的なものではない。技術翻訳、もっと具体的に言えば、今流行の知的財産権の内の…、特許権−、を取得するために各国特許庁へ出願せねばならない特許明細書の翻訳を意味している。

 この仕事も丸の内の大手特許事務所でスタートして以来、既に30年を超える。特許事務所勤務は15年に及んだから、独立し一匹狼となってからの方が長くなったわけだ。

 元もと、基礎的な技術知識は必須であるが、だからと言って、この仕事に関わるエキスパートが全て、特許権の対象となる最先端技術に通暁しているわけでは−、無論ない。

 従って、それなりに内容を理解し、文脈に沿って外国語(殆どの場合、英語)に置き換えていくためには、その分野の知識と、何よりも翻訳者にとって大事なのは、適切なテクニカルタームを把握することにある。

 そのためには、どうするか? 参考書!? 当該技術分野の用語集!? 無論、それらもよい。 しかし、現実的には、それだけで間に合うことは殆ど無い。

 我々は必要な情報を全てインターネット上から収集する。米国特許庁の収蔵資料、当該技術分野に属する産業界や大学、すなわち会社や協会、その他の団体、あるいは公開された特許文書をビジネスとして取り扱っている企業や団体から集め、その中から使えるものを選び出す。 といったような準備段階を先ず踏まえねばならない。

 従って、仕事に際してはブロードバンドによる常時接続環境の必要性は言うまでもないし、文書の作成、辞書の検索もPC上でのウェイトが圧倒的に大きい。

 そんなわけで、仕事が入れば、ディスプレイを四六時中見つめ、キーボードを叩き続けることになる。

 PCの初体験というのは、皆さんの場合どんなでしたか? 会社、学校? パソコン教室? それともまた別な状況でしたか?

 私、あべ れいじの場合は、全くの独学というか、自分の勝手なやり方で始め、ずっと続けている訳なのです。

 英文の入力そのものは、特許事務所時代に電動タイプライターでやっていましたから、キータッチの違いくらいで特別な問題はありません。

 フリーランスとなった当初は、いわゆるワープロでスタートしました。起動やマシンそのものはワープロ単体機能ですから、PCのような多機能を伴わない分、取り扱いは単純でした。しかし、ワープロは日本語の処理に主眼を置いていたため、外国語の入力や処理という点では使い勝手が悪かった、と思います。

 それから、パソコン時代となり、ソフトをPCにインストールしてワープロを使用する形になりました。

 言葉に出せば、それだけのことですが、MS DOSがどうたら、こうたらとか、CPUだの、HDの増設だとか、今から思えば、大したことでもないのに、独りで導入し、教えてくれる適当な人も居ないまま、マニュアルと格闘し、販売店や、メーカーに問い合わせ、面倒なことも試行錯誤しながら乗り越えて、今の状態に至っています。それをもたらした原動力は何なのか?

 と問われれば、答えは単純明快−。 自腹を切って(決して安いとは言えぬ金額で)購入したマシンですから、兎に角、活用して働いて貰わねば(元を取らなきゃ)己が損害を被る、という一点に尽きるわけです。 そして、もう一つは、他の人間が作ったマシンを何故に、同じ人間である私が操作できないのか? そんな理不尽なことがあって堪るか、という意地もありました。

 そこいら辺が 企業から貸し与えられ、文句を言いながら、渋々取り組む、という姿勢とは根本的に異なりますね。

 一時、「自己責任」とやらいう言葉が流行りましたが、そんなことは、腹を決め、覚悟して始めた人間にとっては、言うまでもない当たり前のことです。

 一匹狼は、誰からも命令されずに自分の判断で全てを決められますから、或る意味ではストレスはありません。 しかし、一旦決断し、スタートすれば、全ては自分の責任ですから、たとえうまく行かなかったとしても、率直に報告して、ご免なさい!という訳には行かない。何度やり直してでも結果を出して相手(依頼者)の要求に応えねばならない。 これには、大変なストレスを感じます。

 ストレスを抱え続けるだけでは、動物はそれによって潰されるでしょう。 しかし、適度のストレスがないと、それでなくても怠惰な人間は何の成果も上げられずに、イージーに流される、と思います。

 従って、ストレスを如何にうまく活かすか? が徐々に人間の成長に影響を及ぼしてゆく、と考えられますが、如何でしょう?!

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