■勝汰章の著作刊行本

「笑顔になるための246のことば」

悲しみを乗り越える時に・・・

夫婦/恋愛/会社、仕事/子供/家族/友情、信頼/お金/
お金/病気、事故/生と死/挫折/セックス/男と女/今/

2030年までの生誕月による運勢鑑定付

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「雅彦さんは、金融関係の会社で働いているということですが、名前も何も分からないのですか? どんなことでもいいですから記憶にあることを教えて欲しいのですが?」
「そう言われても・・・待てよ・・・確か、名前は分からないが、野上の紹介ということは話していたような気がする・・・それと、野上の関連会社とか・・・何とか・・・それしか覚えていないな・・・」
「野上が関係しているということですね?」
「・・・だと思うがな?・・・」
すると、新開刑事の携帯が鳴った。
何やら、えっ?・・・とか・・・そうか?・・・とか・・・顔は真剣な表情になった。
新開刑事は、僕を呼び寄せた。

「雪ちゃん・・・面白いことになったぞ・・・田中雅彦の解約したかもしれない携帯の番号で調べてもらったのだが、契約者は野上幸則になっているという。一体・・・どういうことだ?・・」
「えっ・・・野上が契約者? 何で・・・普通なら、そんなことはないと思うけど、もしかしたなら、野上の会社で働いていたということで?・・・」
「そうかもしれないな? どっちにしても雅彦君は野上と関係したいということだな。しかし、携帯電話を解約したということは、野上と別れたのかもしれない? しかし、おかしいなぁ・・・?」
「新開さん・・・おかしいですよ。仮に野上の会社で働いていて辞めたとすれば、今は別の会社で働いているということかもしれません。そうしたなら、叔父さんに連絡があってもいいと思います。金銭的に携帯電話を買うことができなくても電話ぐらいはできるはずですよ。十円あればいいだけのことですから?それとも、連絡することができない何らかの理由・・・があるのかもしれませんが?・・・」
「何だって? 雅彦は、どこにいるんだ?」と、叔父さんは、また不安な顔になった。

「田中さん・・・雅彦さんの写真はありませんか?」と、僕が尋ねると、数枚の写真ならあるという。
「新開さん、何やら変な展開ですよ。何かがおかしい・・・全ては、野上に関係している。中川昭義といい、雅彦君といい・・・皆、京都出身で、元は暴走族・・・これは何かありますよ?・・・」
「雪ちゃん・・・間違いないな。なんだか嫌な予感がする。雲の中の隙間が見えてきたかもしれん。」
「えぇ、雲の中の隙間・・・とにかく、雅彦君の写真を日光南署の今野刑事へ送ってみましょう。もしかしたなら、チェリーファイナンスで働いていたかもしれません。必ず、雅彦君を知っている人がいると思います。野上の会社の人なら・・・」

叔父さんは、家に帰って写真を持ってくるということになった。
その間に、京都中央署の桑原刑事が、捜索願の書類を持ってきた。

「新開さん、雪田さん・・・今回の事件に関係している奴らは全員が元暴走族です。殺された中川昭義や行方不明の田中雅彦・・・野上・・・それと、南・・・今、所在が確認されているのは二人だけです。もしかしたなら、田中雅彦も殺されているのでしょうか?」
「桑原さん・・・可能性はないとは言えないな。もしかしたなら、手や足首は、雅彦なのかもしれない?」
と、新開刑事。

「僕もそうかもしれないと思っていました。何らかの仲間割れ・・・それにしても、殺害の方法が違いすぎます。それぞれは別の事件なのかもしれない? それと、動機が全く見えない。同じ事件だとしたならば、この四人の過去に何かがあるのかもしれません。しかし、十五年も経過しているのに? いまさら・・・」と、僕は言った。
「そうだな・・・何かがあったとしても、そんなに過去のことではないと思うが? しかし、全員をもう一度洗う必要がある。桑原さん・・・京都百足連合が発足した当時の資料が欲しい。それと、解散した理由も調べて欲しい・・・頼むよ」
「新開さん・・・分かりました。早速、調査させます・・・」

こんなやり取りをしているうちに、叔父さんが雅彦の写真を持って帰ってきた。
十代と思われる写真が数枚あり、その中の一枚を日光南署の今野刑事へ送った。
京都中央署の桑原刑事の調査によると、京都百足連合の実態がはっきりとしてきた。
今から十六年前に野上幸則と南紀夫を中心として発足したということだ。
当初のメンバーは五人。その中に中川昭義と田中雅彦の名前があった。
車よりもバイクを中心とした暴走行為をしていた。

他のメンバーの名前も記載されていたが、そのメンバーで所在が分かっている奴らを徹底的に調べるという。
さらに、解散理由は、暴走族同士の傷害事件を起こし、警察の命令で解散したという。

傷害といっても、相手の暴走族の1名に全治1ヶ月の怪我を負わせたということであった。
それが解散の原因だということであり、野上も警察の解散命令を受け入れたということだ。
それ以外の詳細な内容はなく、その資料からは何も得るものはなかった。

その日の夜、僕は昔からの友人の自宅を訪ねた。

武田博之という男で、僕が中古車屋を始めた時に、開店時に最初に車を買ってくれた人であり、その後、実家のある京都に戻り家業の漬物屋を継いでいる。東京にいた時は、大手の漬物メーカーで勉強していた。

「雪田さん・・・久しぶりですね。元気ですか? 仕事かなにかで・・・」
「武田さんも元気そうで何よりです。仕事ではなくて、知り合いのお伴というところですか・・・初冬の京都はいいものですね。東京にはない風情がありますよ」
「えぇ、確かに東京にはない町並みだし、歴史の重さというのでしょうか? 東京にいた時よりも、少しだけのんびりと生活しています。もう、お子様も大きくなられたでしょうね?」
「子供? いゃー、結婚もしていないですから子供もいませんよ。なかなか縁がなくてね・・・」
「・・・すいません・・・てっきり、あの当時の女性と結婚されていたと・・・」
「あぁ・・・あの女・・・しっかりとふられてしまいましたよ・・・ハハハ・・・」
僕にも、中古車屋を始めた時に付き合っていた女性がいた。
その女性は、僕の店を手伝ってくれていたのだ。

しかし、僕の煮え切らない性格で逃げられてしまったという最悪の過去があった。

「・・・すいません・・・それで、お伴ということで観光ですか? 観光なら僕に任せて下さいよ。いつまで滞在するのですか? 明日なら、朝から時間がありますが?・・・」
「いえ、観光というほどのものではないのです。刑事のお伴・・・なんですよ。ちょっと事件が・・・」
「刑事・・・事件・・・何か物騒なことですか? まさか、殺人事件ということはないですよね?」
「その、まさか・・・なんですよ。鴨川のほとりの殺人事件です・・・」
「あぁ、記憶にありますよ。殺されたのは東京の人らしいですね。その件ですか? しかし、刑事さんに同行するというのは、雪田さんも事件に関係しているのですか?」
「関係というほどのことはありませんが、友人の弁護士が多少関係したのです。勿論、犯人ということはありませんが、当初、間違われてね・・・それで、僕にも容疑がかかったのですよ。それと、横浜と日光で発見された死体と関係があるのではないかと・・・車に関係しているので、僕も興味を持って京都まで来たということです。まぁ、いつもの僕の悪い癖なんですが・・・」
「雪田さんらしいですよ。前にも、連続殺人事件でマニラへ行っていたと聞いていますよ。まるで、刑事みたいですね・・・失礼な言い方ですが、お金になるのでしょうか?」
「ハハハ・・・一銭にもならないですよ・・・趣味のようなものです。こんなことをしているから女に逃げられるのですよ・・・ハハハ・・・で、武田さんは、ご結婚は? 奥にいらっしゃるのは奥さんですか?」
「・・・えぇ、女房です・・・」
「うらやましい限りですよ。お子さんも・・・?」
「・・・いました・・・」と、武田さんは目を伏せた。
「・・・ん・・・いたということですか? 余計なことを・・・」
「いえ、十五年前の夏になります。ちょっと事故で・・・生きていたなら、十八才でした。それ以来子供には縁がなくて・・・」
「事故? 車ですか?」
「えぇ、ひき逃げです。家の前の通りでした。女房が目を離した隙にバイクに轢かれたのです・・・即死でした・・・」
「・・・バイク・・・ですか? それで犯人は?」
「捕まっていません。偽造ナンバーのバイクでした。女房はとっさにナンバーを覚えていたのですが・・・目撃した人の話だと、若い男が二人で乗っていたということです。暴走族の身なりだということで、警察も簡単に捕まりますよということでしたが、偽造ナンバーということと、バイクの破片も何もなかったので・・・」
「そんなことがあったんですか。何とか早く捕まえてほしいですね。余計なことを思いださせてしまったようで・・・僕こそすいません・・・何も知らなかったものですから・・・」

「いえ・・・こちらも悪いのです。飛び出してしまったのですから・・・」
奥の漬物を作る場所に目を向けると、奥さんが下を向いてむせび泣くのが見えた。
「継続捜査ということで、人員も縮小されているようです。おそらく、もう無理ではないかと・・・」
「そうですか? で、目撃した人は運転していた男の顔を見ていないのですか?」
「フルフェースのヘルメットなので・・・ただ、左の手の小指の付け根に火傷の傷のようなものがあったということでしたが・・・確かではありません。警察も暴走族の関係を調べてくれたようですが、そのような傷のある男はいなかったということです。それと、轢いたバイクも発見されたのですが、盗難バイクでした。指紋もきれいにふき取られていたということです。もう、昔のことです・・・いまさら・・・犯人が見つかったとしても息子が帰ってくることもないし、今は、記憶の中だけに生きています。もう、終わったことですから・・・すいません、変な話になってしまって・・・雪田さんにお話しても・・・」
「いえ・・・」
と、言いかけようとした時に携帯が鳴った。新開刑事からであった。
「新開さん、何ですか?・・・」
「雪ちゃん・・・どこにいるんだよ・・・新しい情報だよ・・・本庁の科捜研からだ。手と足首は同一人物だが、手のほうは整形したような痕が分かった。最初は、溶けかかっていたので分析も難しかったのだが、かなり昔に手術したことが分かった。その線からも捜査をするということになったよ。10年以上前の手術ということらしい。当時の整形病院をしらみつぶしに当たることになったよ・・・」
「・・・手のどこなの?」
「小指の付け根だ・・・」
「何だって・・・小指の付け根・・・ちょっと待ってよ・・・」
「何が待ってだよ?・・・それと、手と足首の性格な年代も分かったということだ。十代から二十代前半だ。皮膚の組織の分析ではっきりと分かってきた。どんなにみても、30代になることはないということだ・・・少し時間がかかりすぎたが、熱で組織の分析が遅れていたらしい・・・」

「・・・」僕は言葉を失っていた。







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