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2005/12/11

【電子説法】意味の編み目を生きる

(このメールマガジンは等幅フォントでお読みになることをお勧めします)

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          電 子 説 法 一 日 一 話

         平成十七年十二月十一日 通番1313号

              提供:法華コム
            <http://www.hokke.com/>

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 合掌 こんにちは。

【時事随想/意味の編み目を生きる】

 子供たちが無惨に命を奪われたり行方不明になる事件が相次いでいます。昨
日もまた、学びの場で、子供たちを教え導くべき立場の者により犯行が行われ
ました。

 弱き者は守られねばならない。そんな私たちの「常識」は、簡単に現実によっ
て裏切られます。弱き者に対して、私たちの多くは通常、慈しみの気持ちを持
ちます。けれど、全ての人が常にそうであるとは限らないのです。広島の事件、
そして今回の京都の事件では、事件の経緯と犯人の人物像が様々に報道されて、
「何故犯人は子供を殺すに至ったか」が示唆されています。幼女に性的興味が
あったから。自分の人格を拒絶されたから。栃木の事件は真相がまったく判明
していませんが遺体の状況は極めてサディスティックなものであったようです。
長野の事件は犯罪か家出かすら分かっていませんが、「一時子供を保護した」
という偽証によって社会を混乱させた女性がいましたね。

 弱き者を慈しもうとする気持ち。弱き者を傷つけようとする気持ち。どちら
も間違いなく人間の感情です。「心の癖」によって、前者の気持ちが強い人も
いれば、後者の気持ちが強い人もいます。けれど、善人と悪人がいるというわ
けではないということを、私たちは知らねばなりません。十界互具、人の一瞬
の心の中に地獄から仏様まで善悪美醜あらゆる心の要素が可能性として遍在し
ているという仏教の教えからいえば、誰もがどのような状況にも変化しうるの
ですから。

 昨日、とある場で若いお母さんたちの会話が耳に入りました。

「うちの子供を可愛いと思ったことなんて一度もない」
「あ、私もそう」
「下の男の子は可愛いんだけど、上は女の子だからかなあ、お父さんを取り合
うライバルみたいで」
「分かる分かる。一日に何十回も『お母さん、お母さん』とうるさいから『お
母さんが今なにやってるか見て分からないの!?』って怒鳴りつけたことある
し」

 我が家とは随分と違うなあと思いながらも、自分自身を振り返ると、そうし
た感情が自分の中に皆無ではないことに気づきます。私は私の子供たちを心か
ら愛しています。けれど、状況によって鬱陶しいと思う瞬間はあります。つい
邪険に扱ってしまうこともあります。「躾のために叱る」という節度を理不尽
に踏み越えてしまうその瞬間は、後で振り返れば間違いなく自分の心に余裕が
ない時なのですよね。

 もちろん、社会の中で生きるとは本来そういうことです。様々な人がそれぞ
れに心を抱えて生きている、だから人生は理不尽に満ちている。その現実を肌
で理解し一定の耐性を持つことがなければ、子供たちの「社会性」は極めて弱
々しいものになるでしょう。けれど、それを口実に大人が反省を失うべきでは
ないし、子供が犠牲となる犯罪や児童虐待が正当化される筈もありません。

 私たちは誰もが意味の網の目を生きています。人が人と接するということは、
意味が絡まり合い響き会うことです。人間関係の中で私たちは時に優しい感情
に満たされ、時に憎悪が際限なく膨れあがって、その心に従って言葉を発し、
行動します。言葉はまた心を掻き乱し、身体を動かしてゆく。身口意の三業が
互いに影響し合いながら更に意味の網の目を織り上げてゆく、その過程を整え
ることこそが、人が幸せに至る道であることは間違いありません。

 お釈迦様は「心の苦しみの原因となるから、何者も愛することなく、社会か
ら離れて修行せよ」として、出家修行によって初めて人は苦しみの輪廻から逃
れられると説かれました。それは冷徹なまでの真理です。後に仏教の少なから
ぬ流派(現代日本仏教を含む)はその点で修行方法を「後退」(または「深化」)
させ、在家生活のままで救われる道を説くに至るのですが、そこには信仰と、
そして苦しみの可能性を引き受ける意志を必要としました。家庭を持ち社会生
活を営む以上、私たちは様々な人間関係を受け止めて生きてゆかねばなりませ
ん。その中で幸せを求めるならば、社会が、そしてなによりも自分自身が、心
を穏やかに保つ努力と工夫を積み重ねる必要があるのです。


 今日も良い一日でありますように。再拝

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■電子説法一日一話 平成十七年十二月十一日 通番1313号
■発行責任者 :福頼宏隆(法華コム)
■発行システム:インターネットの本屋さん『まぐまぐ』
        <http://www.mag2.com/>
■マガジンID:0000034633
■バックナンバーは↓で参照できます。
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