北極圏の領土獲得競争が激化している。先陣を切っているのがロシアである。昨年の8月初旬ロシアの小型潜水艇ミールが北極点に到達し、そこに開けられた穴から北極点下4,300メートルの海底に降り立った。有人潜水艇から繰り出されたロボットアームは海底にチタン製のロシア国旗を打ち立てた。ロシアは北極海に面した国々に先駆けて北極における自国の主権を自己主張した。カナダ側はいち早く反応して次のような談話を発した。「15世紀ならまだしも、知らない土地に行って、国旗を立てたからといって、自国の領土だなどとはならない」と。
北極という環境は南極に比べて科学的に重要性を帯びているとは一般に考えられてはいない。また、南極は海のなかの陸なのにたいして、北極は大陸に囲まれた海という違いがある。
海に関して海の憲法と言われているものは国連海洋法条約がある。この条約において沿岸国200カイリまでを排他的経済水域として探査と開発の権利が認められている。ところが大陸棚といって海岸から海底が延びていることが科学的に立証されると200カイリは350カイリ(648.2キロメートル)まで拡大される。これは、各国の申請に基づいて国連海洋条約に指定された国連大陸棚限界委員会(CLCS)が合法化するというものだ。アメリカのごとく国連海洋条約に批准していない国もあるが、アラスカという北極海問題にからんでいるアメリカとしては早晩批准をせざるを得ないとみられている。
俄然北極圏に注目がいきだしたのは、地球温暖化と密接にからまっている。2020年までには北極海の氷は夏の間すっかり消失すると予想されている。このことは様々な波紋を投げかけることになった。ヨーロッパを地球温暖化に対して過敏にならせた原因の一つといわれている。フランスやイギリスなどは緯度的に札幌より北に位置している。だが暖かい。それはメキシコ暖流が北に流れついているからだと言われている。それが北極海の氷が溶け出してきていることにより流れ着かなくなる恐れがある。次に北極圏の資源に注目が集まりだした。あるコンサルタント会社の試算によると資源埋蔵量は石油換算で2,330億バレルで、その他に発見できる見込みのあるものとして1,660億バレルと見られている。世界の日量、石油実需は8,600万バレルという数字からどれくらいのエネルギー量かは類推できる。ただ北海圏資源の85%は天然ガスと見られている。
北極海の氷が溶け出すと、大西洋と太平洋が北西航路で繋がることになる。そうするとロンドン、横浜間は、従来のスエズ、インド洋経由より7,000キロメートル短縮になる。ここでもカナダとアメリカは対立している。カナダは北西航路を自国管理下に置きたいのに対してアメリカは反対している。
北極圏地域の領有権主張には各国に温度差がある。北極に個別国の資源領有権を禁止している南極条約のような制限がないことに加え、国際海洋法条約の批准を拒んできたアメリカ、好戦的態度のロシア、カナダ、対立より協調を求めるノルウェーなど立場の違いが出てきている。
この記事はウェブサイトにも載せました。http://beauty.tyo.ne.jp