前号で触れた版画家日下賢二(敬称略、以下同様)の「赤いフォルム06」を国立新美術館で開催中の国展で観た。迫力がある。周りの作品の中で内容と云い、完成度と云い際だって目を惹く存在である。彼は1936年生まれだから、昭和二桁の先陣を切って昨年70歳に達している。
実は、その前日、京橋の片倉ビル1F<かねこ・あーとギャラリー>で開催中の「松本 旻 展 ― 絵画性の中から ―」を観に行き、作家本人と会場で会う約束をしていた。
午後5時頃、会場を訪れる、と予め知らせて置いたが、運悪くその日の午前中から午後に掛け、訪問していた埼玉県日高市にある故山野 卓画伯宅への交通機関の障害に遭遇してしまった。詳しく云えば、東上線上福岡駅構内の人身事故による影響と、乗り換え後のJR川越線の強風による徐行運転結果の遅れとのダブルパンチを受けた。
その結果、当日の予定は大幅に狂ってしまった。
「松本 旻 展」も、その影響で、展示終了30分前にやっと会場に入れた。しかし、鑑賞はじっくり出来た。
今まで続いていた表現方法とは、一味違う、私にとっては好ましい方向への変化を感じた。彼も日下と同年生まれ、1936年で、矢張り70歳に到達したばかりだ。
その一例(「 方位ー接・5 」 2007 油彩 224×145.5 cm 2点組)を写真で掲げたが、詳細は、諸氏自身の眼で確認されることをお薦めする。
かねこ・あーとギャラリー
〒104-8312 中央区京橋3-1-2 片倉ビル1F 東京メトロ銀座線 京橋駅3番出口より徒歩0分
TEL 03-3231-0057 E-Mail kanekoag@axel.ocn.ne.jp
『松本 旻 展 ― 絵画性の中から ―』
会期:2007年5/7(月)〜5/19(土)PM12:00〜19:00(最終日 〜18:00)
日曜日休廊
松本 旻は、次のようにコメントしている。
『画と線と点による色彩の調和と対比。描くこと、消すこと、見ること、描き加えること、の繰り返しの中で、余白は埋めつくされ、私の行為が痕跡となって存在する。これが私の絵画。展示された時、その壁面が空間となり、私の絵画は活動をはじめる。場(環境)によって表情は変化する。どの様に見えるかは、見る方に委ねるしかない。私が精一杯の努力でテクニックを駆使し、念を込めても、私の目論見がその通り伝わるものではない。しかし、もっと大切なものが、丸ごと底深いところで見えてしまう。』
ここで、地理的または時間的制約でギャラリーを直接訪れることが困難な方のために下記のHPを紹介して置こう。
http://www11.ocn.ne.jp/~kanekoag/kaneko/2007/070507/matsumo-06.html
また、5月13日に放映されたNHK BS2のブックレビューでイラストレーター南伸坊が秋山祐徳太子著の「ブリキ男」を紹介し、読んだ人々が滑稽で、馬鹿馬鹿しく、それでも憎めない、何ものも、何事をもアートにしてしまうブリキ男を賞賛していた。
秋山祐徳太子には会ったことがある、大分前の話だが、比較的彼と親しかった岡山県津山市出身の友人である画家、植月正紀の紹介である。
その時の率直な印象は、かなり可笑しな、イカレた男! なんで都知事選などに出るのか?といった類のものだった。
しかし、こうして書評家から、相当の評価を受けているところを見ると、1935年生まれの、このアーティストも70歳で熟したのであろう。
程度の差はあろうが、上に掲げたアーティスト達に共通する印象は、いわゆる常識的な立場からは、自分以外の人々、特に異性に対するサービス精神が旺盛に見え過ぎ、時に誤解を招きかねないくらいであるが、創作に対する態度はストイックとさえ云うことが出来、真剣そのものである。
そういう姿勢を、コツコツと貫き通すことによって『アーティストは70歳で熟す』というのが、私の見方であり、その真摯な態度は、将に尊敬に値する、と感じて居る。

