[ 昭和一桁 団塊の 先の先を往く! ]

 このような店は、東京のような大都会では、珍しくも何ともない。

 しかし、地方都市で、しかも立地条件が、県庁所在地の、JRのメイン駅至近というのはなかなかに利用価値がある。

 その店というのは、ごく在り来たりの、大衆的な居酒屋である。

 ただ、ユニークなのは、酒屋が直接経営していること、従って、酒の値段がリーゾナブルだし、全国の銘酒を幅広く取り揃えていることだ。

 その上、料理の方もかなりレパートリーが広い。 鍋料理も水炊き、ちゃんこ鍋、を初めとしてすき焼き、ぼたん鍋、魚ちり、しゃぶしゃぶ等々に及んでいる。 一品料理も無論豊富だ。

 魚、鶏、肉類や、豆腐、野菜類の煮物、焼きもの、揚げ物等は当然のこと、豚足やあさりのワイン蒸しやおでん等、大抵のものは揃っている。

 それより、まず言いたいのは、店が朝9時から営業していることだ。 都会から地方へ移って来て、一番気に入らないというか、困るのは、店の閉店時間の早いことだ。 私のように夜型で、深夜まで仕事している人間にとっては、一段落したから出掛けよう、と思っても開いている店を探すのが一苦労である。

 その反対に、自由業故、朝早く家を出て所用を早めに済ませたときは、空腹を癒すと共に、どうしても喉を潤したくなる。

 そんな時、この店は大変都合がよい。 何せ、朝9時から開いているわけだから、まだ午前中であろうが、早昼であろうが、一向に問題なく飲むことが出来る。

 言っちゃア悪いが、田舎にしてはなかなか開けている。 堅苦しい人にとっては、不謹慎至極に見え、目障りかもしれぬが―。

 しかし、こんな店を非常に重宝している人々も見られる。 それは、年金生活者と見える、自由時間の豊富な人たち、専ら高齢の男性客、すなわちおじいちゃん達である。

 環境により、彼らだって、孫のお守り、家の留守番、家事手伝い、社会奉仕等々忙しいケースもあるだろう。 一方で、家に留まっていては、目障り故、兎に角何処か外へ出掛けて欲しい、と家人から求められ、止むを得ず、暇つぶし出来る場所を探し回っている老人達も少なくなかろう。

 そんな時には、うってつけの店と言える。 何せ、低料金で、オダを上げながら時間つぶしが出来るのだから、願ってもない、おじいちゃん達の憩いの場と化している。

 接客する従業員達には、客に見合った、高齢と見える女性を配しているのも、必然性か、実利性か?なかなかに嵌まっている。

 書店で、新しい本を購入して、コーヒーでも飲みながら目を通したい、気持ちになったとき、たまたま夕暮れ時に当たり、寂れた、元繁華街のコーヒーショップで『直ぐにラスト・オーダーになりますが…』と告げられ、舌打ちして、この居酒屋に河岸を変え、老人達の自慢話をB.G.サウンドとしながら、新刊本の頁をめくって、一刻を愉しんだこともある。

 T.P.O.で使い分ければ、この種の居酒屋は誠に重宝で、利用価値がある。 普段、孤独で、寂しげに見えたりする、おじいちゃん達もここではご機嫌で、いっとき輝いて見えさえする。


価格:¥ 35,000(定価:¥ 36,750)
おすすめ度: